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第1章(3)

シナリオのように読んでください。

田中夫妻は、顔を見合わせた。


好子「奥さん、顔中血だらけだったわね」


田中「額に鋭い刃物で刺されたような傷が

あったぞ」


好子「きっと亭主が刺したのよ。だって、

奥さんが、『あなたにズタズタに切り裂

かれた』と言っていたじゃない」


田中「亭主の顔にも、引っかかれたような

ミミズ腫れがあったぞ」


好子「きっと、奥さんが亭主に刺されまい

として必死で抵抗したのよ」


田中「奥さんは、びっこを引いてまともに

歩けない様子だったな」


好子「きっと、亭主が奥さんを

蹴飛ばしたのよ」


田中「動機はなんだろうか。初めに奥さんが

怒鳴る声が聞こえてきたが」


好子「亭主が浮気したのよ。昔のあんた

みたいにね」


田中「その話はいい加減に止めたらどうだ。

もう20年以上も前の話だろう」


好子「ふん、あんたが死ぬまで言い続けて

やるわよ」


田中「お前って奴は、ほんとに執念深いな」


好子「執念深くて悪かったわね。あんた

なんか都合の悪いことは、すぐに忘れて

しまうんだから。もうボケがきてるから

思い出させてあげてるのよ」


田中「警察に連絡しなくても大丈夫だろうか」


好子「奥さん、まだ元気そうだったから、

もし、必要なら自分で警察を呼ぶわよ。

プライバシイを侵害しないほうがいいと

思うわ」


田中夫妻は、隣の家に戻っていった。



 彩夏は、キッチンにはいり、テーブルに

おいたパソコンの前のイスに座った。

 左手に持ったハンカチで額を押さえ

ながら、また検索を始める。

 血が止まらないのかハンカチが真っ赤に

染まっていく。


 彩夏は、気になるサイトを発見すると、

それを手じかの折り込み広告の裏の白地に

次々とメモをとる。


 彩夏は、アダルトサイトに行き当たって

とうとう感情が爆発した。


 彩夏は、突然立ち上がると、玄関に行って

靴箱から村田の革靴やスニーカーを5、6足

取り出し、玄関のドアを開けて、

家の外の道路につぎつぎと放り投げた。

 玄関の片隅においてあったゴルフバッグを

やはり外に放り出した。


 キッチンテーブルの上の血で赤く染まった

村田のハンカチに気付くと、それを持って

玄関に引き返し、それも外に投げ捨てた。


 彩夏は、玄関の鍵のシリンダーを回して

ロックするとドアにチェーンをかけた。

 それから、台所に行くと、同様にドアを

ロックして、チェーンをかけた。

 また、家中を回ってすべての窓に錠を

下ろして、厚いカーテンをひいて、外から

家の中が見えないようにした。

 

(アイツが、どんなに泣き叫んでも今日は

絶対に家に入れてやらないから)


 彩夏は、そう心に決めた。

 彼女は、二階に上がると、村田が外から

帰ってきていくら懇願こんがんしても、

聞こえないように、耳に大きなイヤホーン

をつけると、音楽のボリュームを一杯に

上げた。

 

 彩夏は、畳の上に横たわって目を閉じる

と毛布を頭からかぶった。

 彩夏の耳に頭の芯を揺るがすような

音楽が鳴り響いている。


 

 村田は、家から5分ばかり駅のほうに

よった蕎麦屋に入った。

 妻が外出して家に居ないときに、時々

利用している。

 店に入ると、クーラーがきいていて、

汗だらけの体の不快感がすこしまぎれた。


 村田は、生ビールと枝豆とカツ丼を注文

した。

 本来ならば、家でシャワーを浴びて、

スッキリして、ビールを飲みながら、

昼間の事件の憂さを晴らしているはず

だった。

 いまは、昼間の事件の憂さを晴らす

どころか、新たな難問を抱えてしまった。

 世の中、ある事が最悪だと思って

いても、さらに輪をかけた最悪の最悪

という事がでてくるのだ。

 おかげで、生ビールがすこしも

うまくない。


 生ビールを飲み終わるとカツ丼が

でてきた。

 彼は、紅しょうがの入って

いるビンを取り上げた。

 カツ丼に紅しょうがをたっぷりかけて

食べるのが好きだ。

 村田が、そのビンを元の位置に戻そう

としたときに、空になった生ビールの

ジョッキを取りに来た若いウェイトレス

の手にビンがぶつかった。

 彼女は、村田の顔の血がにじんだミミズ

腫れにすっかり気を取られていたようだ。

 ビンの中の紅い汁をたっぷり含んだ

紅しょうがが、半分ほど彼のワイシャツの

うえにボトリと落ちた。

 

ウェイトレス「わあ、すみません」

 

 彼女は、妙に明るい声でいうと、

おしぼりをつかんで、ワイシャツの

紅しょうがをふき取った。

 ワイシャツが、紅しょうがの汁で

真っ赤に染まってしまった。

 ウェイトレスは、あせってさらに

おしぼりでワイシャツをこすりまわるので

その紅い範囲がどんどん広がっていく。


村田「もういいよ」


 村田は、ウェイトレスからおしぼりを

奪い取った。


(チキショウ、女という女はどうして、

この俺に意地悪をするのだろう)


 村田は、最近酔った勢いで、面白半分に

駅前に小さな机を出して、営業している

易者に運勢を見てもらったことがある。

 胡麻塩頭ごましおあたまにちょこんと

小さな黒いぼうしをかぶり、ちょび髭を

はやした、とぼけた顔の易者が彼の手相を

見ていった。


易者「あなたは、女難の相がありますね」


村田「そんなにもてますか」


易者「あなた、女難の相といったって、

必ずしも、もてるとは限りませんよ」


村田「それでは、どういうことなのですか」


易者「女には気をつけなさいということですよ。

そのうちおいおい判るでしょう」


 易者は、そういうとローソクのゆらゆら

揺れる薄暗い明かりの中で、ニヤリと気味

悪く笑った。


 (あの易者の言ったことが、だんだん現実

になってきている)


 村田は、やけくそになってカツ丼を腹に

かきこんだ。


続く



 




 



 


 


 

 











 






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