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第27話 最高にドラマチックな瞬間

 「愛!」

柴田了は重々しい視線で柴田愛を睨みつけ、警告の色を浮かべた。

しかし柴田愛は事態を面白がるように、ソファから立ち上がり周囲を見回した。

「誠兄ちゃんと和美姉ちゃんは?さっき戻ってきたはずじゃない?どこ行ったの?今すぐ呼んでくるわ!」

彼女は疾走するように、誰も止める間もなく階段を駆け上がっていった。

柴田了はその背中を見送りながら、血の気が引くのを感じ、胸を押さえてしばらく息を整える必要があった。

「この愛め!」

年だけ取って、ちっとも賢くならない!

今、長男を除いて、次男も三男も柴田愛自身もろくに稼ぎがない。

こんな風に長男の面子を潰してしまったら、

今後彼らが長男に頼る時、果たして助けてもらえるだろうか?

それなのに、何度も暗示したというのに、みな分かっていながら知らぬふりをしている!

本当に……こいつらは私を殺す気か!

柴田了の怒りとは対照的に、柴田崇は愛おばちゃんが駆け上がる背中を見て、余裕たっぷりの笑みを浮かべた。

「これで面白いことになるな」

彼はオークションで誠おじさんと和美おばさんの姿を見かけた。つまり、彼らは自分が奈津美名医の診療権を獲得したことを知っているはずだ。

それなのにここにいないのは、賭けの履行を避けるためにわざと部屋に籠もっているからだろう。

そして今、愛おばさんが呼びに行った……

誠おじさんと和美おばさんが愛おばさんを見て、どんな表情をするか、見ものだ。

高橋奈津美もそれに応えるように、口元を緩めて余裕のある表情を見せた。

「ええ、きっととても興味深い光景になるでしょうね」

階上では――

柴田愛は柴田誠と柴田和美の部屋にやってきた。

二人が荷物をスーツケースに詰めているのを見て、驚いて尋ねた。

「誠兄ちゃん、和美姉ちゃん、どこに行くのよ、こんなに荷物をまとめて?」

柴田和美はもちろん、賭けの履行を逃れるために急いで荷造りをしているとは言えない。

だが柴田愛に見つかってしまった以上、彼女の大口が家族中に噂を広めないよう、それらしい理由を考えなければならない。

少し沈黙した後、柴田和美は良い言い訳を思いついた。

「あ、あのね……ベネチアの景色が素敵だから、あなたの二哥に連れて行ってもらおうと思って。もう航空券も取ったのよ。今夜荷物をまとめて、明朝出発するつもり」

「まあ!荷物なんていつでもまとめられるでしょ!今すぐ私についてきなさい!」柴田愛は無理やり柴田和美を部屋から引きずり出した。

柴田誠はそれを見て、眉をひそめて制止した。

「愛!何をするんだ?俺たちは荷物をまとめる必要がある。お前が下りたいなら一人で行け!和美姉ちゃんを引っ張るな!」

彼らは柴田崇が戻る前に急いで荷物をまとめ、ここを離れなければならない。

さもなければ、財産を守れないのだ。

「誠兄ちゃん、和美姉ちゃん、旅行に行きたくて賭けの約束なんてすっかり忘れてるんでしょう?」

柴田愛は柴田和美の手を放すどころか、さらに強く引っ張り、無理やり廊下に連れ出した。

「崇とあの妹がもう帰ってきてるんだから、さっさと下りて賭けの約束を果たさせなさいよ!あの財産をもらうのよ!」

もちろん、彼女がこんなことをするのは、単に柴田和美たちに金を取らせたいからではない。

いつも威張っている長男の連れが面目を失う姿を見たいだけだ。

長男の奴らがいつも上から目線でいるからよ!彼らが屈辱を受けるのを見れば、心底痛快な気分になれるわ!

柴田和美はその言葉を聞いて、顔色が一変し、思わず柴田誠に助けを求める視線を送った。

柴田誠も、柴田崇と高橋奈津美がこんなに早く戻ってくるとは思わず、一瞬呆然とした。

その隙に、柴田和美は柴田愛に廊下まで引きずり出されてしまっていた。

柴田誠は慌てて追いかけた。「愛!待て!」

しかし柴田愛は聞く耳を持たず、柴田和美を階下まで引っ張っていった。

すぐに柴田誠も追いついたが、もう階下に着いてしまっては手遅れだ。

三人は居間で立ち止まった。

柴田愛は柴田崇と高橋奈津美を指さし、柴田和美に言った。

「和美姉ちゃん、ごらん、彼らはここにいるわ。さっさと負けた分の財産を譲り受けなさいよ!」

柴田和美の顔がこわばり、柴田愛を見る目は怨念に満ちていた。

この柴田愛め……

本当に人を殺す気か。

柴田誠も言葉に詰まり、何と言えばいいかわからない様子だった。

柴田愛は彼らの異様な空気に気づかないふりをして、さらにせき立てた。

「誠兄ちゃん、和美姉ちゃん、何をぐずぐずしているの?早くしなさい!財産をもらいなさいってば!」

柴田和美は歯軋りしながら、柴田愛を睨みつけた。

「あなた、黙りなさい!」

柴田愛もすぐにカッとなり、腰に手を当てて柴田和美に「発砲」する構えを見せた。

「和美姉ちゃん、私が親切に財産を受け取りに来させてあげているのに、その態度は何?『犬が呂洞賓を噛む』とはこのことね。人の親切もわからないんだから!」

「あなた……!」柴田和美は胸を激しく上下させ、もう言葉も出ない。

柴田誠は柴田愛を睨みつけて警告した。

「お前、少し静かにしろ!」

「でも……」

柴田愛は不可解そうな表情を浮かべた。

「あなたたち、さっきまで長男の財産が欲しくてたまらなかったじゃない。なのに今になってまた格好つけてるの? いったいどういうつもり?」

柴田和美と柴田誠は柴田愛が彼らの本心を暴露したことで、面目を失ったような表情になった。

「柴田愛、黙れ! 黙れって言ってるのが聞こえないのか!」柴田和美の顔は青ざめ、歯を食いしばっていた。

柴田愛も表情を硬化させ、反論しようとしたが、その時柴田崇のゆったりとした声が先に響いた。

「愛おばさん、誠おじさんと和美おばさんが言い出せないなら、私が教えてあげよう。彼らがすぐに財産を受け取りに来なかったのは、負けたのが私たちではなく、彼ら自身だからだよ」

傍らで高橋奈津美は、柴田愛と柴田和美夫妻が喧嘩寸前になる様子を面白そうに見つめ、口元に戯れの笑みを浮かべていた。

ふむ……

やはりこの芝居、実に興味深いわ。

柴田愛は柴田崇の言葉を聞いて、猛然と振り向いた。目は銅鈴のように見開かれ、信じられないという表情だった。

「何ですって? あなたたちは負けてないの?」

柴田了は目を輝かせ、柴田崇を見つめた。

「崇君、その意味は……お前は奈津美名医の診療権を手に入れたということか?」

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