とある男の物語〜とある場所にあるお店で〜
昔初めて投稿した作品のリメイク版の孤独屋です。
なんか良いタイトル付けられなかった感がありありと見えるね!情けないぐらいに!!
さて、この話は当時語りきれなかった内容を書いて(いると思)います。
昔と今と比べて書く長さが、変わってると思います。設定も軽く作ったので、少しだけ内容が違う部分もありますので、はい。楽しんでいただければと思います。
早めに勤務が終わったので、いつもの帰路より何となく遠回りをした俺は、何かを探すわけでも探してるわけでもないが、キョロキョロと周りを見渡し、あまり来たことないこの道を、好奇心旺盛の子供が探索をするような感覚で歩いていた。
そして、「貴方の孤独、買い取ります」という、看板が俺の目に止まった。
丁度いい、俺は今一人で家に帰るところだ。
家に帰っても妻どころか、母親さえも居ない。所謂、一人暮らしってヤツだ。ーー言っておくが、天涯孤独に生きることは望んじゃいない。ただ、出会いがない、ってだけだし、両親はちゃんと生きている。上京するにあたって別居しているだけだ。
立ち寄った理由として、別に寂しいという訳でも孤独が嫌いって訳でもない。
ただ単に、この店はどうやって孤独を買ってくれるのかと、好奇心が湧いただけだ。
そして俺は、物珍しいと思いながらその店に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ。孤独屋へ、ようこそ」
中に入ると機械的な声が耳に届き、奇抜なピンクか紫かも分からないグラデーションに目を奪われた。目がチカチカし、色のせいだろうか、気分も悪くなってきた。
俺は夢遊者病のごとく、あどけない足取りで店の奥へ向かう。地面を踏みしめているという感覚がなく、ふわふわとした感覚が靴から感じられ、歩いたことはないが雲の上を歩いているような錯覚に陥った。
だか俺は少し、そんな感覚がする地面に面白味を感じていた。
奥に行けば行くほど、グラデーションは暗くなり、大の大人が3人ぐらい並んで歩けたスペースだったのに、いまや俺一人で十分なぐらいのスペースになってきていた。
何の脈絡もなくしばらく、それが続くだろうと推測していたが、目の前に大きくも小さくもないごく普通な(俺より少し背が高い)扉が見えはじめた。近くまで行って立ち止まり、扉のノブに手を伸ばそうとしたが、俺がそれに触ることなく自然に扉がギィィと無気味な音をしながら、ゆっくりと開き始め、中が見えるようになった。
中には、テレビとかでよく見る占いの館みたいに、テーブルの上には二つのランプが机の両隅に手前の方に置かれ、タロットカード、水晶玉、虫眼鏡、王様ゲームに使われる10本以上あるであろう棒が入っている円形の筒が、キチンと整列されて置いてあり、誰も座っていない椅子の向こうに黒いフードを被った人物がいた。その人物は扉の開く音でこっちに気付いたのか、何故か不思議な視線を感じた。
「ようこそいらっしゃいました。こちらへお掛けください」
そして、恐る恐る中に入る俺にの両耳に男か女か分からない少しだけ甘美な声と、先程まで何も香らなかったが、ふいに甘い香水のような匂いが鼻孔をくすぐった。
甘すぎる匂いにクラっとしたが、勧められた椅子に手を掛けて引いた。
「貴方は孤独者ですか? そうですよね? 貴方は今、○○区××町△丁目に一人で住んでいらっしゃいます。ここまでは間違いはないですよね?」
俺が椅子に座った瞬間に、ここの主は確認するかのように聞いてきた。その質問に俺は驚いた。ーー彼か彼女かわからないが、体格から見て彼だろうーー彼の質問は全くもって当たっている。なので、俺は首を縦に頷く。
その様子を見て彼は満足そうに頷くと、彼は「そして貴方はさっきまで一人でした」と確信に近いことを言ってきた。
俺は、ここはさすがに推測にしがないと思ったからこそ、試す訳では無いがこう言ってみる。
「それは、どうでしょう? 二人で途中まで来て、別れたから俺一人でここに来たかも知れませんよ?」
「それはないでしょう。私は何でもお見通しです」
俺の反発はすぐに切られた。しかし「何でもお見通しです」とかほざきやがった。
「何でも……ね。実は俺がメェルヒェンチックってことも?」
先ほどの言葉は嘘だ。そして、彼がもし”はい”だなんて言ったら、「何でもお見通し」と言った彼の言葉は嘘になるのだ。俺は確信していないのにも関わらず、口端を吊り上げた。
「いいえ、違いますよね。貴方はメルヘンチックではない、でしょう?……どちらかと言えばマニアックの方、ですよね」
俺の魂胆を見透かしていたのだろうか、俺の期待をすぐに裏切った。裏切ったついでというように、誰にも言ったことのない俺の性癖をアッサリと見破ったのだ。吊り上げた口端は釣り糸で無理やり引き上げたように、引きつっていた。
ーーやはりこいつはなんでも知っているようだった。恐らく俺が知らない事も、もしかしたら知っているのだろうか……。
そんな考えが頭をよぎり、知らずして強ばらせていた身体を緩めると、俺は両手を小さく上げ、お手上げだと意思表明した。
そして、その様子を見た彼は、
「さて、私に対しての疑いは晴れましたでしょうか? それでは、本題に入りましょう……。貴方の孤独を買い取ります」
と言って、俺に商談を持ちかけた。
「ご新規様なので」と前置きに彼は、情報の提供をする代わりに、孤独賃と言った代償を払わないといけないのだ、と教えてくれた。
だが、俺には孤独賃という代償なんてない、というと、彼は首を振った。
「そんなことはありません。誰かしら孤独賃を持っています。例えば、学生の頃、2人グループを作る際に一人余ってしまい、孤独を感じたことがあれば、それは孤独賃になります。いまの貴方からすれば、独り暮らし、恋人いない歴数年と言ったことが、一種の孤独賃となります。まあ、言ってしまえば、一人であった時があればなんでもいいのです」
なるほど、と俺は思いながら今まで、1人になっていた時期を思い出そうと頭を捻った。
「ちなみに貴方の孤独賃金は、累計19.572.000独です」
「どく?」
「はい。孤独の独、です」
「その独はどうやって換算されているんです?」
「それは、企業秘密ですよ。……まあ、それだけ貴方は孤独を謳歌していたのですよ。だから、累計が高い」
謳歌したことはないのだがと思ったが、いまは置いておくとして、俺の孤独賃とやらは、自分が思っていたより溜まっていたらしい。
そのまま円に直したらお金持ちとは言えないが、ゆっくり使えば何十年、パーっと贅沢に使えば1年?ぐらいでパーになる金額だと思った。
まあ、贅沢に使った事なんて人生一度もないと言えるが、質素な暮らしをしていたらそうだろう。しかし、お金があれば俺は薔薇色の人生は一生に一度だと思い贅沢に使う自信しかないが……。
後で日本円に変えたら、いくら位になるのか聞いてみよう……。
俺の考えをここでツラツラいうより、物語を進めた方がいいだろう。と言うことで、俺は重要な事を彼に訊ねてみた。
「それで? 情報料は幾らに?」
「物価によりますが、最低が20万独です」
「20万独!?……高価なものは?」
「1000万独です」
なるほど、そんなにするのか……。しかし、最低20万でも高いのに、高額1000万だとは……。
そんな狂いそうになる俺の金独感覚とは裏腹に、彼は言葉を続ける。
「この情報は、人の人生を変えてしまうようなものなのです。人間はあらかた道が決められているということはご存知ですか? それと同じで、孤独はいつまで経っても、いつになっても決まっているものなのです。……人生を変えるにはそれ相応な金額が必要なのですよ」
なるほど、人生はプライスレスってやつか……。
「ご説明はこのぐらいにして、質問をば。貴方は興味本位でふらっと立ち寄ったお客様です。そこで、貴方は今の孤独を変えたいと思いますか?」
「変える……とは?」
「言葉のままですよ。両親とは上京して別居暮しであり、彼女は居ない。というよりいたことない。そして実質、一人暮らしな貴方です」
言葉のまま、俺の今の生活を当てた彼の言葉を待った。
「今、一人暮らしという孤独を、変えて孤独ではない時間が欲しいですか?」
……別に俺は、一人暮らしを孤独だなんて思わない。しかし、それもそろそろ限界であると感じ始めてるのは、彼の言葉を聞いてからなのかーー今まで気にしていなかった甘ったるい匂いが、部屋中に増してきたような気がして、思考回路が麻痺し始めて来たーーそれともこの変な空間に飲まれているのかわからないが、俺は彼の問いに頷いた。
「そうですね。一人暮らしはもう孤独だ。出来たらいい人が欲しいな。そして、いつか家庭を持ちたい。…………孤独は、もう、耐えられない」
「そうですか。わかりました。私は貴方の孤独を買いましょう。そして、その買い取った孤独で、家庭が欲しいという貴方にとびっきりの情報を差し上げます」
* * *
気が付いたら、俺はとある女性と朝を迎えていた。
朝の日差しがカーテン越しに眩しく感じ目を細める。そして、俺は上半身を起こすと頭痛を訴えてくる頭を抑えた。
隣に居る女性は見覚えがないーーいや、彼女は俺の妻だ。名前は愛織。
5年前、ある街で知り合い、それから度々良く会うことになり、運命を感じ出会って4年目、俺は彼女に昨日プロポーズをした。そして、彼女も俺の気持ちに答えてくれた。
それからその日の夜、彼女を初めて俺の部屋に迎え入れ、その場の雰囲気でとてもいい夜を2人で迎えたのだ。そして、俺たちは先月結婚式を挙げたのだ。
今はまだ彼女と2人でいたくて、子供を作る気にはなれず、幾度目かわからないが、愛し合った後の朝の事だった。
そして、した後だというのに、頭は何故かはっきりと覚えちゃいない。だが、頭に覚えているのはさっき見た夢だった。
「さっきのは夢、だったのか? それにしても、現実だったような……」
「どうしたの?」
「ん、あ、あぁ、ちょっと不思議な夢見てたみたいで……」
独り言に反応した彼女は、眠たそうに目を擦りながら訊ねて来たので、俺はその不思議な夢を彼女に話した。
「ふーん。そうなんだ。でも貴方はもう孤独じゃないでしょう? だって、私がいるんですもの」
「そうだな。君がいれば俺は孤独じゃない」
幸せそうに微笑む彼女に、俺も微笑み返した。そして、彼女の額にキスを落とすと彼女は俺の好きな顔で笑う。
こんな幸せな時は、無いだろうと俺は思いながら彼女を抱き締め、変な夢を忘れようと彼女の匂いを嗅いだ。
ーーーーーー
なぁ、あんたは孤独屋を知っているかい?
そこで孤独を売ると幸せになると言われちゃいるが、孤独を売ったらどうなるか、なんて人それぞれあるが、あの彼は本当に幸せを掴んだみたいだな。
しかし、甘い汁を啜って幸せをつかむのは、俺には許し難い。だけど、甘い汁ってなんだろな?
……逆に孤独屋から孤独を買ったら、一体全体どうなるんだろうな?
そんな奴、見たことも聞いたこともねーが、どうなんだろうか。 まあ、そんなこと、オレには知ったこっちゃねーがな!
END
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
なんでリメイクしようと思い至った経歴は、なんとなくです。昔書いたものを、リメイクしてみたかっただけです。
この内容の他にも、一様書いてるのですが、
まだ、書き切れてないということで、切りのいい場所まで載せています。
また、年齢制限についてなのですが、男がモノローグに言っているとはいえ、不安なので念のためR15ぐらいにしてます。
そして、このジャンル……!一体全体どういったジャンルが正しいんだ??ということで、ノージャンルとして扱うことにしてます。
(可能であればコメントで、この作品はこのジャンルが似合ってるよって教えて欲しいぐらいです……)
あと、この作品に関して短編設定にしてるけど、もしかしたらシリーズ物にしてみたいとか思ってたりしてます。そのための設定とか内容について度々考えてたりしてます。とはいえ、未定ですが(笑)
それではまた、次の物語でお会い出来たらお会いしましょう(次があるのかどうかわからないけれど……)!!