アクト・リヴラ・アカリ
私の名前は幽明 灯。
幽明と言う苗字はかなり珍しい。
幽界と顕界の意味。
つまり、あの世とこの世の二つを指す言葉だ。
一体私のご先祖様はどんな過程でこの苗字が付いたのだろう、全く不可思議だ。
そして「灯」と言う名前。
両親は、私が生まれた時に公平に全てを照らす、トモシビになって欲しいと思って名付けたらしい。
私はこの名前が少し苦手だ。だって神様でもあるまいし、一人間として大それ過ぎだ。
それに私は、どんな存在も自分自身で心に灯を持って進まないといけないって考えだからだ。
従姉妹に私と同じく超常的な事を専門とする探偵のお姉さんがいるが、その人は同じ名字で名前が"ナズナ"。
私は小さな頃、その名前にすごく憧れていたのを覚えている。
少し抜けてる様な、何を考えてるか分からない人で、私の銀色で曇りを閉じ込めたダイヤモンドの様な瞳を見て「灯ちゃんは、心の色が眼に宿っているね。その瞳でみんなの代わりに、ちゃんと視てあげるんだよ」と言って来たりする人なのだ。
あの人の現在の消息は知らない。追う気も無い。
何故なら、生まれてから今この瞬間まで、あの人より強大な存在を見た事が無いからだ。自分がちっぽけに見えるからあまり見たくない。
私は私の物語を生きたい。余計なモノは見たくない。
全ての物事には原因があって、何も無い所には現象は現れない。
だから、私が生まれた事にも勿論意味があるはずで、依頼をこなしながらそれを薄っすら探る事を目標にしている。
それが私だ。
――と、過去と思考に入り浸りながら、私は都心の電気街を一人で歩いている。
雑居ビルに、駅の高架下、メイドが並ぶオタクロード、申し訳程度の公園、外国人向けの土産屋、ラーメン店。
緩やかにそれぞれが関係し、淡々とこの街と言う現象を紡いでいる。
私は現在、その一つの街のピースの高架下を歩いている――
ただただ、ぶらついてるいる訳では無い。
私には、この眼に由来した特異な能力がある。
それは、幽界の異形や、魔術、呪い、特殊なルールの能力、それらを容易に捉え解決に導ける事が出来るという能力だ。
それを生かして、街中を歩いてると、結構な情報収集となる。
たまに歩行者でも、明らかに何かの存在に付与された強度の負の念。
すなわち呪いにかかり、しんどそうな顔をしている人がいたりする。
そんな人間の情報を調べると、近辺で起きている事件の主に辿り着く事が多い。
あまり見えすぎるので、普段は眼鏡に術を施し、普通な眼で暮らしているぐらいだ。
私は高架下周辺を結構歩いたが、あまり特異な呪いにかかった人間を見つけられなかったので移動することにした。
メイドが並ぶオタクロードでも行こうか――
あそこは、なかなかの負の念の溜まり場だが、最近良い発見をしたのだ。
それは"彼女と私だけ"の秘密だ。
今日はいるかな?いたらいいな。
そこに向かいながら、私は依頼について思い出す。
依頼者は、素性を明かさず対面で話してきた女性だが、
恐らく、政府の異形関連の特殊組織の刑事か何かだろう。
ある一件から、時々私はその組織に頼られる羽目になってしまった。
その分金払いもいいから、なんとも言えないが。
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綺麗な折り目が付いたスーツ姿の長身の女性が私に言った。
「電気街周辺で、今年に入ってから7人行方不明なんです、今月では二人」
まだ、四月ぐらいだけど、あり得ない話では無いよな。少し異常だが。
「ただの家出などでは?」
「私達も洗いざらい調べたのですが、どうやら違うようで……主に若者ではあるんですが」
「違うとは?」
女性は、眉間に皺を寄せながら、言っていいものかと考えてる様だ。
「確かに若者達には、問題がありました。結構深刻な問題です。しかし……
決定打は違う所にあるようでして……」
早く結論を言って欲しい。焦らされるのは嫌いだ。
「決定打とは?」
「はい。全員がいなくなる直前に共通の出来事が……」
この感じ、恐らく異形関連で決定だろう。直感でわかる。
「出来事?」
「はい。行方不明者達が失踪する前に、ズタボロの服を着た長身の、のっぺら坊の様な女性が現れてるのです。その後……空間が顔だらけになって……段々狭まって消えてしまってるんです。映像の中では……」
のっぺら坊、空間、顔だらけ、縮小……
依頼者の女性はそこまで言って、顔が真っ青になりテーブルに臥せる。
相当だな。見るだけでPTSDか……
「大丈夫ですか?」
「えぇ、最近体調を崩していて……」
「そうですか……」
少し、この人の現在の心の状態を見てみるか……
――ッ
呪われている!
しかも、誰からの恨みでも無いタイプの純粋な呪いだ。
厄介だな……
これをかけた異形はただの魔術使いなどでは無い……
もうちょっとレベルが高い存在。
とりあえず、この人治療してあげないとな。
この人がこんな報いを受けるのはフェアでは無いし。
「すみません。お名前教えてくれませんか……本名で……」
「……それは」
「あの失礼ですが……」
私は時間が無いと言う様に、不安を煽る。
「あなた呪われてますよ?払うのに名が必要なのです。厳密には名と言うよりあなたと私の関係性ですが」
「私が呪われている……」
「はい」
女性は迷った素振りを見せたが、私の眼を見た後、信頼した波長に切り替わり、私に答えた。
「怪丘 すばるです……」
名は体を表すと言う言葉がしっくりし過ぎて、つい笑ってしました。
「ははは」
やばい、これは怒られる。
だが反応は予想外だった。
「変な名前ですよね。私は怖がりなのに、この名前のせいでずっと、この類の話に人生を動かされてる気がするんですよね」
そう言って彼女はとても爽やかに笑った。
怪丘すばるさんはさらに続けた
「幽明さん、笑った方がカワイイですよ。年相応の笑顔でちょっと安心しました」
……
私、この人気に入った――
「では怪丘すばるさん、今から起こる事は必ず、ご内密に。私と貴方だけの秘密です」
「ええ……勿論」
私は制服の袖をまくる。
両手の掌を上に向け腕を伸ばす。
両手の銀色の数珠がきらりと部屋の照明で光る。
この数珠は払いの時に、時々つける便利なツールだ。
無くても大丈夫だが結構気に入っている、色んな意味で。
次第に空間が震えだした――
怪丘すばるさんは目の前の超常に硬直し息を呑んでいる。
「イル……ドメイ……シュカーニュア……アンクリーヴァ……カイオカスバル……アクト……ディルアクト」
私はそう唱える。
これは一種の言語プログラミングで、私の契約する太古の無垢な存在に、この世界の言葉でお願いしている。
召喚とは違い、技だけを借りる、呪文のクラウドの様なモノだ。
怪丘すばるさんはその光景に圧倒される。
何故なら、彼女の周りには、霊光を纏った透明なお札が無数に回転して渦巻いてるからだ。
それから発せられる、直線の穏やかな光線が連続で彼女を貫き続ける。
彼女はされるがまま目を閉じる。
自分で見ていて思う。遠隔手術の様な雰囲気だ。
やがて、それらの光やお札は消えて、彼女は目を開けた。
「ありがとうございます。様々な怪しい奇譚を見たけれど、こんなに優しくて奇跡みたいなのは初めてだったわ……」
「そうですか。ありがとうございます。一応治療は完了です。呪いは消え去りました」
「そうみたいですね、ここ数日の不調が嘘みたいに消えました。それどころか、
何か悪いモノを引き寄せてしまう、歪な不安も消えた気がします……」
「あーえーっと……それはおまけです。あなたはもう自由です。名に縛られる必要はありませんよ」
私は医者の診断の様に淡々と答える。
怪丘すばるさんは、私に大人としての威厳を保とうと涙を堪えていたが、気持ちが溢れだしたのか、とうとう泣き崩れてしまった。
「正直今回で、もうダメかと思ってました……ぐす……ぐす……でも、全く逆の結果になりました。今まで頑張って耐えてきて本当に良かったです。ありがとう幽明さん」
「きっと、それはあなたが頑張った報いが返ってきたんですよ」
これは本音だ。私一人でも彼女一人でも今の現象は起きなかった。
縁と言う関係性と彼女の業と偶然が重なった、報いの奇跡なのだ。
「だから、少し休んでください。後は、私に任せて」
「はい……何かありましたら、私に言って下さい。なんでも大人として力になりますから」
「ありがとうございます」
そうして、私と怪丘すばるさんは連絡先を交換して、一連のやり取りを終えた――
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ざっと今回の依頼はこんな感じだ。
顔が無いのか?あるのか?よく分からない純粋な呪いを生み出す化け物を払うだけだ。
考えをしている内に、メイドが並ぶオタクロードに差し掛かる。
私は、一瞬眼鏡を外す。
おっいたいた。
心の色で一発で分かるよ。
あんな綺麗な色、人でも異形でも珍しいからね。
そっと、近寄ってビックリさせてやろう。
あの子の気配の察知能力は異常だからな。気配を消してと……
私は、メイド姿をして背中から大きくて真っ赤な翼膜を生やし、メイド喫茶の勧誘をしている彼女の後ろに回る。
彼女の名前はヒノ。
クリシュマヒノ。
真っ赤なルビーの髪が、ボブに綺麗に切り揃えられた女の子。
果実の様なとても良い匂いがする女の子。
そんな彼女に、私はそーろっと近づく……
「幽明。おさわりは厳禁だよ?私に恋人いるの知っているでしょ」
そう言ってヒノは振り向き、にーっと満面の笑みを浮かべる。
そうは言いながらも、私を取り込んでやるぞと言う様に、ローズゴールドの瞳で見つめてくる。
「あははは そうだったね。できれば私も混ぜてくれたら嬉しいんだけど」
「三人で交際なんて、不純よ。えっちね」
人差し指に唇を当て、赤いメイド服のフリルを揺らしお尻を突き出す。
あぁ羨ましい。シスイが羨ましい。本当に。
こんなカワイイ子を抱きしめる権利があるのはずるいぞ、シスイ。
逆も然り、ヒノが羨ましい。
あのシスイの自信なさげで、儚く無垢な真っ白な体を抱き締めてみたい。
あんなクールな雰囲気醸し出してるくせに、ドジで甘えん坊らしい……正直超好きだ。二人共。
もし、私に欠点があれば、それはこの欲望だ。私の目指すところはこの煩悩を消し去る境地にあるのだけれど、実はカワイイ女の子に本当に弱い。
「どうしたの、固まっちゃって?私の可愛さに死んじゃった?」
「まさに、そうだね。失敬失敬」
「謝らなくて、よくってよ。正直な子はだーい好き」
ヒノは私をそう言って、ギュっとハグしてくれた。
言葉が無い――
リンゴの木でも無いのに、どうして生物からこんな良い匂いが出るのだろう?やはり心の綺麗さと匂いが関係しているのか?
「今のはシスイに秘密ね。あの子、嫉妬屋さんなとこあるから」
「勿論、ゼスパで斬られたくないからね」
その時、通行人の小太りのオタクがヒノに手を振る。
「ヒノ氏、今日もカワイイでござるねー」
「健司隊長、今日もありがとうございます!」
健司隊長と呼ばれた男は満足そうに、歩いて行き、他の立っているメイドに吸い寄せられていった。
「誰?」
「よく通るお客さん」
そしてまた次の瞬間、ヒノは声を掛けられている。
「ヒノッち、こんちー。今日もめちゃかわじゃん」
そうやって声を掛けてきたのは、緑のインナーカラーの入った、八重歯が特徴の
メイド服を着た女の子だった。
眼が大きく、とても明るい感じの美人。
しかし、両腕に沢山傷がある……
「りゃんめ、こんちー。お昼何食べたの?」
「台湾まぜそば。お酢六周かけて。オッスなんちって」
「おっす!ヒノも今日のお昼真似するっス」
ヒノは、空手の様に押忍として、笑って返す。
「ヒノちん、やっぱ面白いね。ふはは じゃっ! 店あるからまたねー。今度、まぜそば奢るね」
「はーい、待ってるねー。忘れたら羽で叩くからねー」
りゃんめと呼ばれた気のいい女の子は笑いながら何処かに行った。
「ヒノ二つ聞いていい?」
「どぞ」
ヒノはぽかんとしてる。
「羽隠さなくて大丈夫なの?」
「うん。この辺の知り合いはみんな異形って知ってるよ。この電気街はこういうの気にしないみたい。コスプレと勘違いしてるっぽい人も多いいし」
へー、意外となんとかなるもんだね。てか、電気街受け入れ範囲広いな。
「もっこは?」
もっこ?もう一個の事か……
「この辺でのっぺら坊見なかった?顔無い異形って感じのやつの事」
「んーーー見て無いかなー」
じゃあ、この辺じゃないかな……
「わかった。邪魔してごめんね。また連絡するよ。良かったら今度、みんなで遊ぼ」
「オッケィ!私的に大賛成なのだ!」
私は行こうとする。
するとヒノは私の腕を掴み、もう一度優しく抱きしめ、耳元でこう言った。
「響の事、本当にありがとうね……あなたも今は、かけがえのないお友達なんだよ?
だから、一人であまり危ない事しないでね」
最後に、クリアな瞳で私を見つめ、大好きちゅっちゅと言いながら、二回首を傾げた。
「あ……え……うん。しないしない。じゃじゃあ、私行くからーヒノばいばーい」
私は駆け足で、その場を去る。
あー危ない、シスイあんな子とずっと一緒にいて、よく耐えられるな……
危うく、ガチ恋するとこだった。
いや、シスイは絶えられてないから、骨抜きなのか……
バカドミノの事でも考えて中和させよ。
てかお腹空いた。取り合えず、中食摂取しよ。
一つ重要な、手がかりはもう見つけた事だし。
あの、りゃんめって女の子――
目つけられてるな……何かに。
ありきたりな負の念では無く、呪われ中の怪丘すばるさんに似た感じの淀みを感じた。
あの子の行動がわかれば、のっぺら坊の全容がわかる。
ご飯食べてから、あの子に会いに行くか……
私は電気街中央の横断歩道を渡る――
なんとなく空を、見上げる。
……
今日はラーメンにしよう!
きっと、強烈なラーメンの臭いが、あらゆる飲食店の食べ物の中で一番先に私の鼻腔と言うゴールに辿り着いたと言う、関係性からの発想だ。
私は横断歩道すぐそこの濃厚が売りのラーメン屋に入る。
ラーメン並みと煮卵トッピングと炒飯の食券を購入する。
私はセルフサービスのお冷を入れ、ラーメンが来るまで。イヤホンで音楽を聴きながら考え事をする。「アカシックに咲く花」と言う曲だ。
精神を切り替える時にたまに聞く。
実はこの曲、もう何年も前に例の従姉妹がこっそり作った曲。
興味半分に隠れて聞いていたら、案外私の趣味に合ったのだ
私は、目を閉じて最後まで聞く。
「ラーメン並み煮卵トッピングと炒飯お待たせしました!」
意識を集中していたので、突然の店員さんの大声にビックリした。
私はイヤホンほ外し、空腹の中に、濃厚なスープと分厚いチャーシュー、炒飯をリズムよく口にかきこむ。
そうしながら、自作の検索AIデバイスで、
これは普段辿り着きにくい情報も探れたりする。私の能力と合わせるとUFOだってハッキングできたりもしちゃう優れ物。
りゃんめ 〇〇電気街と検索する。
「へー、この店に勤めているんだ。結構人気あんじゃん」
誰に言うでもなく喋る。
人気検索候補も浮かんできた。
(りゃんめ 〇〇広場 パパ活 )
はー……そういう事か。
この場合、二つの解釈がある。
一つは、恐らく社会問題にもなっているパパ活についてだ。
しかし――
私が、今回納得したのは、この○○広場の方だ。
この公園は、パパ活やマッチングアプリの待ち合わせ場所として有名な場所と
一部の人間には認識されている。
今回の一連の行方不明事件の発端は、恐らく"この見解のミス"から始まった。
もともとは、この電気街は古来より商業的に盛んな場所だった。
そんな場所には、やはり守り神を奉ろうと言う風になったらしい。
実際、そのおかげで何らかの存在が、この電気街や人々を守ってくれていたのだろう。
しかし、この○○公園に崇め奉られていた地母神様は、時代の進化と共に忘れ去られていってしまった……
それだけでも力を借りておいて失礼な事なのだが。
もっと大きな問題がある。
自分が全力で応援して作り上げた未来の場所。
自分に精一杯祈った無数の人々が自己を犠牲にしてまで受け継いで来た未来の場所。
そんな、想いの塊の場所で、欲念に穢れた行為を繰り返し、負の情念を振り撒く現在の人間に地母神様は何を思ったのだろうか?
その怒りは、電気街の地母神様を怒りや悲しみで妖魔に変えてしまう程のモノであってもおかしくない……
「たぶん、これだね……」
私はラーメン屋に長居し過ぎたので、体が熱くなってしまい、さっさと外に出て外気に当たる事にした。
「ひー、あっつ」
「りゃんめのとこ行きますか」
私は、もう一度オタクロードへ向かい、りゃんめの働いているメイド喫茶に向かう。
その時には、ヒノはもう、通りにはいなかった。
残念だ。
私は、少しだけ肩を落としながらも、りゃんめの働いているメイド喫茶を見つけて入店した――
「いらっしゃいませ、ご主人様」
可愛らしいメイド服を着た店員が、挨拶をしてきた。
私は誘導されるがまま、席に着席する。
メイドちゃんが一通りの説明をしてくれる。
遮るように私はその子に質問する。
「りゃんめいる?」
「あっはい。りゃんめ推しですか?」
「まー、そんな感じ」
「りゃんめーお客さんだよー!」
比較的愛想の良いメイドさんが、りゃんめを呼んでくれた。
「はーーーい!って、ヒノと話してた、美人さんじゃん」
「ああ、どうもねー。幽明って言います」
「はじましてーりゃんめです。あなたのハートに萌え萌えきゅん」
「あはははすごいね。カワイイよ!りゃんめ」
「幽明さーん、思ってないでしょ?ぷんぷん」
意外と鋭いな。ってこれは失礼だ。
「ちょっと、聞きたい事あってね。少し話せる?」
「指名制とかでないんで無理なんですー!ごめんなさい」
やはり、警戒されたか……
個人情報を聞こうとしたりするのは、こう言う場所ではNGだからだろう。
「あーそっかー10万円程、どっかで使って暇潰したかったんだけど、無理だよねー」
りゃんめの顔色が変わる。現金な子だな。はは
「ちょっと店長に聞いてきますー」
NGと言う訳が無いね。 そもそも聞きに行く素振りだけで実際行ってないとみた。
「お店暇なんで結構話していいらしいです。特別ですよ!」
簡単な話だ。
りゃんめのシフトの残り時間が残り五時間、ワンドリンクとチェキで各時間5000円なら25000円。さらに1時間1万円のドリンク一本入れるとして計75000円。メイド喫茶としては上客だろう、10万円は。
私的にも得する話で、りゃんめからの情報で、今回の依頼が成功さえしたら、この10万円なんて微々たる経費だ。
「結構色々聞くけど、大丈夫?10万先に払うし、全部秘密にするから、あと、一時間もかからないよ」
「それに君の為だしね」
「あ、はい……全部秘密なら。言える範囲で……。それと私の為ってどう言う事ですか?」
「ぶっちゃけて聞くと、最近かなり不調でしょ?」
「はい……」
「どのくらい?」
「そうですね……前もしんどかったんですが、最近は前より、ずっとしんどい……ですかね。なんだかお医者さんみたいですね」
「心辺りは?」
「あり過ぎますね、ずっと前から問題だらけですし。でも、なんで今こんなにしんどいのって感じ」
「最近、何か壊したりしてない?何か変わったモノに触れたり、変わった場所に行ったり」
「いえ、ここと、電車とショッピングセンターぐらいです」
「○○広場とかは?」
りゃんめはギクっと言う顔をする。質問で彼女の内面を引き出す程、彼女の表情は隠していた悲壮感に包まれていく。
「もしかして警察の方ですか?」
「まだ高校三年生だよ」
「年下じゃないですか」
「何の意図があってこんな事してるんですか?ねぇ……嫌がらせ」
少し感情が高ぶってきたな。
「まー落ち着いてよ、本当にそんなんじゃないから。君の為なんだって」
「本当ですか……?」
私はお手拭きに、古代文様と古代文字を簡易的に書く。呪文は唱えない。
「証明するから、これ触ってみて」
私はりゃんめに、お手拭きに触るように促す。
「なんですかいきなり……いやよ……怖い……呪いみたい」
「逆だよ……お札」
「え……お札?」
「このまま行くと、りゃんめちゃん……やばいよ?」
「やばい?」
「うん、かなり。自分が一番分かっているんじゃない?」
りゃんめは少し考えた後、理解した顔を見せる。
「……どうしたらいいんですか?」
「とりあえず、触ってよ。そうしたら意味がわかるから」
「はい……」
りゃんめは、そろっとお手拭きに触れる……
その時――
りゃんめの大きな瞳から涙がボロボロと流れ落ちた。
他のメイドや店長がそれに気づき駆けつけて来たが、りゃんめは皆を静止する。私は大丈夫だからと。
「こんなに……こんなに……不安が安らいだの久しぶり、感動して涙出ちゃいました。はは こんな気持ちで生きれたらどれだけ幸せなのかな」
「そうだね……」
りゃんめは泣きながらも、とても幸せそうに話す。他のメイドや店長は何かを察し、速やかに元の場所に戻って行った。
「幽明さん、あなたは霊媒師?」
「勘イイね君。そう、お祓い屋さん」
「これに触れてれば、解決するんですか?」
「そう甘くはいかないんだよねー」
「じゃあ、どうすれば……」
「とりあえず、本当に解決したいなら、私の質問に全て答えて。それで、この後すぐ早退して私と一緒に来て欲しいかな。時間があまりないだろうし」
「無理にとは言わないけど……ね」
「協力します。でも……その……私お金……無くって」
「いいよ、既に貰ってるし。それに、君が今から助かるとしたら、それは君が受けられる当然の報いだから、自分の行いに感謝しなよ。過去に色々あったとしてもね」
「行い……報い……」
「業ってやつだね」
「じゃあ、もうちょっと踏み込んで質問」
「君、パパ活してるでしょ?」
「はい……」
「あ、責めてる訳じゃないよ。それは君の自己責任だから」
「幽明さんストレートですね」
「よく言われる ははは」
「問題は、そこじゃなくて、○○広場利用してる?待ち合わせとかに」
「はい、あそこはそういう場所なんで」
はーいビンゴ。
「その時何か壊したり、触れたりしてない?もしくは他に別の……」
「いえ、あの場所には何もしていません。むしろずっといるので、居心地がいいくらいです。最初は軽蔑していましたが、今では逆に心の支えでもあります」
「それだね」
「大体わかったよ」
「パパ活についてもっと聞かないんですか?」
「んー必要無いし、関係ないし、関係したくないしね」
「そうですよね」
「何か言って欲しいの?」
「あ……いや……」
「偉いね。ちゃんと背負って変わろうとしてるんだ」
「そんないいもんじゃありません」
「ごめんね、辛い事ぐいぐい聞いて」
「いえ、大丈夫です」
「いい事あるといいね」
「優しいですね」
「そこそこね」
「ちなみに、趣味は?」
「いきなり変わりますね」
「いいじゃん教えて」
「仕事とかで忙しいんですけど、休日は買い物行ったり、公園の掃除のボランティアとかもたまに、ただの気分転換にですけど。」
「立派だね。中々できないよ?」
「ふっ ありがとうございます」
その時の、りゃんめの笑顔は無垢な少女の様に綺麗だった。
この子はまだ助かる可能性があるな……
「そろそろ行こうか?」
「あ、はい。店長とみんなに言ってきます」
数分後、着替えて出てきた、りゃんめと外に出ようとすると。
他のメイドの店員さんや、店長さんが深々と私に頭を下げてきた。
「君、場や人に恵まれてるね」
「それぐらいなんですよ、取柄」
「すごい事だよ、それって」
彼女はまた少し、心から笑った――
少しずつ、彼女本来の感情が出てきてるみたいだ。
私達は、1km程他愛無い会話をしながら歩き、〇〇広場につく――
そこは、街の中心にぽつんとある、何の変哲も無い広場で昼間は誰もいない。
コンクリートでできた地面、広場を囲む林、中央に小さな噴水がある。
私は中央の噴水のオブジェと林の中にあると聞く小さな祠にあらかじめ目をつけていた。
私は噴水のオブジェを見上げる――
「完全にこれだね」
このオブジェは何かの復興のシンボルらしい、しかしそれ以前からあった何かをさらに引き継いだ形でもあるらしい。
りゃんめがこの広場にボランティアに来た時に、腰の曲がった小さなお婆さんから聞いた話だとそんな感じだったとの事だ。
しかし、その女性の様な石像は、ひどく顔がえぐられている。おまけに落書きまで施されている。
「ひどいですよね。私配信で見ました。どっかの若者が再生回数欲しさにやった
んです。一時はニュースにもなりましたし。その頃から、パパ活やマッチングアプリの待ち合わせが増えてきたって噂もあります。祟りだとか……」
「その配信、まだやってる?」
「いえ、更新はその時から止まっています」
私はこの広場の名前で検索をかける。
「あーこれか、なるほど……」
「ちょっと電話していい?」
「はい。勿論」
トゥルルルーーー
(あ、もしもし怪丘さん?)
(はい、どうされました幽明さん)
(体調どうですか?)
(おかげさまで、すっかり元気です!)
(それはよかったです)
(何かありましたか?)
(えーっとね、例ののっぺら坊の件の行方不明者のリストって近くにあります?)
(はい。ちょっと待ってくださいね)
(あのですね、それって……の日付に居なくなって……っていう配信者の男性の若者二人だったりしません?)
(えーーーー……っと、はい!!!そうです!!!なんでわかったんですか!?)
またもやビンゴ。
(詳しくはまた話します。怪丘さんありがとうございました)
(どういたしまして!また会いましょうね幽明さん)
(はい。体にお気をつけて)
元気になったようで、良かった。
「お待たせ、りゃんめ」
「あぁ、はい。なにか分かりましたか?」
彼女はそういいながら、無意識に像の周りの煙草の吸殻を掃除していた。
「その配信者、二人共行方不明になってたよ」
彼女は絶句し、顔面蒼白になる。
ミスったな、私って空気読めないわ。そりゃ怖いよな……
「幽明さん……もしかして私も……」
私は何も答えなかった。
その時――
異様な気配がする。
のっぺら坊、近いかも。
恐らく、林の祠に近付いた時点で始まるな……
だが、ここで引き返して逃げても、彼女が奴と遭遇するのは秒読みだ……
どうすべきか……
正直言うと、私はただ依頼を受けているだけで、呪われてもいないし、奴は私の気配から近寄ってすらこないだろう。
だから、私だけ引き返しても、別にいいのだ。
だが、それは無責任すぎるなさすがに。
今後に悪影響がでる。
それに……私はりゃんめを結構気に入ったらしい。
「ねー、りゃんめ。二つから選んで」
「このまま、追われながら、どうにか色んな事から逃げ切り続けるか」
「一か八か、恐怖に立ち向かって、生き直すか?こっちは結構苦しいけど」
即答だった。
「生き直したいです」
「了解」
「覚悟しなよ」
「……はい」
「いこっか、林の祠だ」
私とりゃんめは、広場の鬱蒼として奥が見えない林に入って行く。
昼下がりで快晴だと言うのに、林の中はすごく暗い。
まるで、ここだけ別の世界かと言う様に……
私達はサクサクと湿った落ち葉を踏みながら、林の最奥に進む。
そして――
空気が変わる。
なんだか生暖かくて息がしずらい。
私達が立っている最奥の場所には、もう、街の明るさは届かない。
そんな、暗がりの中でも一番の闇に小さな祠がある。
私達はすこしずつそれに近寄る。
「あぁそうか……」
そうかこれは怒るよな――
私はそれを見て納得する。
なんとそこには、噴水のオブジェの顔の削られた部分が、ボロボロと置かれていた。
「あ、思い出しました」
りゃんめが閃いた様に言い出す。
「え?」
「私、あの配信見た後、可哀想と思って、破片集めて、祠に供えたんです」
それじゃん――
滅茶苦茶やばい事してるよ。りゃんめ。
りゃんめが壊したと思われたかもしれないし、あざけりの行動と思われたんだろうな……
「この情報役に立ちましたか」
「うん……でも、もう遅いよ。ほら」
私は振り返り暗い林の中で、近づいてくる長身の、のっぺら坊の女性を指さす。
「きゃーーーー!!!!!」
りゃんめをはその妖魔を見て絶叫する――
その妖魔はズタボロの着物の様な服を着て、3メートルはある長身だ。
肉体は禍々しい漆黒でミイラの様に干からびている。
髪は長く、地面を引きづっている。
顔は勿論のっぺら坊だ。オブジェに似てる。
顔は無いが、少し嬉しそうに近寄ってくる。餌の時間みたいな雰囲気に近い。
次の瞬間――
りゃんめが絶叫の末に走り出そうとする
「きゃーーー!!!」
「だめだ!!!りゃんめ」
それと同時に、のっぺら坊は、少し不気味に横揺れしだす。
あーやばい。やっぱ引き返すべきだったか。
そう思うと同時に空間が変わる――
臓器の様な気味の悪い部屋――
何かの絶叫の部屋――
部屋中の、壁も天井も地面も、無数の顔で埋め尽くされている。
それらが、何かを絶叫してる。
助けてくれとか、自分はやっていないとかの言い訳みたい言葉叫んでいる。
ちらっと見えたが、あのオブジェを壊した配信者の男二人もその中にいた。
当然、私は関係無いので、救う義理も無く、知らないフリをしたが。
りゃんめは腰が抜けて放心状態だ。
「りゃんめ覚悟したんだろ?立ちなよ」
「いや……こわいこわいこわいこわい」
まっそうなるよな。
「ねー、あなた。ここの地母神様なんだろ?勘弁してくれないかな?彼女はやってないよ?むしろ、崇めて、掃除までしてたんだから」
奴は、腰をかがめながら、私達に近づく。
「参ったな―、この部屋ちょっとずつ縮んでるじゃん」
「りゃんめ、立って立ち向かわないと、ぺしゃんこだよ?」
「こわいこわいこわい許して許して許して許して」
りゃんめの声が聞こえないぐらい、部屋の中にいる存在達は絶叫している。
「ほらー、こんな謝ってるじゃないですか。しかも本当にこの子やって無いんですよ!って聞こえてます?」
「ワタ……シ……ヲモドジ……デ……ミコ……サ……マ」
りゃんめは妖魔の声を聞き、はっとしたように、カバンからお守りを取り出す。
「かかかかかかみさま。こここれを、どどうぞ」
りゃんめは顎が震えすぎてマトモに喋れてない。
「ボボボッボランテティティアアアのオオオ婆ささんんがくくれたたたものですすす」
そう言って、あろうことか、妖魔になってしまって暴走してしまっている、電気街の地母神様に近付きだして土下座しだした。
中々の勇気だ。
「やっぱりゃんめすごいね。この状況で謝って近づくなんてできないよ。壁のやつ見なよ?みんな言い訳しかしてないよ?」
私はりゃんめを起こし、肩を持ってあげる。
「な?いい子でしょ?地母神様。本当に私達はあなた様の味方なんですよ?」
それでも、暴走が止まらず近づいて来る。
よく見ると顔の無い場所から、涙の様なモノが流れている。
「ああ、そうか。あなたも被害者で苦しんでるんだ。というかここは誰かが作ってる訳では無く、苦しみの連鎖の溜まり場って感じだな」
「て事は、一番のあなた様の供養は、一回この穢れをリセットすることですね?」
「リセ?リセ……モド……シテ……イトシイ……ヒビ……ニ」
「わかりました。地母神様。私達現代人のせいですからね。ホントにごめんなさい」
「イイエ……マモレヌ……コト……ハズ……バカリ」
「全部はっきりしたよ」
「りゃんめと地母神様が出会った理由も」
「二人共、ものすごく良い存在なんだ。だから、こんな形ではあるけれど、縁で引き寄せあったんだ」
私は、滝の様に涙を流すりゃんめと地母神様を見つめた。
その間にも、壁中の顔が叫びまくる。
おい!!!お前!!!さっさと助けろ!!!自分の役目を果たせ!!!馬鹿女!!!
こいつらはどこまでいっても傲慢だな……
「うるせぇ!!!静かにしろ!!!自分でなんとかしやがれ!!!」
そう言って、私は靴で地面の顔を踏みつけた。
そうしてる内にも、どんどん、部屋は小さくなる。
考えろ私――
この空間は、恨みや怒りの塊の現象。そこに全く別の関係性を加えれば条件が崩れ破綻するはずだ。
関係性か……
りゃんめと地母神様……
あ、私もそうか……
私はこことはどんな関係が……?
ここは、あの世でも、この世でもある状態かもな……
それって私の名前じゃん。
幽明――
なら――
私のする事は……
一つだけだ。
アカリを灯すのさ――
「なあ、りゃんめ」
「ははははい」
「もう一度頑張れるかい?」
「ははい」
「よし、強い子だ」
「……私が地母神様を元の姿に戻すから、最大限の君の愛を持って、元の存在の方を抱き締めて欲しい」
「……そそそそそれは…………」
「怖いか?」
「……だいじょうぶ……です」
「そっか……やろう。時間が無い」
もう一分もすれば、この空間ごと潰されるだろうからな……
しかし、そんな縁になる事はあり得ないと確信している。
そう生きてきたのだから、自分が一番知っている――
私は制服の袖をまくり、掌を上に掲げる。
銀色の数珠を盛大に震わせて呪文を叫ぶ。
「イル……ドメイ……シュカーニュア……アンクリーヴァ……アカーシャ……アクト……ディルアクト……リヴラ……アカリ」
次の瞬間――
霊光を纏った透明なお札が無数に出現し、空間全体に満ち溢れる。
それは壁中の顔の目や口を塞ぎ、不浄なモノを一切抑える。
そして、地母神様とリャンメの体にも無数に張り付き浄化の繭の様になる。
まるで、新しく素晴らしい何かが生まれる様に、その中がキラキラと清浄な煌めきで光り出す。
「偉大なる天秤よ、さぁ今こそ、正しき傾きの道に私達を導き給え!!!」
「アクト・リヴラ・アカリ!!!」
そう私が言い放つと、中央の空間が避け、眩い天国の扉が開いたように光が差し込む。
そこから、この世では見る事の出来ない程に見事な、神器の天秤が現れ、四方八方に光を放つ。
これで、条件はほぼ崩れた――
今ここは無垢な天国の様な場所にほぼ変わっている。
そして目の前の二つの繭が開きだした――
そこには、腕の傷が一切無くなったりゃんめと、花畑に一凛しか咲かない尊い花の様な黒髪の美しき姫が誕生した。
「りゃんめ!!!今だ!!!」
「はい!!!」
りゃんめは姫に抱き着き、精一杯叫ぶ。
「すみませんでした。ごめんなさい。もうあなた様を悲しませません。私が死ぬまでこの身で守り続けます。どうか地母神様、お許しください。尊いお方よ、お許しください。心からあなた様を愛させてください」
姫は、柔らかく笑う。
「大袈裟ね、最初っから怒ってなどおりませんよ。ずっと、あなた達二人が来ること
は分かっていました。信じてもいました。だから何にも恐れや怒りなどありませんでした。いつか救われるって分かっていたのですからね」
「地母神様……」
きっと、りゃんめは、その深い愛の中でいつまでも抱かれたいと願ったのだろう。
シスイでは無いが、私にも未来が視えた。
この土地でしわくちゃになりながらも、この地母神様を供養し続け、輝かしい瞳で皆から愛されてボランティアをする、未来のりゃんめの姿を。
「地母神様。数々のご無礼、心からお詫び致します。我は幽明 灯と申します。
私もこの土地の繁栄に尽力致しますので、何卒見守っていてください」
「いえいえ、数奇なるお方よ。顔をあげなさって、今回の事は真に感謝しておりますよ。また機会があれば三人でお話ししましょ すごく楽しみですわ ふふ」
「ありがたき幸せでございます」
「ふふ では、元の世界にへ戻りましょうか?」
私とりゃんめは口を揃えて「はい」と言った。
そして――
私達は、元の場所帰った。
しかし、大きな違和感がある。
とても明るい。
そう、すごく明るいのだ。
陽が当たってるわけでは無い。
足元からだ。
私は、足元を見る。
すると――
林一面が綺麗な花畑に変わっているではないか。
光の正体は、色鮮やかな花々の光だった。
「見て下さい、幽明さん」
そう言って、りゃんめが指さした先の祠は、眩いぐらいにピカピカに輝いていた。
そこに咲いてる、一凛の花。
見た事も無い花が、私達が見たと同時に風で揺れた。
それは、まるで笑っているかの様に……
私は、花畑を心から楽しそうに歩くりゃんめに尋ねた。
「これからどうするの?りゃんめ?」
「そうですね……ちゃんと稼いで、募金とかボランティアもっとしようかなって……」
「ふーん、いいじゃん」
「ちゃんとって?」
「花屋さんになりたいかもです!」
そう笑う、りゃんめの瞳には、足元の綺麗な花畑が反射していた。
それが私には、天秤の形に見え、既に幸せの未来に傾いている気がした……




