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第47話 約束を果たすまで離さない

 高橋奈津美:「……」

口元がぴくぴくと引きつる。

彼のこの悔しそうで憤りに満ちた口調は、

まるで自分が彼を無理矢理手籠めにした挙句、責任を取らない薄情女のように言っている。

でも明明、彼女は彼を救った側なのに!

高橋奈津美は心底呆れ返った。

「ちょっと、本当に理解してる?あの時は故意じゃなくて、やむを得ない事情があったのよ。それを今更責めて責任取れだなんて、恩を仇で返すようなものよ、分かってる?」

中村浩はその言葉に、目の下に影を浮かべ、明らかに不機嫌な表情になった。

「俺が中村に責任を取れと言うのが、恩を仇で返す?」

高橋奈津美は眉をひそめて反論した。

「そうじゃないの?」

中村浩は高橋奈津美が必死に自分との関係を断ち切ろうとする様子を見て、瞳の色がますます深く暗くなり、さらに彼女に近づいた。

「構わない!中村が触るべきじゃない場所に触った以上、最後まで責任を取ってもらう。逃げることは許さない」

高橋奈津美は今日何度中村浩の常識外れな発言に驚かされたか、もう数え切れなかった。

気持ちを落ち着かせ、中村浩を見ながら説得を試みた。

「確かに...触るべきじゃない場所に触れたかもしれないけど...でもあなたの今後の生活に影響はないでしょ?それに私があなたを救ったんだから...お互い一歩引いて、この件は無かったことにしようよ」

「ありえない!」

中村浩は頑なに拒否した。

「絶対に、最後まで責任を取ってもらう!」

高橋奈津美は頭痛で眉間を押さえた。恋愛経験がなく、感情に鈍い彼女でも、中村浩の言う「責任」の意味は理解できた。

元々はっきり言いたくなかったのは、中村浩と兄が親友同士だということ、そして二人の間に婚約があることを考慮して、今後顔を合わせる機会も多い中で関係がこじれるのを避けたかったからだ。

だが中村浩が責任を取るまで諦めない様子を見て、はっきり言わざるを得なかった。

「中村浩さん、見た目もいいし家柄も良い。でも私は浩さんに興味がないの。1年後に婚約が自動解除されたら、私たちはそれぞれの道を行く。あなたのような条件なら、どんな女性でも手に入るでしょ?だから諦めて。次の角を曲がれば運命の人が待っているかもしれないわ。私一本の木に執着する必要なんてないのよ」

中村浩はそれを聞いて、はたと思い出したように深い後悔の色を目に浮かべた。

(一年の約束なんて持ち出さなければよかった...)

今となっては自分で自分の首を絞めたようなものだ。

しかし...

中村浩は高橋奈津美の陶器のように白い顔を一瞥し、確信に満ちた光を目に宿した。

(一年あれば十分だ)

たとえ足りなくても、その時はまた別の手段を講じればいい。

要するに、この子は自分のものだ。

決して手放さない。彼女が逃げ出すことなど許さない!

高橋奈津美は中村浩が長く沈黙しているのを見て、自分の言葉に同意したのだと勘違いし、内心ほっと一息ついた。

「それでは、処方箋は書いておきました。この通りに薬を調剤してください。ご自身でやっても構いません。こんなに詳しく書いてあるのですから、浩さんのような聡明な方なら間違えないでしょう」

中村浩はその言葉に、口元に嬉しそうな笑みを浮かべた。

「褒めていただき光栄です。どうやら僕に対するあなたの評価はなかなか高いようですね」

高橋奈津美:「……」

またもや口元が引きつる。

彼女はただ普通に言っただけなのに、

中村浩の耳にはどうしてそう聞こえるのだろう?

高橋奈津美は事態が制御不能な方向に向かっているような気がした。

特に中村浩という人物は、予測不能な要素が多すぎる。

そして最も厄介なのは……今のところ適切な解決策が思いつかないことだ……

さっき中村浩が沈黙したのは、自分の意見に同意したからだと思っていた。

だが彼の様子を見る限り、どうもそうではないらしい……

高橋奈津美の頭痛はますますひどくなった。

眉間を強く押さえたが、痛みは和らがない。

中村浩は高橋奈津美が頻繁に眉間を押さえる様子を見て、心配そうに尋ねた。

「どうしてそんなに眉間を押さえるの?気分が悪いのかい?」

高橋奈津美は目の前にいる、自分の頭痛の原因でありながら無自覚な男を見て、ため息をついた。

長い沈黙の後、ようやく答えた。

「大丈夫。ちょっと頭が痛いだけ。しばらくすれば治るわ」

中村浩がマッサージを申し出ようとした瞬間、高橋奈津美が再び口を開いた。

「あの……急ぎの用事を思い出したので、そろそろ失礼します。中村さんにはこの処方箋通りに薬を飲めば問題ありません。何か異常があったら連絡してください。時間を作って来ますから」

中村浩には、高橋奈津美がわざと口実を作って逃げようとしているのがよくわかった。

せめて夕食くらいは共にして、もう少し一緒にいたかった。

だが今日は彼女の正体を暴いてしまい、十分に衝撃を与えてしまった。

一旦落ち着かせてあげないと、逆効果になるかもしれない。

それに、二人の間には長い時間がある。焦る必要はない。

中村浩は思考を整理し、目の前の少女を見つめ、優しい眼差しを向けた。

「車を手配しようか?」

高橋奈津美は即座に断った。

「いいえ……自分で帰ります」

そう言いかけて、何か思い出したように足を止め、咳払いをしてから言った。

「マスクをあなたに破壊されたので、新しいのを持ってきてもらえませんか?それと……私が奈津美名医であることは、他の人に言わないでください。この身分を知られたくないのです」

中村浩は迷いなく頷いた。

「安心して。中村の秘密は守る。ちょっと待ってて、マスクを取ってくる」

高橋奈津美は思った。さっきの責任を取れと迫る無頼ぶりはともかく、中村浩は基本的に良い人物なのだと。

それは秘密を守ると約束し、マスクを探してくれることだけではない。老婆の金を奪われた事件や、自分の傷の手当てをしてくれたことからもわかる。

そう考えていると、中村浩はすぐに戻ってきた。

黒いマスクと車の鍵を手にしている。

高橋奈津美の前に立つと、まずマスクを渡し、それから言った。

「やっぱり、僕が送っていこうか?」

高橋奈津美:「???」

長い沈黙の後、ようやく声が出た。

「送ってくれる?私の正体がもっとバレやすくなるように手助けしたいの?普段なら構わないけど、今の私は奈津美名医よ。奈津美名医と中村氏財閥のCEOが一緒なんて、それだけで目立ちすぎるわ。もし誰かに見られたらどうするの?」

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