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第56話 これが本当に高橋奈津美なのか?

一同が声のした方向を見ると、病院のガウンを着た柴田武が車椅子に座っていた。顔色は少し青白いが、威厳は少しも損なわれていない。

高橋奈津美は柴田武を見て、思わず目を見開いた。

柴田武も高橋奈津美に気づき、目に驚きが浮かんだ。

柴田崇は二人が見つめ合うのを見て、紹介した。

「武兄ちゃん、これが私たちの妹ちゃん、高橋奈津美だ」

「奈津美ちゃん、こちらが武兄ちゃんの柴田武だ」

高橋奈津美は柴田武が柴田崇に車椅子を押されて現れた時から、彼の身分を察していた。

今、柴田崇の紹介で確信した。

まさか、あの日道端で救った人物が実の兄だったとは!

柴田武も予想外の展開に驚きを隠せなかった。

しかし、奈津美ちゃんが知らず知らずのうちに自分を助けてくれたことは、二人の絆の強さを物語っている。

そう思うと、高橋奈津美を見る目が次第に優しくなった。

口を開こうとした瞬間、柴田正美の弱々しい声が先に響いた。

「武兄ちゃん、体調がまだなのに、どうして退院なさったのですか?」

柴田武はその声を聞き、目の輝きが消えた。柴田正美を見る目は冷たかった。

柴田崇は鼻で笑った。

「よくそんなことが聞けるな?お前たちが騒ぎを起こさなければ、武兄ちゃんがこんなに早く退院することもなかったのに」

柴田正美は責められて涙目になった。

「崇お兄さん、どうしてそんな……?」

「何か間違っているか?」柴田崇は元々柴田正美をあまり好ましく思っていなかったが、最近の出来事でさらに嫌悪感を強めていた。

柴田正美はうつむいて反論できなかった。

柴田夏子が代わりに口を開いた。

「崇お兄さん、それは間違いです。正美姉ちゃんが何をしたというのです?ただ武兄ちゃんが入院しているのに、実の妹である高橋奈津美が一度も見舞いに来ないのを見て、悲しんでいただけです。そんな正美姉ちゃんを責めるなんて酷すぎます」

柴田崇は頭痛で眉間を押さえた。

「高橋奈津美は故意に行かなかったわけじゃない。そもそも武兄ちゃんの事故を知らなかったんだ。これは俺の落ち度だ」

柴田夏子は信じない様子だった。

「家中誰もが知っている大事を、高橋奈津美だけが知らない?崇お兄さん、いくら実の妹だからって、ここまで庇うのはどうかと思います」

柴田崇は腹立たしかった。

しかし、これを証明する手段がなく、柴田夏子の詭弁を許すしかなかった。

その時、黙っていた柴田武が低い声で言った。

「俺が崇に奈津美ちゃんに知らせるなと言った。心配させたくなかったからだ。これについて文句があるなら、俺に直接言え」

そう言いながら鋭い視線を投げかけると、柴田家の者たちは一斉にうつむき、静かになった。

柴田夏子も柴田武を恐れていたが、自分たちは何も悪くないと思っていた。

それに、彼女たちは武兄ちゃんのためを思って発言しているのではないか?武兄ちゃんは喜ぶべきでは?なぜ逆に彼女たちを責めるのだろう?

柴田夏子は考えるほどに腹が立ってきた。

ついに我慢できず、唇を噛んで言った。

「武兄ちゃん、どうしてまだ高橋奈津美をかばうのですか?あなたはあんなに重傷で、起き上がれなかったのに。もしあの時、たまたま医術の高い人が通りかからなかったら、今頃は…」

言葉を切り、続けた。

「あなたがあんなに危険な状態だったのに、高橋奈津美は見舞いにも行かず、寝坊して…こんな無神経で冷たい人間を、どうしてそこまでかばうのですか?」

柴田武は核心を突いた。

「あの時私を救ってくれたのは、他でもない高橋奈津美だ」

この言葉に、場内は騒然となった。

人々は顔を見合わせ、信じられないという表情を浮かべた。

高橋奈津美の評判といえば、ずっと「どうしようもない駄目人間」だった。

それがどうして、柴田武を救った名医に変身したのか?

柴田了も、柴田武の言葉に疑念を抱いた。

この孫は普段、嘘をつくような人間ではない。

それが高橋奈津美のために、こんな荒唐無稽な作り話までするとは…ますます高橋奈津美への嫌悪が募った。

「武、お前たちが苦労して妹を見つけ出し、守りたい気持ちはわかる。だが、今回は彼女が悪い。どうして…彼女をかばうために、こんな嘘までつくのだ?」

柴田武はゆっくりと目を上げ、柴田了を見た。

「祖父様、調べましたか?高橋奈津美が私を救っていないと確認したのですか?確認もせずにそう言うとは、祖父様がどれだけ高橋奈津美を嫌っているかよくわかります」

柴田了は老いぼれた顔を強張らせた。

「彼女の高橋家時代の評判は、良いものなど一つもなかった。調べたが、医術を持っているという話など聞いたことがない。お前が『彼女が救ってくれた』と言うのは、彼女をかばうための作り話だろう?武、お前は小さい頃から一番しっかりしていて、心配のいらない子だった。どうして妹のために、こんな嘘をつくのだ?」

「嘘などついていない」

柴田武の声は相変わらず淡々としていた。

「私の言葉はすべて真実だ」

柴田了が眉をひそめてまた言おうとした時、柴田武が続けた。

「祖父様、少し待ってください。あるものを見せれば、わかってもらえるはずです」

柴田武はそう言うと、以前助手に調べさせた、高橋奈津美が自分を救った時の監視カメラ映像を再生した。

当初この映像を調べたのは、後で高橋奈津美に感謝するためだった。

まさか高橋奈津美が妹で、こんな事態になるとは。

この映像が、思いがけず役立つことになろうとは。

柴田了は急いで画面を見た。

画面上で流れるように鍼を打つ高橋奈津美の姿に、目を見張った。

「こ、これは本当に高橋奈津美なのか?」

この言葉に、柴田家の他の者たちも覗き込んだ。

映像を見終わった柴田家の人々の表情は実に多彩で、高橋奈津美を見る目は驚きと疑念に満ちていた。

そして心の中で大きな疑問が湧いた。

これが…

本当に高橋奈津美なのか?

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