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わたしが木になる、その時に  作者: 神酒屋
第一章 始まるなら、それは種
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第2話 変化に触れて、そこからは

 さて、わたしがこの良く分からない事態に見舞われてから、体感で数日が経った。

 この数日の間でいくつか発見があった。まずは、あの時から吸い始めた謎のエネルギーのようなものについてだ。


 この謎エネルギー的なサムシング。なんとなくだけど周りにあるのが感じられるようになってきたのだ。

 吸ったりとか周りのを感じ取ったりしていて、これがどういうものなのかが曖昧にだが分かってきた。

周りの空間を満たすように漂っているエネルギーはガスや靄のようになっていて、常に一定量が何処かしらに存在している。

 身体の表面からこのエネルギーを吸い込むと、全身に馴染むように広がっていって、最終的に全体を力が満たしていく感じがするのだ。


 それと同時に全身がむくむくと成長していく。もしかすると成長以外にも吸収の影響や、これを利用した何か出来ることがあるのかもしれないが、現状ではそれを確認する術が無いのでいつか確認できればいいなと思っている。

 エネルギー吸収の結果、最初の頃と比べると既に五倍くらいにはなっていると思われる。わたしが最後に身長を図ったときは175cmくらいだったはずだから、五倍になってたら875cm。建物で言うと3階建て相当か。うむ、順調順調。目指せ10メートルだな。


 とまぁ冗談は置いといてだな。ここまででちらほら触れているんだが、二つ目の発見は今現在のわたしの姿かたちについてだ。何の感覚も無いところからエネルギーを吸収することで、自分の身体がどうなっているのかがなんとなくわかるようになってきたのだ。

 身体はほぼ綺麗な球体で、手足のようなものは特に無い。

 自力で動くことは出来ないが、食事や睡眠などは必要ないので現状不便はあまり感じない。

 うむ、ここまででわたしの体がどうなっているのか、察しの良い人なら気づいているかもしれないが、何を隠そう植物の種が今のわたしなのだ。

 人間ではなくなっている。つまりわたしは、昨今の小説ネタよろしく転生したものと考えられるというわけだ。正直まだ何かの間違いなんかである可能性を捨てきれていないんだけど、ここはその仮定で考えることにしている。しかしスライムとかエルフとかならまだしも植物の種って、おいおい……。

 まぁ、何の種なのかは分からないし、種が種のまま成長はしないはずだとか色々あるけど、まぁそのあたりはまだ分からないのでいずれ確認していきたいと思っている。


 さて、最後の発見なのだが周囲の環境についてだ。

 これについてはまだそれほど分かっていないのだが、どうもわたしは何者かの庇護下にあるようなのだ。いや、この状況が庇護されているのかというとちょっと微妙なところではある。だって植物の種だし。

 ただ、どんなものかは分からないのだが、時たま何かに撫でられる事があるのだ。暖かい何かが体の表面を行き来したり、全体を包み込むようになったり。そして、しばらくすると離れていく。

 これが人間なのかそれ以外なのかは分からないし、どういう意図でそうしているのかも分からないが、少なくともわたしの様子を見ている何者かがいることには違いない。

 できれば、意思疎通の可能な心優しい人だとうれしいなと思っている。最悪なのは食用ないし何かしらに利用する為の下拵えであることだが、ここに関してはそうじゃないことを祈るのみだ。


 今の所、分かっているのはこのくらいだ。これで何が変わったということも無いので、まぁなるようになれというところだが、それでも何も分からないのよりはずっといい。こう、精神衛生的に。

 さて、現状確認も終わったことだし今日も日課になってきているエネルギーの吸収でもしますか。


 あ゛ぁぁぁ~~~。体の全体的に謎ティックパワーが溜まってくるぜー。

 こうしていると本当に成長していく感じと一緒に自分がここにいる実感も得られて、なんともいえない安心感とか満たされる心地とかあって幸せな感じだ。

 こうしているとずっとこのままでも良いかなって気にもなるけど、やっぱりどうせなら目や手足が欲しいもんだな。目で見られれば周りの確認も出来るし、手足が無くて自分の意思で動けないのはやっぱり不自由を感じちゃうしなぁ。

 ただ、そうは言っても今のわたしは植物の種だから、その辺りは高望みってもんか。せめて野菜とかじゃなくて樹木の種であることを期待したい。


 植物を育てるときにはやさしく声をかけるといいって話を聞いたことあるし、芽が出たら音も聞こえるようになるのかな?なんてことを考えながらさらにエネルギーを吸っていると、いつもと違う感じがした。


 体の中で何かが形作られていく感じ。これは……なんだろう。もしかして芽とか根とかが作られ始めているのかな? ということはそろそろ発芽ですか?

 ただ、これってホントにそれだけだろうか。なんか作られているものが一つや二つどころじゃない気がするんだけども。というか、いち、にぃ、さん……と、多分だけど7つくらい、かな?もしかしたらもうひとつあるかもしれないけど、ここに関しては範囲が広すぎて何かが作られているのかそれとも体全体に及ぶ変化なのかが判断できない。


 なんだろう、体がうずうずする。歯が生え変わるときとかこんなだったかも。

 じっとしていられないような疼きにも似た焦燥感のようなものが次から次から沸いてくるのに、自分の意思では動けないから如何ともしがたいフラストレーションが心をささくれ立たせてくる。


――パキパキッ


 あーもう、心波立つストレスで妙な幻聴が聞こえてきた。この体になってから音とか聞いたことないしここで聞こえるとかあまりにもタイミングよすぎるもんな。うん。

 そんなことより、この疼きだ。あー転がりまわりたい。うずうず。


――パキパキパキッ


 ぬあぁーーー! もうちょっとでなにか生える気がするけど、その分うずうずも強くなっている。ぐぬぬ……、ぬ、ぬ、ぬ、ぬ、


――パキパキャッ

ピヤァーーーーー(ぬあぁーーーーー)!!」


 ふわぁーーー、すっきりしたー! もういっそ生まれ直したような心地だ!

こう、手足を広げて大の字になって寝転がりたいような爽快感だなぁ。

 はぁあっと。…………って、手足が!


ピヤヤヤァー(生えてる)!?」

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