25 救護
バン。
鈍い音がした。同時に右足が自由になり、反動で前へつんのめって倒れた。顔は避けたが、右肩を強く打ち付けた。立ち上がることもできず、尻餅をついたまま右足を見た。
オケラの頭から下が千切れていた。見上げるとサコタがショットガンを構えていた。
「乱暴だな、マミヤに当たったらどうするんだ」
橋山が眉をひそめた。
「当たらなかっただろ。問題ない」サコタは悪びれた風もなく、ショットガンを肩にかけ直した。「時間がないんだ。早く行くぞ」
心臓が激しく鼓動し、体が震えていた。虫に襲われ、足下を散弾が通り過ぎていた。そんな事実を飲み込めないでいる自分がいた。
「大丈夫」
祐美恵が背中に触れてきて、少しだけ落ち着いてきた。すると急に右肩が熱くなっていき、右手の指先まで痺れを感じてきた。
オケラの頭が目に入る。触るのも汚らわしいので、左脚で蹴りつけてはずそうとしたが、牙はがっちり裾を挟んだまま離れなかった。
「だめね。ちょっと待って」
祐美恵がリュックサックからナイフを取り出し、牙の周りの布を切り取っていく。その顔からは、嫌悪や恐怖といった表情は読み取れなかった。彼女の表面にある、見えない殻を意識する。
淡々と作業を終えた祐美恵はナイフを鞘に収め、立ち上がった。
「ありがとう」
その言葉に、祐美恵は軽く頷くだけだった。
右肩を動かしてみる。ひどい痛みを感じたが、骨は折れていないようだった。ただ、クーラーはとても掛けられなかったので、左肩にクーラーを掛け、更にその上へショットガンを掛けた。
「さあ行くぞ」
当初決められたとおり、先頭をサコタ、次に橋山、私、祐美恵、フルタ、ミヤギの順番で歩き出した。