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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第捌章 無人大陸編
83/120

第83話 「抜剣許可!」

ようやく、玖球クーゲル帝国編の続きから再開。

第81話は移民問題、第82話は死刑制度に関する議論なので、

未読の場合でも、話の流れには殆ど影響しません。

玖球(クーゲル)帝国の帝都ニライカナイ。


豚野郎(オーク)共は、少しだけ慌てていた。

この連中は、例の元教室長一派である。


何故なら、偶蹄族の自治区にて、交戦していた、

警備員の牛頭(ごず)の戦士を逃がしてしまったから。


半殺しにしたから、玖球(クーゲル)帝国の中枢に

到着する前に息絶えている可能性もあるが、

情報を持ち帰った場合は、玖球(クーゲル)帝率いる、

討伐軍が編成されることは間違いないだろう。


――――――――――――――――――――――――――――――


郡山青年、弓削青年、ネメシス・ダムド、常井氏の四人。

この小隊(パーティ)は、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)や、

蝦夷(えぞ)共和国、玖球(クーゲル)帝国の正式な軍隊ではなく、

垂直尾翼の政治結社【草茅危言】直下の別働隊扱い。


しかしながら、その戦力はまさに【別次元の領域】にあるといえよう。


但し、ここはあくまで玖球(クーゲル)帝国の領土内なので、

ネメシス・ダムドの指示に従って行動することになった。


有刺鉄線で囲まれた地雷原だった、旧市街の廃墟。

現在、そこに豚野郎(オーク)共の拠点がある。


連中は全員で七人。かつて、脳筋塾から独立して、

新興勢力の塾を立ち上げた「七人の侍」と呼ばれた、元教室長一派。

或いは、全員が酒太りで肥満体なので、「デブ世界」とも

揶揄されたが、その全員が揃い踏みしていた。


但し、酒太りで肥満体の人間としてではなく、

その正体である豚人間(オーク)族の姿であったが。


両者は、非武装地帯(DMZ)の境界線上で対峙する。


ネメシス・ダムドは、警告を発する。


「貴様らは、我が帝国の警備員の強制捜査に抵抗し、

その者の生命を奪おうとした。可及的速やかに投降せよ。

さもなくば、公務執行妨害により、当義殺が成立する。

諸君の賢明なる判断を願う。」


仲間を奪われたにしては、その警告には、

相手にも判断の余地を残す懐の深さがあった。

だが、内心は腸が煮えくり返っているのは間違いない。


勿論、豚野郎(オーク)共は、その警告をあっさりと無視する。


「うるせぇよ!俺達が何をしようが、俺達の自由だろうが!」


土足でズカズカと人の心に踏み入って、

そのまま踏みにじるかのように嘲笑する。


だが、これで大義名分が出来たと、

ネメシス・ダムドは、獰猛な笑みを浮かべる。


「我が警告を無視した非は、諸君の血で贖うことになるだろう。

我が小隊(パーティ)の全員に告ぐ。逆賊を掃討せよ。

生死は問わない。抜剣許可!」


その宣戦布告によって、妖刀【クライオス】が鞘から抜刀され、

魔剣【ガルバノス】が帯電する。


――――――――――――――――――――――――――――――


「「「「【熱い棍棒】!!」」」」


七人のうち、四人の豚野郎(オーク)共が、その手に持った、

例の野球に使うバットの様な棒が、桃色光線の魔力を帯びる。

相手に焼き印を入れる【熱い棍棒】という技能(スキル)だ。


「「「「【殴りたいゼーション】!!」」」」


そして、「殴りたいぜ」と「~化」という意味の英語を

融合させた名称の技能(スキル)によって、

「凶暴」な豚野郎(オーク)共が、「狂化」して、より「狂暴」になる。


【幽者】ユゲタイが、妖刀【クライオス】から、

技能(スキル)【寒中波】を放つと、

四体の豚野郎(オーク)共のうち、一体が凍て付き、

妖刀【クライオス】で、二体目の豚野郎(オーク)の棍棒と切り結ぶ。


妖刀【クライオス】が纏う極低温の瘴気によって、

【熱い棍棒】の纏う熱が一瞬で奪われる。

妖刀で、棍棒を持った手を切り落とした。

とはいえ、【汚泥(ヘドロ)スライム】で出来ている肉体なので、

どうせ、切り落とされた手も、時間が経てば再生するのだろうが。


【幽者】ユゲタイは、飛び退いて距離をとると、

型紙から牛頭鬼(ミノタウロス)を召喚する。

この牛頭鬼(ミノタウロス)の式神は、

新たに【幽者】ユゲタイの眷属となった、

元・警備員のケヴィンである。


「貴様らぁ、よくもやってくれたなぁ!【大鎚】・点火!」


牛頭鬼(ミノタウロス)の式神となったケヴィンは、

豚野郎(オーク)共への激しい憎悪の炎を【大鎚】に点火させて纏う。


「【熱い棍棒】。その技は一度見せてもらったぁ!

目には目を、歯には歯を!ヘッ!」


ブゥンブゥン!


「ウッホッホ!ウッホッホ・・・?!」


バキィッ!


「狂化」して、ゴリラみたいな人格になっていた、

三体目の豚野郎(オーク)だったが、【大鎚】を叩き付けられた、

自分の棍棒が、熱を纏ったままへし折られたのを見て驚愕する。


――――――――――――――――――――――――――――――


四体目の豚野郎(オーク)は、常井氏に対峙していた。


常井氏は、型紙から式神を召喚する。


「出でよ、【火車】。この罪人共を焼く尽くせ。」


【火車】に衝突した豚野郎(オーク)は、

(あたか)も、ダンプカーに跳ねられたかの様に弾き飛ばされた。


「サンケベツ村で交戦したとき、確かに警告した(はず)だ。

我々と事を構えたくなければ、直ちに投降せよ、とな。」


だが、【殴りたいゼーション】による「狂化」の効果が切れた

豚野郎(オーク)は、反論する。


「なァ。荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の王子様よォ。

ここは、玖球(クーゲル)帝国であって、テメェの国じゃねぇだろ?

そして、テメェらとやり合ったサンケベツ村のある、

蝦夷(えぞ)共和国でもねぇ!テメェに指図される覚えはねぇんだよ!」


「国境を越えているとはいえ、貴様らのやっている行為は、

誰が為政者であろうと看過できぬ、極悪非道そのもの。」


逆に、連中の悪事をもみ消して、見て見ぬふりしていた

日本は、とんでもなくザルだったのだろう。

だからこそ、こういうヤクザな連中にカモにされるのだが。


「貴様らの仲間と思われる、豚人間(オーク)の一人が、

英語圏の国の出身と思われる、【ベン・ジョニー】と名乗る青年に

憑依し、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)に侵入した。

その際に抵抗したため、記憶を覗いたところ、彼には

殺戮の前科が有ったので、処刑した。この【火車】を使ってな。」


「【ベン・ジョニー】って、誰だよ?

オイ、俺らの中で誰か知っているか?」


やがて、「狂化」状態が解除された豚野郎(オーク)共が、

一箇所に集まって背中合わせに円陣を組む。

仲間を処刑されたことで、動揺でもしているのだろうか。


「知らねぇ~なぁ。【ベン・ジョニー】は、

豚人間(オーク)語の名前じゃねぇし?」


特に、仲間を処刑されたことに対して、動揺はしていないようだ。


「前世の同族が転生して、のこのこと出て来て、

あっさり殺されちゃいましたぁ、ってか。

まぁ、今ツルんでる奴らじゃねぇし?

けど、テメェらを殺して仇討ちでもするか~。」


軽いな。罪の意識がまるで感じられない。

やはり、コイツらはここで始末しておくべきだろう。


「弓削君、【餓者髑髏】を貸してくれ!

連中に合体奥義を披露するぞ!」


「了解。出でよ、【餓者髑髏】!」


常井師匠とその弟子の【幽者】ユゲタイの師弟が召喚した、

式神達が放つ合体奥義がここに。さァ、御覧じろ!


術者である【幽者】ユゲタイによって、召喚された【餓者髑髏】は、

鬼面付き荷車の様な【火車】の上に乗っただけの合体をする。


「行け!【火車髑髏】!」


そして、豚野郎(オーク)は、今度は【火車髑髏】に衝突されて、

跳ね飛ばされるのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――


そして、ネメシス・ダムドを憑依させ、蝙蝠の翼と蠍の尾が生えた、

新生・【蝙蝠山卿】が、七体の豚野郎(オーク)共のうち、

残り三体の幹部級の豚野郎(オーク)に対峙する。


「我が帝国臣民の仇、断じて許すまじ。

貴様等のその身を以て贖わせん!」


蝙蝠の翼を広げて飛翔し、上空から俯瞰して睥睨する。


「「【一酸化二水素ジヒドロゲンモノオキシド】!!」」


憑依したマンティコアノイドと、その宿主の二重詠唱によって、

魔族特有の膨大な魔力が、瘴気の雨雲となる。


「「【極低温の瘴気(クライオ)】!!」」


かつて師弟だった二人の殺気が波動の如く拡散し、

魔力の圧が周囲を凍て付かせ、氷柱の檻で囲む。


その影響で凍った大気中の水分が、雹の如く降り注ぐ光景を

作り出した者は、曇天に覆われた天空に魔剣【ガルバノス】を掲げる。


「「【ガルバノ】!!」」


憎悪の雷霆は、三体の幹部級の豚野郎(オーク)の中心を直撃し、

直撃雷が地面を穿ち、側撃雷が走って、蜘蛛の巣状の地上絵となり、

その境界の氷柱の檻には、極低温の超伝導によって、

高圧電流が流れ、逃亡不能の結界となる。

さらに、帯電した雹は、機雷の雹となって、

豚野郎(オーク)共に降り注ぐ。絶対的で圧倒的な力が。


「ククク。不殺(ころさず)かよ。玖球(クーゲル)帝は慈悲深いねぇ。」


豚野郎(オーク)共が煽る。

だが、果たして、止めを刺さないのは、【蝙蝠山卿】の甘さなのか。


「死体は悲鳴を上げない。『生きる権利』とは即ち、

『苦しむ権利』だ。貴様らの悲鳴こそ、貴様らの悪行の

犠牲となった者達への最高の鎮魂歌(レクイエム)となろう。」


否。憎むべき者を処刑しても、死は、彼ら罪人を苦痛から

解き放つに過ぎない。その悲鳴を聞かないのは実に勿体ない。

それが、玖球(クーゲル)帝だった、ネメシス・ダムドの信念である。


「ククク。今俺達に止めを刺さなかったのを後悔することになるぜぇ。

時間稼ぎは終わりだ。よ~し、野郎共。撤退の時間だ~。

お前ら、【テッタイン】飲むぞ~!」


「「「「応!!」」」」


「逃がすかッ!」


蝦夷(えぞ)共和国では、【テッタイン】を飲んだ豚野郎(オーク)共が、

汚泥(ヘドロ)スライム】に変化し、下水に逃げ込まれてしまったが、

今回は、地面が凍結しており、下水への逃亡は阻まれている。


「ククク。【テッタイン】は、ニセアロエ草を煎じて作られる、

特殊な魔法薬(ポーション)でな。混ぜる添加物によって、

何に変身するのか変わるんだなぁ~。」


ニセアロエ草は、かつて、豚野郎(オーク)共が、

生息していた異界の植物で、地上に出ているアロエの様な草を

抜こうとすると、地中から裸の小人が出て来て、

「マンドラゴラ」の様な、叫び声を上げる、という。


「あばよッ!」


ブゥンブゥン!


【テッタイン】を飲んだ豚野郎(オーク)共は、無数の「飛蝗」に分裂する。

あたかも、吸血鬼が無数の蝙蝠に分裂するのと同様に。


「飛蝗」は、「蝗害(こうがい)」を起こす、

「サバクトビバッタ」のことである。変身しても迷惑な連中だな。


常井氏は、自身の式神である【火車】に火炎放射を指示するが、

周囲は、極低温の瘴気を拡げている所為(せい)で、

引火点以下の温度になっていたため、

冷却消火されてしまい、その威力を発揮できない。


「フェニトロチオン!」


【幽者】ユゲタイは、病みエルフの魔力を使い、

【祟りの凶杖】で、殺虫剤の分子を生成する。効果は抜群だ。


ボトボト。ボトボト。ボトボト。


だが、それで倒せたのは、「飛蝗」の群れの一部に過ぎない。


「飛蝗」の群れは、波止場に向かう。

再び、豚野郎(オーク)に変身し、船を強奪する。


この船は、十年前、玖球(クーゲル)帝国に攻めてきた、

【瀬戸】の水軍の船を戦利品として、玖球(クーゲル)帝国側が押収し、

修理を重ねて、今日まで使用してきた船である。


そして、船を強奪した豚野郎(オーク)共は、

大海原へと逃亡するのであった。

敵も味方も戦力が上昇していき、

そう簡単に決着がつかないという、話の展開上、

仕切り直しがどうしても多くはなりますねぇ・・・。

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