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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第漆章 帝都ニライカナイ編
78/120

第78話 セイケン崩壊の果てに

※カクヨム版のみ、独逸ドイツ語の単語を

独逸ドイツの旧字体「フラクトゥール」に変更(2022/03/01)。

空中に生成した魔方陣の足場の上に立って、

二人を睥睨するネメシス・ダムド。


彼を見上げて、【蝙蝠山卿】が叫ぶ。


「さあ、降りて来いチャンピオン!」


続いて、【幽者】ユゲタイも、挑発する。


「降りて来い!降りて来ないのなら、引きずり下ろしてやる!」


【痛矢串】を取り出し、【刻印術】の術式によって、

矢に5本まとめて、毒属性を付与する。


「まずは、マンティコアノイドに本当に毒が効かないかどうか、

検証してやろうじゃないか。アコニチン、テトロドトキシン、

d-ツボクラリン、バトラコトキシン、Ricin(リシン)を付与!」


ネメシス・ダムドは、自分に向かって飛んできた5本の矢に対して、

片翼を盾にして防ぐ。


「これで分かっただろう。マンティコアノイドである

この儂に毒は効かないことが。だが、『降りて来い』か?・・・。

良いだろう。聖剣を破壊された以上、文字通り、帝位からは、

『引きずり下ろされた』わけだからな。それは確かに認めよう。」


ネメシス・ダムドは、(わら)いながら、己の魔力を全開にして、

僅かに周波数を変えた二重の超音波を放つ。


「【重ねの響き】」


【重ねの響き】は、音属性の技能(スキル)で、

二重に放たれた超音波は、「うなり」という現象によって、

本来、人の可聴音域外の周波数を二人の鼓膜に叩き込んで、

平衡感覚を狂わせ、怯ませる。


もし、これに対抗するには、酔い止め薬にも含まれている成分、

「臭化水素酸スコポラミン」を事前に生成し、

酔い止め薬として、30分前に服用しておくぐらいか?

また、「臭化水素酸スコポラミン」は、睡眠薬としても使えるが、

普段から酔い止め薬を服用している場合には、耐性があるかも知れない。


【重ねの響き】で、怯んだ二人を睥睨し、哄笑するネメシス・ダムド。


「良かろう。武闘家として相手してやる。

ここからは、玖球(クーゲル)帝ではなく、武闘家として闘おう。

一人の武闘家『ネメシス・ダムド』として!」


彼の存在意義(レーゾンデートル)は、「玖球(クーゲル)帝である」ことではなく、

一人の「武闘家である」という矜恃や信念にこそ、あるのだろう。


――――――――――――――――――――――――――――――


超音波に続いて、紫炎を纏った不死鳥が飛翔し、急降下する。


「【鎧袖一触】!」


【蝙蝠山卿】は、黒キ楯(シュヴァルツシルト)で体当たりを受け止める。

ネメシス・ダムドと同色の紫炎を纏いながら。


火属性魔術の傾向は、実は、攻撃よりも防御向きで、初学者向きである。

実際、火属性魔術による障壁は、相手が魔術を行使した場合も、

その攻撃に対する障壁にもなる。柔道の授業では、

初学者は、投げ技よりも先に受け身を学ぶのと同様に。


勿論、この場合のように、炎を纏った状態で体当たりでもすれば、

攻撃にも転用でき、攻防一体でもあるといえる。


では、火属性魔術を矛と盾として、両者が激突したらどうなるか?

当然、攻撃側の魔力量が相手のそれを上回っていれば、

障壁は貫通されてしまう。


しかし、自分と相手の魔力色が同色の時は、

魔力量の差分による衝撃(ダメージ)は吸収され、

威力が軽減される。


それでも、その体当たりの威力は、受け流しきれずに、

楯が炎上したので、【コンテナ】に収納する。

代わりに、【葬送の双槍】を取り出し、棒術の構えをとる。


「ほぅ。いつからだ?箸にも棒にも掛からない

小僧に過ぎなかったあの頃のお前は、

儂の手の中にあった。だが、今のお前は、

あの頃とはまるで、【別次元の領域】にいる。

何がお前をそこまで強くしたのだ?

怒りか?憎悪か?野心か?それとも復讐心か?」


「俺は、十年前のあの日に奪われた、本来、

俺が手にする(はず)だったものを取り戻すだけだ。

その為には、もう手段を選ぶつもりはない。」


【蝙蝠山卿】が、横に避けると、

【幽者】ユゲタイの【祟りの凶杖】による突きが、

ネメシス・ダムドに襲い掛かる。


「Mutieren Stechen」


独逸(ドイツ)流剣術の「変化する刺突」。

両面宿儺(りょうめんすくな)】の加護を得た二人の、

流れるような連携攻撃である。


「Durchwechseln」


独逸(ドイツ)流剣術の「替え通し」。

【幽者】ユゲタイは、ヒヒイロカネの鎖を使い、

ネメシス・ダムドを捕縛しようとするが・・・。


「そうは、いかねぇんだよぉ!」


ヒヒイロカネの鎖には、相手の魔力を吸収する性質があり、

並の相手なら、完全に動きを止められるのだが、

ネメシス・ダムドが、筋肉を隆起させると、鎖は、千切れ飛んだ。


「くっ、屈強だなっ・・・。」


「だが、ここまでこの儂を相手によう闘ったぞ。

では、見せてやろう!我が真なる力、その全容を。」


そう言って、ネメシス・ダムドは、「マンティコア」に変形した。


――――――――――――――――――――――――――――――


【マンティコアノイド】は、(ビースト)形態(モード)として、

「マンティコア」に変形できる。この形態の時は、

理性を失って、一種の狂化状態ともいえる。


「この瞬間(とき)を待っていた。」


だが、【幽者】ユゲタイは、

今度は、アダマンタイト製の有刺鉄線によって、

ネメシス・ダムドを拘束する。

ネメシス・ダムドと闘ったことのある常井氏から、

事前に彼が「マンティコア」に変形するという、

情報を得ていたためだ。


【蝙蝠山卿】は、悠然と、【緑のフラスコ】を取り出し、


「テオブロミンを経口投与!」


マンティコアも、究極的には、猫の一種に過ぎない。

当然、毒物が効かないマンティコアと(いえど)も、

自然の摂理からは逃れられない。


「ööööö、ゑゑゑゑゑ、æ"æ"æ"æ"æ"!」


苦しみのたうち回る度、アダマンタイト製の有刺鉄線が、

継続的な痛みを与えるが、筋肉の鎧に覆われているので、

ネメシス・ダムドにとっては、有刺鉄線如き、

棘のある植物と大差ないのだろうが・・・。


「ガルバノ!」


そこに容赦なく、【幽者】ユゲタイが、

(いかずち)属性の奥義を解き放つ。


「痛い、痛いぞ。この痛み!儂が生きている証だァ!

お前も、まだ生きているぞ。味わえ、この痛みをォ!」


(ビースト)形態(モード)を解除して、

【マンティコアノイド】に戻ったネメシス・ダムドは、

【二重魔軸】の「ガルバノ」を放つ。


紫電と黄金色の稲穂を思わせる稲妻とが、二重螺旋を描きながら、

【幽者】ユゲタイの青白い炎の激突し、属性相性の不利さえ、

魔力量の差による圧で弾き返し、ゴリ押しの末、弾き飛ばした。


しかし、【幽者】ユゲタイが時間稼ぎをしている間に、

【蝙蝠山卿】は、【八咫烏天狗】と【九尾の火狐】を

自身に同時に憑依させる。己が魔力色(オーラ)の紫炎を黒翼に纏い、

【マンティコアノイド】の武闘家へと急降下する。


「受~け~て~立~つ!」


激突の衝撃で弾き飛ばされ、受け身を取る【蝙蝠山卿】。

一方、ネメシス・ダムドは、片膝をついていた。


「まだ、この儂に膝をつかせる者がいるとはな・・・。

だが、儂は、闘えば、相手のことが分かる。

本当に、強くなったな・・・。」


こうして、セイケン崩壊の果てに、

「科挙」の最終試験―決闘紛いの模擬戦―は終わった。


――――――――――――――――――――――――――――――


一方、その頃。警備員のケヴィンは、玖球(クーゲル)帝の代理として、

地雷原のあった、偶蹄族の自治区にやって来た。


()つ国で、殺戮未遂をやらかした、凶悪な指名手配犯達が

潜伏している、という通報があったためである。


「出て来い!出て来ないのなら、引きずり出してやる!」


牛頭(ごず)の戦士であるケヴィンにとっても、

出身地である、偶蹄族の自治区を隠れ蓑にしている

指名手配犯どもは、極めて忌々しい存在である。


「何だ?俺達に何かヨウカイ?」


中から豚の獣人と思われる者が出て来た。

この「ヨウカイ?」は、「妖怪」と「用かい?」の

掛詞(かけことば)】のつもりだろうか?


だが、実は、この玖球(クーゲル)帝国に、或いは、

この世界全体を含めても、猪の獣人は存在するが、

豚人間(オーク)族は存在していない。


調査が進んでいない無人の大陸に存在している可能性は

否定できないが、人語を解する魔族の獣人や魔人の類は、

発見されていない現状において、彼等は、間違いなく、

異界―「ここではないどこか」―の出身であろう。


「君達は、蝦夷(えぞ)共和国のサンケベツ村において、

獣害、隕石投下、及び、毒瓦斯(ガス)撒布と、

この玖球(クーゲル)帝国の偶蹄族の自治区において、

大量の地雷を埋めたによる、大量殺戮未遂の容疑で、

指名手配となっている。自警団本部まで同行願おう。」


「ギャハハハハハ。大量殺戮未遂って何だよ?

自警団本部まで同行?断ると言ったら?」


「抵抗するつもりであれば、一切の容赦はしない。」


「そうか~?では、俺達も手加減はできねぇなぁ。

オイ、野郎共ォ!今日は牛肉でステーキにしようぜぇ!」


豚野郎(オーク)共の首魁が叫ぶ。


牛頭(ごず)牛頭鬼(ごずき)牛頭人(ミノタウロス)、牛魔人。

呼び方は様々だが、彼等は牛肉を食べない。何故なら、

共食いをすれば、「狂牛病」になってしまうからである。


同様に、猪の獣人は豚肉を食べない。

もし、幼稚園の頃、絵本に登場する子豚が、

ハンバーグ等を食べている描写があった場合、

聡明な子供なら、「これは共食いではないか?」

と気付くのではないだろうか。

いや、その前に周囲の大人が気付いて、絵本の作者に

「お問い合わせ」をした方が良いのではないだろうか?


報道関係(マスコミ)は、いつも、意味不明な造語を作る。

例えば、「草食系男子」。これは最初「菜食主義者」のことかと

思ったが、どうもそういう意味ではないようで、焼き肉や

ハンバーグステーキを食べる「草食系男子」がいたりする。

どう見ても「雑食」ではないか!言葉の原義から外れた

造語を作るのは如何なものかと思わんかね?

言葉は正しく使いたまえ、と常井学長もいつも言っているぞ?


(ちな)みに、人間の場合も、食人―「カニバリズム」という―をする

人喰い人種―「カニバリスト」―は、同様に「クールー病」になる。


つまり、この豚野郎(オーク)共は、同じ偶蹄族を

食べ物として見ている時点で、この世界の住人ではなく、

異界出身であることが確定したのである。

本文より抜粋。


もし、幼稚園の頃、絵本に登場する子豚が、

ハンバーグ等を食べている描写があった場合、

聡明な子供なら、「これは共食いではないか?」

と気付くのではないだろうか。

いや、その前に周囲の大人が気付いて、絵本の作者に

「お問い合わせ」をした方が良いのではないだろうか?


これは、実際に探してみると結構ありそう・・・。

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