ドラマ終わりました
長らく更新していませんでした。
すみませんでした。
8月下旬。
あの声優オーディションから1週間後、つまり本日がドラマ最後の撮影である。
撮影から放送まで1か月近くあるが、キャストのスケジュールの都合から今日が撮影となっている。
また、今回は休診日の病院を使って撮影するため、事前に撮影日は決まっていたとのこと。
監督さんに「撮影スケジュールがある程度自由にできるから助かるよ~。」と言われたが、言い変えればスケジュールがスカスカでドラマ撮影の都合が優先されるから助かるよガハハハである。
く、悔しくないからな!本当だぞ?
暇人じゃないからね!
そう言われた事もあって、アニメの台本を練習しつつ、ドラマの練習しつつ、夏休みの課題をしつつと、非常に、そう非常に忙しい1週間であった。
ただ、不安なのが腹を刺された女性の演技である。
刑事ドラマでは腹にナイフを刺されて病院のベットというシーンは良く見るが、大抵男なのである。
男性より筋力の劣る女性がなんとかベットから起き上がろうとするシーンなど、イメージがし辛い。
お腹刺された女性の役を見たような見ていないような曖昧な記憶しか残っていない。
あとはもうイメージに頼るしかないのだが……そもそも俺は男なので自分に当て嵌めてみて考えて大丈夫なのかなと思うと不安になるのである。
で、結局妹に頼ってしまった訳だが……。
夕日も忙しい中、笑顔で演技指導してくれた。
ドラマの演技と関係ないのにベットの上でご飯を食べさせられるという演技までやった。
夕日は「もしかしたら、当日台本変更になって食事シーンあるかもよ!」と押し切っていたが、刺されたのはお腹なので手は使えるだろうし、そもそも内臓までナイフが入り込んでいたとしたら食事はNGでしょうよ。
それで、あれは演技指導だよね?夕日さん?
そうだと信じたいよ?
さて、そんなこんながありまして、今は撮影現場にて待機しております。
まじで、病院を使うんだな。ビックリだ……。
撮影場所は待合ロビーと廊下または病室となっているとのこと。
待合ロビーと廊下は言うまでもなく夕日のシーンだ。
入院患者の華役たる俺の撮影現場は言うまでもなく病室である。
という訳で、さっそく患者の服である病衣を着る。
病人でもないのに病衣を着るのってかなりレアなケースだよなと思いつつ、メイク担当の安藤さんを待つ。
と、着替えを行っていると部屋がノックされる。
安藤さんかなと思い、「入って貰って大丈夫ですよ。」と応えると、入ってきたのは見知らぬ女の子だった。
その女の子は少し茶色の入った黒茶の髪で、幼い顔つきや成長途中の体型から判断すると妹と同じくらいの歳だった。
どこかの学生服だろうか?見慣れない制服を着ている。
「あ、初めまして。片瀬さん……ですよね?私、東堂 杏里役の藤波 陽菜と言います。今日はよろしくお願いします。」
確か、東堂 杏里役と言えば夕日演じる愛役の親友である。
そういえば、番宣のCMで夕日と映っていた女の子が彼女とそっくりだ。
というより間違いなく本人であろう。
「あ、えっと、華役の月島 葵……あ、こっちは本名でしたね。す、すみません。片瀬 葵です。こちらこそよろしくお願いします。」
うっかり本名を名乗ってしまい藤波さんにくすくす笑われる。
と、そこでふと疑問に思い聞いてみることにした。
「えっと、藤波さんの方は本名なんですか?」
「はい。でも、陽菜って名前がひよこの方の'雛'って感じがして、ちょっと子どもっぽいかなって思うんですけどね。」
どうやら、自分の名前に不満があるようだ。
俺としても思い当るところはあるので少し共感する。
でも、普通に女の子らしい名前だし、そんなことはないと思うんだけどなぁ。
「そうかな?子どもっぽいというより女の子らしい名前だと思うけど。」
「そうですか?えっと、ありがとうございます。」
「まあ、自分の葵って名前よりもっと男らしい名前が良かったなって思うときもあるから、偉ぶって言えないけどね。」
「いえいえ、片瀬さんの名前も素敵ですよ。それにお化粧したらとてもお綺麗になりますし。」
うぐ。やはり女装を褒められるってのは慣れないな。
あんまりうれしくないし……なんか騙しているようで……。
「あ、そろそろ着替えなきゃ。それじゃあ、今日も頑張りましょう!」
「あれ?ああ、確かにそろそろ準備しなきゃだね。頑張ろうね!」
藤波さんは可愛く拳をあげたあと、元気よく部屋から出て行った。
「そろそろいいかなー。じゃ、葵ちゃーん。今日も頑張って女装しましょうか。」
藤波さんと入れ違いにメイク担当の安藤さんが入ってきた。
うん……そうだよね。女装しなきゃならないんだよね。
が、頑張ろう……。
「それじゃ、始めようか。」
「「「よろしくお願いいたします!」」」
さて、撮影が始まった。
話の内容をざっと確認すると、シーンは2つ。
愛役の夕日が昏睡状態の華役の俺のお見舞いをするシーンと昏睡状態から目覚めた華とその知らせを聞いて急いでやってきた愛との仲直りシーンである。
お見舞いのシーンはさまざな器具つけたまま寝ておけばいいので問題ない。
身動きができないのが少し辛いが演技上では何もしてないので比較的に楽だ。
問題だったのは、昏睡状態から目覚めた華の演技だ。
「……うーん。こう、なんというかな。重傷患者の自然な不自然さが出せないかな?」
数回試したが、監督はなかなか腑に落ちないようだった。
たしかにこれは自分のイメージ不足だったなぁ。
夕日と結構頑張って練ったつもりだったんだが、演技している当人としてもまだ納得いかない出来上がりだったし……。
そう、悩んでいると藤波さんといた夕日が俺に近寄ってきた。
「これは使いたくなかった最終手段なんだけど……いい?」
「ん?そんなのあるのか?頼む!俺としても納得いかないんだ!」
どうやら、妹様には妙案があるらしい。
さすが、先輩。秘策があるらしい。
もう、それに頼るしかない!
「う……。そ、そう?じゃあ、いくからね?恨まないでよ?」
「おう。どんな内容でも受け止めて演技の糧にしてやるぜ!」
と、そこでふと思った。
恨む?
「夕日?恨むって、」
「えいっ!!!!」
「なんだ?」と聞く前に、夕日が思いっきり握り拳を葵のお腹を殴った。
「ううっ!?!?」
こいつ……殴りやがった。思いっきりお腹殴りやがった。
痛みに悶える俺を見て、夕日以外がぽかーんと惚けていたが、夕日が藤波さんを連れて演技を始めようとすると、スタッフ達もすぐさま撮影の準備を始めた。
どうして、こんな目にあった……。
転んでもただでは起きないぞ。
その日、夕日によって3度も拳を入れられ、なんとか撮影を終えた葵であった。
「片瀬 葵さん今日でクランクアップです。ありがとうございました!!」
「「「ありがとうございました!」」」
撮影終了後、今日で撮影が最後となったため、お祝いとして花束を贈呈された。
なんだか、こう心にジーンとくるものがあった。
初めてのドラマ出演……慣れない2重生活に体調も芳しくないときもあった。
正直、辛くて弱音はいたり、体調を気遣われ夕日や両親に迷惑をかけた。
それが、今日ここまでこれて本当に良かったと思った。
そして、今日で最後と考えると少し、いや結構切なく感じた。
「それじゃ、華役の片瀬 葵さんより一言お願いします!」
「あっ、はい。」
どうしよう。演技に向けて集中していたせいでお礼とか考えてなかったぞ。
内心焦りながら、ふとスタッフの皆の顔を眺める。
皆にやにやしてた。
くそう。皆余裕だな!
いや、スピーチは俺だけだし、皆が余裕なのは当たり前なんですけどね!
「……えっと、まずはお礼をするべきだよな?監督やスタッフの皆さんには演技力の不足から足を引っ張ってしまいすみませんでした。今日という日を向かえられたのは皆さんのご助力のおかげです。本当にありがとうございました。」
「こちらこそ。いい演技でした。君と仕事ができてとても楽しかった。お疲れ様!」
「「「お疲れ様でしたー!!」」」
その掛け声とともに皆が手をたたいて葵を労った。
「ねぇねぇ、ところで私にはお礼無いの?」
と夕日がひょこっと伺うように顔を傾けて上目づかいをして訊ねてきた。
「最後の最後の演技で殴らなければ感謝したんだけどな!」
「えぇ~!?」
わざとらしく夕日が驚いてみせる。
こいつ分かってやがるから、こんな反応してるんだよな。
全く憎めない妹だ。
「嘘だよ。妹様にはとても感謝してます!」
「えへへっ。こっちも楽しかったよ!ありがとね!」
久しぶりの更新です。
相変わらず、現実逃避で執筆してます。
ないわー。
1月中に仕上げるはずだったタスクを2月初旬終わりまで引っ張ってしまいました。
あと、ひと段落した中旬以降は1週間ほどA型インフルエンザにかかり……。
そして、今回新キャラということなので難産になりました。
2月中旬までには基本的な流れが決まっていたのですがね……。
そして、まだキャラがあやふやしてる。
ただ、新キャラは同僚?みたいな感じで、これ以降もたまに出る予定をしています。
それまで続くといいな……。