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第22話 奈津美名医の医者魂

 高橋家の三人の胸中に渦巻く驚きの波は、なかなか収まらなかった。

中でも最も激しく動揺したのは、高橋七海だった。

彼女の目は銅鈴のように見開かれ、口は「O」の字に開いたまま、まるで魂を抜かれた人形のようになっていた。

ついこの前まで、高橋奈津美の貧しい実家を嘲笑っていた。

あんな家庭では、数万円のブレスレットすら買ってやらないだろうと思っていた。

だが...今この状況は?

誰が想像できただろう? 高橋奈津美のチンピラお兄さんが、たった一度の競りで数千万円を投げ打ち、彼女と母親が夢見ていたあのブレスレットを高橋奈津美に与えるなんて!

高橋七海は高橋奈津美の腕に輝くガラス種浮き花翡翠ブレスレットを見つめ、次いで自分自身の翡翠ブレスレットに視線を落とした。

比べてみれば、完敗だった。

高橋奈津美と一言も交わしていないのに、先ほどまでの偉そうな態度に満ちた考えを思い出すと、

高橋七海はそれらの考えが一つ一つ、自分自身の顔に向かって強烈なビンタとなって返ってくるような気がした。

顔が火照り、恥ずかしさで身もだえしそうだった。

「どうやら高橋奈津美の実家は、私たちが思っていたほど貧しくはないようだ」高橋洋佑が最初に我に返り、冷静に分析した。

高橋玲子も徐々に驚きから覚めていった。

「とはいえ、五千万円もの大金を平気で出せるほど裕福だとは思えないわ。家財をすべてはたいてでも、高橋奈津美にブレスレットを買おうというのかしら?」

高橋洋佑は彼女の意見に同意するように頷いた。

「その可能性はあるな」

仮に彼らの家が全財産を投げ出せば、5~6億円はあるだろう。しかし、たとえそうだとしても、彼らはその大金をブレスレット一枚に費やすことはない。そんな行為は、彼らのような家庭にはあまりにも贅沢すぎる。そのお金は、他の重要なことに使うべきだ。例えば、これから競りにかかる奈津美名医の診療機会などに……。

高橋玲子は高橋洋佑が自分の意見に同意したのを見て、少し離れた場所でブレスレットを着け得意げな高橋奈津美の姿を一瞥し、鼻で大きく「フン」と嗤った。

「高橋奈津美とその家族は、みんな見栄っ張りばかりね。見栄を満たすためなら家財を投げ出すなんて、この先の生活はどうするつもり?車椅子の祖父の面倒も見なくなるの?本当に自己中心的で、見下げ果てた行為だわ!」

高橋七海の心はもともとずっとモヤモヤしていたが、高橋玲子が高橋奈津美を虚栄心の強い人間だと罵るのを聞いて、少し気が楽になった。

「お母さんの言う通りよ。こんな自己中心的な人間のことで怒って体を壊すなんて、馬鹿らしいわ」

娘の慰めに、高橋玲子の表情も和らいだ。

「七海の言う通りね。こんな不吉な人間のことは話題にしない方がいいわ」

三人が話している間、オークションでは次々と出品物が取り上げられていった。

司会者が再びマイクを持ってステージに立った。

「これまでの出品物は全て落札されました。ではいよいよ、皆様お待ちかねのメインイベント――奈津美名医の診療権の競売に移りたいと思います!」

この宣言とともに、会場は一気に熱気に包まれた。普段はどんなことがあっても表情を崩さない大物たちの顔にも、抑えきれない興奮の色が浮かんでいる。皆、手にした札を握りしめ、緊張した面持ちでステージを見つめ、競売開始の瞬間を待ち構えていた。

司会者は会場を見渡した。ごく一部の実力不足の小物を除けば、無名の小家族から名だたる大物まで、誰もが奈津美名医の診療権を手にしたいと考えている。さすがは奈津美名医、これほどまでに各界の大物を熱狂させられる存在は他にいないだろう。

「皆様、すでに待ちきれないご様子ですね。では余計な前置きはせず、すぐに競売を開始したいと思います。ただし、最後に一点だけ補足させていただくことがあります」

司会者は一呼吸置いてから続けた。

「以前奈津美名医の診療権オークションに参加された方はご存知かと思いますが、毎回の収益は全額孤児院や福祉施設に寄付されます。今回はそれに加え、当オークションの収益の一部も同様に寄付させていただきます」

この言葉に、会場の誰もが心の中で感嘆した。

奈津美名医のこの行為は、まさに仁義に厚い!

心底から敬服せずにはいられない!

一方、高橋家の三人も背筋を伸ばし、手にした札をしっかりと握りしめ、競売開始に備えていた。

高橋洋佑は高橋玲子が緊張のあまり全身が硬直しているのを見て、そっと肩を叩きながら慰めた。

「お前さん、そんなに緊張しなくてもいい。たとえ家財を投げ出すことになっても、必ず今回の診療権を落としてみせるからな」

高橋玲子は呼吸を整えながら、

「ええ!あなたならできると信じてるわ!」と答えた。

二人が話している間、司会者の声が再び響き渡った。

「それでは余計な前置きはこれまで!奈津美名医診療権の競売を開始します!開始価格は10万円!」

開始価格は10万円とはいえ、奈津美名医の名声と、これだけ多くの大物が集まっている状況を考えれば、最終落札価格は1億円を下回ることはないだろう。

そのため言家も大枚をはたき、高橋玲子の治療のために2億円の予算を準備していた。どうしてもこの診療権を手に入れるつもりでいた。

しかし、彼らの考えは甘かった。

十分な資金を準備していたとしても、競りに参加する者が多すぎて、高橋玲子はなかなか競りに参加する機会を見つけられなかった。

ようやく隙を見つけると、彼女は急いで札を上げた。

「25万円!」

しかし、この一度きりだった。その後、高橋玲子は何度も競りに参加しようとしたが、二度と機会をつかむことはできなかった。

「100万円!」

「150万円!」

「300万円!」

次々と競り値が上がっていく。高橋玲子は口を開こうとしたが、何度も言葉を飲み込み、ついには我慢の限界に達し、苛立ちを隠せなくなった。

「まったく、どうしてこんなに我先にと奪い合うの?本当に必要な人に機会を譲るべきでしょうに!少し待ったからといって死ぬわけじゃないのに!」

高橋洋佑は周囲に顔の利く人物がいるのを見て、声を抑えて注意した。

「お前さ、言葉には気をつけた方がいい。競りに参加できなくても、また機会はある。不用意な発言で禍を招いてはならない」

だが高橋玲子の不満は収まらない。

「私の言っていることが間違っているとでも?あの人たちは明らかに——」

彼女の言葉は、前方から投げかけられた冷たい視線によって遮られた。よく見れば、その人物は経済誌に頻繁に登場する海外の大物ではないか。

高橋玲子はその視線に背筋が凍りつく思いがし、思わず体が硬直した。もしかして、さきほどの不用意な発言が、この大物の逆鱗に触れてしまったのだろうか?


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