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赤翼姫クルシュマヒノ。またの名を霧島ヒノ



夜空に、深紅の翼膜を思いきり広げて、あの燦燦たる月夜の光を透かし恍惚に浸る。




私はそんな感じで、盛大に、ヴァイオリンで「エリーゼのために」を弾いていたわ。




人間界の月夜って、本当に美しいわね……


異界の空も嫌いじゃないけど、こっちはなんだか、胸の奥が静かになるのよね。




私の名前はクルシュマヒノ。


異界のとある組織のボス……ってことになってる女の子。




ボスっていっても、そんな大層な感じじゃないのよ?


ただ、赤翼の血を引いてるってだけ。うちの一族、基礎魔力がちょっと常識外れに高いの。




それに――




代々、私たちの血族しかほとんど扱えない禁断の魔法があるのよ。




――集団転移魔法。




無数の存在を、別の世界に一気に送り込む力。




これを私が持ってるって知られたら?


色んな世界の異形が、きっと目の色変えて奪いに来るわね。




だから私の存在は秘密。


組織の中ですら、私を直接知る者はほとんどいないの。




私はね、この力を侵略なんかに使いたくないのよ。




異形も、人も、他の生命も。


みんな同じでしょ? ただ必死に生きてるだけ。




でも組織の連中は違う。




「人間は他種を押しのけて繁栄してきた。なら私たちが資源を奪っても問題ない」


そんな理屈を平気で言うの。




それって結局、同じことしてるだけじゃない。




私はそれが嫌い――




母が生きてる間は、私を守ってくれたけど……




今はもういない――




私は魔王なんかじゃないわ。


ただ、少し力を持って生まれただけの、ちっぽけな存在。




人間界で言えば、財閥のお嬢様みたいなものかしら。


守られて、甘やかされて、その代わり力を狙われる。




そんな世界に、ちょっと疲れてたの。




ある日、私は組織の全体の命令で、異形たちを日本へ転移させることになったの。




私は見物がてら、自分も向かったわ。


自分の転移なんて簡単だもの。




日本は昔から興味があったの。


母や祖母から聞いてたし、隠れて行ったことも何回もある。




漫画だって読んだことあるんだよ。




ユニークで、優しくて、でもどこか忙しくて空虚で、それでもあったかい国。




そんな日本で上空をふらふら飛んでたら――




見つけたの――




ひとりの女の子……




全身真っ白で、髪まで雪みたいで、


儚いのに、なぜか目が離せない子。




異界には女神級の美しさの存在なんていくらでもいるけど、


あの子は、なんていうか……”私にとって”は「特別な雰囲気」みたいなのがあったの。


タイプだったのかな? てへへ




しかも、私と同じ。


どこにも属さず、楽しそうでもなく、ただ歩いてた。




ちょっとだけ追いかけちゃったのよ。


運命感じちゃって。




そしたらね。




なんとその子、異形と戦い始めたの。




しかも――勝っちゃった。




覚えたてみたいな念動と魔力操作で、


私の組織の幹部クラスをあっさり。




さらに異冥府の秘宝の鎌まで従わせちゃって。




あの鎌、人間が触れたら普通は壊れるわよ?




でもね、鎌の方が彼女に跪いてるみたいだったの。




正直、ちょっと怖かった。




だから私、過去視を使ったの。




彼女の過去を、そっと覗いてみた。




でも――見えないの。




おぼろげに宇宙みたいな景色が浮かんだだけ。




普通じゃない――




明らかに、何か特殊な存在の生まれ変わり……




そしてね。




私、自分の過去も見えないの……




もしかして、繋がってるのかなって。




重くは考えなかったわ。


ただ――ワクワクしたの。




白馬の王子様って、こういうこと?




それから、もう我慢できなくなって、話しかけちゃった。




最初は警戒されたけど、


見た目ほどクールじゃなくて、ちょっとおっちょこちょいで。




それが、もう可愛くて。




間近で見ると、あの白い髪、本当にきれいで。


私のルビー色よりずっと透明で。


誰かの髪が羨ましいなんて初めて思ったよ?




声は澄んでるのに芯があって、


耳元で囁かれたら心臓持たないわよあれ。




ねえ……




好きにならない方がおかしくない?




性別とか関係ないでしょ。




近づいた瞬間、抑えきれなくて……


キス、しかけちゃったの。




しかもあの子、受け入れてくれそうだったのよ?




――私の初キス……




その時点で、もう完全に落ちてたわね私。




後日、偶然を装って何度も視界に入って、


やっと見つけてもらって。




私はどうにかして、落とす気満々だったわ!




異形?人?


――そんなのどうでもいい……




ただ、彼女といたかった――




――それだけ……




だって、嫌な物見せられ続けて、無理矢理嫌な争いに加担させられ続けて、


そんな世界なんて飽き飽きして見たくなくなるでしょ?




それでね、どうにかデートゲットして沢山話したんだ。




驚いたのは、彼女と私の考えはすごく似てるの。




苦しくない生命なんてのも、傷つけていい生命なんてのもいない。


全てを公平に慈しむ……やっぱりこれが大切なのよ……。




こんな当たり前をしらずに他から奪おうと欲張る存在が多すぎるんだよ……




熱入って、話がそれたわね……ごめんなさい。切り替えるわ。





それでデートで行った海でね――




……




なんと!




長くて素敵なキスしちゃったの! ふふ




嫌なこと全部吐き出すみたいな、


ぶつけ合うみたいなキス……




シスイがね、私の肩を抱いて……




「もう大丈夫だよ」




って――




あの澄んだ目で……




存在を肯定されるって、あんなに救われるのね。




もう完全に沼よ。ガチ恋よ。(これは最近覚えた言葉)




それからも色々あって、結局結ばれ……




おーっと!!!




その先は……秘密。




読んでからのお楽しみ。




でもね。




シスイが恐れてる魔族の追っ手いるでしょ?




みんなもう知ってる通り、そのボス……





――私なの。




……




でも、もう少しだけ、秘密にさせて。お願い。




裏切らないから。絶対に。




もしバレたら、シスイがどんな反応するかを考えるとちょっと怖いし……。


組織は間違いなく大反乱を起こすでしょうね。


今とは比べものにならない強さの異形が来る。




でも大丈夫――。




私もまだ本気を出してないし、


赤翼の血統が恐れられてるのには禁断魔法以外にも色々理由があるのよ?




それに――




シスイは、まだ成長の初期段階。




きっと、二人なら越えられる。




だから応援しててね。




最後まで……




それじゃそろそろばいばいね!




別の世界のみんなへ。


聞いてくれて、どうもありがとう。

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