三話 一員
「ここが、変態からこの街を守っている変態撲滅協会です」
目の前には大きなビルがあった。
「こっちです」
そう言って彩華ちゃんは歩きはじめた。
え、ええ。そっち? しかし、彩華ちゃんが向かっているのは二階建ての喫茶店のように見える。
「こっちの大きなビルじゃないの?」
彩華ちゃんは不思議そうに僕を見ている。何かに気づいたのか彩華ちゃんは表情を緩めた。
「そちらも、変態撲滅協会のビルですが、皆がいるのはこっちです」
そう言って二階建ての喫茶店の様な所を指差した。
「そのビルについては後で説明します。その前に皆に会いに行きましょう」
そう言って歩き始めた。
それを追うように僕も歩きだした。
彩華ちゃんが一つのドアの前で止まった。
「心の準備はいいですか?個性的な人が多いので......」
僕は心の準備など出来ていなかったがどんな人たちかが気になって頷いた。
ギィーっとドアがゆっくり開いた。
「皆、昨日話した澄川さん連れてきたよ」
彩華ちゃんがそう言うとドアの向こうにいた人達が一斉に僕を見た。
「わー、新入りさん?」
「なんか、弱そうだね」
「そう言うことはあまり言わない方が......」
「なんだ!? なんだ!?」
僕について色々と話している。
彩華ちゃんが喋りはじめた。
「ちょっと皆、自己紹介でもしたらどうなの? 後、弱そうとか言わない!
私が見る目ないみたいじゃない!?」
気を使って僕をフォローしてくれたのかな?
「じゃあ、俺からな!!みんなからはなっちゃんって男なのに何故か呼ばれてるぞ。
お前もそう呼んでいいぞ!!? よろしくな!!」
なんか、元気な人だな......
「え、えっとよろしく願いします。な、なっちゃん?」
「そいつ......馬鹿だから、気にしなくていいよ........」
白髪の人が喋りはじめた。
「僕はソル......よろしく」
「あ、うんよろしく」
ソルさんは人と話すのが苦手なんだろうな。僕も同じだから気持ちがよくわかる。
ソルさんが小さく口を開いた。
「ステラ......お前も自己紹介しないと......」
「どうして、僕もしないといけないのかな?」
「いや......普通に考えて、」
「うん? よく分からないけど......まあ、いいよ。
僕はステラよろしく頼むよ」
ステラさんは少し不思議そうにそう言った。
「よ、よろしくお願いします」
今度は少年と少女が自己紹介をしはじめた。
「私は由美よろしくね、おにいちゃん」
「お、俺はタケルっていいます。よろしくお願いします!!」
「僕こそ、よろしくね」
さっきから思っていたけど、みんな若いな。
まだ、二十歳にもなってないように見える。
すると彩華ちゃんが口を開いた。
「一通り、自己紹介は終わったようね。まだ、全員じゃないけれど.......
あっ私の事は知ってると思いますけど姫宮 彩華です。
澄川さんと同じ高校ですよ、気づいてないと思いますけど、私は高校一年です」
少し誇ったように彩華ちゃんは言った。
「え、ええ!そうだったんだ。気づいてなくてごめんね、
あ、あと敬語はずしていいからね」
「あ、なら外すね。それと、澄川って呼ばせてもらうね。
これから、よろしく」
こうして僕は変態撲滅協会の一員となった。