⑬町工場に向かう二人、芋洗いを自動化する機械式の芋洗い機の製造に対する抗議活動に参加する
・ラッダイト運動に参加する飛田と河原
・S1 駅付近集合場所(朝)
駅前に集まっている5人ほどのラッダイト運動家達がいる、そこへ近づいていく飛田と河原、
運動家達は和気あいあいとした雰囲気でおしゃべりしている、
飛田と河原に気づいた運動家のリーダーが近づいてくる
リーダー『あ、あの僕らLuddite運動の』
飛田『芋洗いです』
リーダー『今日はありがとうございます、では揃ったのでいきましょうか?』
移動し始める運動家たちと飛田と河原、
運動家たちは和気あいあいとしている
・S2 川沿いの道 (朝)
工場へと向かって、運動家の男女と飛田と河原は歩いて移動している
運動家たちは世間話や活動に関係する話で盛り上がっている(セリフのない参加者は芸能や映画、演劇活動、本作の内容以外に関する話題でお話をしてください)
河原『あの、今日は大所帯っすね』
飛田、無視
間
リーダー『今日はそんなに多くないですよ』
河原『あっそうなんですか』
リーダー『大きい工場に行く時は100人ぐらいになるときもあります』
河原『へー、すごいですねぇ、工場に何をしに行くんですか?』
リーダー『機械を破壊しに行きます』
河原『え、、、』
運動家①男『知らないんスカ?ラッダイトって機械打ち壊しっていう意味で、18世紀から19世紀にかけてのイギリスの産業革命当時、工場に機械が導入され始めた事で、賃金の低下した労働者への搾取が多発した中で生まれた考えなんです』
河原『、、、ストライキ?みたいな?』
運動家①男『ストライキ、ですか、うーん、悪化した労働条件に対する抗議活動みたいなニュアンスもあるんですけど、なんていうんだろう、もっと哲学的というか、』
リーダー『スローライフ』
運動家①男『そう、スローライフなんですよ、その、僕たちは資本主義の中で機械化することで競争には勝てるんですけど、物質的には豊かになるんですけど、でも僕ら人間の競争って地球を犠牲にしてるだけじゃないですか?しかも競争に勝った人と負けた人が出てくる、競争で勝つことは誰かを助けていることん位はならないじゃないですか、勝った人と負けた人の貧富の差を生み出しているだけなんです、そういう社会の在り方よりも、人間同士を大切にし合うような在り方を目指すべきでその為に資本家利益の為のテクノロジーにはNOを突きつけるみたいな、SDGSみたいな、』
リーダー『SDGSと似てますけど、SDGSは地球温暖化とか環境問題とかの言い訳みたいにしかなってないですよね、創始者のNed Ludd達は、まさに今先進国で起こってるさまざまな社会問題、例えば、貧富の格差、少子化、人間関係の希薄化、自殺の増加、資源の偏り、外交軋轢による戦争、そういった問題がテクノロジーの発達によって発生していく事を18世紀には予想していました、過度なテクノロジーの発達が本当は必要ない事に最初から気づいて行動していました、今の社会構造だと、人間よりもテクノロジーが極端に強くなってしまう、テクノロジーが人間を支配してしまう、本当はもっと良い人間とテクノロジーの向き合い方やバランスがある、Ludditeはそれを考えて実践していく運動です』
河原『・・・それで機械壊すんですか?』
飛田『芋洗いだってお菓子とかに使う芋は工場とかで全自動式の機械で洗ってるんだよ、それをちょっと応用すりゃ、俺等も一発でクビだぞ、んなもんぶっ壊すに決まってんだろ、、、俺等は機械をぶっ壊せるから来たんだぞ』
河原『・・・』
・S3 工場 (昼)
工場に着いた運動家一行と飛田と河原、工場で働いている工場の主任と工場の女に挨拶する
リーダー『ごめんください』
工場の女『はい、なんですか?』
リーダー『Luddite運動で来ました』
※リーダーはラッダイトの発音を英語風にお願いします
工場の女『はぁ?』
リーダー『Luddite運動です』
工場の女『え、なに、ラッダイト?』
リーダー『そうです』
工場の女『うち?いま?それ今日?』
リーダー『はい』
工場の女『はあ、ちょっと待って、ラッダイト?、ラッダイトが来たって』
工場の女は工場の主任を呼ぶ
工場の主任『なにー?』
仕事をしていた工場の主人が息を切らしながらやってくる
工場の主人『ラッダイト?』
リーダー『Ludditeです』
工場の女『うちで今日やるって』
工場の主任『ラッダイトって急に言われても』
工場の女『今日駄目っすよ、間に合わないっすよ、納期が』
運動家①男『その間に合うか間に合わないか微妙な納期を間に合わなくさせる事が大切なんです』
工場の女『いやだから、取引先の都合があるんで』
運動家②女『その取引先はあなたの大切な人よりも大切なんですか?』
工場の女『はぁ?えぇ、』
運動家②女『上司の方とか、納期とか、そういうのは一旦おいておいて、あなたはどうしたいんですか?あなた自身の問題なんです、あなた自身の行動なんです』
工場の女『どうしたいって』
運動家②女『機械があり続ける事で、機械に縛られ続ける人生になるんですよ、機械は電気で動いてるんじゃない、あなたの人生を燃料にしてすり減らしてるんです』
運動家④男『一緒に機械を壊しましょう』
工場の女に鈍器を手渡す運動家④男、
工場の女『え、ちょっとまって、まって、なに?私が?、いや私は機械壊さないけど、っていうか機械壊して何がしたいの?、また買い直さないといけないし、費用がかかるじゃん、機械を買い替えるだけじゃなくて設置しなおすのも業者呼んだりしないといけなくなるわけじゃん』
運動家③女『それが良いんですよ!あのね、機械を壊せばその分だけ費用がかかりますよね、でもラッダイト運動で破壊された機械を企業は保険で買い替えます、あなたの過失にはならないし、あなたの損失にもならない、そして、機械を設置し直すノウハウをあなたが勉強して覚えればいいわけです、なんならあなたへのニーズが高まってあなたの給料があがるかもしれない、私達は機械を壊し続ければ良いし、あなたは機械を設置し直し続ければ良い、そうすることで企業側はより良い社会のバランスの在り方を考え直せるようになる』
運動家④男『機械の保険は高すぎます、会社に保険を使わせて、一緒に資本主義と戦いましょう!』
運動家④男は鈍器を工場の女に押し付けるが工場の女は受け取らない
〈工場の主人『もう、だめだこいつら、話しても意味ないから、黙って手動かせ』
↑※運動家②女の長台詞の途中に噛ませる〉
工場の主任と工場の女は運動家たちを無視して作業に集中する
運動家③女『冷静に考えてほしいんです、どうすれば自分にとってベストな選択になるのか、これからはきっとあなた自身の経験や能力が大切になってくる時代です、言われたことをやっているだけでは必ず行き詰ります、あなた自身が今日いまここで立ち上がらないといけないんです、その為にまずは機械を壊しましょう、機械がなくても生きていけるよう自立しましょう、この機械がやっている作業を手作業に変えましょう、そうして手作業で必要になった正しい金額を請求すればいい、丁寧に心を込めて作業すればきっと取引先のどこかはわかってくれます、いえ、そんなあなただけの仕事を求めている取引先がこの世界にかならずあるんです、そうやって大切にしあう世界を作っていくんです』
運動家④男『聞いてますかー?聞いてますかー?ダメだロボット、リーダー、ロボットです』
工場の主任に話していた運動家①男が戻ってくる
運動家②女『機械じゃなくて人と向き合ってください、あなたの人生を愛してください』
運動家①『もう良いよ、リーダーが』
※その裏側で同時進行で運動家①男と工場主任が会話している
補助セリフ(カンペのような物、覚えなくても大丈夫です)
運動家①男、ビラを手に持って、工場の主任と話している
運動家①男『すいません、こちらの工場の責任者の方は?』
工場の主任『いま呼んできます、いいえ、いいえ結構です』
運動家①男『この現場の作業班のリーダーといいますか、作業を監督しているような方とお話させていただきたくて、失礼ですけど、あのあちらの方(工場の女)の先輩のような方ですよね』
工場の主任『はい、一応、主任ですけど』
運動家①男『では我々の活動を簡単に説明させてください、あのですね、我々ラッダイト運動で参りました、あのラッダイト運動自体はご存じですよね』
工場の主任『、、、あの、我々も今日の分の作業があるんで』
運動家①男『ああ、全然、作業しながら聞き流して頂いて構いませんよ、あのですね、ラッダイトはこちらの資料の通り、機械を破壊する運動なんですけど、簡単に大雑把に説明すると米騒動の現代版といいますか、あくまで、この現場の主任単位であったり、作業班、作業員単位での運動になりまして、あのご主人のようなかたの裁量がもっとも強くなるような、普段は中間管理的な立場や現場の第一人者になっているような手を動かして作業をしている方から発信していく活動になっておりまして、我々は運動家というのはあくまで皆様に啓蒙しているという立場で、本日の主役といいいますか、最も主体的な立場になられるのは皆様なんですよね、急な話で面食らってしまうところもあるかとは思うんですが、まず大前提として、そこをご説明させてもらいたくてですね』
工場の主任『、、、』
運動家①男『はい、あのですね、こちらの資料にある通り、そのラッダイトの必要性を次に説明させて頂ければと思います、あの様々な知見から必要性が説かれているんですが、個々企業、個々人々の労使関係のみに関わる問題としてのラッダイト運動という観点もございますが、あえて私からはより大きいテーマでお話させていただきます、我々の世界、まあちょっと大きな自然環境をイメージしてほしいんですけど、この大きな自然環境というのは循環性というものが付きものなんですね、難しく考えずに、季節とか大気とかいろんなものが循環しているじゃないですか、その循環を意識していこうというニュアンスといいますか、例えば、食物連鎖みたいな、植物が光合成をして、その植物を草食動物が食べて、その草食動物を肉食動物が食べて、今度はその肉食動物を大型動物が食べて、最後は大型動物が死んでその大型動物が分解されて植物の栄養になるみたいな、さきほど軽く米騒動の話をしたじゃないですか、中世の米騒動に限らず、人間もテクノロジーが発達する前まではある程度循環していたんです、より強いものやより知恵のあるものが土地を束ねて農園を作り、でもそれがどこかのタイミングで支配者が入れ替わる、入れ替わる理由は、労働者の革命かもしれない、農地の凶作かもしれない、伝染病かもしれない、より大きな国家間の抗争に巻きこまれるかもしれない、テクノロジーがない時代にはいろんな、地位や富が循環していく要素がたくさんありました、現代、そういった要素はテクノロジーによって克服されつつあります、この自然本来の人間のDNAに備わっているはずの循環を意識して作り出すことがラッダイトの目的の一つなんです、僕らの社会により豊かな循環性を作り出していくこと、今回の小さなラッダイトではまだ実感しづらいかもしれませんけど、テクノロジーのせいで僕らの世界は少しよどんでしまってきている、それを小さく小さく、循環の渦を作って、回復していく、ラッダイトにはそんな大きな目的があるんです』
・S4 工場 (昼)
リーダーが許可書と鈍器(あとで考えます、バット、バール、ハンマー)をもって作業をしている工場の主任に近寄っていく
リーダー『機械を壊してもいいですか?』
工場の主任『・・・』
リーダー『黙っているということは反対はしていないっていう事ですね』
工場の主任『・・・』
リーダー『僕らは運動の許可を取っていますし、機械を壊しても悪いことをしたことにはなりません、反対もされていないなら、機械を壊しますね』
リーダーは鈍器を振りかぶる
工場の主任『やめてくれ!』
リーダーは、鈍器を止める
リーダー『ではやめますね』
工場の主任『・・・』
リーダー『この機械は壊しません、僕らは人を傷つけたい訳じゃない、この機械はきっとあなたにとって大切なもので、壊されたくないんじゃないですか?』
工場の主任『・・・』
工場の女『あんたら頭おかしいんじゃない?もう警察、警察よびましょ』
リーダー『警察を呼んでも良いですよ、でも問題の解決にはならない、僕らは許可を取って活動しているし、機械を壊さなきゃいけない責任もある』
工場の女『はあ?』
工場の主任『・・・』
リーダー『まぁ、落ち着いて、僕らは人を傷つけたいわけじゃない』
リーダー『できれば、機械を壊されたくないですよね、』
工場の主任『・・・』
リーダー『でも僕らがここで機械を壊さずに帰ったら、あなた達はLudditeに反対したという事になります』
工場の主任『・・・』
リーダー『Ludditeに反対したという事を経営者はポジティブには捉えません』
工場の女『社長はそんなこと気にないから』
リーダー『経営者がそうであっても、株主はどうでしょうか?取引先はどうでしょうか?今のご時世、ラッダイトの一つもしない従業員に対して世間は厳しいです、今まで甘い汁を啜って来たんだ、もっと搾取すべきだ、と捉えられてしまいます、環境の改善は先延ばしされ、納期はさらに逼迫し、無償の労働が増やされ続けることになります』
リーダー『でも、Ludditeをして止まった仕事の分は有給が保証されます、Ludditeは仕事を止める正しい権利なんです』
工場の主任『・・・』
リーダー『それでも僕らも皆さんが大切にして来た仕事を奪うような事はしたくないです、』
工場の主任『・・・』
リーダー『例えば、事務の方が使っているパソコンやモニターを壊させてもらえませんか?それなら簡単に買い替えられます』
工場の女『そんなんで意味ないでしょ』
リーダー『あります、Ludditeに賛同して頂いた事実が残りますから、それをもとに報告書を作成します、皆さんの労働環境を改善する必要性が公的に認知される事になります』
工場の主任『・・・』
リーダー『止まるのは事務方の仕事のみですが、その影響を考慮して工場の作業員にも有給が必要になる旨も記載します』
工場の主任『・・・わかった』
・S5 工場 (昼)
運動家達、リーダーを褒めている
『あの人、さすがだわ』『やっぱり、寄り添うっていうのが、違うよな、俺等と』
『本当に工場の人の事を考えている』
等など
リーダー『芋洗いさん、すいませんでした機械を壊せなくて、、、』
飛田『・・・』
河原『あっはい、いやしょうがないッスよね』
床にモニターとパソコンが置かれている、
それを運動家の人達が一発ずつ鈍器で小突いていく、全員が一発以上ずつ小突けるように女性もいるので優しく小突いている
小突くというより、そっと触れているみたいな感じ
運動家の人達は和気あいあいとした様子だ
飛田の順番が回ってきた
飛田は大きく振りかぶって激しくモニターに鈍器を打ち付ける
飛田『合コンじゃねぇんだ!!!』