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紹介

初めてのテレビドラマ撮影から5日後に第6話と第9話の一部のシーンを撮影した。


そして、迎えるは最大の難所とも言うべき、第9話の8分。

やはりドラマのキーパーソンだけあって難しい。

というか、やっぱり重要な役じゃねぇか!と葵は内心父親の顔を思い浮かべ鬱憤(うっぷん)をぶつけた。


9話の撮影にはまだ時間はあるものの、7月に入った。

そう、7月と言えば、一般人なら「夏!海!海水浴!夏休み!」と騒ぎ立てる季節だ。

そして、一方の俺と言えば「出演ドラマ放送開始」と穏やかじゃない季節に入った。


第一話放送が今週に(ひか)え、番宣《ばんせん》―番組宣伝が始まっている。

妹の夕日も他キャストと共に、他番組に出張し、番宣をしている。

そして、妹はやらかしたのだ。

「姉が初主演する」と口火を切ったのだ。

この話題は大いに盛り上がった。

なにせ「人気女優片瀬 皐月(かたせ さつき)の娘にして、最近注目の女優片瀬 夕日(かたせ ゆうひ)の姉」ともなれば注目を浴びない方がおかしいのだ。

唯一の救いは、「片瀬」という母の旧姓つまり芸名にあやかって姉妹ともに名字が「片瀬」として扱われている点である。

そして、救いようがないのはマスメディアに対して「姉」という表現を使ったことだろう。

俺はお前の兄だ。

帰ってきた夕日に対してお(きゅう)()えたのは記憶に新しい。

そんな訳で、舞台に立つ際はより一層「女」であることを振る舞わなければならなくなった。


いや、残りの出番から考えるに、そこまで深く考え込まなくても良いだろう。

なぜなら、仕事はこれっきりなのだから。

ドラマが終われば一時的な注目はすぐに止み、そして忘却されることだろう。


そう、今は余計なことを考えなくていい。

今は第9話の出番に向けてセリフと演技を覚えるだけでよい。






そして、7月中盤(ちゅうばん)、夏休みが目の前に差しかかった頃、葵に出番がやってきた。

第9話出演時間8分。妹のストーカーをおびき寄せたものの刺されて病院送りになるシーンである。

このシーンはストーカー役の人と2人で演じなければならない。無論妹の夕日は現場には来ていない。

ちなみに別枠として妹に変装するシーンの撮影は済んでおり、また、病院に搬送されるシーンがあるが、こちらは後撮りとなる。

なので、出演時間8分といえども今回行う出演時間は少し短縮されている。

また、シーンが複数にまたがっているので、連続して撮影は行われない。

このため、負担が減って喜ぶ葵だったが、現場に向かう上で知らされた事がある。


今回の撮影は外ということである。

やめて。女装姿で街中走るの耐えられません。

心のHPは0よ!!


最近になって少しの余裕が生まれたが、依然(いぜん)緊張と体調不良の状態異常を起こしている。


監督とメイクさんから「今日はかなり役に入り込んでる」と()められたのかよくわからないお言葉を頂戴(ちょうだい)したが、違います。妹のストーカーをどうかしなければいけないと焦って憔悴(しょうすい)してる華の姿ではなく、これから女装で街中走ってぐっさり刺される役やらされ、挙句(あげく)頼りになる妹がいないくて、演技時間8分という極度のストレスから満足に睡眠食事を行えず憔悴している葵の姿です。



後にこの葵の鬼気(きき)迫る姿と悲壮感は演技面で高く評価され、異例のドラマ部門審査員特別賞を受け取ることになるのだが、それはまた別の話。



さて、ここで現場に入ってきた葵が予想よりも負担が重いことに気付かされた。


現場入りはまだ太陽が昇っていた時間帯だったが、費やされたのはリハーサルである。

そう、実際の撮影は夜中になる。

そして、そんな暗い夜道を必死で走らなければならない。挙句、途中から雨が降ってくる演出がついてくる。演出的にとっても悲壮感が表現されることになるが、夏に入ったとはいえ夜間に好き好んで水を浴びて疾走(しっそう)する演技をしなければならない。もちろん雨はスタッフさんの手によって用意されています。

さらに加えて、妹の愛役の衣装は露出範囲が広い衣装となっている。つまりはそんな妹に(ふん)する姉の華役の葵はその衣装を必然的に着なければならない。



本番がいかに鬼気迫り、悲壮感が(あふ)れていたと後に持て囃《はや》される下地(したじ)はここにあったのだ。

真実を知るは当人のみである。



この日、最高の演技だとスタッフ勢は大いに盛り上がり、一方の葵は大人たちにもみくちゃにされ、さらに憔悴の色を深めた。






そんな撮影が終わって2日後、別撮りだった病院搬送(はんそう)シーンの撮影のためこの日も放課後に撮影現場に向かわなければならないそんな日の事だった。


いつもの朝食、父親は妙な笑顔を貼り付けて葵に向かって言った。

「―なぁ、葵。お前にテレビアニメの出演を頼みたいんだが。」


それはどこか既視感あるもので、そして新たな仕事の依頼だった。

葵、仕事増えます。

私、タスク終わりません。


執筆してるんでねぇ(キリッ)

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