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88 大学はしゃっくり博士養成所じゃない

 ひっく



 ひっく



 ひっく



「次の問題は、荻野。前に出て、やってみて」


「はい」


 ひっく 


「y=1750です」


 ひっく


「はい、正解」


 ひっく ひっく


「次は松田」

「はい。ひっく」

「お前さっきから、しゃっくりがうるさい」


 智子の指摘にクラスメイトたちは一斉に笑った。

 昌巳本人も照れ笑いをしている。


 昼休み後の5時間目、昌巳は規則正しくしゃっくりを続けている。



「すいませんひっく」

「謝罪としゃっくりを融合させてんじゃねえ」

「ひっく」

「しゃっくりで返事してくんな」

「ひっく ひっく」


 智子はしょうがないなあという顔で昌巳を見る。


 すると、昌巳の照れ笑いが瞬時に真顔になった。


「おい、どうした。急に真顔になるなよ。恐いだろうが!」

「ひっく」

「だから、しゃっくりで返事すんなって言ってるだろ」

「ひっくすいません」

「しゃっくりと謝罪の融合やめろ」

「ひっく ひっく ひっく」

「なんなんだよ一体……」


 智子は苛立つ気持ちを必死に抑えていた。

 わざとでない以上、昌巳を責めるわけにはいかない。 


「ともちゃん先生」

「なんだ、浜本」

「しゃっくりを100回続けると死ぬっていう噂をネットで見たことがあるんです

けど、あれって本当ですか?」


 涼香の言葉に教室がざわついた。


「俺も読んだことある!」

「俺も!」

「ともちゃん先生、どうなの? 昌巳はもうすぐ死ぬの?」


 生徒たちに注目される中、智子は首を傾げた。


「その噂は私も子供のころから知ってる」

「そんな昔から!?」

「昔って言っても40年前とかだぞ?」 

「十分昔だよ!」


 智子は腕を組み、しゃっくりについての自分の知識を脳内から掘り起こそうとし

たが、出てくるのは止め方に関するものばかりで、100回で死ぬかについてはな

んの情報も持っていなかった。


「私、しゃっくり博士じゃないから分かんない」


 智子は自分の知識の無さを生徒たちの前で素直に認めた。


「別に今は博士クラスの知識を要求はしてないから。100回で死ぬかどうかを聞

いてるだけだから」

「だから、私は博士じゃないから知らないって言ってるでしょ!」


 智子は少しイラッとした。

 そんな智子に瑞穂は質問する。


「ともちゃん先生って大学出てますよね?」

「出てるよ?」

「だったら、いろんなことを知ってるんじゃないんですか?」

「お前、大学をなんだと思ってるんだよ。大学はしゃっくり博士養成所じゃないん

だよ」

「私もそうは思ってません」

「だったら変なこと聞いてくるなよ。大学でしゃっくりについて習わなかった私が

おかしいのかと不安になるだろうが」


 ともちゃん先生はそんなことでいちいち不安になるのかと、生徒たちはほっこり

した気持ちになった。


「なあ健太、昌巳のしゃっくりっていつからだった? 給食後すぐに出てた?」


 朝陽は健太に尋ねた。


「どうだっけ? 掃除は別の場所だから分からないけど、昼休みの始まった時はも

うしてた気がするな」

「昼休みからって言うことは、もう30分は続けてるってことか?」

「そう……かな?」


 2人の話を聞いて智子は気が付いた。


「10秒に1回しゃっくりをするとして1分間に6回。それが30分だと、180

回。なんだ、松田もう死んでんじゃん」

「俺 ひっく もう死んでる?」

「そうだぞ松田。お前はしゃっくりをするゾンビなんだ」

「ひっく ひっく ひっく ゾンビ……」

「しゃっくりの話はこれでおしまい。お前らまた1つ賢くなったな。しゃっくりは

100回やっても大丈夫。ちょっと周りに迷惑なやつだと思われるだけだ。じゃあ

算数の授業を再開するぞ」

 


 智子は問題を1つ解決し、晴れやかな気分で算数の授業を再開した。


「次の問題は、土橋。前には来なくていいや、口頭で答えて」


 ひっく 


「y=750です」


 ひっく


「正解」


 ひっく


「次は、神田」


 ひっく


「y=1200です」


 ひっく


「正解。みんな正解だな。今日はみんな調子いいな」


 ひっく


 ひっく


 ひっく


 ひっく



 ひっく

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