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部活

病院搬送(はんそう)シーンを撮影して数日後、2学期の修了式が取り行われた。


皆、思い思いの夏休みの予定に()せ、その日ほとんどの生徒が浮かれていた。


そして、この雰囲気に飲まれてない人がいた。

もちろん葵である。


葵はこの後、パソコン部室にてパソコン部製作のゲームに登場するキャラクターの声あてを行わなければならなかった。また、収録に加え、配布の為の準備等があるため7月から8月中旬はじめくらいまで予定が詰まっている。


その上、8月中旬にはテレビアニメのオーディション、下旬には12話の撮影がある。

また、もしテレビアニメの出演が決まった場合、夏休みの自由時間はごっそり削られるだろう。

そしてここで忘れていけないのは夏休み恒例(こうれい)の課題である。

取れる休みは(すずめ)の涙くらいというのは葵にとって既に想定済みである。


ただ、それは夕日もさほど変わらないため、不満を漏らすことはできない。


起用側は学校のことも考慮しなければならず、夕日を起用しようとしても逡巡(しゅんじゅん)してしまうのだ。

このため、この(うれ)いがない長期休暇は夕日にいろいろな仕事が舞い込みやすい時期である。


妹の夕日が毎年忙しそうに活動しているのを尻目に自堕落(じだらく)な生活をしていたのだから反論もない。

ただ粛々(しゅくしゅく)と日々の予定を消化するのみである。






「久、これで録音するのか?」

「ああ。今の所それしかマイクないんだ。」


葵が録音に使用するマイクを見て怪訝(けげん)な顔をした。

無理もない。パソコン部の備品は何台もの高性能なパソコン、音源用の楽器、プロジェクター、プロジェクター用スクリーンなど様々な物が不必要に(そろ)っている。

しかしながら、先代達はどうやらゲームに声を吹き込むというのはやっていなかったらしい。マイクは安価なスタンドマイクかヘッドフォン一体型のマイクしかなかった。

そのうちのスタンドマイクを1つ渡され、葵はどうしてこれだけの機器の中、恐らく性能的に最低ラインなマイクを(いぶか)しんだのである。


「今度、新しいマイクでも買うか。」

「いっそのこと、本格仕様のを買わないか?きっとおもしろいぞ。」


久のアイデアにのっかかったのは晃である。

音楽担当の晃なので、将来的に声のある歌も作りたいのだろう。

最近、しつこく部員に説得しているらしい。



「とりあえず無い物ねだりは止めにして、さっさと録音するぞ。」


そう言ったのはテキスト担当にして唯一の女性、3年香山 碧(かやま みどり)である。

少々クールビューティーが入っており、長い黒髪も相まって学校では女帝と呼ばれる程の人物である。

入部理由は2歳年上の兄が無理矢理入部させたからである。

唯一のテキスト担当の為、部員が退部を引き留め続け、現在まで在籍している。


今回、シナリオライターとして演技を監督するために居る。

他の3年はどうやら今までの高校生活の自由奔放(ほんぽう)さから来る自業自得を味わっているそうな。

勉学が(おろそ)かになっていたらしい。ご愁傷様(しゅうそうさま)である。


かくいう葵も1学期の成績を見て青ざめたレベルである。

もし、補習があったらどんな夏休みになっていただろうか……。



「準備終わったから録音よろしくー。」






帰宅すると、既に時間は8時をすでに回っていた。


「ただいまー。」

「おかえりー。」


返ってきた声は夕日のみで、察するにどうやら父はいつものごとく仕事で、母も今日は夜まで撮影らしい。


居間に行くとせっせとテレビ前でなにやらやっている。

居間に入ってきた葵を見ずに夕日はその作業を続けている。


「今日のご飯は私が作ったから。風呂も沸いてるよ。」

「先に風呂入ってくる。」

「うん。いってらっしゃーい。」


夕日が何をしているか気にはなったが、とりあえず疲れを取るために風呂に入ろうと決めた。






風呂からあがるともうすぐで9時になるところだった。


居間に戻ると、妹がにこやかな笑顔をして葵の夕食の配膳(はいぜん)をしていた。


「夕日、風呂上がったぞー。」

「あ、はーい。ささ、座って座って。」


そう言って夕日はテレビが正面のテーブルに葵を押しやっていく。


「な、なんだよ。やけに上機嫌だし何かあったのか?」

「今日はね、お兄ちゃん!なんとお兄ちゃんの出てるシーンが放送されるんだよ!」

「え?」


そう言って、夕日はテレビをつける。

ちょうど画面の中の夕日と共演者の女の子の9時からのドラマの宣伝が流れた。


『今夜9時。ドラマ「青空中学生」第4話!』

『私とお姉ちゃんの初共演シーンが遂に放送!』

『『ぜひ見てくださいねー。』』


「楽しみだね。お兄ちゃん。」


弾むような妹の声に葵はますます顔を青ざめていった。

やっとここで部活の細かな話しです。


こういう感じで、話を伸ばしながら突然説明が入るのってどうなんでしょうね。


わかりませぬ。

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