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第52話 捨て身の斬り込み

高橋奈津美は眉を強くひそめ、眉間に深い皺を刻んだ。

口を開こうとした瞬間、柴田夏子が柴田正美の方を見ながら言った。

「正美姉ちゃん、私の言ってること間違ってないでしょ?あの人は武兄ちゃんのことなんてどうでもいいくせに、知らないふりをして、後から心配そうな顔をするなんて、本当に吐き気がするわ!」

「夏子、少し落ち着きなさい」柴田正美はまず柴田夏子を宥めると、わざとらしくため息をつき、高橋奈津美に向かって情深く言った。

「高橋奈津美、言いにくいことだけど…私が長年あなたの居場所を奪い、家族の愛情を独り占めしてきたせいで、あなたがこんなに冷たくなってしまったのよね。家族のことなんて少しも気にかけなくなって…」

「でもどっちみち、武兄ちゃんはあなたの実の兄なのよ。血の繋がりは切れないわ。あなたがそんなに無関心で冷たい態度を取るなんて、見ていて心が寒くなるわ。武兄ちゃんが退院してあなたの態度を知ったら、きっとがっかりするでしょうね」

柴田正美の偽善的な言葉に、高橋奈津美は鳥肌が立つほど嫌悪感を覚えた。

だが、それ以上に武兄ちゃんを心配する気持ちが勝った。

珍しく穏やかな声で尋ねた。

「武兄ちゃんの容体は?深刻なの?」

柴田正美の目にかすかな光が走った。

答えようとした瞬間、柴田夏子が先に口を開いた。

「まだ演じてるの?本当にうんざり!もし本当に武兄ちゃんを心配してるなら、とっくに自分で見舞いに行ってるわ!こんな時間まで寝てて、のんびり朝食なんて取ってるわけないでしょう?あなたの態度、武兄ちゃんを心配してるどころか、早く死ねばいいと思ってるみたい!」

「死ぬ」という言葉に、高橋奈津美の堪忍袋の緒が切れた。一気に気圧が下がり、柴田夏子を見つめる目は氷のように冷たかった。

「何を言ってるの?」

その鋭い視線に、柴田夏子は首を締め付けられるような錯覚を覚え、思わず後ずさりした。

しかし二歩下がったところで、我に返って足を止めた。

(なんで私は…?)

(なんで高橋奈津美を恐れる必要があるの?)

(たった一目で怯えるなんて、恥ずかしすぎる!)

幸い素早く気づき、この情けない行為を止められた。誰にも気づかれていないはず……

柴田夏子はそう考え、それ以上深く思い悩むことはなかった。

柴田夏子は気持ちを落ち着かせ、表情を整えると、高橋奈津美の冷たい視線に意地でも対抗しようとした。

「何で私を睨みつけるの?私の言うことが間違ってる?それに、今まで武兄ちゃんは何の問題もなかったのに、あなたが戻ってきた途端に事故に遭って、それも重傷で寝たきりなのよ!もしかしたら、あなたの不運が伝染したんじゃない?」

高橋奈津美は柴田夏子が自分に罪をなすりつけ、しかも肝心なことを言わない態度に我慢の限界に達し、一歩前に出て柴田夏子の襟首をつかんだ。

柴田夏子はひよこのように持ち上げられ、もがこうとしたが、高橋奈津美の冷たい視線を見た瞬間、運命の喉元を押さえつけられたように身動きが取れなくなった。

十数秒経ってようやく、かすかな声を絞り出した。

「あ、あなた……何するつもり?」

高橋奈津美はゆっくりと身を乗り出し、柴田夏子の目を覗き込んだ。

「私の忍耐は限界よ。これから質問するから、すぐに答えなさい。余計なことを言ったら、すぐにぶつよ!」

柴田夏子は唾を飲み込み、言おうとしたが、高橋奈津美が先に口を開いた。

「武兄ちゃんは今どこの病院のどの部屋にいるの?」

柴田夏子は高橋奈津美の"演技"に心底呆れた。

口を固く閉ざしたまま、高橋奈津美が本当に手を出すとは思っていない!

高橋奈津美は柴田夏子の考えを見抜き、目をさらに冷たくした。

「3つ数えるまでに言わなかったら、すぐにぶつからね」

「3」

「2」

しかし「1」と数える前に、柴田正美に遮られた。

「高橋奈津美、落ち着いて話しましょう。どんなことがあっても、暴力はだめよ」

柴田夏子は柴田正美が口を出したのを聞き、慌てて助けを求める視線を向けた。

「正美姉ちゃん、助けて、早く助けて!殺されちゃう!」

「夏子、高橋奈津美はただ脅しているだけよ。本当にぶったりしないわ。怖がらないで」柴田正美は優しい顔で高橋奈津美に言った。

「高橋奈津美、まず手を離して。話し合いましょう。武兄ちゃんの病院が知りたいんでしょ?夏子を離せば教えてあげる」

高橋奈津美は思った。柴田正美の最後の言葉は的を射ている。

彼女がここまで我慢しているのは、武兄ちゃんの状況を知りたいからで、本当に暴力を振るうつもりはない。

柴田正美の提案は願ってもないことだ。

そう考え、柴田夏子から手を離そうとした瞬間、柴田夏子の甲高い声が再び響いた。

「正美姉ちゃん!彼女はただの脅しよ!絶対に教えないで!もし教えたら、武兄ちゃんの前でもこの演技で騙して、信用を得ようとするに決まってる!そうなったら私たちが悪者にされるんだから!」

柴田正美はよく考えてみると、確かにその通りだった。

彼女が苦心して築いた柴田家でのイメージを、高橋奈津美の三文芝居で台無しにされるわけにはいかない。

柴田夏子の言う通り、柴田武の病室を教えることは彼女にとって百害あって一利なしだった。

しかし柴田夏子を放っておくわけにもいかず、形だけ高橋奈津美をなだめた。

「高橋奈津美、まず夏子を離しましょう。話し合えば解決するわ。こんな険悪な雰囲気にする必要ないでしょう?それにここにはお手伝いさんや他の家族が出入りするんだから、こんな格好を見られたらみっともないわ」

高橋奈津美は悟った。柴田正美は柴田夏子に説得され、武兄ちゃんの病室を教える気はないようだ。

ならば、遠慮する必要もない。

「柴田正美!あなたも余計なことを言わないで!もう一言でも喋ったら、同じようにぶつからね!」

朝からまだ朝食も取らず、二人の戯言を聞かされる羽目になった。

高橋奈津美の冷たい声と威圧的な態度に、柴田夏子も柴田正美も本当に暴力を振るわれると思い、互いを見合わせ黙り込んだ。

その緊迫した空気の中、突然玄関から怒声が響いた。

「高橋奈津美!この野良娘が!うちの夏子に手を出すなんて、あああ――覚悟しなさい!」

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