ジュブナイルからこんにちは
その日、私は気分が落ちていた。
部屋の窓ガラスが明るく光る程の快晴。
こんなにも天気が良く、世間は休日で、絶好のお出かけ日和だと言うのに、自分だけが置いていかれている気がした。
暗い部屋でベッドに潜り込み、見たくも無いSNSを無駄にスクロールしている私。
その理由は”ヒノ”にある。
前のキャンプの行きしに、変形する異形と遭遇し、死線を潜り抜けて帰ってから少し彼女はおかしいのだ。
何がおかしいかと言うと、ずっと何かに怯えている。
一体何に?……
ヒノは、いつも通り振舞えていると思っているようだが、私から見れば、やはり元気が無いし、不意の表情が暗い。
恐らく、あの異形に言われた言葉に関係するのだろう……
その一つとして”フィジャナーク”と言う言葉が、かなり関係してそうだが、その言葉についてはあまり彼女の前では言いたくない。
帰りの車で、なんとなく私がその言葉を口にした時の、彼女の絶望に呼び戻された様な、泣きそうな表情を、もう見たくないからだ。
何か、良い手は無いだろうか?
実際問題、私自身も、まだまだ響の件で心は重い。
これは、一生引きずるかもしれない……
あんな子があんな終わり方をするなんて、正直理解が追い付かない……
真面目に考えると怖くなる。
それに、響を思い出すと、すごく会いたくなってしまう……
もう叶わないのに……
あの独特な喋り方と声で、独特なポーズで笑かしてくれる人なんて、もう二度と私の前には現れないかもしれないと思う。
そう考えると、すごく寂しい。
ヒノもそうなんだが響も、私の得体の知れない不安を理解して、一緒に居てくれる稀有な存在なんだ。
そんな人が私の周りからいなくなると、私は一人で孤独におかしくなっちゃいそうですごく恐ろしい。
いつから、こんなに人に依存する考えになったのだろうか?
まぁいい、依存してるという事は支えてくれる人がいるともとれるんだ。
あぁ……ヒノがまた、心の底から笑える様になって欲しい……
それに、響にもう一度会いたい……
神様――
私は、きっと沢山を守る為に頑張る様に進みますから……どうか……
――
そんな、神様というより、もっと漠然と世界へ祈りながら、うつらうつらとしていると、眠りにつきそうになった。
その時だった――
ピコン――
依頼の通知だ。
依頼人―― 幽明 灯
依頼内容―― もう一度、生き直したい女の子手伝い。
詳細―― あなた達は縁を信じますか?
そして、縁から為される奇跡を信じますか?
もし、そうであるなら……
違いますね……そうであるのだから、この依頼があなたに届いたんです。
私もあなたと出会うべき一人の縁かもしれません……
是非、お待ちしております。
あなたが宇宙で彷徨う棺の様に、何かを探しているなら
少しはお手伝いできるかもしれません。
報酬―― ???
場所―― 〇〇街、○○山付近の公園、ベンチ辺り。
時間―― 本日、十六時。
――なんだこれ……
ゆうみょう?変わった名前だ……
依頼内容の、生き直したい女の子って、どういう意味で、私は異形霊媒だよ?
縁、奇跡?なんでドンピシャで私やヒノがよく話し、信じている事がわかるんだ?
私に届くべくして届いた?
ゆうみょうさんが私に出会うべき一人?何者?
何故、私の夢の内容を知っている……これが一番おかしい。ヒノにも、そこまで話していないのに。
手伝ってくれるの?詐欺とかじゃないよね?
報酬は濁すんだ……
場所は何故か、私とヒノのお気に入りの、知名度なんてまるで無い公園だし……
正直、不気味だ。かなり焦るよこれ。怖い。霊媒師か何か?
こっわ……
私は焦り過ぎた後、とりあえず、スクショを撮りヒノにすぐさま送った。
数分後――
メッセージが返ってくる。
(行ってみようよ!楽しそう!)
ノリ、軽っ。
(え、でも怖くない?)
(そうかな……シスイの味方オーラしか、しなくない?)
(まっ……そうだけど)
(確かに、なんか全部見えてますよ感すごいね。ユウミョウさん)
(そうなんだよ……)
(でも、女の子……助けたくない?)
(……そだね。それはある。異形霊媒だけど私)
(細かい事言うな! ふふ 行こ行こ)
(じゃあ、三時間後だけど大丈夫?てか今日一緒にいけるの?)
(勿論、行けるよ。三時間後ねーん)
(よかった。流石に一人は、色んな意味で怖い。あ、後、駅まで迎えにいくよ)
(確かに、変な人ならね (笑) じゃあいつもの場所で、十四時ぐらい?)
(そだね。それぐらいで)
(はいはーい。また連絡する)
(りょかーい)
結局行くことになった。ヒノはいつも前向きで偉いなと思う。
私は、後一時間後には車で、駅前のロータリーまでヒノを迎えに行かないといけないので、少し眠たかったが、強引に切り替え、シャワーを浴びた。
ジャ―――。
シャワーヘッドから、熱いお湯が注がれる。
私の無垢な白銀の髪と、陽ざしを知らない洋館の幽霊の様な、雪白な肌を、ジャバジャバと流し続ける。
髪をオールバックにし、鏡を見る――
廃れた黄金の瞳が、湯煙の中で怪しげな光を放つ。
「へー……意外とオールバック似合うんだ私」
なんとなく、そんな言葉を一人で呟くのは、まだ寝ぼけが残っている証拠かもしれない。
この姿で、黒いジャケットとスラックスなんか着てみると、舞踏会に参加する人みたいだな、一回やってみたい。
ヒノ、どんな反応するかな?
私は、ヒノと恋人になってから、少しだけ男目線の気持ちが湧く時がある。
どちらが彼氏という訳でもないのに、その時の雰囲気で変わってしまう。
甘えたい方が彼女になる、暗黙のルールが私達にはある。
そんなこんなで、風呂場にいると、とりとめのない妄想をしてしまって時間がどんどん過ぎてしまう。
もう、ご飯を食べる時間も無いじゃないか……お腹空いた。
ヒノを迎えに行った後、サンドイッチショップのドライブスルーでも寄るか。
ヒノは百パーセント賛成だろうな。
食べる事に関して否定をするのを見た事が無いぐらい、食いしん坊なんだ。あの子は。
むしろ、喜ぶ顔が目に見えてる。
少し、気持ちが上がって来た。
さー、さっさと服を着て、メイクして出発するか。
今日は両親が二人共仕事で、車は開いてるからレンタカーを借りる必要も無いし。
母さんに、借りることだけメールしておこう。
ホウレンソウさえしてれば、何も言わない両親だ。
前、ヒノにそう言ったら、案の上、野菜の話をしだした。あれは笑えた。
私は少し笑いながら、タイトで真っ白な肌に、上下薄い水色の少し可愛らしい下着を身に着ける。
自分のクールな性格や強力な能力を考えたら、この下着はちょっと恥ずかしいかもしれない。
そしてその上に、甘い果実の香りの柔軟剤を纏わせた、真っ黒な制服をすぽっとかぶる。
見ている人の気が落ちる様な、暗黒な色だが、匂いとその中身はしっかり女の子なのだ。
私は、簡易的に下地、ファンデ、ブロウ、をリズムよくこなす。
化粧が雪白の肌に馴染んで、透明感が増していく。
ビューラーで控えめにまつ毛もあげる。
伏し目がちの時、少しかわいく見えるぐらいが丁度いいのが持論だ。
少し自分ってあざとい。
最後に、クリアで発色の良いサクランボ色のリップを引いて唇を擦り合わせて馴染ませ、出来上がり。
うん、女の子の完成だ――
女の子は毎回、女の子にならないといけないから結構大変だ。
これも、結構楽しいんだけどね。
さて、行きますか――
私は、ささっと車に乗り込み、窓を半窓に開け、車を発進させる。
淡々と、慣れ親しんだ近所の店や住宅を通り過ぎながら、窓から入る少し暖かくて心地よい風に、髪を揺らす。
風呂上がりの運転は、本当に気持ちいな。
その目的地が恋人であり、その日が休日で、快晴ならば、もうこんなワクワクする気分ってあんまり無い。
今日は、すごく良い事が起こる予感がしてきた――
駅前に着いた。ヒノが見える。
羽を隠す、お揃いのリュックを背負い、ピョンピョン飛び跳ねて手を振っている。
可愛すぎるな……
あの子を抱きしめていい権利がある恋人の私は、幸運だ。
胸の奥が少し熱くなり、本能が疼いたので、一呼吸。
もっと、理性的に愛したいと言う気持ちが、私の彼女へ対する本気さを、自らに自覚させた。
「やっほ、シスイ」
窓に顔を近づけて、身を乗り出すヒノ。
「やっほ、ヒノ。後ろでいいよー。乗って乗って」
「はいはーい」
彼女は、たったーとちびキャラの様に小走りで、後部座席に乗り込んだ。
そしてヒノが準備できた事を見て、発進する――
私は駅前から、国道に出た。
山の近くの公園までは、そこまで遠くは無いし、時間もあるので、少し遠回りしてサンドイッチ屋に向かう。
「お昼食べて無いんだー、サンドイッチ、ドライブスルーで買って行ってもいい?」
「いいよー!私も食べる!」
やはり、乗り気だ。嬉しそうに足をパタパタと動かし出したのが、その証拠だ。
私は、休日で車が少ない道路を、スムーズに運転する。
ノンストレスな運転は大好きだ。
焼き肉屋やスーパーマーケット、大きいサイクルショップなどが、傍目に過ぎ去り、
大きな川に面した長い橋を渡る。
対面は遙先まで、この国道が伸びている。
その上に、銀色の立体感のある巨大な雲が、昼過ぎの穏やかな日差しを受けて、輝きながらゴォーと動いている。
右手には山並みがあり、光と影のコントラストで緑の発色やけに映えている。
――
「でさぁ、今日の依頼どう思う?」
私はヒノがどう思ってるか、知りたくて尋ねる。
「んー、確実に私達について何か知ってる人だし、一般人じゃないよね?でも、悪い人でもなさそう」
「確かに、もし悪い人なら、何かを掴んだら、もっと知れずに企んでくるだろうしね」
「そうねー。それに依頼内容は、自分では無くて、女の子を助けてって他人を救う依頼だからね。きっといい人よ」
ヒノはうんうんと自分で頷く。
「もし、変なオヤジだったら?」
私はヒノに冗談ぽく言う。
ヒノは顔をしかめる。
「その時は、二人でタコ殴りにしましょ」
ヒノは、犬歯を見せてニヒーと笑う。
「いきなり物騒じゃん ふふ」
私は思わず笑う。
「それにさ……女の子救えたら、ちょっと気がマシになるかなって……」
ヒノはそう言いながら、急に表情が変わり暗く淀む。きっと響を思い出したのだろう。
「そだね、正直結構まだ……頭から離れないんだよね、響の事……」
車内の空気が少し落ちる。沈黙が続く。
「もう一回、響の声が聞きたいよ……抱きしめてあげたい……」
ヒノは消え入りそうな声で、苦悩を吐き出す。
瞳にじわっと涙を滲ませ、強引に袖でぬぐう。抑えてた感情が溢れてしまったのだろう。
「ヒノ……大丈夫だよ」
そういいつつも、私も泣きそうになる。運転をしなきゃいけないから堪えてるが……
どんどん私の中に響との思いでが蘇ってくる――
海沿いの道路で車の窓から響が叫んだと事――
デパートで私に見つめられて恥ずかしそうな顔をした事――
あの瑠璃色の目を野性的に輝かせながら、楽しそうにおちゃらけてダンスをしていた事――
今でも思う。
私達が関わらなければあの子は、いつの日か、色んな人に好かれて、何処かで幸せに生きれたんじゃないかと……
そうは思っても、自分のせいかもしれないと思っても、
もう一度、あの癖のある喋り方や声で私達をからかって欲しいと願ってしまう。
時折、すごく不安そうな顔をする、妹みたいなあの子の頭を撫でてあげたいと、まだ思ってしまう。
私が響との思い出に浸ってしまった分、車内には沈黙がさらに続いていた。
しまった。バックミラーを見て後悔する……
「嫌だよーーー!!!全然受け入れられないよーーー!!!」
ヒノが大声で泣きだした。
きっと彼女も、響との思い出が連鎖的に、心に溢れだしたのだろう。
「ヒノ……落ち着い…て…大丈夫……だって……言って……る……じゃん……か……ぐす……ぐす」
そう、なだめはしつつも、私も堪えきれず、頬に涙が伝ってしまう。
「なんでなんでなんで!!!こんなことになるのよ!!!」
ヒノの感情が爆発し、車内で叫び出した。
「わっかんないよ!!!なんだよ!!!UFOとか宇宙人とか
!!!しかもなんで!!!そんなとこに行くんだよ!!!」
私もヒノの激昂に反応して、やり場の無い感情が噴き出てしまった。
「知らないよ!!!なんにもわかんない!!!なんであの子は、私達の心をズタズタにして、どっか行っちゃったのよ!!!」
ヒノもさらに気持ちを爆発させる。
お互いに怒ってる訳でも無く、本当に響を責めてる訳でもないんだけれども。
私達は理不尽な事に対する、感情のやり場が欲しいだけだった。
「そんなの私が聞きたいよ!!!こんな気持ちにするなら簡単に近寄って来るなよ!!!って思ってたよ!!!残された私達は一体どうすればいいのさ!!!」
酷い事を言ってしまった。でも本音だ。
しかし、響と出会わず思い出がゼロになる選択を迫られるなら、私はもう一回、苦しい道を選ぶのだろう。
そのくらい、かけがえのない思い出なんだ。
私はバックミラーでヒノを見る、涙でグシャグシャになり、ポケットティッシュで鼻をかんでる。
「そうだよ、しくよろよろーとか訳の分かんない事言って、私達の心にいつの間にか入り込んでさ……」
ヒノが少し落ち着き、そう言った。
「でも、響と出会えたことは否定したくないぐらい……楽しかったよね……」
私は響との思い出を振り返ると、いつも笑っていたかもしれない……めんどくさいぐらいに。
「だから困るの!」
ヒノは全くその通りな言葉で締めくくった。
少しの間、車内は沈黙する。
私は切り替えるように言う。
「もう着くよ……サンドイッチ屋さん……ヒノ何が良い?」
私はひどい涙声だ。
「チーズ……ぐすん……ぐす……」
散々泣き喚き散らしたヒノを心配したけれど、その返答には安心した。
彼女は仮に、私と一緒に強大な魔族に追い詰められようとも、きっとその日の朝ご飯はしっかり食べるんだろうなと思う。
「それだけでいいの?」
一応聞く。
「ベーコンも……あ……ポテトも…アイスティーがいい」
「ぶっ!!……」
流石に、笑いが噴き出てしまった。
計り知れない苦悩があるのは確かなのに、食欲がひょっこり先頭に来てしまうヒノがすごく面白く感じてしまった。
「笑わないで!!!!!」
ポケットティッシュを投げつけられた。しかもかなり怒ってる。
今は変な事を言わないでおこう。
私はドライブスルーに入り、目当てのサンドイッチを購入した。
余りにも私の目が充血している物だから、店員のお姉さんが「大丈夫ですか?」と訊ねてくれたぐらいだ。
こういう、人間味のある接客をしてくれる店は好きだ。
このお店は、私のお気に入りに登録しよう。お店というより、お姉さん。
「依頼の場所近くのパーキング止めて、車内で食べよっか?待てる?」
「うん……」
と言いつつも、そっぽを向いてくる。
待てるは余計だったな……
何よりも食欲優先と思われる事を前から気にしてるらしく、響の件の時にそれを思われたのがすごく嫌だったらしい。
今は、そっとしておこう。きっと食べたら機嫌は直るだろうし。
私だって、悲しいんだ。
誰にも気を遣わずもっともっと叫びたいくらいだ。
もしかしたら、異形霊媒もせず、あの時みたいに街をフラフラしているだけで
誰とも、何とも出会わなければ、こんな沢山の苦悩も無かったかもしれない。
しかし……今の方が真に迫っている気がする。辿り着かないといけない方向に進めている気がする。
人生どの道苦しいのであれば、辛くとも答えに近い方が良い――
無言の車内で、人生論について考えながら運転していると、はやくも山の近くまで来ていた。
山の入り口付近の公園が見えた。
丁度、五十メートル程手前に、パーキングを発見。
私はそこに入り、ハザードを点け、バックして停車する。
エンジン音すら消えて、完全な沈黙になる――
時刻は十五時二十分、待ち合わせまで丁度良いぐらいの時間だ。
私達はサンドイッチを食べだす。二人共同じ種類のセットにした。
少しトーストされた、香ばしくてふんわりとした食パンに、バターが薄く塗られており、ベーコンとチーズとアボカドがサンドされてマスタードが塗られている。
それを綺麗な包み紙で包んでいる。
私はそれをムシャリと頬張る。
「うん!!イケるねこれ!!」
お腹が減っていたのと、先程の激しいやり取りでエネルギーを消耗したので、より美味しい。
怒られたくは無いが、さっきの手前、この美味しいサンドイッチをどんな風に食べてるか気になったので、こっそりバックミラーでヒノを見る。
すると――
ミラー越しに私を睨むヒノが映った。
怒ってるんだけど、その目がすごく可愛い。
私の行動は彼女に予測されていた。気まずい。
「ヒノ、美味しい……?」
「うん……」
そう言って、、窓の外を眺めるヒノ。怒り過ぎた事に、逆に気まずさを感じている様だ。
「そかそか、よかった。店員さん親切だし、また行こっか?」
「行く……でも、焼き肉も行きたい」
よし、素直になってきた。機嫌も直ってきてるぞ。
「じゃっ、今度行こ。私も久々にカルビが食べたいよ」
「カルビって何?焼き肉がいい……」
おっと、知らないのか、カルビ……
「焼き肉の事だよ」
「カルビ行きたい」
なんだか違う気がするけど、今はこれで良しとしよう。
サンドイッチを美味しく食べ終わり、時刻を見ると、依頼の待ち合わせの二十分前になっていたので、私達は待ち合わせ場所である、公園のベンチに行くことにした。
この場所は、人はほとんどいない――
やけに綺麗な公園だ、近くの閑静な住宅街の金持ちな町内会の人達にでも管理されているのだろう。
山から流れる、森林の澄んだ空気も、心落ち着かせてくれる。
物思いに浸ったり、何かを真剣に考えるならばこういう場所が良い。
都会の街中は、飲食店や車のガソリンの匂い、人々の自体の匂いに、それらに囲まれていると、どうしても世間一般の現実の考えに感覚から引きずり込まれてしまうのだ。
本性の我に立ち返って、判断する時も人には大切なのだ。
私達はベンチに腰掛けた――
「久しぶりだね、ここに座るの」
「そうね、あの時以来かも……」
さすがに、もう機嫌は完全に直ったみたいだ。
あの時と言うのは、響と初めて出会った時の事だろう……
「よく考えれば、こんな場所で、響が私達を見つけるのって珍しいよね?」
私は不意に思てヒノに言った
。
響は何をしてたんだろう?住所はこの辺りなのかな?
「UFO撮ろうとしてたんじゃない?」
「ああ、そうか。あの時、既に撮ろうとしてたのか……」
やっぱり、変わった子だったな……
一人でこんな場所に来て、UFOを撮影しようとしてたんて。
恐らく、何かから気を反らす様な感じだったのだろう。
何処にも居場所が無かったと、最後のメッセージに書いてたし……
「ねぇ……」
「何?」
「もし私が居なくなってしまったら、シスイはどんな気持ちになるの?」
そんな例え言わないでよ……
「……考えたくないかな」
「心配してくれる?ずっと覚えていてくれる?」
だから、そんな話はやめてよ……
「何か不安な事があるの?」
「ううん、大丈夫……」
……そう言えば、ヒノは家族や兄弟はいるのかな?あまりその話しないな……
今のニュアンスだと、私しかそうしてくれる存在がいない様な言葉ともとれる。
「いっその事、結婚でもしちゃう?」
空気を切り替える為に、冗談めかして私は言った。あながち冗談な気持ちでもないんだが……
しかし、彼女はいつものようにじゃれ合ったり、ふざけたりする感じでは無く、
少し寂しそうな顔で、私の手を強く握った。
私は、もう少し空気を読むべきだ、きっと。言葉の重みも知るべきだ。
「ごめん。軽口が過ぎたね」
「ううん、嬉しいよすごく……暗くてごめんね」
何がそうさせているか分からないが、彼女の心に被さる闇を一刻も早く払わなければならないと思った。
その為なら私は……
その時――
公園の前を、青い高級車が通る。
その運転手はこちらを見ていた気がする。
そして、この森林だけの簡素な公園に似つかわしくない、怪しく輝く群青の車体は私達と同じパーキングに停車した。
そこから二人の人物が歩いて、こっちへ向かって来る――
「あれ、依頼人かな?」
ヒノは目を凝らす。
次の瞬間――
……ハッとする。
「あれ!!!ドミノ君じゃない!!!」
「あ……え!?ホントだ!!!……なんで?」
結構前に、一度サーカスで死闘を繰り広げた相手、ドミノ。
三十メートル平方の大きな爪痕を残す程の、切り裂きを繰り出す恐ろしい悪魔の右腕を持つ青年。
とも思えば、ギガビートと言う巨大な魔獣を心底心配する様な、心優しき青年でもあったりする。
そんなドミノと……もう一人。
深い青色の様な黒髪の女の子。恐らく同い年ぐらい。紺色の制服を着ている。
その子は一見普通に見えるが、しかし、とても異常な感じもする。
ドミノを差し置くぐらいの存在感がある。
世界の一切何も、物理的にも概念的にも彼女を傷つける事は敵わない……そんな感じの余裕を感じさせる。
その二人は、目前に迫る――
近づくほどに彼女に目を奪われた。
不思議な子……
そして、彼女の瞳が気になった。
銀色だ……雲を閉じ込めた様な虚ろな瞳。ダイヤモンドみたいな輝きもある。
その上に眼鏡をかけているから、より煌めきが増している。眼鏡がまるでショーケースみたいだ。
神秘的……
「ヒノ……」
警戒すべきか?と言う、視線と共に私はスカートのポケットの中のゼスパを握る。
「シスイ、大丈夫だよ」
ヒノはこっちを見て、何も心配することは無いよと微笑み、首を振った。
「こんにちは。かわいいお二人さん」
銀色の瞳の彼女がにこやかに挨拶をしてくる。
「久しぶりだな、お前ら」
ドミノも続いて喋る。声に敵意が全く無い。
銀色の瞳の彼女がドミノの小突く。
「だから、女の子にお前って言うなよ、お前。」
「すまねー……つい癖で」
ドミノは巨体を折り曲げて平謝りする。
「こんにちは。ドミノ君だよね?」
ヒノが様子を伺う私に変わり、返事してくれた。
「おう!そうだ!俺はドミノ。こっちが幽明」
ドミノは銀色の瞳の彼女を指さす。
「初めまして、私は”幽明 灯”(ユウミョウ アカリ)。よろしくね。」
「後、今回の依頼人でもあるわ」
「初めまして、クリシュマヒノです!ヒノって呼んでね」
ヒノが元気そうに言う……
って、今なんて!!!?偽名を使ってるの?念のため?
霧島ヒノでしょ?
あ……そういえば、フルネーム聞いたの最初の一回で距離も遠くて聞こえずらかった……
もしかして――
とりあえず挨拶だ……
「冥 シスイです。初めまして。シスイは明鏡止水のシスイです」
ヒノに対する勘違いに、急に笑いが込み上げて、とても笑顔で挨拶してしまった。
でも、なんでただの依頼で、こんな自己紹介してるんだろう?
「二人共、同い年ぐらいだよね?タメ口でも良い?私できれば、あなた達と仲良くなりたくって」
仲良くなりたい?何故?どういう事?
「仲良くなりたい?依頼が長期化でもするんですか?」
私は思わず聞いてしまった。
「えーっと、依頼は単発だよ。んー説明しずらいな。
メールで書いたみたいに、君達の力になれる?かもって感じかな?
今後関わる可能性が高いかも……そんな感じ。
私達と仲良くするの嫌かな……?」
幽明と言う女の子が、少し気まずそうに言った。
「嫌ではないんですけど、なんでかなってちょっと疑問に思っただけです……」
私は一応、簡単には警戒を解かない。ヒノを守るためだ。
「この依頼こなせば、わかるよ!」
幽明はさわやかに微笑む。
「私は全然OK!!私もドミノ君と灯ちゃんで良い?」
ヒノが楽しそうに答える。さっきまでの暗い表情が消えてくれる。
まるで、本能的に気に入ってるみたいだ。
「私は幽明って呼び捨てがいいな。灯はちょっと、私には可愛すぎるんだよね……」
「じゃあっ幽明!」
「ヒノ、よくできましたパチパチパチ」
幽明はヒノに嬉しそうに拍手する。
ヒノ……急速に仲良くなっていくじゃないか……私の事覚えていてくれる?はこっちのセリフになってきたよ。
「いいぜ俺は。君はいらねぇ!ヒノは明るい奴だな!前の戦い見たろ?俺に警戒しないのか?」
「んー、別にかなぁ。ギガビートって魔獣守ろうとしたりしてたし、優しく声掛けてもあげてたし、なんか誰に対する目線も優しいし、全然怖く無いよ」
「そ……そうか……ヒノ」
今ちょっとヒノに対して、異性の目で見たなこの野郎。私のジェラシーが勝手にドミノに炸裂した。
「パンツ見ようとするのは控えてほしいけどね!」
「あわわわわわ、そそそそれは……すまねぇ!!!」
「ドミノオタクだから許してあげて。かわいい二人に萌え感じ過ぎて、前の時、挙動不審になったみたいなの。今日も来る前から緊張してたし」
来る前から?
私達の見た目とか知って依頼してきたのか?
「しょーがない許します」
ヒノが言う。
「私もタメでいいよ。ドミノと幽明でいい?」
なんだか無駄な警戒は、一人置いて行かれる様だったので、流れに乗るとする。
「おう!シスイ。あの時は悪かったな。アーテマさんがああなったら。誰も逆らえないんだよ。でも、悪い人じゃねーから、あの人。おかしいけど」
「いいよ。こっちこそ、ごめんね。ドミノの友達傷つけて……あの子大丈夫?ヒノと私が生き残る為に私も必死だったんだ……ホントごめんね」
私は一応引っかかってたもの吐き出す。あの時は私が少し悪者だったとちょっと後悔してたんだ。
「じゃあお互い様だな、シスイ。ありがとう、ビートを心配してくれて。あいつはタフだから大丈夫だ」
ドミノは屈託の無い笑顔で笑う。
「仲直りできたみたいね。シスイよろしくね」
「あぁ……うん。よろしく幽明」
この子あれだな……私とヒノと同じ感じかもな……私を見るときの目が一瞬、そんな感じだ。
場に沈黙が訪れる。
私が切り出す。
「で、依頼って……」
「そうね……」
幽明の雰囲気が変わり、眼鏡をクイッと上げる。
「では本題に入るわね。少し質問してもいいかな?大事な事なの」
幽明が私達二人を見定める様な顔つきになった。
「うん、どうぞ」
私は返す。
「あなた達は奇跡を信じる?縁による出会いや結び、流れを感じる?
例えば、善行をすれば報われるだとか、あなた達二人が出会った事、
そして今、私達が出会った事、全てに意味があっての事だと思う?」
少し抽象的だな。
でも、この質問で、この子がどんな子か少し掴めた気がする――
……答えは
間違え無くイエス――
ヒノも恐らくそうだろう。
最初のデートで二人で輪廻転生の話、無数の世界の話で盛り上がったんだから。
「イエース」
ヒノがクイズ番組みたいに答える。
……え、そんな感じ?
では、私はしっかり答えてみよう。
「うん、イエスだね。私は出会いの縁も、自分の行いが未来を左右することも信じてるよ。ドミノや幽明と出会った事も未来に意味あっての事だろうって思う。
もしかしたら、すごく大切な存在になる可能性だってあるとも思う。ヒノの様に……
今、君達とこういう会話をしているのがその証拠だとも思う。
あと、ちなみに前世っぽい声がたまに聞こえる」
幽明とドミノが黙って、何かを考えている。
「わかったわ。私達と縁を築いていってもいいって解釈でいいかしら?そういう質問であるし、今回の依頼が成立する為の重要な一部ではあるの」
「不思議だろうけど、私達が仲良くなることに意味があるの。変な依頼でごめんね。いつか分かる時がくると思うわ……」
「私は勿論イエ―ス。難しい事は抜きにしても、ドミノは面白いし優しいし。
幽明も優しくて綺麗で、なんでも教えてくれそうだし。友達になれたら嬉しいわ」
ヒノは、なんの躊躇も無く、二人を歓迎した。
「あ……でも……仲良くなったなら、簡単に居なくならないでね?」
それは、同感だ。
「俺はいつでもいるぜ、暇だしよ」
あっけらかんと、答えるドミノ。しかしそこには何故か約束を守りそうな安心感がある。
「そうね、努力はするわ」
幽明は現実的な思考の持ち主だろう。不確定の事にはイエスは言わないタイプだ。
「私も、そうだな……正直言うと、ヒノは恋人だし、友達でもあるけど。
純粋な友達はいないからね、今は。頼りになりそうな二人と一緒にいられたら
ちょっと安心できるかな、この先。
ヒノと出会った時みたいに、直感が二人と共にいるべきだって言ってるし」
「俺は、こんな悪魔の腕を持った、呪われた存在だ、そんな俺と友達でいてくれるなら、俺は守るぜ。全力でな。マジで。あと俺の仲間もきっと協力してくれるぜ」
結構、はっきり言い切る。男気がるやつだな。少し父さんに似てる。
仲間ってアーテマか?他にいるのかな?
「そうだね、世の中は関係性で出来ているから、あなた達が友達になるのなら
あなた達を救う事が、私達の幸せに繋がるからね。”繋がった関係性”その要素が特別なら、その関係性から現れた現象はきっとすごい事を成すわ……
それと、私も直感が二人と仲良くなれってうるさいんだよ ふふ」
幽明が人差し指を立て、可憐に解説する。
この子の話は抽象的だが、物凄く本質的な話に感じる。計り知れない女の子って感じの魅力がある。
全員がなんとなく納得した後、
幽明が切り出す。
二つ目にして、最後の質問です――
「あなた達は失敗して傷ついていたとします。もし、奇跡が起きて過去に戻れるなら、その分岐点でどんな選択肢をとる?
もう挑戦せず平穏な未来に進む?それとも、再度挑戦し新たな未来に繋がるまで進み続ける?」
ヒノは穏やかな顔でルビー色の髪を耳にかけてツラツラと答える。
「きっと何も成さないって言うのは、退屈だけどすごく平穏ね、何も始まらず、何の苦しみも起きない。……それは目指すべき所だと、思う。
でも、今の私にはそれが出来ないの。何を成さずとも平穏になれる器が無い。
だから、挑戦し続けるわ。その中できっといつか、平穏になれる心を着けられるかもしれないから、その時まで進み続けるわ」
幽明はふんふんと頷く。
私も少し間を開けて、答える
「私はヒノみたいにちゃんとした考えは出来ない。何にも傷つけられたくないし
誰にも傷つけられたくない……
じゃあ、ヒノとも出会わず異形霊媒もしない時に戻りたいかって言われるとNOなんだ。きっと心も体も勝手に進む道を選ぶんじゃないかな?
それは、まるで幽明が言ったように、縁に導かれる様にして。
だから選択権があまりなく、与えられた縁に感謝して、その場のベストな選択をするよ」
幽明はさらに頷く。
ドミノは満足そうな顔で、私達を見ている。認めてくれた様なそんな顔だ。
「わかったわ。ありがとう答えてくれて。私の直感は正しかったわ」
私とヒノは顔を不思議そうに見合わせるが、意見が似ていて心が通じてる気がしたのでクスっと笑い合う。
私は幽明に尋ねようとする
「それで、この質問は……」
「ジュブナイルからこんにちは」
幽明が、爽やかな笑顔で言う――
「え……今……なんて?」
私はその聞き覚えのある言葉に、響の顔を思い出した。
ヒノも同じ感じで、幽明の顔をじっと見つめる。
なんだったっけ……
……
……
そうだ!響きのメールだ。
思い出した。すごく悲しい言葉だ。
私とヒノが苦しみの淵に入ってしまった言葉。
幽明が吐いた言葉は、その真逆の言葉。
幽明に尋ねようとした時、彼女は後ろを向いていた。
車の方を見て、手を振っている。
誰かいるのか?
仲間かな?
ドミノが笑いながら言う。
「大変だったんだぜ」
そして公園にある人物が入って来る――
……
……
夢かな……?
そんなわけないんだよ……
いるはずないんだから……
ねぇヒノ。
キミもそう思うだろ?
私はヒノを見る。
あれ、いない……
次の瞬間――
「響ーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
そう叫んで、ヒノはその人物に走り出す。
……響???
……響?……響?……響……響!!!!!!!
その名と、心に沁みついて求めていた彼女のシルエットが公園に入って来た人物に重なる。
ようやく、現実と認識できた――
私は既に走り出していた。
先程言った、自分には選択権が無いように、再びであった奇跡に堪えきれず飛びつくように。
「響ーーーー!!!!!!!!!!!」
響も向こうから、走ってくる。
髪を振り乱しながら、綺麗な顔を盛大に涙で崩し、一秒でも早く辿り着こうと……
やがて私達三人は――
伽藍とした公園の真ん中で――
まるで一つにでもなってしまうかと言う程に、強く抱きしめ合う――
ヒノが何度も響の名を呼び確認する
「響なのね!?……ホントに響きなのね!?……」
響きが答える
「ですとも!!!ぐすん!!!そうですとも!!!ぐすんぐすん!!!」
この匂い、この声、この喋り方。間違いない。ずっと求めてた響だ……
私は何も言わず強く強く抱きしめる。響の体とヒノの体を何度も何度も離れないように。
そして自然と言葉が浮かぶ
「バカバカバカバカバカ!!!!!!!!!!!」
こんな単純な事しか言えない。でも許して、このバカは好きの言い換えなんだ。
「ごーーーめんなざーーーいい!!!会いだがったよーーー!!えーーーん!えーーーん!!ヒノざーん、ジズイさーーーん!!!」
大声で泣きじゃくって、ひたすらに謝る響。
「許さないーーー!!!!もう!!!絶対許さないんだからーーー!!!」
ヒノは本当に怒ってるのだろう。響を両手でポカポカ叩く。
好きであるからの本当の怒り。ただし、顔には真逆の嬉し過ぎると書いてある。
「ごめんなさーーーーいい!!!ユルジデクダザーイ!!!えーーーん!!!ごわかったーよーーえーーん!」
私とヒノをどん底に悲しませた分、盛大に汚い言葉で罵ってやろう思った。
「一生離れんな!!!馬鹿馬鹿エロ響!!!!!」
響きは嗚咽しながら言う
「エロじゃないもーーーん!!!!えーーーん!!!エロは二人だもーーーん!!!」
泣きながらも、私達をからかう能力は健在だ。
ヒノが言う
「間違いなく響だね!!!このひねっくれは!!!シスイ!!!!抑えて!!!全力でこしょこしょするから!!!」
ヒノは顔中、涙でグシャグシャだが、満面の笑みだ。
「ヒノ!!!!思いっきりやって!!!」
私は、二度と話さないと言う様に思いっきり羽交い絞めにする。
「ぎゃーーーーーー!!!やめでぐだざーーーーいい!!!あひゃひゃひゃ」
響も盛大に泣きながら笑い出した。
「全く、馬鹿な奴らだぜ」
そう言う、ドミノは何故か泣いている。
「なんであんたが泣いてのよ」
冷静に言う、幽明だが。心底良かったと言う優しい顔をしてる。
そうやって、再開の時間が過ぎた。
愛しい思い出をまた三人で作れる。
今度絶対海に行こう。また三人の世界が変わる程の幸せな写真を撮るんだ。
すごく楽しみだ。思い出が続くんだ。
響が生きていてくれたんだから、時間はいくらでもある――
そして、少し落ち着いた私達は幽明とドミノの所に戻る。
あんな、私達の剥き出しの感情を見られたのがちょっと恥ずかしい。
「恥ずかしいとこ、見せちゃったね」
私はドミノと、幽明に言う。
「いえ、いいのよ。ちょっと羨ましいくらいだわ」
幽明の笑顔は透明で優しい。本当に信頼できる友達になれるかもしれない。
「全く、友情ってのはこれだから」
ドミノは口を押さえ、何故か泣いてる。すごく熱くて変わったやつだ。でも、すごく優しい。
響きは物凄く興奮して喋り出す。
「ヒノさん、シスイさん!!!聞いてください!!!ドミノさんと幽明さんは命の恩人さんなんです!!!ホントすっごすぎる人達で、親切の塊さん達なんです。
なんと!!!私を、怪物だらけのあのUFOから救い出してくれた張本人さん達ですよ!?激ヤバです!!!」
そして、声のトーンを変え、心の底から感謝を告げる。
「二人が居なければ、私はここにはいません……もう二人とは二度と会えてません。だから幽明さんとドミノさんには感謝してもしきれません」
私とヒノは、驚きの表情でドミノと幽明を見る。
少し、恥ずかしそうにする二人。
そして――
幽明とドミノは私達に、事の成り行きをほとんど話してくれた。
その内容も驚愕だったが、聞き終えた頃には、建前では無く二人の事を心から信頼できる友達だとも既に思えた。
警戒など出来るはずが無い。
私に出来なかったことを、この二人は響にしてくれたのだ。
響を守ったという点では、この二人の方がずっと行動できているからだ。
ヒノはまだ、涙で少し濡れたローズゴールドの瞳を大きく輝かせ、二人を抱きしめだす。
心のわだかまりが吹っ飛び、奇跡を実感したヒノに、恐れの闇はもう無い。
「超かっこよ過ぎ二人共!!!!親友!!!親友なって!!!」
「ううわぁ!!!おい!やめろ!!!ちょっ……」
こ、こいつ、やっぱりヒノを意識してやがる!しかし……しかし許そう。
今さっきのUFO奇譚は正直、滅茶苦茶かっこいいからな。
ヒーローって言葉が相応しいぐらいに。
それでも、ちょっと!!!ちょっと!!!近いよヒノ!!!
「ほらシスイも早く!!!手を引かれ一緒に抱きしめる様に促される」
「……う……うん」
私も円陣を組むように、幽明の背中にゆっくり手を伸ばした……
右手はドミノの左腕をちょっと掴む……
「こほん……少し恥ずかしいわね。無理しなくていいよシスイ」
幽明は少し、頬を赤らめ私から目線を避ける。
……やっぱり、少し女の子好きだなこの子。
類は友を呼ぶのか?
ドミノは、私とヒノに板挟みで、もう心が抜けちゃってる。
「皆さんずるいです!!!私もとりゃーーー!!!」
響きはジャンプし、ドミノの背中にへばりつく。
大胆だな響。めちゃ胸当たってるぞ。ドミノ大丈夫か!?
ドミノは、数秒、氷の様に固まったが、小さく”モエ”と訳の分からない単語を言った後、真剣な顔でこう言った。
「俺、みんなを守るよ」
「お前単純か」
幽明がすかさず、突っ込みを入れて、みんなで大笑いした。
幽明は切り出す。
「て、感じかな。今回の依頼は。報酬は響ちゃんと私達という事でOK?」
「勿論!!!」
ヒノはこの上ないプレゼントを受け取った顔だ。
「うん、今までの報酬で一番嬉しいよ。ありがとう二人共」
私は二人に頭を下げる。
二人は満足そうに、見つめ合う。
「という事で、連絡先交換して、今日はお開きにしよっか。
でもって、今度みんなでご飯にでも行こう。改めて色々話そうよ。
ドミノその時、花岡っちも呼んだら?」
「あぁそうだな。このメンツ怖がらないかなぁー」
「私、焼き肉が良い!」
「いいですね!ヒノさんが食べると恐竜みたいです!」
「響ー!!まーだまだお仕置き足りないみたいね!!!後で覚えときなさい!」
「ひょえーーー!」
「花岡っちて誰?」
私は二人に聞く。
ドミノが答える。
「チビのオタクの女の子」
「へーーー色んな女に手を出すんだねドミノ」
私は鋭く突っ込む。
幽明が全くそうだと言う風に笑う。
「うるせぇ、出会いは男だったんだよ!」
「どんな状況だよ ふふ」
そんなこんなで、私達は解散した。
今日は、二度と忘れられない日になるだろう。
二度と叶わないと思っていた願いが叶い。
唯一無二の友達が二人もできた。
最愛のヒノの心の闇も同時に消えた。
なんていい日だ――
神様ありがとうございます!
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帰りの車内――
私はヒノに尋ねる。
「クリシュマヒノって誰?」
「え?私じゃん」
「じゃあ、霧島ヒノは?」
「誰?それ」
盛大な誤解があったらしい。




