一話 変態ジャージ
誰かの笑い声が聞こえた。
女の人の叫び声も聞こえた。
だ、誰か変態に捕まったのかも.......
僕はビビりだ。でも、きっと捕まった人は助けを求めてるかも・・・
でも、変態撲滅協会の人がきっと助けて......そんな早く来るはずがない。
僕が逃げたらだれが助ける。怖くても行くんだ!
「お、おい、変態っ! そ、その人を離せ!!」
ジャージ姿の変なおじさんが振り向いた。
「何を言っている!? 私は変態ではないっ。私のパンツは白色だぁぁ!!!!」
この人は何を言っているんだ、見た目は普通だが、、、
やはり、話が通じない......って、なんか変な動きしてるけど、どうしよう、
変態だけど攻撃してこないからなぁ、
それに僕、別に変態撲滅協会の人じゃないし、
やめろとしか言いようがない、うーんどうしよう。
その時目の前に何かが通った気がした。
女の子?なんでこんな所に、
それにいつの間に......
僕は訳が分からずあたふたしてたらその子が話し始めた。
「あの、なんでここにいるんですか? 一般人ですよね。早く逃げてください」
いやいや、そうだけどそうじゃないじゃん!?
「君も逃げなくちゃ、女の子でしょ? それに困ってる人がいるから.......」
あれ、変なこと言った?めっちゃ見られてるけど・・・
うーん、言葉って難しいなぁ~じゃなくてっ!
「私は大丈夫です、変態撲滅協会なので」
うぇええええ!? こんな女の子が?
ありえない、もっとムッキムキの人だよ、じゃなきゃ変態撲滅できないよ!?
ヒーローごっこなのかな? 止めないと!
「危ないからやめっ」
その時、少女が飛んだ。
空越しに見えた彼女は軽やかで優雅に羽ばたいている鳥ように見えた。
トンッと軽やかに降りた彼女は素早くしゃがみジャージの変態を蹴り飛ばした。
そして、女の人をお姫様抱っこ。
あの子が男だったら絶対女の人惚れただろーな、とのんきなことを考えている場合じゃない。
ジャージの変態を蹴り飛ばした!? ありえない60キロはあるはずだ・・・
まさか、本当にこの子が撲滅協会の人?
その彼女は女の人を降ろすと微かに笑った。
何やら、女の人にお礼を言われているようだ。
ああ、こっち見た。
彼女が一歩一歩僕に近づいてくる。
とっさに、身を引いてしまった。
彼女の口が開いた。
「私の名前は姫宮 彩華です。あなたは?」
突然の自己紹介に戸惑いつつも僕は自分の名前を言った。
「え、えっと澄川 紅雪です」
ふーん、と興味なさそうにいった少女、姫宮はまたしゃべり始めた。
「澄川さんは、澄んだ川って書くの?」
え、ええいきなり何だ?
「まあ、そうだけど......」
「じゃあ、こうせつってどういう字?」
「ええっと、くれないにゆきって書いて紅雪」
「おいしそうですね」
そう言って彼女は微笑んだ。
何がおいしそうなのかはよく分からないがまあ、楽しんでくれたんならいいか。
笑い終わった彼女の口が開いた。
「ねえ、あなたの事、澄川さんって呼んでもいいですか?」
「何て呼んでもいいよ」
別に、今後会うことないと思うから、、、
それでも、彼女は少し嬉しそうに笑った。
「私の事は彩華って呼んでくださいね」
そう言うと、少し息を吸ってまた口が開いた。
「ねぇ、私と一緒に変態を撲滅しましょう?」