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UFO撃破大作戦!? ドミノ奮闘活劇!! 前編




アーテマさんにUFOとやらを撃破して来いと命じられてから俺は忙しい。




まず、そもそもどうやって撃破するかが問題だ。




撃破ってなんだ?




例えば、UFOの戦艦自体を潰すのか?それとも得体の知れない乗組員のエイリアンか異形を、一人残らずとっちめるのか?




全てがあやふやだ。あの人の命令は、いっつもそんな感じでアバウトで困る。




異界の存在の俺にはUFOってのがイマイチよく分からない。




話を聞くに、別の宇宙から機械で飛んで来るらしい。でも、そうなら相当な技術と文明のはずだ。




何故なら、この世界がそれをまだできていないんだから。




相手は格上のはずだろう?




じゃあ、そんな文明の叡智の塊みたいな機体と、それに乗って他世界に向かう奴らは……




正直、並大抵じゃないと思うんだ。




仮に異形だったとしても、あんなデカい機体を、転移魔術でこの世界に来たのなら、それわそれで、ケタ外れの魔導使い達だぜ?




って事は、相手がなんであれ、俺一人が立ち向かうには、やっぱ荷が重いんじゃねーか?




あぁー本当に面倒くせー……








何が、”ドミノ君、あのUFO撃破して来てください”だ。




アーテマさんの奴。コンビニ行ってアイス買ってきてみたいに言いやがって!




しかも、任務成功させないと、ビートはおやつ抜きで俺は給料減額とかふっざけんな!!!




ビートなんかマジで泣きそうな顔で、俺に”頑張って”みたいな雰囲気ですり寄ってくるんだぜ?




可哀想過ぎて俺に拒否権ねーじゃねーか。






俺だって、少ない給料から、生活費払ってコツコツ貯めたお金で、やっとゲーム機買おうとしてたんだ。




給料減額なんてされたら、欲しいソフトの発売日までに間に合わねーだろ。




あぁー本当この世界思うようにならないわ……






あっちなみに、俺はこの世界に来て、ゲームとか漫画にドはまりしてるよ。




あれは面白いよ。世界の退屈な事、嫌な事忘れれんだもん。




アーテマさんとかレイス姉はほどほどにしろとか、言うけど。あと、幽明もオタクとか言ってくるな。





でも、ポルジオルとメノノス、フリルは結構賛成派だぜ。てか一緒にやってる。




ポルジオルはサッカーゲームが滅茶苦茶好きで、よく一緒にやるし。




メノノスはダークファンタジーRPG超好きで、裏ダンジョンとかまで周回してるレベル。




フリルは全体的になんでも好きだな。あー……でもアイドルなんちゃらとかみたい奴とか、音ゲーが好きだな。音ゲーに関しては俺より上手いぜ。あいつは将来有望なオタクだ。







正直言うと、俺は幽明の言ったオタクってやつかもしれない。





この前、身を隠してさ、この世界の都会にある、電気街って所行ったんだ。




みんなに内緒でな。そこはさー、アニメフィギュアだとか漫画、ゲームに溢れかえっててマッジで……





天国みたいだった!!!





歩いてる奴も結構色んな奴がいてさ、太ってる奴とか、眼鏡の奴、ガリガリの奴、子供みたいな奴、本当色んな奴がいたんだけど……




みんな堂々と歩いてて、自分の趣味に誇り持ってるみたいで、




なんか、かっこよかったよ……




俺、感動しちゃってさ、歩道でぼうっとしてたわけ。





じゃあさ、俺を迷子の外国人かなんかと勘違いしたさ、チビの眼鏡のやつがさ「大丈夫ですか?」て心配して話しかけてきてくれたんだ……




すげー嬉しかったよ……





色んな世界行ったけど、困って道で突っ立ってても、無視されるか騙されるかがほとんどなのに。




俺みたいな得体の知れないデカい奴に、あんなちっぽけな奴が心配してくれんるんだぜ?





この街最高かよって思ったよ。






で、その後、そのチビの花岡君に初めてここに来たって話とか、好きなアニメとかゲームの話したら超息が合ったんだ。




マブダチって感じだ。サーカスの中じゃ、ここまでのオタクはいねぇ!




花岡君は、おすすめのゲームとかアニメ教えてくれて、




電気街の中で、一番安いフィギュアショップも教えてくれたんだよ。




本当超いい奴でさ。もう、連絡先まで交換したよ。




ちなみにスマホは持ってる。幽明のつてで契約してんだ。




あいつは、ちょっとめんどいが結構まぁまぁ良い部分もある。




スマホゲームできるのもあいつのおかげだしな。性格良けりゃ見た目はアニメキャラみたいで可愛いんだけどな。 





とにかく俺を雑に扱うし、何考えてるか分からんからな。まっ変な奴って事、なんか気になるんだよなー……








で、まぁ花岡君と別れる時に、俺言ったんだよ。




これは男同士の熱い友情だな!!!っアニメのセリフっぽく。




……じゃあさ、急にモジモジしだして。




何言うのかなと思ったら、眼鏡とキャップ外し出したんだ……





じゃあさ、驚くぜ……よく見たら、女だったんだよ……




マジでびっくりした!!




色が白くて、肩位の黒髪の、かなり細っちい女。




まつ毛とかがよく見ると長くて言われればそうだなーって感じ。




で、不思議だからよーく見てたら、




なんか恥ずかしがって、またねーって急いで消えてったんだ。




俺さ、なんか変な気持ちになっちゃって。もやもやしててずっと考えてたんだ。




この気持ち何?って。




そんな時、サーカスに、あの女二人が来た事思い出して、白い髪と赤い髪の女。




アーテマさんが魔術で全員強制ダンスさせたあの時だよ。




あの時、俺がパンツ見てくるーみたいな事を、あの性格良さそうな赤い髪で赤い羽が生えた女が言っただろ?




あの時もなんだ……滅茶苦茶、変な気持ちになった。




で、ずっと考えてたんだ。





で、答えが出た――






――これこそが”萌え”なんだって――





だからさ、今の俺の目標はさ、この気持ちの先に幸せがあるんじゃないかって思うから、そこを目指してんだ!





これから、もっとアニメやゲームやフィギュアに触れたり、





花岡君、いや、花岡ちゃ……花岡っちとか、あの赤い髪の女とか、そんな感じの萌えをくれる女達と出会わないといけない気がするんだ。




女をどうこうしたいって話じゃないぜ。




電気街の奴らみたいに、届かなくとも萌えを守るのは、オタクとしての義務と誇りなんだから。




だから決めたんだ。




俺は守るんだ。そんな女達を!!







つまるところ、やっぱり金がいるから。




今度、花岡っちと電気街行く約束したしな、フィギュアをサプライズでプレゼントしてやろう!!!って思ってる。





そう考えると……





やらなきゃいけねーなと……UFO大撃破!!!。





なんか、やる気出て来たぜ!!!





やってやろう!この世界の萌えに仇なす奴は片っ端から、俺様の悪魔の右腕の餌食だ!




そんなたいそうな考えでは無く、




出来れば、俺は誰も傷つけたくないし、




こんな、破壊を凝縮した様な悪魔の右腕にも、そんな役割を与えたら何か変わるかもしれないって微かに願ってるんだ……




それらの結論が、俺の重たい体を欲望を糧に起動させた。




さっやるか!!!――











サーカスのテント内、幽明の作業部屋――





「なっ頼むよ!!!お願い!!!お願いします!!!幽明 灯様」




俺は必死で幽明に頭を下げている。





「気安く”灯”って呼ばないでくれる?ドミノのくせに」





クソっ!俺の方が遙に先輩なのに下でにでてりゃーこの女!全然可愛くねぇ!……




ダメだ、我慢しろ。萌えと金の為だ。




「本当頼む、お前の個人的依頼(幽界霊媒)の時、護衛として働くから五回ぐらい」





「別に、ドミノいなくても、今まで私一人で解決してきたし……女だと思って舐めてる?」





あら、たくましい事!!!そういう話じゃないんだよ。





てか、こいつ怖い。





しかし、ここで折れたら、俺のオタク精神はこんなもんだったのか……で終わっちまう。





「そもそもさー、私はUFOの情報沢山あげたし、ドミノが潜入したら艦内の扉ハックしたりナビまでしてあげるんだよ?」





「なんで、わざわざ現地まで送り迎えして、尚且つ、車で待機してないといけないの?めんどくさいじゃん」





クソッ!仮にも俺の命が懸かってるのに、普通にめんどくさがってやがる。





この女。ツンデレじゃ無く、バシバシだこいつ。





「もしもの為だよ幽明!もしも!相手が幽界系の異形だった場合、変な呪いかけられた時、幽明様がいれば安心なんだよ。お前の浄化系の能力の範囲、今まで見た奴の中で一番だし」




「それに、こっから三時間もかかる場所に張り込みなんてマジで無理だ。幽明が車で送ってくれてUFO襲来をベストタイミングで教えてくれたら、俺はもう、UFOなんかちょちょいのちょいだよ!」






幽明 灯は口に手を当てながら銀色の瞳を光らせ、静かにドミノを睨む。




「お前さー、私の事、便利な道具箱とか思ってる?それとも、専属ナースとかと勘違いしてる?」




こいつ、ブチギレたかも……





「違うよ、幽明!俺はマジでお前を信頼してるんだ。お前の頭脳も能力も尊敬してる!性格は扱いずらいが、なんやかんやで俺達の味方してくれるし、見た目に関しては萌えだって結構ある!」




幽明 灯は普段なかなか表情を見せないが、神秘的な瞳を吊り上げ、静かに激怒する。





「お前、払われたいの? 誰の性格勝手に値付けしてんの?しかも萌えって何?あんまふざけてると、レイスさんにお前のフィギュアのありか今すぐ教えるよ?クソドミノ」





やっちまった……確かに、自分でもちょっと俺ウザいかもと思ってたけど……





しかも、レイス姉にフィギュア持ってる事ばらされるのは、やばすぎる。





どんなけやばいかって?散々プライドを粉々にされて、お人形ちゅきでちゅか?と、女児に話す様に喋られ、この先ずっとからかわれる……





「そそそそそれだけは!やめてくれーーーー!!!!!!!」





「うっさ!ホントきもいって!ドミノ、もう出てって」





幽明 灯は俺に机の鉛筆やファイルを投げつける。





「いててて、ちょっと、幽明さん、いて、やめて」





「やめるかバカドミノ」





しょうがない……





かくなるうえは……





捨て身……





恋愛アニメで学んだこの秘儀……




「幽明……」




俺は本気の顔をする。




「何よ……?」




幽明は俺の真剣な顔に、少したじろぐ。





俺は左右の拳を握り、熱血男の様に叫ぶ。







「俺は、お前と一緒に居たいんだよー!!!!!!!」






これが通じないと、もう終わりだ。





もしかしたら幽明は俺が嫌でこのサーカスから出ていくかもしれん。





それでみんなに末永くからかわれるし、レイス姉やフリルにはかなり責められるだろう……





でもやれる事はやった。





怒るぞ、構えろ、きっとすぐ怒る





そして――





幽明 灯はというと……





「……」





「……」





「…きも」





「……ドミノのくせに」





俯いてる、しかも……ほんの少し、ほんの少しだけ……頬が赤い。銀色のダイヤみたいな瞳も揺らいでる。





え……何?すごくかわいい。





怒らないの?





あれ、変な気持ちだ……





何故?幽明に……





こいつ、もしかして萌えくれる方?






幽明 灯はため息をつく。一瞬で元の冷徹な表情になり眼鏡が光る。





「ホント、しつこいなーウザイし」





「……」





少し間を空け続ける幽明。





「じゃあ用意しといてよ?」





「明後日行くから?丁度、その信号拾ったし。その日、一日だけな?それ以外は自分で頑張れ。あとお宝見つけたら半分よこせ」





「おっおう!!!まじか、ありがとう。感謝するよ。これからなんかあっても、絶対俺が幽明守るから」






「当たり前だろ……それと、さっきの言葉」







「あんま軽々しく女の子に使うなよ……?時にはお前の、その悪魔の右腕よりその子傷つける可能性だってあるんだからな?馬鹿発情期」







「はい」


素直に聞く。俺が悪かったのは間違いない。





「まっアニメかなんかの受け売りだろうけど……どうせ言われるんなら本心で言って欲しかったなーあたし」





「え……?」





どういう意味だ?また、変な気持ちだ。立場逆転された?俺頬赤くなってないか?





「後、私の霊媒今度手伝えよ」





「う、うん」





まぁ約束だから、仕方ない。





でも、幽明の案件、癖強い異形ばっかで嫌なんだよな……ルールとか制約とか呪いとか気味悪くて難易度高いのばっか。





それを、一般人の幽明が今まで一人で解決して来た事考えると……





やっぱ特異だよな……








そして翌々日――






幽明 灯は車を走らせている。




高校生にして、幽明は高級車を自らの手で購入し、運転している。




紺色の制服を着て、深い群青のストレートな髪を胸元まで伸ばしている。




制服なのに巫女の礼装を思わせ、無垢で爽やかな静かさを感じる。




銀色のダイヤモンドみたいな瞳は、何もしらない奴でも、幽明が何かを見ていると感じるだろう。




眼鏡が尚更それを引き立たせる。





幽界特有の、ルールや魔法、呪い、結界をその瞳で見れるらしい。




それを解決に導く頭もある。




この完璧で異質な女は誰にも手懐けられないタイプだろうと思う。




だから今こうやって、作戦に参加させた俺を拍手して欲しい。また少しウザくなってしまった。




見た目通り、基本は無駄な事、非効率な事はしないし、そこまで喋らない。そんで面倒くさがり屋だ。




それが幽明 灯だ。







そういえば、俺について、あんまり語っていなかったな。




俺結構大人しそうとか言われる。




顔は少し女みたいで、昔はよく女と間違われた。




そんなだからレイス姉がベタベタするってのもある、あいつはちょっと妹扱いで俺を見ていた時期だってある。




でも今はかなり身長伸びて二メートルぐらいあるから、もうそれはないけど。




レイス姉はデカくなってつまんないとか、男くさいとか言ってくる。




後、よく言われるのが目だ。




希望が無さそうとか、やる気が無いとか言われる。




目が気怠いらしい。結構これで普通のバイタリティの男なんだが……




幽明が俺を唯一羨ましがるのは瞳で、あいつは青色、深い青が大好きで。




俺の透き通ったサファイアみたいな瞳が好きらしい。欲しいとか言うぐらいに。




あいつが言うと冗談に聞こえないから怖い。




髪は真っ黒、幽明より黒い。だから電気街をうろついても日本人になじむ。




服は俺の世界の文様が刺繍された上下の礼装がお気に入りだったが、日本の繁華街では浮くから、パーカーとジーンズとキャップとかに最近変えてる。




花岡っちは、そんな適当な服でも、”主人公みたいでかっこいいなドミノ君は”とか言ってくれるから結構好きだ。




あと、髪型。センター分けでちょっと長い。これに特に意味は無い。





以上――







俺は車内のバックミラーを見て自分の顔を見る。うん、良い説明だった。





「そんな自分の顔好きなの?」




いきなり幽明が言う





「違う。ちょっと確認だよ」





「へーーー、女受け狙って、かっこつけてるんだと思った」




相変わらず、俺に対しては言葉で蹴っ飛ばしてくるぐらい厳しい。




もしかして、幽明なりのイジリなのかな?




「狙ってねーよ。自分て人間にどう見えてるのかとちょっと思っただけだ」




幽明はふんふんと頷く。




「あーそっか。そうだよねー……確かにそれは一理あるな」




こいつの納得に妙に触れたらしい。




「正直言うと、ドミノは普通の人間にも見えるよ。右腕と尻尾さえなけりゃね」




アンセイン(サーカス)のみんなが言い控える事でも、ズバズバ突っ込んで来るんだよな……




でも、そんなとこは嫌いじゃねぇ。





「だよな……これがある限り、俺がどんなにいい奴になろうとも、人間にも異形にも愛されないんじゃないかって、自分でも思うもんな」




正直な気持ちを話せる数少ない相手だ。




窓を見ながら、俺は今までの過去の差別を思い出す。





そんな間にも、車はどんどん進んでいく。深い森の中にある高速道路を幽明は、大蛇が地を這う様に鮮やかに車を飛ばす。





「そうだなー、ただの呪いって感じでは無いしね。かなり古いし。そもそもお前他者とあんまり関わっちゃいけないんじゃない?」




こいつかなり傷つく事言うな……





でも正解だ。俺は愛せば愛す程に、この呪いをその人に近づけてしまうんだ……





「それは、俺も昔から思ってるよ……」





幽明は顔色一つ変えない、同情なんてしない。優しい物語だけを語って、現実を直視しない事なんて選ばない主義だ。





「お前が出来る事は、その生まれ持った物を含めて、お前の持ち札で何が出来るかを最大限考えるだけ。それが無いお前にはなれないんだから」





「この腕で出来る事?」





「よく探せばあるんじゃないの?」





「……」





話ながらも車は目的地に近づく、早くて静かで。幽明は運転がホントに得意だ。





唐突に幽明は切り出す。





「後悔しない様に選べよ?」





「ん?」





「失敗は消えないんだ……お前がお前である限り、しでかした行いは消えない。お前がいつかお前で無くなった時、即ち死んだとき、それはお前じゃないから。お前から消えた訳じゃない」





「どういう意味だ幽明?難し過ぎるよ」





「つまり、お前の行いはお前である限り消えない。しでかした行いは消えないんだ」





「そっか、悪い行いは選ぶなってことか?間違えても取り返しがつかないと?」





「そんな感じだな……」





「逆も同じだが、良い行いをしたらそれはずっとお前の中で共に生き続ける。確かにお前がした事として」





「幽明さ、なんでそんな事わかるんだ?お前俺より年下だろ?実は化け物かなんかか?」





「さーーー……」





否定しない所が怪しい……しかし、今のさーーーは隠すより、答えるのめんどくさのさーーーだ。





「ちなみに幽明は俺の事怖くねーの」





「怖くないよ、信じてるもん」





「え?」





やば、ドキッとした。これは萌え!?いや……別の……






「はははっ んなわけあるかよ。ちょっとドキッとしてるしドミノ。ウケる。はははっ」





こいつマジで……俺のトキメキ返せ!!!ん……今のがトキメキなのか?





「ふっざけんな!!!ちょっと嬉しかったのに。バカ女」





「悪かったよー ははっ そんな怒んな。 あと女って言い方と、女の人にバカって言うと、モテないぞ右腕以前に」





「知らねーよ」





俺はふてくされた。ちょっとしたこいつの悪ふざけに俺の大切な気持ちを奪われた気がして、なんだか無性に腹が立った。





「でも、ちょっとは信じてるよ。私が危ない時、期待してるからなドミノ」





俺は少し拗ねていて、窓を見ながら無視したが、薄っすら窓に映る幽明は穏やかな表情で笑っていた。




さっきの”信じてるよ”がまるで本当の様に。




車はかなり進んだ。住宅がちらほら見えだしたぐらいだ。





幽明曰く、後一時間で目的の街まで到着するらしい。





そこから高速道路を降り、その街にある、UFOが訪れる山に


車で三十分程、登って到着らしい――





「ところでさ、幽明は推し活とかするの?」





「何、いきなり」





「なんとなく」





「あっそ……しないかな」





「しなさそうだな幽明」





「だってさ、よく考えたらさ。見た目とか地位で上下するのおかしくない」





「確かに」





「例えば、すごく可愛い人がいる。その人には沢山の人に可愛いと言ってもらいたい超デカい承認欲求があって、それを手に入れた挙句、お金も貰える」





「ふんふん」





「もし、それを推す人が全く真逆で誰からも相手されない地味な人なら、どう思う?ドミノ」





「差を感じる」





「そうなんだよ。何故同じ人間でそうなるんだって思うんだよ」





「お前、かなり深く考えるタイプだな」





「でも、それだけじゃないよ?本気で陽の当らないファンの為に、自分の才能生かして生きる気力を与える努力を惜しまない存在がいるならそれは尊いんじゃないかな」





「確かにそうだ、それはいい推しだ」





「まっ、でも、私は誰も推さないけど。もし推すとしても、誰にも知られず、誰からもお金を受け取らず、慈善的な行動をしてる人達かな。何故なら彼らは自分に何も求めず与える事しかしない欲望の無い綺麗な存在だから」





よく喋るな。こいつはこういう話題が好きなのか?





「腑に落ちたよ、幽明は世界をちゃんと見てるんだな」





「まあね、何事も悪い事は欲から生まれるからね。それが少ない人の方が好きだって話」





安易に幽明とオタク談義できる可能性があると思ったのが間違いだった。自分の浅はかさを思い知らされた……





「そろそろ高速降りるよドミノ、そっからコンビニ寄って、最終目的地まで行くから、心の準備しておけよ」





「おうっ!任せろ」





そして、俺達を乗せた深い紺色の高級車は、高速道路を降り、例のUFO騒ぎが相次ぐ街へ入って行ったのだった――







その後は、街の中心を走る国道を通り、幽明がガソリンを入れるといったので、ガソリンスタンドに寄った。





幽明がガソリンスタンドの店員に、車の小窓から、





「レギュラー満タンで、クレジットで」





と大きな会社の経営者が乗る様な車に乗りながら、真っ黒の高級感のあるクレジットカードを渡して手慣れた様に言うもんだから、





店員は少し焦って「はいっ……!」と声をあげていた。





そんで、数軒先のコンビニにもついでに寄って、おにぎりやら弁当やら、お菓子、飲み物をざっと三千円ぐらい、買ってすぐに出た。





この世界は便利だよなーとか俺は考えながらも、なんか店も店員も同じような感じで、ロボットみたいだなと思った。





異界では、個人がやっている商店ばかりだからな。この世界は、大きな組織が沢山あって世の中を牛耳って、その中で市民が生きているんだな。





便利だけど、俺には少し窮屈に感じる。この世界の奴はそれが当たり前の世界って思ってるんだろうけど、案外、傍から見たらそうでもないぜ?





会計の時に、俺は払おうとしたんだが、幽明は「経費で落とすからいいよ」と瞳と眼鏡を煌めかせウインクして払ってくれた。





よく意味が分からないが、ありがとうって感じだ。





なんやかんやで、結局優しい所が、俺は気に入ってる。どんな言葉を吐こうと、雑な態度だろうと、こいつの本心には公平な優しさがある。





アンセイン・マリオネットのメンバーがあんなに早く信頼したのも、そういう人間には珍しい心の持ち主だからなのかもしれない……欲が無いっていうのかな……







俺達は再び車に乗り込む――






車は発信し、山へ向かう国道をひた走る。もう目前に山が見えている。





「ありがとな、奢ってくれて」





「別にいいよ、あんまりお金無いんでしょ?」





「まあなー」





「電気街たまに行ってんだって?」





「なんで知ってんだよ!?誰にも言ってないぜ」





「さーーー、お前女の子の友達できたろ?」





「マジでなんで知ってんだよ」





「いいじゃん、細かい事気にすんな。奢ったお礼に、今度私も一緒に連れてってくれよ?その子と遊ぶとき」





「えーーー、なんか嫌だなぁ」





「お前、もしかして、その子と二人だけで遊びたいのか?」





「別にそんなんじゃないけど、幽明会わせて大丈夫かなぁって、花岡っち、良い奴だし」





「どういう意味だよ?なんなら、お前の方が色んな意味で危なくないか?」





「そうだけど……」






「うだうだ言うな女々しいな、私が決めてやろう。はい、決まり!」






「はぁ……仕方ねーか。変な事すんなよ?」





「変な事ってなんだ?こんな事か」





幽明は俺の首を、細くて柔らかい指で、一瞬撫でて、耳の横でバチンと指慣らした。





「うあああああ!何してんだよ?」





「はははっ ビビんなよドミノ 顔赤いぞ」




クソッ!マジでドキッとしちゃったじゃねーか。




レイス姉並みに予測不能なやつだ。マジでビビった。




あと……女の手ってこんな柔らかいんだ……





「おいおい、こんなんで惚れんなよ?あと、指の感触味わうな、エロドミノ」





「うっ!!うるせぇ!お前んが変態だ!えっち野郎。花岡っちに絶対そんな事すんなよ?」






「はいはーい、しませんよーだ」





そんな騒がしいやり取りをしている内に、とうとう、山を登る道路に入る。





なんというか、薄気味悪い山だな……





明らかに異界寄りの空気になってやがる。それも色んなもんが混在してる……





「幽明……気味悪いなここ」





幽明の目はさっきと打って変わって、ひどく鋭い目つきをしている。





この目をみれば、幽界の存在を一人で払ってきた事が事実として実感できる。





そんな凄まじい迫力の目に反応したか、山の鳥が一斉に飛び立った……





「とりあえず、頂上に総合公園とその駐車場があるからそこまで行くよ?」





次の瞬間にはケロッといつもの感じに戻っていた。





「ああ、任せるよ」





幽明はスピードを上げ、今から私がここを牛耳ると宣言するように、大胆に車を飛ばした。







そして――






あっという間に頂上だ。





幽明が、ガラ空きの駐車場に車を停める。




連日、この場所は地元のニュースに取り上げられ、未確認飛行物体が飛んでいると言われ続けているらしいから人っ子一人いない。




そういう時は野次馬で溢れかえりそうだが、この日本では異形関連のニュースが最近増え、その恐ろしさを人々は知っているから、皆、なるべく関わらず生活している……






俺は頂上からの街の景色に目をやる。





見晴らしが良い。さっきまで走っていた街全体が見渡せる。





住宅や建物が均等に小さく並び、車がちっこい虫みたいにあちこち行ったり着たりしてる。




空との境界線まで、突き抜けて邪魔が無い感覚が、なんとも気持ち良い。





コンビニの話もそうだけど、ここからの景色を見れば、なんとなく人間社会ってのがどんなものか把握できる気がする。





「綺麗な景色だな幽明」





「うん、私好きだよ……こういう景色」





「だよな……」





俺達は数分ほど無言で景色を見渡した。





幽明 灯は言い出す。





「あっ忘れてた。もしお前がUFOに潜入したら、私との、スマホのビデオ通話を常時ONにしといて、胸ポケットに入れとけよ。カメラはお前の正面が見える様に」





「私は、その映像と、事前に手に入れた情報で、お前の艦内の移動を車からデバイスでサポートするから。ナビは当然できるし、中央制御以外の八割方の扉は開閉できる権利握ってるから」





「おう!!!マジで助かるよ!!!絶対この恩は返すから」





「あぁ、返せよ。しっかりやって、生きて帰ってこい」





幽明は俺にガッツポーズをくれた。





戻ってくるさ。いつかお前を守ってやる為にもな……





その時だった、俺らの二十メートル先あたりに、森林が険しい道に入ろうとしてる一人の女がいた。





幽明が目を凝らす




「あれは……」




確かに、あんな子が、今のこの場所にいて、険しい山道に入るのは全くもっておかしい。




しかし今の驚き方はちょっと変だ……





「どうした幽明?」





「いや……なんでもない。ドミノ、あの子のとこ行くぞ」





「おっおう。危ないもんな、こんなとこで」






俺達は即座に女の元へ駆け寄る。その子は険しい場所に入ろうか入ろまいか迷っている様だった……





幽明が声を出す。初対面の人や女性や子供に出す、少し高く優しい声。




「ちょっと君」




「あっ!!!はい!!!なんですか!!!」




女は急に声を掛けられた事にびっくりしたのだろう。ビクッとしてこちらへ振り返る。




「どうしたの、迷子?」




同い年か年下のぐらいのその子に、幽明は子供に話しかけるみたいに質問する。




「いえ、ちょっと……」




俺は黙って幽明に任せる。





「ここさー、最近ちょっと危ないんらしいんだよね、もし困ってるなら、私が車で街まで送るよ?」





幽明がいいだろ?と言う風に俺にウインクする。勿論だと頷く。権限は幽明にあるし。





「いえ、大丈夫です……用事があるので……」





街の大半が警戒する場所で、女の子一人でこんなとこで用事?という顔で幽明は女を見る。






「君名前は?」





「私は……宇空木 ウツロギ・ヒビキちゃんです……しくよろです……」





テンションは明らかに低いながらも、この女は自分の事を、ちゃん付けし、変な挨拶までした。少し変わったやつだ……少し萌えるな……





背が幽明と同じぐらいだ。





しかし顔立ち幼い。





でも、やけに手足が長く、女性らしい体形でスタイルがとても良い。





幽明のスレンダーな感じとは違う。





紺色の制服を着ていて、幽明のやつに似ている。そのスタイルから少しきつそうな感じだ。





肌が白くて、目鼻立ちがしっかりしている。眉毛が濃く、瞳は大きい。その瞳は瑠璃色に光っているがどこか寂しげだ。





手と首に絆創膏がいくつか貼ってある。これは俺と同じく傷を持つ者を思わせる。





「かわいい挨拶だね。響ちゃん」





幽明はそう言って、にこっとほほ笑む。





俺をなじる時と雰囲気が全く違う。





今のこいつは優しくて美しい存在に見える。





この響ちゃんって言う子も気を許してきたっぽい。





てか、やっぱこの子ちょっと萌えポイントが高いな。よく見たらアニメキャラっぽくてなかなかだ……





男って駄目だな。こんな時にもこんなくだらない事を考えちまう。






「ありがとうございます……私なんか構わないで下さい。カップルさんの邪魔したくありません」





「カップルじゃないよ全然。ただのボディガードだよ」





即答されると、少し傷つくな……





「イケメンのボディガードさんですね。アニメの勇者みたいな……」





「ふふ、面白い例えだね」






おっ!こいつもオタクか!?勇者かぁ……悪くない!気に入った!異世界転生のアニメも好きだからな!!





急にテンションが上がったぜ。いい子だな。





「勇者か……お前、結構分かってるじゃん」




俺は少し図に乗った喋り方をしてしまった。





「ドミノ、女の子に、女とかお前って言うな。この子、響ちゃんて名前なんだよ。後、勇者なんていいもんじゃないだろ?」




案の定、幽明に指摘される。




「ごめん幽明……響ちゃん」





「仲良さそうで羨ましいです。私の大好きな人達思い出しました……ありがとうございます」





「そう……どういたしまして」


幽明が、意味深い感じで礼を言う。





「では、私そろそろ行きますね。幽明さん、ドミノさん」





「うん、気をつけてね。何かあったらいつでも声かけて、そこの駐車場の青い車にいるから」





「はい、ありがとうございます」





幽明はこれ以上は逆効果と思ったのか、引き下がる。





そして彼女は森林の中に消えていった。





俺達は車に戻る。





数分が立った。





「なぁ、幽明、お前が親切なのは分かるが 響ちゃんには、やけにそうじゃないか?なんでだ」





「ん……かわいかったし」





「え……マジでそれだけ?」





「違うけど」





「絶対怒るなよ…聞いていい?」





「何?」





「お前、もしかして……その……女……女の子の方が好きなのか?」





「両方かな」





衝撃発言!!!そんな事だろうとは、前から少し思ってたろうけど。


たまに、レイス姉の俺でも見惚れる綺麗な水色の髪を、うっとりする瞳で見てたからな。




あれは憧れだけじゃない目だ。





「そ……そうか、お幸せに」





「でも……あの子……」





「どうした?」





「ドミノに言ってもわからないよなー……」





「ん?言ってみてくれよ。これでも案外色んな物見て来たんだぜ」





「……あの子さー……女神ついてんだよ」





「!!!!!!」





女神……!!!





これは、最近では一番の驚きだ、俺には全く見えなかった。そもそも見える奴なんてほとんどいない。




俺の故郷の伝説とかでたまに聞いてたやつだ。





極稀に、物凄く綺麗な心を持つ奴が能力に関係なく見えたりもするらしい。




どんな世界でも、女神と遭遇し対話できるなんて、滅多にない。




もはや空想や伝説に近い話。




それが、守護してる響ちゃんはとんでもないぞ……




さらに女神を視認できる幽明も含めれば、これは何かの縁ってやつかもしれない。




「だからさ……ドミノ。もしあの子に何かあったら絶対助けろよ?


 今からそれが、UFO撃破より最優先事項だ」





「おっ……おう!!!任せやがれ!!!」





幽明がこういう事を言うという事は、これは相当な事なのだろう。





俺を勇者と言った響ちゃん、アニメキャラみたいでカワイイ響ちゃん、女神がついてる響ちゃん。幽明の命令。





全てを総合して考えると、俺のやるべきことはただ一つ……響ちゃん……君を助ける!!!





女神に誓う勇者の如く!!!





丁度そう思った、その時――





この駐車場も含め頂上全体がかなり暗くなった……





上空を見上げると――





超巨大な戦艦が頭上にいつの間にか存在していた。





!!!!!!!!!!





俺と幽明が驚愕する。





幽明が言う





「やっぱステルスで居やがったか、座標がここだからおかしいとは思ってたけど、完全なステルスしてきやがった」





そして俺達はその戦艦の下部が開くのを目の当たりにする。





そこに――





さっきの響ちゃんが逆さまで吸い込まれそうになってるじゃないか!!!!!





「ドミノ行け!!!!!!」





「おうよ!!!サポート頼んだぜ!!!」





俺は車を飛び出し全速で跳躍する。





険しい森林に到達すると、悪魔の右腕で引っ搔きながら、木々の上をジャンプして渡歩き、巨木を見つけ一番上までよじ登る。





そこから盛大であり特大なジャンプ。





俺は例のUFOにしがみつく事に成功した。





この悪魔の右腕をぶっ刺した、船の箇所は大破したが。





UFOの上までよじ登る。空を見渡し、一呼吸。空気が冷たい。





今度はUFO全体を見渡す。ダクトを見つけた。





「行くぜ!潜入開始だ!」

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