1話:努力
無気力すぎる声が彼の家に響き渡る。
「あー、やる気なくすわー、ただでさえやっすい給料だっての最近はなんでこうも強い奴ばかり現れるんだ?」
そんな無気力すぎる声の持ち主は、ゴブリンの"ゴブロー"。
自分たちの王、"魔王"を倒さんとする勇者たちから毎日"最初の洞窟"を守っているどこにでもいるゴブリンである。
(今日も出勤の時刻だ…毎日毎日"最初の洞窟"ばっかり守らされて今日でもう5年だぜ…?そろそろ昇進させてくれても…)
そんなことを思いながら走って職場である"最初の洞窟"まで走る。
「オッス!おはよう!ゴブロー!」
「おう…」
この馬鹿で妙にハイテンションなやつは俺の同期、"ゴブタ"だ。
「なんだよ、元気ないじゃん?」
「お前馬鹿か?今日でこの"最初の洞窟"に勤めはじめてから5年だぞ!?」
「だから?」
「ああ…いやなんでもない」
今日もいつも通り"最初の洞窟"を守り続ける。といっても大抵のやつはすぐに抜けてくんだけどな。
「なあゴブロー、最近異様に強い勇者つよくねえか?」
「ああ、なんかエルフたちの間でも噂になってるらしいぞ」
「まじか、なんなんだろうな?」
「さあ、それよりお前サボるなよ」
いつもこうやってゴブタは雑談をするばかりで全然仕事をしない。
俺が昇進できないのもこいつのせいだといつも思う。こいつのぶんの仕事を全部俺がやってるからだ。
こんな話をしてる間に勇者がきた。
そもそもあんなところに転送ポイント置くなよといつも思う。
「おい、あいつ女を三人つれてるぞ」
「まじか…それはやばいな」
最近はとてつもなく強い勇者が続出している。特徴といえば、女をたくさん連れていることだ。
「グワー」
今日も負けた。
「ああ…今日もつかれたー…」
おおきなため息をつきながら冷蔵庫を開ける。
帰宅したらコーラを飲みながら漫画を読むのが俺の日課だ。
「俺もこいつらみたいな強いゴブリンになりたいな…」
でも才能がない俺には無理な話だ。
「暇だし、いつも読まなかった熱血漫画でも読むか…」
熱血とか努力とかはあんまり好き"じゃなかった"。
そう、この漫画を読むまでは…
「ふーん、まあまあ面白いじゃん。ん?主人公の名前が"ゴブロー"!?俺と同じ名前じゃねえか!もしかしたら俺も努力すればこの漫画の主人公みたいになれるかも…」
「いや、ないないない!俺がどんなに努力してもこいつにはなれねーよ!!」
投げた漫画をチラっと見て思った。
(思えば俺って真剣に努力したことなかったな…いつも才能がないからって中途半端だったし…)
ゴブローは投げた漫画を拾い、もう一度読んだ。
読んでるうちにゴブローはなにかが心のそこからこみ上げてくる感じがした。
「ちょっとぐらいやってみるか…努力!」
つづく…




