表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第漆章 帝都ニライカナイ編
79/120

第79話 新生・【蝙蝠山卿】

今回、人死に的な描写があるので、事前に注意喚起しておきます。

苦手な方はご注意を。ただ、近年、感動の押し売りのために、

安易に登場人物を死なせる作品も多いので、

それらは他山の石にしたいなぁ・・・。詳しくは本編で。

警備員のケヴィンは、国境を越えて、絶賛指名手配中である、

指名手配犯の豚野郎(オーク)共と、玖球(クーゲル)帝国の

偶蹄族の自治区にて、交戦中であった。


連中は、野球に使うバットの様な棒を持ち、

その先端から桃色の光線を発射してきた。


「気絶しろ!気絶しろ!気絶しろ~っ!」


「顔よ、曲がれ!顔よ、曲がれ!顔よ、曲がれ~っ!」


等の意味不明な呪文と共に。


牛頭(ごず)の戦士であるケヴィンは、種族上、

筋肉の鎧に覆われているため、脂肪の塊の

豚野郎(オーク)共よりは、膂力も強く、耐久力も

そこそこ高めであり、桃色光線に少し当たった程度では、

気絶したり、顔が曲がったりすることはないが、

桃色光線の弾幕は避けきれず、それなりに傷を負っていた。


「よ~し、お前ら。今晩は牛肉のステーキだ。

そいつを焼き肉にしてやれや。【熱い棍棒】でな。」


「「【熱い棍棒】!!」」


どうやら、【熱い棍棒】というのは、

この豚野郎(オーク)共の技能(スキル)名で、

この【熱い棍棒】という技能(スキル)で、

相手に焼き印を入れるようだ。


そういえば、どこかの某有名大学の

確かテニスサークルだった、と思うが、

新入生歓迎会の余興で、

まず、電源を切った状態の半田ごてを当て、

徐々に電圧を印加して新入生に焼き印を入れる、

という怖い話を聞いたことがある。


「「【殴りたいゼーション】!!」」


「殴りたいぜ」と「~化」という意味の英語を融合させた名称の、

この豚野郎(オーク)共の技能(スキル)によって、元々「凶暴」だった連中が

「狂化」することで、より「狂暴」になる。


連中は、桃色光線の魔力を帯びた野球のバットで、

ひたすら殴りかかってくる。要するに、集団リンチである。

そして、殴られた箇所は火傷の痕の様な状態になる。


多勢に無勢。三十六計逃げるに如かず。玉の早逃げ八手の得あり。

ケヴィンは、ネメシス・ダムドの待つ、玖球(クーゲル)帝国の

中枢に撤退するしかない。連中の情報を持ち帰るまで、

自分の生命力が持ち堪えてくれることを祈りながら・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――


「さて、聖剣を破壊されて、政権も崩壊したので、

玖球(クーゲル)帝国は、玖球(クーゲル)連合となるわけだが、

これで(ようや)く、儂も帝位を退くことが出来る。

勿論、引き継ぎを終えた後にはなるが・・・その前に、

玖球(クーゲル)帝としての最後の務めを果たそう。」


「科挙」の最終試験―決闘紛いの模擬戦―が終わり、

郡山青年、弓削青年の二人は、ネメシス・ダムドと謁見する。


彼等が玖球(クーゲル)帝国に来た目的である、

・魔漆などの魔導科学の素材の蒐集

・戦力の補強

・指名手配犯の捜索

等について、説明するために。


ネメシス・ダムドは、二人の説明を聞いて、意見を述べる。


「素材の蒐集に関しては、自由に取引して構わない。

戦力の補強については、必要に応じて相談しよう。

指名手配犯の捜索に関しては、勿論協力しよう。

いや、寧ろ現在進行形で捜索中なので、是非ご協力願いたい。

もうすぐ、偵察員が戻ってくるとは思うのだが・・・。」


既に、偵察に出していたのは用意周到だが、

連中がそれだけ派手な動きをしたのだろう。

偵察員は無事に帰ってこれるだろうか?

連中の凶暴性や残虐性を(かんが)みるに、嫌な予感がする。


――――――――――――――――――――――――――――――


暫くすると、全身に大火傷を負った牛頭(ごず)の戦士が、

運び込まれてきた。状況的に、その命はもう長くないだろう。


「ケヴィン!何があった?」


「大将。連中に殺られた。仇を・・・。」


ネメシス・ダムドにとって、ケヴィンは、帝位に就く前からの

旧友でもあり、どんな手段を使っても、死なせるわけにはいかない。


「【陰陽術】でも、【魔導科学】でも構わない。

何か助ける方法はないか?」


偶然、その場にいただけの郡山青年、弓削青年の二人にも尋ねる。


「護符に封印して、眷属化し、型紙から式神として召喚して、

使役する方法ならあるが、肉体から魂を無理矢理

引きはがすようなものだ。彼の尊厳のため、

このまま葬って弔ってやった方が良いと思うが・・・。」


但し、弓削青年曰く、二次試験の時に彼と模擬戦を

闘った自分にしか、この方法は使えないだろう、という。


「構わん。このまま死なれては、彼を襲った犯人に関する記憶まで、

永久に喪失してしまい、復讐することもできないであろう。

連中には落とし前をつけさせてやりたい。頼めるか?」


弓削青年は頷き、回復・治癒・蘇生の印を刻んだ護符をかざす。

瀕死状態だったケヴィンは、牛頭(ごず)の型紙に封印され、

彼に眷属化し、その式神となった。


但し、回復・治癒・蘇生を行い、式神として

使役できるようになるまでには、冷却時間(クールタイム)を要するため、

【思念共有】のみを行い、その記憶を読み取る。


「ネメシスさん。彼がアンタに偵察してくるよう指示された場所に、

指名手配犯になっている例の豚野郎(オーク)共がいる。

そこが連中の本拠地であるならば、可及的速やかに戦力の補強を

行う必要がある。連中の使う妖術には、禁術や外道、邪法が含まれ、

我々二人掛かりでも、確実に勝てるとは言い難い。」


「では、儂をお前達の仲間として、小隊(パーティ)に入れて貰おう。

直ちに、戦力の補強を行い、連中に宣戦布告するぞ!」


ゑ?玖球(クーゲル)帝自ら、俺達の小隊(パーティ)に入るって?

確かに、戦力の補強という意味では、望外の申し出ではあるが・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――


「では、まずは、我が帝位を簒奪(さんだつ)した者に、

弟子だの部下だの使徒だのを名乗らせるのは

(はなは)だ不本意なので、再び儂が憑依して、

十年前の契約を新たなる契約で上書きするところから

始めようではないか。」


郡山青年は、背後に不穏当な気配を感じた。


「そうだそうだ~責任とれよ責任~。」


何故か、弓削青年が煽ってくる。ホラそこ、外野は少し黙ろうか。


「さて、【幽者】よ。暫くの間、【蝙蝠山卿】を

取り押さえておいて頂くことは出来るかな?」


【幽者】ユゲタイは、【蝙蝠山卿】を羽交い締めにした。


もう、逃げられない。


ネメシス・ダムドは、【蝙蝠山卿】に膨大な魔力を流し込む。


自分ではない何かが、自分の中で

(うごめ)いているのを感じる。


「くぁwせdrftgyふじこlp・・・。」


マンティコアノイドの膨大な魔力に耐えきれず、

のたうち回りながら、この統御不能の魔力を放出できる媒体を探す。


「見ツケタ、見ツケタ。」


機能停止した聖剣【電動鎖鋸(チェーンソー)】を見つけて、

その統御不能の膨大な魔力を流し込む。


「ガルバノ!!」


聖剣【電動鎖鋸(チェーンソー)】が、

魔剣【ガルバノス】として、新生した瞬間である。


だが、【蝙蝠山卿】もまた、蝙蝠の翼と蠍の尾が生え、

新生・【蝙蝠山卿】となったのである。


新生・【蝙蝠山卿】となったネメシス・ダムドは、

掛詞(かけことば)】を放つ。


「聖剣は、マケン。」


この「マケン」は、「魔剣」と「負けん」の【掛詞(かけことば)】で、

「聖剣が魔剣になった」ことと、「聖剣は負けない」ということを

言いたかったのだろう。


――――――――――――――――――――――――――――――


「君ばかり戦力増強してずるいぞっ。」


【幽者】ユゲタイは、【蝙蝠山卿】を心から羨ましいと思った。

好敵手(ライバル)とは言っても、このままでは

かなりの差をつけられてしまうであろう。


「フハハハハ。好敵手(ライバル)に勝ちたい、

勝ちたいという強い想いを感じるぞ。

儂にも好敵手(ライバル)がいるから、君の想いはよく分かる。」


【蝙蝠山卿】から分離した、ネメシス・ダムドは、大いに共感した。

何故なら、彼にも好敵手(ライバル)がいるからだ。


「私を呼んだかね?ダムド。」


突然、目の前の空間が歪み、

読心(とうしん)の宝珠】を持った常井氏が転移してくる。


常井氏の魔力を以てしても、転移使用後の冷却時間(クールタイム)は、

決して無視できるものではなく、転移を乱発することは出来ない。


この人は一体何をしているんだろう?

決して暇人ではない(はず)だが?


参狼(さぶろう)か。久しいな。」


下の名前で呼び合うこの二人は、国を越えて初めて、

王族同士の対等な、唯一無二の関係を結ぶことが出来たのである。


「ドンザ・ウルス殿から、私が使いに出した二人が

科挙に挑戦するという報せがあったものでね。」


「科挙?ああ、それならもう終わったぞ。

パウリ効果とやらで聖剣を破壊されて、政権も崩壊したので、

これで(ようや)く、儂も帝位を退くことが出来る。

これにより、玖球(クーゲル)帝国は、

近日中に、玖球(クーゲル)連合となるだろう。」


「やはり、この人員の組み合わせが揃うとこうなるか・・・。

何かやらかすだろうとは思ってはいたが・・・。」


「それで、儂がこの二人の仲間になって、

小隊(パーティ)に入ってやろう、ということになった。」


「相変わらず、貴公は自由人ですな?ダムド。」


「む?ああ、御陰様でな。たった今、

【蝙蝠山卿】に再び儂が憑依して、

彼の方は少し強化が出来たぞ。」


「そうか。では、妙な技能(スキル)を習得していないか、

早速、この【読心(とうしん)の宝珠】で検査した方が良さそうですな。」


近年は、「読心(とうしん)」の読みは、「読心(どくしん)」と

読むのが主流のようだ。後者の読み方をする人は、

前者の読み方を頑なに認めない場合が多い。

でも、そういう人も「、」のことを「読点(どくてん)」と読まずに、

読点(とうてん)」と読む筈。不思議だなぁ・・・。


もし、それでも納得できないのであれば、日本語ではなく、

荒脛巾(アラハバキ)語では、そう読むのだと思って欲しい。

勿論、荒脛巾(アラハバキ)語は、日本語とは似て非なる、

異世界の言語である。

次回更新は、10月下旬~11月頃を予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ