1話の1
『きたれ! 非公式野球部、新入部員大歓迎!』
新入生が心踊らせる四月。それはオレ、佐々木和真も同じで。
部活の紹介チラシが並んだ掲示板の中。
それはあった。
「――非公式野球部?」
文字が大きく書かれた貼り紙。
申し訳程度に描かれたバットとボールのイラストは、確かに野球のものだったが……非公式ってなんだ?
硬式とか軟式とかなら分かるが、非公式……。部じゃなくて同好会とか、そういう事か?
「もしもし」
「?」
後ろから声をかけられた。
電話でもないのに、その呼びかけであってるのかは謎だけど。近場にオレぐらいしかいないから、オレ宛てなのは間違いない。
後ろに立っていたのは知らない生徒だった。
ネクタイの色は赤。三年生の学年カラーだ。上級生か。
「もしかして、非公式野球部に興味ある?」
「興味というか、なんだろうとは思いましたけど……」
「野球好き?」
「まあ、好きですけど。中学では野球部でしたし」
「おぉ! 経験者!」
見知らぬ上級生の顔がパッと輝いた。なんなんだ、この人。
「よし、行こうか!」
「は? え、ちょっ……どこに!?」
腕を引っ張る謎の人を振り払おうとしても、力が強くてどんどん強引に連れてかれる……!