第3章(4)
田中「私が村田さんに聞きました。
『なんかあったんですか』すると村田さんが
『いえいえ、ちょっとテレビの音を大きくしすぎまして、
ご迷惑をおかけしました』と言いました」
好子「それから、奥さんが玄関から足を引きずって出てくると
額から血を流しながら叫びました。
『体を引き裂かれたわ。もう死んで化けて出てきてやるから』
と言って、家の中に入りました」
刑事は、身振り手振りを交えながら彩夏のその後の行動を
推測して説明し始めた。
刑事「奥さんは、よろよろと家の中に戻ってきた。
そして、彼が入れないようにドアにチェーンをかけた。
しかし、もう立っているのもやっとだ。
額からはひっきりなしに血が噴出している。
部屋に戻ると、バッタリ倒れこんで、そこで意識を失う。
しばらくして、家の電話が鳴って意識が戻るが、
もう立ち上がることも、ましてや、電話に出ることも出来ない。
助けを求めなくては・・・しかし、もう声も出ない。
血がどんどん流れていく。体温が下がって、体が冷たくなってくる。
そして、出血多量でとうとう死んでしまった」
刑事は、そういい終わった後、しばらく考えていた。
刑事「俺の灰色の脳細胞がすこし変だといっているな」
巡査「どこがおかしいんですか」
刑事「ワトスン君、我々は重大な事実を見逃してるよ。
明々白々な事実をね」
ゆり「ポアロからシャーロックホームズに代わったみたいね。
プラットホームほどにも役に立たない頭脳しかもっていないのに」
巡査「私にはわかりませんが」
刑事「周りを見回してみたまえ」
巡査が辺りをキョロロキョロ見回すがわからない。
刑事「ワトスン君、ここにある血染めのハンカチ、数足のくつ、
ゴルフクラブ、これは何を意味するものか。
いまやったビジュアルのなかで出てこなかったじゃないか」
巡査「確かに。では、何時、外に出されたんでしょうか」
刑事「いいところに気が付いたね。それが事件解明の重要な
手がかりになるはずだよ。
まず、証人に訊いてみよう」
刑事は、田中夫妻に訊いた。
刑事「田中さん、村田が最初に逃げ出した時に、血染めの
ハンカチやくつやゴルフバッグに気が付きましたか?」
田中「わたしは、気が付きませんでした。お前はどうだ」
好子「あなたなんか、眼鏡をどこに置いたかも思い出せないくせして」
刑事「じゃあ、あったのですか」
好子「ありませんでした」
刑事「物事をややこしくしないでくださいよ。
では、村田が家に戻ってきてチェーンがかかっていると
騒いだ時には、血染めのハンカチやくつやゴルフクラブ
は外にあったのですね」
田中「あったような気がします。お前はどうだ」
好子「あなたなんか、昨日の夕食に何を食べたかも
思い出せないくせに」
刑事「じゃあ、なかったのですか」
好子「もちろん、ありましたよ」
刑事「いい加減にしてくださいよ」
巡査「では、誰が出したんでしょうね」
続く
旅行に行くため少しお休みします。