花岡 命 と言う少女
十八時、私はヒノと響を乗せて、車で四十分程の電気街に到着した。
幽明は自分の車があるので、単独で先に向かいドミノ達と既に合流している。
後ろから、幽明の運転を見ていたが、彼女はとても運転が上手い。あの高級車を可憐に乗りこなしている。
私達三人も、車から降り、例の焼き肉店まで向かう。
場所は電気街の駅から10分程で、雑居ビルで間借りしている訳でも無く、丸々一店舗全て焼き肉店の、巨大な店だ。
食べ放題で、肉以外にも様々なメニューがあるらしい。
その単品も結構美味いと評判だ。その代わり値段は倍かかる。
しかし、そんな事を気にしないぐらい私とヒノは依頼報酬の貯えがある。
全く、お金に余裕があると、ストレスが少なくて助かる。
焼き肉店に入ると、幽明が既に予約していてくれて、店員さんが幽明達の座席まで案内してくれた――
「三人とも。お疲れ!」
ドミノが、からっと元気よく手を振る。
その横には幽明、そして初めて合う少女がいた。
その少女は恥ずかしそうに、ちらちらとこっちを見ている。
私達三人は、ドミノ達三人の対面テーブル席に座る。
「やっほドミノ。あっ花ピーだ、カワイイ!私の事はヒノって呼んでね」
ヒノが軽く挨拶する。
「初めまして!!宇空木 響ちゃんでーす。しーくよろよろです!」
「初めまして、花岡さん 冥シスイです」
少女は私達に圧倒されてか、顔を真っ赤にしてあたふたする。
緊張しているんだな……無理も無い、このメンツだからね。
それより……
車を降りてから、視線をずっと感じる。
少し、変わった気配もする。
私達とは違う、研ぎ澄まされた神社の様な気配。
「あ、あ……あ……あの、花岡 命 (ハナオカミコト)と言います。高校一年生です。名前は、命と書いてミコトと読みます。……その……ミコトと呼んでくれたら嬉しいです……」
いい名前だな。神社の気配は命ちゃんからかな?関係してそうな名前……
「同い年です!それじゃーあれですね、皆さん。花岡っちより、命ちゃんで統一しますか???」
こういう時、響のいい意味での気にしなさは役に立つ。
みんな、異論は無いと頷く。
ドミノだけ花岡っちという言葉に名残惜しそうなのと、女の子を名前で呼ぶのに恥ずかしさを感じてそうだ。
「さーみんな、今日はどんどん食べよ!命ちゃんも遠慮しないでね!とりあえず、皆ジュース頼もう」
幽明が、音頭をとってくれた。
命ちゃんは、嬉しそうに「はい」と頷く。
命ちゃんの見た目は意外だった――
ドミノは男と勘違いしたと言ったが。
それは、結構頭がおかしいと思う。
何故なら、目の前の命ちゃんは、超が付くほどの美少女で、アニメ好きとは聞いていたが、彼女自身がアニメの主人公の様な雰囲気だからだ。
肩まで伸びた真っ黒で艶やかな髪に、三白眼の大きな淡い紫の瞳。
鼻や口は小さくバランスが良く、肌も混じり気の無い白。まつ毛なんてとても長い。
無駄が無く、各要素がどれも美しい。何かに祝福されて生まれて来た様な和風の美少女。
帽子と眼鏡をかけていたからって、これで男と間違うのは、ドミノは少しおかしい。
その証拠に、ドミノ以外の女の子を見てみたらいい。
皆、テンションが少し上がっている。
よく考えれば、ここにいる女の子、命ちゃん以外、全員女の子が好きじゃないか……
テーブルにはドミノが注文タブレットで頼んだ、肉がどんどん運ばれてくる――
ライスやキムチ、ナムルや野菜も所狭し並んだ。
ドミノは網に肉を丁寧に並べていく。結構几帳面なやつだ。
「カルビもう焼けた?」
ヒノが二十秒に一回ぐらい聞く。
「さっきも言ったろ、まだだ」
「ドミノ、タンのして」
幽明が言う。
「ああ、もうのしてる。あと30秒待て」
「ドミノさん、イカのしてくれなイカ?」
響は肉が焼けるまでの退屈が増してきて、ドミノに茶々をいれだす。
「肉食べてからにしろよ、響ちゃん」
「ドミノ、マメだね」
私は一応褒める。
「ん、豆はサラダで食べろ」
は?せっかく褒めたのに……なんかちょっとイラついた。
「ドミノさん、逆鱗大戦浪漫チェスカの二期どう思います?」
命ちゃんは少し早口で、ドミノに尋ねる。
「命ちゃん、今俺は肉焼く任務で忙しいんだ、後にしろ。そんな簡単に答えれる話でもねーだろ、それは?」
簡単だろ。アニメの感想だよ。
命ちゃんは少ししょんぼりする。なんだか可哀想だ。
「あれは、作画が良かったね。チェスカがとうとう魔王一派のビルルクの逆鱗に触れて、仲間全員やられるんだけど、覚醒した能力で過去にループしてやり直すとこがよかったね」
私は命ちゃんにそう言った。実は私もこのアニメ結構好きだった。
その瞬間、さっきまでの大人しい命ちゃんの表情が変わり、物凄い勢いで話し出す。
「そうなんです!チェスカに剣士メテルデが最後にキスした瞬間、奇跡的に魔力供給が起きて、チェスカの挑む者スキルが覚醒し、ループ能力獲得するんですよね。ビルルクからそれでギリギリ逃げ切って、最初にメンバーと出会う酒場に飛ばされるんですよ。で、仲間達が初めましてって言うんだけど全員の瞳から涙が流れれててホント神!!なんですよね!!」
一瞬、みんなの雰囲気が止まった。
命ちゃんはイメージが変わったのだろう。こんな熱いタイプだったんだって顔をみんなしている。
「ご……ごめん……なさい。私ったらつい興奮しちゃって」
命は顔を真っ赤にして俯く。
「命ちゃんは、超がつくオタクさんですね」
響きが遠慮無く言う。
「続きが聞きたいわ!命ちゃん!」
ヒノもアニメの超展開に心が打たれたみたいだ。
「ふふふ 君達みんな飽きないね」
幽明は満足そうに笑っている。
「全然いいよ、命ちゃん。君の言ったところ私もグッときたし」
私は命ちゃんに優しく微笑んだ。
「は……あう」
声にならない鳴き声を出し、また俯く。とんだ恥ずかしがり屋だ。
「でさードミノ、あんたなんで泣いてんの?肉焦がさないでよ?」
幽明がドミノに突っ込む。
「今は泣かせてくれ。頼む幽明。チェスカと仲間の為に泣かせてくれ……」
「肉焼けよ!ドミノがトング持ってんだから。焦げちゃうだろ?」
「お前はビルルクか!!」
ドミノが幽明に言い出した。きっと怒られるぞ。
「は?なんか分からないけど、めちゃディスってる気がするんだけど」
「まっまあ……二人共」
ヒノが気まずそうに、笑ってなだめる。
「ところで、このお肉出来てますよ!はい、命ちゃんどうぞ」
響は命ちゃんのお皿に肉を入れてあげる。
「あ……ありがとうございます。響ちゃん」
「いいえー、同い年チームで頑張りましょう!とおぉ!」
「ふふ」
その後は、みんな焼けて行く肉を美味い美味いと、どんどん食べていく。
確かに、値段が倍だけの価値はある。
肉は柔らかく、全く臭みが無い。それに肉本来の旨味や甘みも強い。
それを、炭火で焼いてるから、とても香ばしいし、余計な脂も網から落ちて食べやすい。
タレも果実を混ぜた自家製で、芳醇で濃厚だ。
みんな、想像以上に美味しいと手が止まらない様子だ。
「カルビ超最高!!」
ヒノは、口を膨らませてうーんと唸る。ああーすごく可愛いよその仕草、私の愛しの彼女。
「この肉、滅茶苦茶美味いぞ。こんな味覚えたら、俺はいつもの食事満足できねーよ」
ドミノも喜んでいるみたいだ、よかった。こいつが喜ぶ仕草も子供みたいでかわいい。
「ドミノ、意外と菜食主義なのに珍しいね」
いつの間にか、幽明とドミノは仲直りしてる。いつもこんな感じなんだろう。
「うん。この肉は滅茶好きだ」
「よかったね。UFO作戦頑張ったもんね」
幽明はドミノを見つめてストレートに褒める。この落差でドミノは幽明の虜になったのかもしれない。
「あぁ……ちょっとはな……」
視線を逸らし恥ずかしそうにする。
ヒノと響はそれを見て、何やらこそこそ言って笑っている。
「シスイさん、好きなアニメ他にあります?」
「結構あるよ、大抵みてるし、名前言ってくれたらわかるよ」
命は必死に考え出した。好きなアニメを相手に述べるのは、オタクにとって自分がどんな人間か述べるのに等しいからだ。
「あっドレミさん、豚トロ追加で」
「だれが音符だ。響ちゃん、どんどん俺の扱い雑になってないか?」
「三時間ぐらい抱き合った仲じゃないですか!」
「ぶーっ!!! ふははははは」
幽明が爆笑しだす。
命ちゃんは、赤面してアニメの話が頭から吹っ飛んだみたいだ。
「確かに君達は抱き合っていた。響ちゃん本当に面白いね!」
私とヒノはきっとUFOの話だろうと想像はついていたが、命ちゃんは首まで赤くして目をきょろきょろしだした。
「おい、変な言い方するな!やむを得ずだろ?命ちゃんが誤解するだろうが」
「み……みなさん、結構大胆なんですね」
命ちゃんは伏し目がち私達を見る。
「冗談ですよ命ちゃん。ドミノさんはUFOから私を抱きかかえて、怪物をバッタバッタ倒して救いだしてくれた、アニメさながらのヒーローさんなんですよ」
命の淡い紫の瞳が輝きだす。
「やっぱり、思った通りです!ドミノさんはヒーローっぽいと思ってたんです!」
「そんな大したもんじゃねーよ」
「ドミノモテモテだなー ふふ」
幽明は楽しそうに笑う。
「というかー……命ちゃん可愛すぎない?」
幽明が命ちゃんをじーっと見つめて、とうとうみんなが思ってる事を言い出した。
「ホントそう思ったワタシも」
ヒノはカルビをギューッと噛んで引っ張りながら言う。
「確かに!仮にアイドルなら、CMやドラマに引っ張りだこでしょう!」
響はトウモロコシをカリカリかじって器用に喋る。
「そんな可愛いかー?最初の男の印象が抜けねーわ」
ドミノがデリカシーの無い言葉を言う。この鈍感さと、いやらしくなさが命ちゃんが友達に選んだ理由だろ。
「やっぱドミノおかしいよ、どこ見てそう思った?」
私はとうとう聞いた。
「えー……眼鏡とか?」
あほだ。
「じゃあー私も男と思ってるのかよ、ドミノ?ホントおっかしいなお前。 ははは」
幽明が言う。
「いーや、幽明は女だ。綺麗なおんな」
何の躊躇も無く、女性を褒める男は厄介だ。
ほら、幽明を見てみろ。
「ちょと、トイレ行ってくる」
顔を壁に向けたまま、幽明はトイレに行く。
「今のわざと?」
ヒノがドミノに聞く。
「何が?」
ライスをかき込みながら喋るドミノ。
「なんか二人萌えますね……」
命ちゃんの目がオタクモードに変わる。
「私も言われたいなー、綺麗な女って」
口の周りにトウモロコシをたくさんつけながら、耳をほじる響。
「あらあら、もう。あんたが言われないのは自己責任よ」
そう言ってヒノは、響の口の周りのトウモロコシを拭いてあげてる。
「響は、ちょっと野性的すぎるよね」
私は響を見て言う。
「だれが、狼改造人間ですか!!ワオーン!!」
響が店内で遠吠えをあげだす。
「なによそれ!!あんたバカすぎ」
ヒノは涙を流す程笑っている。
「ちょっと、響ちゃんやめろよ。異形でも恥ずかしいぜ今の」
ドミノが真剣に引いてる。
幽明が少し焦って返って来た。
「今の何の音!?」
その言葉で、みんな一斉に笑い出す。
あえてみんな、響が叫んだと言わず、少し沈黙し、
――幽明は?が飛んでいる。
「そういや……さっきさ、UFOの話したけど、命ちゃん驚かないんだね」
わたしは素朴な疑問を口に出してしまった。
「あ……はい」
答えてくれた。
「だって、命ちゃん家、払い屋だぜ?俺が悪魔の右腕持ってるのも知ってるし。なあ命ちゃん?」
「はい……そうなんです」
初耳すぎる。全員が驚きに打ち抜かれた顔ををする。幽明でさえもそれを隠せない。
「通りで……命ちゃんの雰囲気変わってたんだ」
幽明が納得と言う顔をする。
「異形とか外の存在でなく、古くからの日本の霊とか妖怪達に関係する雰囲気がしてたんだよ」
私もその感じがした。
「使役してる妖魔達とかのですかね……?」
みんな沈黙する。この子の底が読めない。
「一個聞いていい?それでこの話はやめよう。いきなりぐいぐい聞かれるの命ちゃん嫌だろうし」
幽明がすごく聞きたい事がありそうに言う。
「はい。どうぞ」
淡々と答える命ちゃん。
「もしかして、ドミノに声掛けたのって、一瞬、払おうとした?」
幽明は目当ての質問を口からつらつらと出す。
「そうですね、余りに歪な気配だったので……でも、話をしてみたら、悪い存在では無かったし、趣味が合ったので……」
「ふはははははははは!!!!!ドミノ!!!!ドンマイ!!!」
「まじかよ!!!俺はてっきり、親切なジャパニーズボーイかと思ってたのにー!!!」
ドミノは愕然とする。
「ごめんなさい へへ」
舌を出し笑う、少しあざとい命ちゃん。
「え、でもドミノの気配感じて払えるって思ったの?」
ヒノがみんなが疑問に思った事を口にする。
「ヒノそこまで。色々あるんだよ。これも縁だね。またとんでもない子が仲間になっってくれたかもしれない。敵意は無いんだから当たり障りなく仲良くしていこう」
もっともだ。
「それが嬉しいです……あと、ドミノさんの事は本当に良いお友達と思ってますよ?」
「……まー……そうなら……なんでもいっか!ヒノとシスイとも最初の始まりは死闘からだったしな」
「そうだね」
私はうんうんと頷く。
しかし、ドミノを払えるかもと算段をして挑むこの子、能力は一体なんなのだろう?
使役とかいっていたな……
「今度、みんなで依頼行ってみない?アーテマが不出来な弟子が暴走して困ってるらしいよ。呪われた遊園地を作り上げたらしい。かなりやばいらしいやつらしいけど」
「行きましょ!!!行きましょ!!!」
響が一番に乗り出す。一番危なくて、一番安全な子。
私とヒノは顔を見合わす。一度断って大惨事になったから、なかなか何も言いづらい。
あれは、もしかしたら彼女を突き放したとみなした女神からの、私達へのお仕置きかもしれない。
またあんな傷つく響は見たくない……でも、危険にはさらしたくない……すごく迷う。
幽明の言葉通りなら、一番安全なのは女神の守護がある響で、彼女が居れば、私達の生存率も25%ぐらい上昇するって話だ……
「行く気になった人は連絡頂戴ね。私とドミノは勿論ついて守るし、能力の無い人は私が結構効くお札作るから」
「アーテマさんの弟子って時点で、やばい匂いプンプンするけどなー大丈夫か?」
ドミノが不安そうに言う。
「私……行こうかな……人を困らす異形は放っておけないし……」
その瞳は恐怖が一切ない。
その言葉と瞳に、皆理解する。
この子はやはりただ者では無いと。非常に強力な何かを持っていると……
「幽明、たぶん私は行く」
私も一応、幽明にお世話になってるしな。
「私も!遊園地行きたいし」
なんか違うな。カルビ行きたいのノリだ。
響は、私とヒノの危険が故に一緒に来て欲しく無さそうな雰囲気を丸々感じ取ってか、つまんなさそうに、口を尖らせてむくれている。
「響……本当は来て欲しくないんだ。それはね私もヒノも君を失うのがすごく怖いからなんだ」
「……」
響の顔が暗くなる。
しかし、前とは違う。少しだけ受け入れというか、それも仕方ないと言う顔もある。
「それで、聞きたい……そんなにどうしても来たいの?」
女神の判定で重要なのは彼女の意思を尊重する事だ、それに従おうとヒノとは事前に話もしていた。
「どうしてもに百を掛けるぐらいです!」
行きた過ぎだろ。
「やばくなったら、私達置いて逃げれる覚悟ある?」
「逃げますとも!!!」
逃げるんだ。響って本当に面白い。みんな、もはや笑っているよ。 ふふ
しかし、きっとこの子はそれが出来ない子だとみんなが知っている……
私とヒノは顔を見合わせる。ヒノも承諾したみたいだ。
「じゃー見学だけね……行くとしたら。ヒノこれで大丈夫?」
「仕方ないわね……」
ヒノは呆れた風にやれやれと言う手をした。
「みんな来そうな感じだね。またその時になったらグループチャットで連絡するわ。
すぐかもしれないし、遅いかもしれないから。現段階では予定入れずらいけどごめんね」
そうこうしている内に食べ放題の時間は過ぎて言った――
私達は、あまり夜遅くなってはいけない年齢でもあるから、早めに切り上げる。
私とヒノと響は、幽明の車を見送る。ドミノと命ちゃんは後部座席から手を振ってい居る。
「ばいばーい」
ヒノと響はジャンプして満面の笑みで手を振る。
私も同じく、飛び跳ねさえしないが。
少し気になっていた、最初から感じていた視線がそれと同時に消えた。
「さて、私達も帰ろっか?」
私は二人に言う。
「そうね。結構今日は疲れたし。楽しかったけど」
ヒノはあくびする。
「こんな幸せな日があっていいんですね」
響がしんみりと言いだした。
「いいんだよ響」
私とヒノは振り向いて、立ち止まる響に手を差し伸べた。
幽明の車内―― 以下 花岡 命 視点。
「命ちゃん、ホントにおうちこの辺?」
幽明さんは、私に不思議そうに問いながら暗い山道を運転する。
それも無理は無い。
「はい。もうすぐ門です」
私は答える。
「門?」
幽明さんは私に再度、答えを求めない疑問を問い返す。
「えぇ」
そのまま車は五分ほど走る。ナビには山しか映らないので、とても家があると信じれない顔をしている。
ドミノさんは、帰り際にしたアニメの話をずっと一人で考えてブツブツ言ってる。
この人のこういう単純な所は好きだ。
「ここです」
私は言った。
「ここは……」
幽明さんは、その”通常の住宅ではあり得ない大きさの門”で何かを察したのだろ。
私を降ろし「じゃあね、また連絡する」と言っていた。
私は、彼女に似た様な物を感じる。
彼女はあの瞳でどんな世界を生かされているのだろう?
ドミノさんはと言うと「でっけぇ門。鍵どんなけでけぇんだ?」といいながら私に手を振っていた。
あの人が、そんな人でよかった。そうでなければ彼と戦わないといけなかったかもしれない……
私の”周りの存在”も、彼を敵とはみなさなくなっている――
私が門前に立つと、女執事の 月原 ノウコ が門まで車を出し迎えに来た。
私は、その無駄に大きい高級車に乗る。
車内は、ノウコの気配で満ちている。私は気配に敏感である。
彼女自身の少し特異な能力にも関係する。
彼女は、いくつかの妖魔の幽体と契約しており、その存在の能力を自身の体に降ろす事が出来る。
魔術が使用できたり、身体能力が人間の比では無くなる。
全ての幽体の存在ができる訳では無く、彼女と契約している存在の特殊さから為せる事だ。
私にもこの能力がある。しかし、私の場合は代々受け継がれてきた存在との話になるからニュアンスが違う。
大型の契約とでも言おうか……
私の場合は、その受け継がれた存在が三体と、”体に降ろす事無く”行動してくれる妖魔が五体いる。
ノウコと私は、一緒に払いの仕事をしたりもする。
信頼できる数少ない人間だ。
「お嬢様。本日はお楽しみになれましたか?」
「まぁね……皆さん良い人だったわ」
「では、あの忌まわしい腕の持ち主は払われないのですか?」
「ええ……あの人は面白い方よ。害は無いわ……」
「そうですか……我らの純なる場所を荒らす者では無いのですね」
「そう、大丈夫……。ノウコ、庭で降ろしてくれる”キシャルに挨拶”してから帰宅したいの」
「はい、命お嬢様」
――
リゾートホテルより大きいこの敷地。何百年も受け継がれてきた場所。
そんな無駄に古くて、無駄に大きい庭園を歩く。
そこで、一体の存在が陰から頭だけ出している――
闇夜に輝いた、私の瞳に寄って来たのだろう……
執事のノウコは、遠くから私を見守っている。
その陰に近付く。
私は、気配で感じとる。
今日はキシャルしかいないのかと、少し残念になる。
みんなにも出来れば会いたかったのだ。
影がさらに出てくる――
それは……
とてつもなく大きな白蛇。綺麗できめ細かい鱗がりんりんと月夜に輝く真に美しい存在。
頭だけでも、私より大きい。
キシャルは屋敷の守り手の妖魔。キシャルからすれば、この屋敷もさほど大きくない。
何故なら、キシャルの体長は50メートルをゆうに超えるからだ。
「姫様、清き場所を荒らす、他の世界から来た者共の様子は、どうでございますか?」
「ぼちぼちね……結構増えるスピードがはやくてね」
「わたくしもお手伝いしましょうか?」
「ありがとう、いつも助かっているわ。でもキシャルは屋敷を守って、あなたは目立つし、移動させると、奇跡の力の消費が大きいから」
「ありがたきお言葉。これからもなんなりとお申し付けくださいませ、ミコト様。
古来より、我が国で続いてきた力を他の存在の者共に見せてやりましょう。きっと戦わずして逃げましょう」
沈黙……
「もしね、私がどこかで危険な目にあったら、”みんな”助けてくれるかな?」
次の瞬間――
キシャルの瞳が世にも恐ろしく輝いた……
「そう、ありがとう。その時は、”みんな”にも奇跡の力を供給して応援するからね」
私は妖魔に力を供給しランクアップさせる事もできる。
「一応みんなの覚悟知りたかっただけ……今、あなたしかいないけど……」
キシャルは私にすり寄る。
「この街も、自然も、あなた達も私が守るからね」




