猫の森
趣味でパパっと書いたものです。
「東京に行きたい!!」
俺の怒鳴り声が家中に響き渡った。
「奏斗、たしかにあなたの気持ちもわかるけど...東京での生活は大変でしょ?お母さんとお父さんは反対よ...」
「でも!!俺の友達はみんな東京に行ったんだ!!」
俺の名前は高橋 奏斗(たかはし かなと)。
俺は生まれた時からずっと、田舎の森付近に住んでいた俺は、東京という名の大都市に憧れていた。
なのに母さんも父さんも大反対して行かせてくれない。友達はとっくに東京に行って、俺は1人ぼっち。
友達からはメールで「お前も早く来ればいいのに」と送ってくる。
「だいたい俺たち若者が、こんな田舎で生きていけるかっつーの!!!」
「奏斗!!」
父さんが怒鳴る。
「俺は東京にいくからな!!もういいよ!!」
俺は家を飛び出した。飛び出すやいなや、全速力で森へ走った。母さんが
「待ちなさい!!」
と言っているのが聞こえたがもういい。
でも俺は、走っているうちにここがどこだかよく分からなくなってきた。
気づいたら、木の葉っぱが風に吹かれる音しか聞こえない。
やっべ、どこだここ。
適当に奥へと進んでいると開けた場所に出た。
建物があって、お店もあるみたいだ。
しかし変だ。人間が1人もいない。
目の前にいるのは、二足歩行をした服を着たねこ.....。
「って!!えええぇぇ!!!!!!!!!!」
驚いて大声で叫んでしまった。瞬時に猫たちが振り返る。
猫たちは俺のことを珍しそうに眺め、周りに猫が群がってきた。
「ねぇ、あなた人間?」
俺は振り返った。そこには真っ白い色をした猫の子がいた。
猫の子は、俺を見上げてうるうるした目で見つめてくる。
「そうだよ、俺は人間の...高橋 奏斗だ」
「そうなの!?私シャラ!よろしくね!!この村の中学校に通ってるんだ!今は中学3で、もうすぐ高校に行くの!!」
シャラは、俺の手をグイグイ引っ張ってきて、人混み...いや、猫混みから出してきた。
シャラは、彼女が暮らしている家に俺を連れてきた。
俺はイスに座らせられた。
「ねえ奏斗さん、ここがどこかわかる?」
「えぇ?あぁ...分かんない...」
シャラは頬ずえをして答えた。
「ここは...猫だけが暮らす国....にくきゅう王国。ここはまだ田舎な方で、中心に行けば行くほど
大都市になってくの。いいなー大都市。私も行きたーい」
シャラのしっぽが揺れる。
すると、階段の方から、猫が覗いていることに気がついた。
「ねぇ、シャラ。あの子は?」
「あの子は私のお姉ちゃん。私と同じで真っ白だけど、しっぽの先がお姉ちゃんは黒いの。
しかも肉球は茶色タイプなの」
シャラが自分のピンクの肉球を、お姉ちゃんに見せびらかす。
お姉ちゃんは、一瞬ムッとした表情になったけど、サッと俺の方に近づいてきた。
「ナーサです。よろしく」
シャラのお姉ちゃんは、ナーサというらしい。手を差し出してきて、握手を求めているようだ。
ナーサの手に触れた瞬間、肉球のひんやり、ぷにぷにした感触がした。
でも、いざ握手をすると、ナーサは手を思いっきり握ってきて正直痛い。
ようやく手を離してくれた頃には、一瞬手の感覚がなかった。
気を取り直してシャラの方を見ると、暗い顔をしていた。
「どうしたの、シャラ...」
「実はね...この世界に猫ではない生き物が迷い込んでしまうと、5ヶ月の時を得て、徐々に私たちのような猫ケモの姿になっていくの。奏斗、自分の指を見て」
シャラに言われたとおり指を見ると。
「なっなんだこれぇぇ!!」
自分の爪が猫のように鋭くなっていた。
ナーサも口を挟む。
「1ヶ月後には、ひげとしっぽが生えてくるな」
そんな...
「俺はどうすればいいんだ!?」
「5ヶ月以内にここを出るんだ。」
ナーサが言う。シャラもうなずいた。
シャラは笑顔に戻って
「ひとまずこれから家で寝ていいよ!ベッドの準備できてるの!もう暗いし」
シャラにまた引っ張られ、俺の寝室に案内された。
そこには猫じゃらしや爪とぎなど、猫らしいものもあった。
「私はもう寝るから、また明日っ!!」
シャラは手を振って自分の部屋に戻って行った。
俺も知らない街に来て疲れたし、もう寝よう。
ここの世界は人間の世界より、星が綺麗に見える。
星に見とれている間に、俺は夢の世界に落ちていた。
外では、
金色に光る目を持った猫がシャラたちの家の前に現れる。
「人間が来たなんて...これは一大事だ」