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第2章(5)、第3章

 派手な塗装をした

軽自動車のバンが通り

かかって、停車した。

 人が集まっている

のを見て、停まった

らしい。

 黄色い制服に、

黄色い帽子を

かぶった中年の男が

降りてくると、

バンの後ろのドアを

開けた。

 そして、何か準備

を始めた。

 バンの横には、

(たこ焼き)と

大書されている。


朱美「あら、いつも

駅前で営業している

たこ焼き屋だわ。

あのたこ焼き、

すごくうまいんだ」


らっきょ「そういえば

赤ん坊を病院で見て

もらってから、何も

食べていなかったな」


朱美「よし食べよう。

ビールも欲しいな。

おまえ、ちょっと

走って行って、

近くのコンビニで

皆さんの分も買って

きな」


らっきょ「お金は」


 朱美が財布から金を

出してらっきょに手渡

した。


らっきょ「おまえらも

ビール飲むか」


池田「飲む、飲む」


杉村「俺の分も頼む」


 らっきょが、ビール

を買うために駅前の

コンビニに向かって

走って行った。


ゆり「屋台のたこ焼き

なんか不衛生で食べら

れたもんじゃないわ」


朱美「食いたくない奴

は、食わなくても

いいんだよ。

上品ぶりやがって」


ゆり「ふん、育ちが

わかるわ」


池田「おいやめろよ。

ムチで叩かれるぞ」


ゆり「あなたは、

意気地がないんだ

から。

だから、あそこも

いじけてるのよ」


池田「こんなところで

言う話か」


朱美「育ちのいい女

が聞いて呆れるよ。

あんたには安部定も

はだしで逃げるわ」


 その時、朱美が

背中に負ぶっている

赤ん坊が突然泣き

始めた。

 朱美は、背中から

赤ん坊を下ろして、

前にだくと、

キャミソールを

さげて、おっぱいを

やり始めた。


ゆり「まあ、恥ずか

しい」


朱美「母親はね、

子供のためなら

恥ずかしいなんて

言ってられない

んだよ」



杉村「きみ、覚えて

いるかな」


早苗「なあに」


杉村「むかし、一緒に

映画見た帰りに、

たこ焼きを食べたじゃ

ないか」


早苗「そう、ベンチに

座って、映画の話を

しながらね」


杉村「なんの映画

だったかな」


早苗「あら、もう

忘れたの。

タイタニックよ」


杉村「そうだ。

タイタニックだ。

思い出した。

音楽がよかったな」


早苗「私は、最後に、

デカプリオが

恋人を助けて、

自分は死ぬところに

感激したわ」


杉村「女性って、

いつも男が死を

もって愛を貫き通す

純愛を求めて

いるんじゃないかな」


早苗「だって、

そんな風に

愛されたい

じゃないの」


杉村「タイタニックの

ヒロインだって、

宝石はもらって、

自分は生き残って、

結婚して、子供も孫も

いるんだから。

そして、最後に、

『ああ、あの人は

いい人だったわ』と

感想を述べてそれで

終わりだからね。

なんか、不公平

じゃないかな」


早苗「映画の中だけ

の話よ。

現実は、男なんて

純愛どころか、

わたしの父みたいに

すぐに浮気を

するんだから」


 らっきょが、

コンビニの

ビニール袋に入れた

ビールをもって帰って

くると、仲間に一本づつ

渡した。

ゆりと早苗も、

受けとった。


池田「俺が、たこ焼き

を買うから」


杉村「おれも払うよ」


ゆり「たまには、

庶民のものも

食べてみようかしら」


朱美「ふん、気取り

やがって結局は食べる

んじゃないか」


 みんなで、ビールを

飲みながらたこ焼きを

食べ始めた。


 そこに、一旦家に

帰っていた健二が

戻ってきた。


高橋「ちゃんと

ドアにカギを

かけてきたか?」


健二「忘れるわけ

ナイキなんちゃって」


信子「健二、お腹が

すいてない」


健二「腹すいて

ないわけナイキ

なんちゃって」


高橋「すっかり、

スニーカーが

気に入ったようだな」


信子「夕食まだ食べて

ないから、とにかく、

たこ焼き3人前買って

食べましょうよ」


高橋「ビールは?」


信子「ビールはだめ」


 高橋、信子、健二の

親子三人がたこ焼きを

買って、食べ始めた。


好子「あなたたこ焼き

食べる」


田中「たこは、消化が

悪いからな」


好子「じゃあ、

私だけ食べるわ」


田中「おいおい、

おまえが食べる

のなら俺も食べるよ。

事件はまだ終わり

そうにもないからな」


救急隊員「死体の搬出

までもう少し時間が

かかりそうだから、

おれたちも

たこ焼きをたべるか」


第3章



 屋根の上にパラボラ

アンテナを載せて、

胴体にJAC TVと

書いた大型の

ワンボックスカーが、

近くに急停車するや

いなや、マイクを

もった女性レポーター

と大きなビデオカメラ

をもった男が車から

飛び出してきた。


 ピンクの

ノースリーブの

シャツに白い

チノパンツをはいた

美人のレポーターが

制服の巡査のところに

駆け寄った。


レポーター「視聴者の方

から近所で殺人事件が

起こったという連絡が

はいったものですから、

他局にさきがけて、

早速駆けつけたん

ですが、ここが

その現場ですか」


巡査「その向かいの

家がそうです」


 私服の刑事が、

巡査を前に出ると

言った。


刑事「私は、殺人課の

刑事で、この事件を

担当しております。

この事件に関しては、

すべて私にお聞き

ください」


レポーター「わかり

ました。

では、すぐに

インタビューを

はじめますから、

よろしく

お願いします」


  話を聞きつけた

近所の人たちが

つぎつぎと集まって

きて、付近は野次馬で

一杯になった。


 たこ焼き屋は、

大繁盛している。


たこ焼き屋「こんなに

うまくいくとは思わな

かったな」


 どうやら、TV局に

情報を提供したのは、

このたこ焼き屋らしい。


 レポーターが、

ビデオカメラの

前で、ポーズをとって

しゃべり始めた。


レポーター「殺人事件

の現場から中継いた

します。

この向かいにある家

の中で、容疑者の妻が

全身血だらけになって

惨殺された模様です。

容疑者は、もう既に

逮捕され、手錠をかけ

られています。

担当の刑事さんに、

インタビューして

みたいと思います。

刑事さん、この事件は

何時ごろ起きたの

ですか?」


刑事「犯行時間は、

6時15分から

6時30分の間に

起こったものと

推定されます」


レポーター「犯行時間

は、そんなにはっきり

しているのですか」


刑事「そうです。

容疑者が帰宅した

のが6時少し過ぎ。

その後、すぐに二人が

激しく口論するのが

証人によって確認され

ています」


レポーター「激しい

口論の内容は何で

しょうか」


刑事「どうやら、

容疑者が

浮気したことを

奥さんが、

携帯電話のメール

の記録から知って、

なじったよう

ですね」


村田「私は、浮気

なんかしてませんよ。

それに人の携帯を覗き

見するなんて最低だと

思いませんか」


刑事「覗き見の件に

ついては、私も同感し

ますが、あなたは、

容疑者なんだから

少し黙って

いてください」


レポーター「浮気で

激しい口論になった

というのは、

理解できますね。

うちの宿六も女と

見れば、さかりの

ついた犬みたいに

すぐに尻尾を振り

やがって。

(カメラマンに

向かって)

あ、ここは、

編集の時に

カットして

くださいね」


刑事「激しい口論の

さなかに、奥さんが

『きゃー痛い』と

絶叫をあげた

のを証人が、聞いて

います」


村田「チキショウ、

家のなかに盗聴器

でも仕掛けてるん

じゃないか」


刑事「あなたは黙って

いなさい。

話は、後で尋問の

ときにゆっくり

訊きますから」


レポーター「奥さんは、

その時すぐに死んだ

のですか」


刑事「いや、その時

にはまだ死んで

いませんでした。

その後、容疑者は、

逃げるように

家から飛び出すの

ですが、すぐに

奥さんがびっこをひき

顔から血を滴らせ

ながら、家の外に

出てきて、容疑者に

向かって

『体をずたずたに

切り裂かれて、

死にそうだ。

死んだら、化けて

出てやる』と

叫んだのを証人が

目撃しています」


レポーター「刺された

時には、まだ、死んで

いなかったのですね」


刑事「そうです。

まだ死んでは

いませんでした。

奥さんは、家に戻ると、

容疑者が入って来れない

ように、ドアに

チェーンをかけた

のです」


レポーター「奥さんは

体中をめった刺しに

されながら、

気丈にも家に立て

こもった

わけですね」


刑事「奥さんは、

どこからも

容疑者が侵入できない

ように家を密室にした

うえで、ついに

力尽きて、死んで

しまったようです」


レポーター「悲しい

話ですね。

浮気されたうえに、

それを

謝られることもなく、

逆に浮気男に殺されて

しまう。

なんて、この女性の

人生は哀れなので

しょう」


刑事「最近は、

このように

すぐに切れやすい男の

犯行が増えているの

ですよ」


レポーター「うちの

宿六にも気をつけ

ないと、あいつ時々

変にキレルから

危ないのよね。

(カメラマンに

向かって)

あ、ここんとこ

カットしておいて

くださいね。

では、死体は、

まだ家の中にある

のですね」


刑事「鑑識の仕事が

終わり次第、

家の捜索

を開始します。

いましばらく、

お待ちください」


続く









 

 


  




  





















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