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第53話 凶行発生

 玄関から駆け込んできたのは、他ならぬ柴田夏子の実母・柴田和美だった。

高橋奈津美は視界の隅で柴田和美が爪を立てて襲いかかるのを見ると、冷たい目をして素早く二歩下がり、その攻撃をかわした。

柴田和美は勢いあまって前方にのめり込み、危うく転びそうになった。

柴田夏子は機敏に母親の体を支えた。

「お母さん!大丈夫?!」

柴田和美は何とか体勢を立て直すと、

「大丈夫よ」と柴田夏子に安心させ、高橋奈津美に向き直った目は烈火のごとく燃え上がっていた。

「高橋奈津美!この無礼で下品な野良娘が!いとこに手を出すなんて!今日こそ厳しくしつけてやらないと、屋根まで登って瓦を剥がすような真似しかねん!」

そう言うと、柴田和美は大股で高橋奈津美に迫り、手を振り上げて顔を殴ろうとした。

しかし、腕が中途まで上がったところで、高橋奈津美に掴まれてしまった。

柴田和美はもがいてみたが、この野良娘の力は想像以上に強く、どうにもならない。

その事実に気づくと、柴田和美の怒りはさらに爆発し、高橋奈津美を睨む目はまさに人を喰らわんばかりだった。

「高橋奈津美!この手を放しなさい!何のつもり?年長者に手を上げる気か?お前――」

言葉が終わらないうちに、手首に激痛が走り、罵声は悲鳴に変わった。

「きゃあああ――!」

その叫び声は別荘中に響き渡った。

柴田夏子は高橋奈津美が母親にそんなことをするのを見て、我慢ならなくなった。

助けに行こうとしたが、柴田正美に引き止められた。

「正美姉ちゃん!どうして止めるの?高橋奈津美が母にまで手を出しているのが見えないの?まさか今も彼女をかばうつもり?」

柴田正美は静かに首を振り、高橋奈津美の方を一瞥して気づかれていないのを確認すると、柴田夏子の耳元で囁いた。

「私が長年彼女の居場所を奪った罪はあるけど、おばさんにはいつも優しくしてもらった。どうして見て見ぬふりができよう。あなたを止めたのは、おじい様を呼んできてほしかったからよ。この状況を収められるのはおじい様だけ。高橋奈津美の凶暴さを見ればわかるでしょう?あなたが行っても逆にやられるだけだわ」

柴田夏子は先ほど自分がひよこのように軽々と持ち上げられた光景を思い出した。

認めたくはないが、高橋奈津美は確かに手強い。

自分一人ではもちろん、柴田正美と一緒でも勝ち目はないだろう。

正美姉ちゃんの言う通り、祖父を呼ぶしかない。

「じゃあ正美姉ちゃん、ここで母の面倒を見ていて。私はおじい様を呼んでくる」柴田夏子はそう言うと、急いで前庭の柴田了を探しに行った。

柴田正美はその背中を見送りながら、目にかすかな光を浮かべ、口元をゆるませた。

(さあ、これからが面白くなるわ)

一方、柴田和美は高橋奈津美への罵倒をますますエスカレートさせていた。

「高橋奈津美この小娘が!この手を放せって言ってるのが聞こえないのか?耳が聞こえないのか?」

高橋奈津美は鋭く振り向き、その視線は相手を貫くほど鋭かった。

「年長者として敬意は払っていますが、度が過ぎます。これ以上なら、私もどうなるかわかりません」

朝から食事も取らず、柴田夏子と柴田正美に煩わされ、さらに柴田和美まで加わって、高橋奈津美の忍耐も限界だった。

「ふん!」

柴田和美は高橋奈津美の言葉に冷笑した。

「敬意?そんなものがあるなら、最初からこんな無礼な真似はしないわ!脅されても怖くないぞ!逆に言ってやる!お前は野良娘で、小娘で――」

高橋奈津美の目がさらに冷え込み、ついに我慢の限界に達した。ぐいっと力を込めた。

柴田和美は手首が折れそうな痛みに、豚の屠殺のような悲鳴を上げた。

「きゃあああ――!」

高橋奈津美は力を緩めるどころか、さらに強く握り締めた。

ただし、彼女なりに加減はわきまえていた。

痛みを与えるだけで、実際の怪我を負わせるつもりはないのだ。

柴田和美にはその配慮など伝わるはずもなく、ただ手が潰されるとしか思えなかった。

「あああ!手が!手が折れる!放せ!今すぐ放しなさい!」

耳をつんざくような金切り声に、高橋奈津美は眉をひそめた。

柴田和美の顔が痛みで歪み、脂汗を流しているのを見届けると、ようやく手を離した。冷たい声で警告する。

「和美叔母さん、今後は自分の手足をしっかり管理してください。二度と私を刺激しないように。次はただ手首を握るだけでは済みませんから」

柴田和美の手首は激しく痛んでいた。

それなのに高橋奈津美が平然と警告してくる様子を見て、怒りはさらに燃え上がった。

「高橋奈津美!この小娘が!お前は――」

罵りながら再び手を上げようとしたが、高橋奈津美の鋭い視線を見た瞬間、思わず後ずさりした。

「失せろ!」

柴田和美はまず高橋奈津美の眼光に圧倒され、ようやく我に返ったかと思うと、今度は「失せろ」という言葉にまたもや凍りついた。

柴田家の二番目の夫人として長年生きてきて、こんな罵倒を受けたことがあったか?

この野良娘に「失せろ」だって?

今日こそ、この小娘に鉄槌を下さなければなるまい。

柴田和美は袖をまくり、高橋奈津美と徹底的にやり合う構えを見せた。

しかし行動を起こす前に、威厳ある声が響いた。

「高橋奈津美!叔母に向かって『失せろ』とは何事だ!天を仰がせるつもりか!」

声の主は柴田了だった。

玄関に着いたばかりの彼は、高橋奈津美の放った「失せろ」という言葉を聞きつけた。

高橋奈津美の態度は柴田崇が彼女を連れ帰ったことが間違いだったと確信させるものだった。

今や彼が高橋奈津美に向ける視線は嫌悪に満ち、まるでゴミを見るようで、一瞥しただけで顔をしかめた。

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