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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第漆章 帝都ニライカナイ編
74/120

第74話 「俺っちが相手してやろうかぃ?体がなまってるんでなぁ。」

本作は、基本的に社会批判が多くなっていますが、

特に、玖球クーゲル帝国編は、そうした理不尽を

ギャグで笑い飛ばすことを心掛けて書いています。

あくまで一つの考え方に過ぎないことをあらかじめ断っておきますが、

苦手な方は、閲覧の際、ご注意下さい。念の為。

 玖球(クーゲル)帝国、帝都ニライカナイ。


 都市探索協会付属の食堂にて。


 登城、及び、玖球(クーゲル)帝への謁見の手続きについて調製するため、食堂の閉店後に、ドンザ・ウルス店長と打ち合わせを行うことになった。


「レイハイの時間だ~」


 宗教上の理由で、禁酒している者は礼拝し、それ以外の者は、冷杯を飲むか、零杯を飲む―要するにアルコールを飲まない―神聖な時間。


 この時間は、食堂というよりも、酒場の様相を呈する。


 実は、郡山青年は飲み会の類が苦手だ。まぁ、あまり誘われることもないのだが。そこで、郡山青年は飲み会の際はいつも、「酒場での情報収集はRPGの基本」と自己暗示をかけている。


 また、中学受験時代には、よく陰口を言う輩が多かったので、当時の郡山少年は、所謂(いわゆる)「地獄耳」だったのだ。そして現在、郡山青年は、寡黙だが、他人の会話には神経質なぐらい聞き耳を立てている。


 ……。いや、確かに酒場での情報収集はRPGの基本ではあるけれども……。


 但し、ここには、他者に飲酒の強要をしてはならない、という不文律があり、アルハラ―アルコール・ハラスメントの略―をした者は、玖球(クーゲル)帝国の法律によって、厳罰に処せられる。


 酒税が高めな国であることと、酔っ払い過ぎて、何か不利益が生じても自己責任という文化のため、基本的には、飲み過ぎる者は殆どいないのだが。


 現・玖球(クーゲル)帝ネメシス・ダムドがこの法律を定めたのは、努力教の教徒が跋扈し、「俺の酒が飲めねぇのか」という、アルハラが横行し、治安が悪化していたため、だという。


 当然だが、アルコールへの耐性や許容量には、個人差があるので、努力だの根性だのといった精神論でどうにかなるものではないから、他者に飲酒の強要をするアルハラは言語道断である。


――――――――――――――――――――――――――――――


 同時刻、宵闇に紛れて、豚野郎(オーク)共が、玖球(クーゲル)帝国内に潜んでいた。


 蝦夷(えぞ)共和国のサンケベツ村にて、主人公組と交戦した後、【テッタイン】を飲んで、【汚泥(ヘドロ)スライム】に変化し、下水に逃げ込んだ連中だったが、暫く下水道を彷徨った後、玖球(クーゲル)帝国に転移し、獣人の多様な、偶蹄族の自治区を隠れ蓑にしていた。


 だが、自分達が国境を越えて指名手配されていると分かったので、帝都から離れた郊外に拠点を構え、周囲を地雷原にして、部外者が容易に立ち入ることが出来ないようにした。


 しかし、地雷を踏んで被害に遭った者達が通報し、玖球(クーゲル)帝自らが直々に出向いて、地雷を除去してしまったので、豚野郎(オーク)共は、「余計なことをしてくれやがって」と思っていた。


 今、連中は、玖球(クーゲル)帝国に溶け込もうと、酒を飲みながら、その伝統である、【掛詞(かけことば)】を練習しているのだが……


痘痕(あばた)のアバター」


「ンなもン、アバターにしてんじゃねぇよw」


「遺影になって、イエ~イ」


「死んで喜んでいるんじゃないw」


「犬がいぬ」


「『おらぬ』だって言ってんだろがw国語の授業かよw」


「運営が補填で詫び石配るってよ、うんぇ~い。」


「それは『うぇ~い』、だろうがw」


「うん、そうだな。お土産は、運送だな」


「オイオイ。どれだけお土産買ったんだよ?」


「炎上をエンジョイするぜ!」


「エンジョイしている場合かよw」


「オイ、貴様が老木様か?」


「何故様付け?昔は、『貴様』は敬称だったからさ、って国語の授業じゃねぇかw」


「推しメンがオシメをしている。」


「それ、オムツじゃね~かw」


「オーガの王が、殴打する王だった。」


「暴君じゃねぇかw」


「オートで王都に行って嘔吐した。」


「酔い止め飲んでから行けよw」


「音ズレが訪れる。」


「ちゃんと調整しろよw」


「オレノイデスが絶滅したのはオレのせいで~す!」


「お前は5億年前に生きてね~だろw」


「音波のオンパレード」


「うるせぇよwそれ、やかましいってレベルじゃねぇだろw」



「カタリナという騙り名」


「本当の名前は一体何なんだァ~?。オウッオウッ!」


「ガバナンスがガバガバなんす~。」


「ガバナンスがガバガバ?ダメじゃ~んw」


「壁に耳あり障子にMary(メアリー)。」


Mary(メアリー)って誰だよ。『障子に目あり』だろォ?」


「枯井戸でカレイドスコープを拾った。」


「誰だ?こんな枯井戸の底に万華鏡を落としたヤツは!」


「菊地から聞く力」


「いや、菊地って誰だよ?」


「北区に帰宅する。」


「だったら、職場は、西区か南区か中央区にあるな。」


「宮刑を求刑する!」


「そして、宦官が誕生するのであった。」


「教頭先生と共闘するぜ!」


「どうやら、お前の学校の教頭先生は、武闘派のようだな。」


「今日の給食、豆板醤。俺は給食当番じゃん!」


「え?お前の学校、給食で豆板醤出るの?」


「九段下で降りるハズだったのに油断したぁ~」


「電車の中でのんきに寝過ぎだろw」


「神戸に行ってシャレコウベ~」


「そりゃ運が悪かったねぇ。ご愁傷様w」


「ゴキブリが五期ぶりに当選確実~」


「虫が選挙とかすんのかよw」


「コダーイはここだ~いと自己主張」


「夜中に動く音楽室の肖像画が、自己主張w」


「五人を誤認逮捕した。」


「冤罪じゃねぇかw」


「ゴリラが五リラで売っていた。」


「イタリアの通貨だったっけ?ゴリラが五リラは、安すぎね?」



「サイボーグの細胞」


「機械じゃ細胞無ぇから……ナノマシンか?」


「サルモネラ菌は、猿も狙う菌。レジオネラ菌は、レジを狙う菌。」


「猿『も』ってことは猿以外も狙うのか。そして、レジを狙うってのは売り上げって、強盗じゃねぇかw」


「ジャマイカンルンバの邪魔いかん」


「せめて踊らせてあげようよw」


「寝台車で死んだ医者~」


「過労死かな?」


「スメタナよくこんなところに住めたな。」


「今は、肖像画として音楽室に住んでま~す!」


「戦士の蛮行も千紫万紅」


「俺たちのことじゃねぇかw」


「これが素粒子のソリューション!」


「要するに、方程式を解いたのか。」



「タージマハルに行った田島ハル。」


「『田島ハル』って誰だよw」


「立ち話をしていた、橘君の立場なし!」


「それなら座って話をすればいいじゃねぇかw」


「団長の断腸の思い」


「それでメンバーでも追放したのか。」


「チャイナに行っちゃいな。」


「嫌だね。」


「同志を失った、どうしよう」


「俺が知るかテメェw自分で考えろやw」


「内容が無いよう」


「そんなことないようw」


「『鉈等、持ってきてくれて感謝するぜ。』『Not at all.』」


「どういたしまして、だと?待て、その鉈等で何をする気だ?」


「『難読地図産だ』と何度口ずさんだ?」


「一回もねぇよw」


「バーチャル婆ちゃん」


「いくら高性能婆ちゃんだからって、二次元の世界に逝ってんじゃねぇよ。」


「ハイタッチで血を吐いたっち!」


「そうか、これがハイタッチで吐いた血か~って、汚ぇ話だなぁ~オイ。」


「バッキンガム宮殿で、ガムを吐いたら罰金だ~」


「そりゃそうだろ。」


「パリィとは何か?煎餅をかじる音で~す!」


「そうか。あのゲーム脳共は、煎餅をかじっていたのか~」


「引き籠もりの殿下、外に出んか~」


「執事さんも大変だな~」


「フェーン現象を宣言しよう!」


「宣言してどうするw」


「藤井さんのお爺さん。」


「いや、誰だよ?!」


「部費を横領するブヒ」


「それは良くないブヒ」


「便秘の別嬪さん」


「別嬪さんは今日も便秘か~」


「本田の本と、本多の本だ。」


「自分の本だろ?ちゃんと片付けておけよw」


「三十路のミソジニスト」


「末は賢者か、魔法使いか」


「メイス入りの宝箱だと名推理。」


「異世界小説によくある、鑑定スキルじゃねぇかw」



「薬物乱用けしからんよう」


「そりゃ確かにけしからんよ~」


「預言者無反応(ムハンノウ)


「ムハンマドだろォ?預言者が無反応だったら、神様が困るじゃねぇかw」


「You say "優勢", Let's say "劣勢".」


「お前は『優勢』だと言う、『劣勢』だと言ってみよう。」


「ワーグナーの演奏会で、騒~ぐな~」


「そもそも演奏会で、騒~ぐな~」


「「「ギャハハハハハ~」」」


 単なる駄洒落(ダジャレ)大会になってしまっていた。多寡(たか)が同音異義語の何がそんなに面白いのか、本当に下らない連中だと心からそう思う。


――――――――――――――――――――――――――――――


 閉店後、二人は、ドンザ・ウルス店長と打ち合わせを行う。


「【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】やら、【努力教】やら、反知性主義者やらが、横行していると聞いていたから、もっと物騒な国かと思っていたけれど、意外と平和ですねぇ。」


「現・玖球(クーゲル)帝閣下は、型破りで破天荒な異端児で、好戦的だからな。十年前はそういう国益を損なう輩も結構いたんだが、閣下が根こそぎ狩って回り、叩き潰したから、最近は手を変え品を変えて潜んでやがる。」


 例えば、反知性主義者が、掛け算の順序に拘泥して、正解の答案を不正解と採点していたことがあった。持っているカードの数×人数でも、その人数に1枚ずつ配って何巡目か、という掛け算をしても、交換法則可能な掛け算なのに、何故か誤答になるのは、理不尽ではないだろうか?


 帯分数や、分母の平方根の有理化には、まだそれなりに教育的な意図がある気がするが、

行列や四元数の様な、高等教育の水準ではない、小学校で習う、交換法則可能な掛け算だぞ?


 あと、習ってない漢字を書いたら誤答扱いにする小学校の教師もいるようだが、そいつらも同罪だ!!まさか、何時(いつ)何処(どこ)で習ったのか、既習未習も含めて、覚えておけとでもいうのか?


 或いは、元・【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】が、血液型占いという、先天的属性による差別を行っていた。血液型とは、単なる糖鎖の違いでしかないのに、それで性格が決まるなら、年を取って丸くなった、とかも有り得ないし、輸血したら性格が変わるのか?よく考えたら、非論理的なことに気付くだろう。


 元・努力教教徒がマナー講師と称して潜んでいたこともあった。「ノックは2回」派と「ノックは3回」派が存在し、前者は、3回だとしつこいとか、イライラしているように感じる、と言い、後者は、2回だと聞き逃すとか、2回はトイレの時だろ、とか言って、内ゲバを起こし始めたときは、本当に辟易して、テメエら同士で勝手にやり合っていろ、とか思ったという。


 当然だが、謁見することになる相手、現・玖球(クーゲル)帝である、ネメシス・ダムドの人柄に関する情報収集へと話は進む。


玖球(クーゲル)帝の称号は『陛下』ではなく『閣下』なのですか?」


「公爵家の次期当主だった頃からの名残りで、そっちの方が馴染むんだとよ。」


「何というか、独裁者みたいな印象を受けますね。」


「『独裁者』というか、あれはもう『暴君』の域に達しているかもな。民衆には人気があるが、言動が自由過ぎて、官僚は辟易しているだろう。」


「自国の皇帝を『暴君』呼ばわりして、不敬にならないんですか?」


(そもそ)も、本人が礼儀・礼節なんてクソ喰らえって感じだしな。まぁ、それでも、お二人は他国からの使節という扱いだし、流石に丁重に扱うだろうよ。」


 ドンザ・ウルス店長曰く、玖球(クーゲル)帝閣下は、近衛中隊との戦闘訓練として、模擬戦をやったとき、全員病院送りにしたとか。


 競泳用の【鮫肌水着】を普及させるため、自ら広告塔として着るだけでなく、耐久性能試験と称して、遠泳したとか。


 暗殺を企てたノワール般若を返り討ちにし、【電気首輪】を装着して、隷属させたとか。


 【瀬戸】の水軍を一人で全滅させ、しかも、停戦協定を結ぶ講和会議の際、常井氏とガチの模擬戦をしたとか。


 そういう武勇伝?には枚挙に暇が無い。聞けば聞くほど彼は、この世界の中でも【別次元の領域】に存在する、規格外級の別格で、相当ヤバイ奴だと思わされる。


「店長さんは、随分詳しいんですね。かつては宮仕えとか?」


「俺は、公爵家の次期当主だった頃からのダチでな。あと、玖球(クーゲル)帝国では、評議会(クリルタイ)の武闘会で優勝した者が帝位に就く決まりなんだが、決勝戦を闘った仲でもある。」


「そんな、重鎮として登用されるような人材が、何故、食堂の店主という地位で満足しているんです?」


「それは違うぜ。俺は都市探索協会の会長でもある。あの人の中では、皇帝に次ぐ権威みたいに考えてる。それに、酒場で情報収集ってのは、基本だしな。そういうわけで、普段は食堂の店長をやっている。」


 確かに、酒場で情報収集というのは、RPGの基本だけれども。


「そういうわけだから、お客さん達には、現・玖球(クーゲル)帝閣下が導入した、『科挙』という公務員試験を受けてもらうぜ。」


「『科挙』?俺達は、他国からの使節という扱いなのでは?」


「この国は実力主義でな。特に、閣下は、武闘家だから、実技試験として、【決闘術】の模擬戦の結果は重視する。単に、他国からの使節として謁見するよりも、その方がずっと、話を通しやすい。」


「どんな試験か分からないので、『科挙』の傾向と対策をしないと。」


「筆記の方は、自分の得意分野を幾つか選択して解けば良いだけだ。数学とか、物理とか、化学とか。お客さん達、爵位持ちなんだろう?余裕だよ。」


 そういえば、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)での臨時の爵位として、伯爵相当の爵位を賜っていたな。


「実技試験は、【決闘術】の模擬戦の形式でしたっけ?」


 ドンザ・ウルス店長は、その通りだ、と答え、柔道着の様な白衣に着替えて、


「俺っちが相手してやろうかぃ?体がなまってるんでなぁ。」


 そう言って、鰐の様な歯を剥き出しにして、獰猛な笑みを浮かべるのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 食堂の裏にある倉庫みたいな場所にやってきた。


 ドンザ・ウルスは、両手に槍のような長柄の武器と盾を装備している。


 郡山青年も、【収納術】で亜空間の【コンテナ】に収納されていた魔槍、【葬送の双槍】と、黒キ楯(シュヴァルツシルト)を取り出す。


 両者は、奇しくも同系統の攻防一体の前衛職の装備をしていた。しかも、実際に闘ってみると、力量は殆ど互角のようだ。


 一方、弓削青年は、【祟りの凶杖】と漆黒の(クロスボウ)、【痛矢串】を取り出す。こちらは、攻撃偏重、しかもどちらも後衛職の装備である。


 【痛矢串】から放たれた矢は、ドンザ・ウルスの盾に防がれる。しかし、【痛矢串】は、矢に火属性や毒属性を付与することが出来る。矢を防いだ筈のドンザ・ウルスの盾が燃え上がる。


 盾ごと燃やされるわけにはいかないので、ドンザ・ウルスは、盾を手放す。以前どこかで見た光景だな、と郡山青年は思う。盾を手放したドンザ・ウルスの姿は、以前の自分の姿と重なる。


 だが、そこからが違っていた。ドンザ・ウルスは、盾を捨ててなどいなかったのだ。盾は変形して、中から八方手裏剣のようにも、血滴子のようにも見える暗器、廻転鋸(スピンソー)が出てきた。


「さァ、カイテンの時間だァ!!」


 この「カイテン」は、「廻転」と「開店」を掛けているらしい。

今回は、少し短めになりそうだったので、

駄洒落ダジャレ―アイウエオ順に並んでます―

を調べたものを載せて、文字数を水増ししてみました。

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