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仕事が仕事を呼ぶ

「―なぁ、葵。お前にテレビアニメの出演を頼みたいんだが。」

つまり、声優の依頼だそうだ。


四コマ漫画が原作のテレビアニメらしい。

その小説に出てくるヒロインの親友役で、今度は出演がほぼ各話にあるらしい。

といっても、演じる時間は各話によってバラバラらしく、最長のものになるとAパートはオールらしい。

Aパートとかオールとかはよく分からなかったが……。



抜擢(ばってき)理由はどうやら現在撮影中のテレビドラマのスタッフ繋がりからだそうだ。

どうやら、あの一昨日の演技がよほど評価されたのではないかとのこと。


ふざけるな。

この話を聞いて葵はすぐに激高(げっこう)したが、母と妹は諸手(もろて)を挙げて賛成した。



結局はオーディションを受けることになった。

葵がここで下手な演技をして落ちることも画策(かくさく)したが、家族3人はすぐさま察し、泥を塗る行為と(たしな)めた。

結果、このオーディションも誠心誠意挑むことになった。







「なぁ、葵。お前最近部活来てないけど、どうしたんだよ。」


学校にて、そう葵に問いただしたのは瀬山 久だった。


その質問は葵にとってとても痛みを生じるものだった。


「すまん。最近家の手伝いで忙しくて……。」

「忙しかったのは家の手伝いだったのか。」

「たぶん夏休みもちょくちょく忙しくなると思う。」

「まじかよ……。実はな話があってな。」


申し訳なくなる葵に対して同じ表情をした久が話を切り出す。


「実は、キャラのアフレコを頼めないか?」

「アフレコ……?」

「実はな、今お前がいない間に作ってたゲームがもうすぐ完成しそうなんだが、どこかで発表しないかという話になってな。それなら声をあてようとなってな。その白羽の矢にたったのが葵だ。」


葵の所属する部活は悪名高きパソコン部である。

なぜ悪名高きと言われているのかというとほとんどの部員がガチ勢なのだ。


特にパソコンゲーム製作は先代より技術が伝わり、開発もかなり本格的に行っている。

プラットホーム化された開発、GUIデザイン、先代たちの血と涙の結晶とも言うべき細かな解説が記されているプログラムコード。


3代前の部長達は自作ゲームを作成し、それを学校内のパソコン部サーバを使って世界中に向けてアップロードし、結果学校のネット通信が混雑、サーバが何度も落ちるなど職員達を非常に悩ませた。

そういった出来事があって、存続危機に陥りながらも血脈(けつみゃく)は受け継がれた。


今代、2年生がいないという危機的状況に部員達は焦り、教員たちは密かに喜んでいたものの、葵をはじめ5人の新入生が入部した。

そのうちの2人が、瀬山 久と三門寺 晃である。


もちろん彼らもガチ勢。なぜなら二人もまた特別な存在だからです。


瀬山 久はグラフィック担当で、その腕前は何気なく出した学内スケッチコンクールで高い評価を受け県の美術コンクールで佳作を取るほどである。


一方、三門寺 晃は楽曲担当である。入部理由は吹奏楽部や軽音部とそりが合わないとのこと。少しキレやすいが、作ってる楽曲はクラシックから果てはパンク、そしてアイドルが歌うようなものまで製作している。


残り新入生2人はプログラム担当で、こちらも既に小学生からプログラミングしているという、本当に才能を持て余すほどの実力者の集まりである。


葵の役目は企画やスケジューリングといった副部長の仕事で、またテキスト担当の予備でもある。予備というのは現在3年生の1人が今までテキスト担当しており、こちらが主力級なのである。


ちなみに残りの3年生はグラフィッカー2人、プログラマー2人、自称ホワイトハッカー1人、サーバ・ネットワーク構築および管理1人、ホームページ作成1人の8人である。


さて、そんなパソコン部の説明から話を戻すが、

グラフィック担当の久から告げられた内容は要約すると、開発したゲームに声が欲しいからやれとのことである。


「わかった。日付や時間帯はこっちで決めていいか?」

「おお!引き受けてくれるのか!もちろん葵の好きな時でいい。けど、7月中には終わらせたい。」

「……。以外に時間無いんだな……。」


正直に言うと、現在のテレビドラマやテレビアニメのオーディションと忙しい葵には少々困った内容である。

だがしかし、葵は承認した。

テレビアニメのオーディションを受ける葵にとって自身の練習にもなると思ったためである。


しかし、これは葵にとって更に事態を急展開に結び付けることになる。

友人達の絡み。

といってもくんずほぐれつ的な内容じゃないよ!

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