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  作者: 青嶋幻
17/35

17 ミーティング(1)

 橋山の電話を待つ日々が続いた。正直仕事なんて手につかなかったが、下手に休んで周囲に不審がられるのもまずい。一旦北海道へ戻り、通常通り仕事をした。橋山から電話があったのは翌週になってからだった。


「今日の仕事は終わりましたか」


「それより結果はどうなんだ」


「予定が決まりましたよ。決行は二週間後の水曜日。打ち合わせや訓練も必要ですから、その前後一週間は、休みを取っていただきたい」


「わかった」


 私は久斗の療養を兼ねて、長期の旅行に行きたい旨を申し出た。二週間という期間に上司は難色を示したが、最終的には了承してくれた。


 橋山とは新宿で待ち合わせをした。車に乗せられ目隠しをさせられる。時間の感覚さえ忘れてしまう状況の中、車に揺られ続け、ようやく目を開けた時、周囲は雪に包まれていた。


「ここはどこよ」


「それを言ったら目隠しして連れてきた意味がないでしょ」周囲を見回す祐美恵に、橋山が笑いながら答える。「さあ、降りてください」


 新宿とは寒さのレベルが違った。私は北海道で慣れてものの、厚着をしてこなかったのでかなり寒い。祐美恵も腕を組み、体を震わせている。


「お二人にはここで銃の取り扱いを学んでもらいます。それに他のメンバーもいますので、顔合わせと細かい打ち合わせもここでやります」


 目の前に木造作りの平屋の家が建っていた。小洒落た外観はいかにも別荘といった印象だが、築年数が古いようで、かなりくすんで見えた。橋山は中へ入っていく。私たちも後へ続く。


 屋内は暖房がかなり効いていてた。寒さで強ばった筋肉がほぐれていく。リビングへ行くと、三人の男女がいた。一人はノーネクタイのスーツを着た大柄のスキンヘッドで、ソファに寝そべりタバコを吸っている。

 テレビに映し出されているバラエティー番組を笑いもせず見ていた。表情に乏しい顔で私たちを見た後、再びテレビに視線を戻す。


 もう一人は背が低く、ベージュの作業着を着ていた。童顔でメガネをかけ、私たちを見ることもなく、熱心に雑誌を読んでいる。


 最後の一人は女でまだ若い。腕と足を組んで、半ば睨むような目つきで私たちを見つめていた。髪の毛は短く切り、肩幅が広かった。室内が暖かいとはいえ、半袖のシャツを着ているのは、男並みに太い腕を見せつけるためなのか。


「さあみんな注目してくれ。今回のプロジェクトメンバーが揃った。まずは自己紹介からだ」


「ミヤギだ」


 スキンヘッドが一言発言し、再び沈黙する。


 童顔が雑誌から顔を上げ、きょろきょろ辺りを見回す。


「フルタです。よろしく」


「サコタよ」


 間髪を置かず女が発言した。


「マミヤです」


 私はとっさに偽名を言った。


「マミヤの妻です」


「あんたさあ」サコタが馬鹿にしたような苦笑いをする。「〈マミヤの妻〉だなんて言いにくいじゃん。どうせ偽名なんだから、別の名前にしてよ」


「そうだな、旦那がマミヤなら、あんたはマカベにしといたらいい」


 橋山の提案に、祐美恵は戸惑いながらも頷いた。


「ところで、結局あんたも半島へ行くことになったの」


「ああ……。この舞台を統括する人間が必要だからな」


「ふうん。結局行く奴がいなくてあんたに押しつけられたって訳ね」


「そんな話はどうだっていい」


 いらついた顔でぶっきらぼうな声を上げたが、明らかに目の奥が不安げに揺れていた。サコタは薄笑いを浮かべた。

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