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第28話 次男一家の恥知らず

 柴田崇は薄笑いを浮かべ、軽く頷いた。

「はい、おじいちゃん。私は無事に奈津美名医の診療権を獲得し、彼女の個人連絡先も教えてもらいました。あとは診察の日時を決めるだけで、祖父の治療に来てくれるはずです」

確かな返答を得て、柴田了は大喜びし、老人の顔には笑い皺が刻まれた。

「崇君、お前は本当に奈津美名医の診療権を手に入れたのか!素晴らしい、ますます立派になったな!」

その褒め言葉に、柴田崇は謙虚に微笑むだけで、何も返さなかった。

その時、柴田愛はようやく我に返ったように、猛然と柴田和美と柴田誠の方へ振り向き、驚きのあまり考えずに口を滑らせた。

「道理で!普段から金にがめつい誠兄さんと和美姉さんが、オークションから戻ってすぐにここで待ち構えていないわけがないと思ったわ。なのに部屋に籠もって荷物をまとめ、私が呼びに行っても渋るなんて……負けたのはあなたたちの方だったのね!」

さっきから何かおかしいとは思っていたが、頭が追いつかなかった。

今やっと事情の筋道が理解できた!

柴田和美の顔色は、もはや「難看」という言葉では表現できないほどだった。

極限まで陰鬱で、滴り落ちそうな暗さを湛えている。

「柴田愛!あなた、黙っていられない病気なの?」

柴田誠は状況を見て、急いで柴田和美の腕を引っ張った。

「お前さん、少し落ち着け」

柴田愛がどれだけひどくても、彼女は自分の実の妹だ。

特に父の面前で、柴田和美が「死」なんて言葉を使うのは行き過ぎている……

柴田和美も少し冷静になり、自分の発言が過激だったと気づいた。深く息を吸い、胸中の怒りを無理やり押し殺すと、硬い表情で黙り込んだ。

しかし柴田愛はこんな屈辱を受けるつもりはなく、しつこく食い下がり始めた。

「和美姉さん!何その言い方?『死』だなんて、私を呪うつもり?」

柴田和美は言い返そうとしたが、柴田了の面前であることを慮り、冷たい表情で一言返した。

「そんなつもりはないわ」

しかし柴田愛は腰に手を当て、柴田和美と「戦い」を続けるような険しい表情で言い返した。

「つもりがない?じゃあどういう意味よ?それに私が呼びに上がったのも親切だったのに、あなたたちが負けたからって私のせいにするの?」

柴田和美はその言葉に胸を大きく波打たせた。

もう我慢の限界に達し、声を荒げて怒鳴った。

「黙りなさい!」

柴田愛は黙るどころか、ますます調子に乗って言い募った。

「嫌よ嫌よ、どうせ私に何もできないくせに!」

「……」

二人は延々と言い争いを続けた。

少し離れた場所で、高橋奈津美はこの光景を見て、唇端に浅い笑みを浮かべた。

なぜかこの愛おばさん、ちょっと可愛らしく思えてきたのはどうしてだろう?

一方、柴田崇はこの様子を見て、笑いをこらえるのに必死だった。

「ふふふ──実に面白い、本当に素晴らしい光景だ」

柴田了は柴田和美と柴田愛の口論がますます激しくなるのを見て、こめかみをピクつかせ、茶碗をテーブルに強く置いた。

「もういい!」

柴田和美と柴田愛は思わず振り返った。

柴田了の険しい顔を見て、二人とも声を呑んだ。

口では何も言わなかったが、視線だけは火花を散らし続けていた。

広間は次第に静かになっていった。

高橋奈津美は先の賭け事を思い出し、柴田崇に目配せした。

柴田崇は意を悟り、一歩前に出て柴田和美に言った。

「和美おばさん、愛おばさんとの話が終わったなら、私たちの話をしましょうか?」

柴田和美の顔がこわばり、一瞬体が硬直した。

そして我に返ると、柴田崇に無理やり笑みを作った。

「私たちの話?何のことかしら?」

柴田崇は柴田和美がわざと知らぬふりをしているのを見て、遠回しな言い方をやめた。

「愛おばさんがさっき言ったでしょう?賭けの件です。あなたたちが負けた以上、相続財産の一部を私たちに渡すべきです」

柴田和美の表情はさらに険しくなり、頭を絞って考えられる言い訳を探した。

柴田誠はわざと軽い調子で言った。

「崇君、そんな大げさな。あの賭けは家族内の冗談だったんだ。まさか本当に取り上げるとはね」

明らかに事を小さく済ませようとする意図が見えた。

「はっ──」

柴田崇は冷たい笑いを浮かべた。

「もし負けたのが私たちだったら、誠おじさんは『冗談だ』と言ったでしょうか?」

柴田誠が答える前に、柴田和美が先に口を挟んだ。

「もちろんよ!元々ただの冗談なんだから、誰が勝っても負けても…関係ないわ」

高橋奈津美は柴田和美と柴田誠が大勢の前で平然と約束を反故にするのを見て、心の中で目を回した。

ちぇっ。

この二人、本当に「恥知らず」という言葉を地でいってるわね!

柴田崇は深く息を吸い、さらに言おうとしたが、柴田了が口を挟んだ。

「もういい!家族同士、ここまでで十分だ。これ以上は和を乱すだけだ」

柴田和美は柴田了も事を小さくしたいと考えていると察し、すぐに便乗した。

「父さん、その通りです。私たちも…家族の和を乱したくないだけです。でも崇君が執拗に…」

言葉をわざと途中で切った。

その意図は誰の目にも明らかだった。

柴田崇は柴田和美が約束を履行しないばかりか、逆に自分たちを責めているのを見て、笑いが出た。

「和美おばさん、一体誰が執拗なのか、ご自分でよくわかっているでしょう!」

柴田和美は無邪気なふりをした。

「でも冗談だって言ってるでしょう?あなたが真に受けただけよ」

柴田崇:「和美おばさん──」

言葉を発しようとした瞬間、高橋奈津美が遮った。

「崇兄ちゃん、もういいわ。明らかに厚かましくて約束を守る気がない人に、何を言っても無駄よ。今回はいい教訓になったわ。次からはこういう信用できない人とは賭けないようにしましょう。どうしてもするなら、録音して証文も作っておくことね。また反故にされないように」

柴田崇は柴田和美の約束破りに最初は腹を立てていた。

しかし高橋奈津美の言葉を聞いて、なぜか怒りが消え、むしろ爽快な気分さえ覚えた。

「奈津美ちゃんの言う通りだ。信用できない人とやり合うのは自らストレスを求めるようなものだ。もう二度と賭けなどしなければいい。どうせあの人たちは負けを認められない性分なんだから、どうしようもないさ

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