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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第漆章 帝都ニライカナイ編
73/120

第73話 壁丼アスベスト味―ハウスダスト・ドラゴン盛り―

英語教が跋扈している昨今ですが、言語学的な観点からは、

言語の多様性を脅かすような洗脳や文化的侵略には、

警鐘を鳴らしておきたいと思います。


あくまで、そういう考え方もある、という話ですが、

社会批判が苦手な方は、適当に読み飛ばして下さい。

 ノワール般若。般若顔で、直立二足歩行の黒猫の獣人。玖球(クーゲル)帝国の魔族皇帝ネメシス・ダムドの命により、留学生として、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)に派遣される。


 (たお)した相手の武器を使えるようになるという、固有技能(ユニークスキル)猫婆(ネコババ)】を保有するノワール般若は、武器合成や技能(スキル)などを重視した、猫族の純血種出身でもあり、魔導科学の発展した、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の科学技術を学び、その技を盗む留学生、という意味においても、確かに適任者ではある。


 当人は今、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の登戸研究所の研究生二人を伴って、玖球(クーゲル)帝国に帰省しようとしていた。


「今、玖球(クーゲル)帝国では、入国審査が厳しくなっているのニャ。」


「十年前に一悶着あったとは聞いているが、その所為(せい)か?」


「そうニャ。当時、まだ皇帝になる前から、我らが帝王サマは、【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】や【努力教】と戦ってきたニャ。」


 【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】は、吸血鬼のような外見だが、血ではなく、活力(エネルギー)を吸収する。一方、【努力教】の教徒は、「エリマキトカゲ」の様な外見をしており、自分を実力以上に見せようとする。


 前者は、「自分たちに出来ないことは、お前にも出来ない。」と決めつけてくるし、逆に後者は、「自分に出来たのだから、お前にも出来るだろう。」と自分達の基準を強要してくるという。


 当時、玖球(クーゲル)帝国では、両者はいずれも社会問題となっていた。当時のネメシス・ダムド氏が倒して回ったので、同氏が玖球(クーゲル)帝として即位した後は、手を変え品を変え、姿を変えて暗躍するようになったという。


 一応、ネメシス・ダムド帝の種族である、【マンティコアノイド】も蝙蝠の翼を持つため、飛行能力は勿論、超音波による位置探知が出来るほか、【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】と同様、【活力(エネルギー)吸収】という技能(スキル)も使えるという。


「他にも、反知性主義者への取り締まりも厳しくなっているニャ。だから、反知性主義者だと疑われるような言動は慎むことだニャ。」


「どんな言動が該当するんだ?俺達は一応、知性には敬意を払っているつもりだが?」


「分かり易い例を挙げれば、『考えるな、感じろ。』という台詞は、他者に思考停止を強要した、という理由で任意同行を求められるニャ。」


 玖球(クーゲル)帝国は、多種族が競い合う実力主義の国。それは、意外と物騒な場所なのかも知れない……。


――――――――――――――――――――――――――――――


 一方、その頃。現・玖球(クーゲル)帝、ネメシス・ダムドは、地雷原に立ち、超音波によって、地雷の位置を探知を探知していた。


 そして、聖剣【電動鎖鋸(チェーンソー)】を使って、大地を割り、地雷を掘り起こしていた。勿論、掘り起こした地雷は、業者に売り、その代金は、国庫に納められる。とはいえ、これが皇帝のすべき仕事とは思えないのだが。


「書類仕事ばかりでは、身体がなまってしまうんでな。」


 地雷の探知は、普段は、蛇系の獣人が、赤外線を感じる、「ピット」と呼ばれる器官を用い、熱源を探知する。


 そして、【一酸化二水素ジヒドロゲンモノオキシド】で火薬を湿らせ、爆発しないようにしてから掘り起こす。


 かつて、上杉謙信が、織田信長の鉄砲隊を破った「手取川の戦い」。勝因は、雨の日に、銃の火薬を湿気らせて、鉄砲を撃てなくしたからだ。


 だが、ネメシス・ダムドの場合は、氷属性の奥義【極低温の瘴気(クライオ)】を用いて、引火点以下の温度に冷却した上で、より安全に掘り起こしている。


 現場からは、危険を取り除いてくれる、親しみが持てる皇帝として、高い人気を誇る一方、この仕事に誇りを持っている一部の現場作業員からは、「俺達の仕事を奪うなよ」という嘆きの声も聞こえてくるのだが……。


「では、ここの視察はこれで終わる。以後の作業は、お前に任せたぞ、ウヌクアルハイ。」


「はっ。」


 地雷原での掘り起こし作業を、蛇系の獣人である、現場監督のウヌクアルハイ氏に委ね、ネメシス・ダムドは、皇帝としての成すべき務めに戻る。この地雷を埋めた奴を探し出し、儂の地雷を踏み抜いたことを贖わせてやる、と誓いながら。


――――――――――――――――――――――――――――――


 常井氏曰く、玖球(クーゲル)帝国側と交渉する際は、玖球(クーゲル)帝と直接繋がる経路の窓口があるらしい。


 二人は、それぞれ、郡山青年が荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の、弓削青年が蝦夷(えぞ)共和国の使節代表という扱いで、常井氏の方から事前に、この玖球(クーゲル)帝と直接繋がるという経路の窓口に面会を申請しているという。


 というわけで、二人は、都市探索協会の玖球(クーゲル)帝国側の本部、より正確には、その付属の食堂【丼次郎】に到着した。


 この食堂【丼次郎】は、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)にも支店を出しており、親子丼、かきあげ丼、鰻丼、蟹釜飯、鶏五目釜飯、といった丼ものの他、うどん・蕎麦、といった麺類もある、学食の様な、食券形式でセルフ方式の食堂である。


 中世ヨーロッパ的な世界観をした普通の異世界小説のように、得体の知れない食事が出て来ることはなく、和食が普通に出てくるので安心?である。


 但し、料理人(シェフ)が、鰐の様な頭に鉢巻きを巻いた、爬虫類の獣人でなければの話だが。


「この料理人(シェフ)が、ここの食堂の店主ニャ。」


蜥蜴人間(リザードマン)?」


龍人(ドラゴニュート)?」


蜥蜴人間(リザードマン)?はっはっはっは。龍人(ドラゴニュート)?はっはっはっは。お客さん、他所の国から来た人かい?俺っちの種族は、【恐竜人間(ディノサウロイド)】。その名も、ドンザ・ウルス。まぁ、『ドンザ』は、名字というか、称号みたいなもので、『ウルス』が名前に相当するがな。」


 食堂の店主である、【恐竜人間(ディノサウロイド)】の料理人(シェフ)が自己紹介をしてきたので、こちらも適当に名乗っておくか。


「俺は、郡山。荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)から来ました。」


「俺は、弓削。蝦夷(えぞ)共和国から来ました。」


「アタイは、ノワール般若。玖球(クーゲル)帝国出身ニャ。」


「知ってるよ。お前さんは、玖球(クーゲル)帝閣下に迷惑を掛けている有名な猫だからな。」


 国内でも有名なんだな、この猫……。


「では、ご新規のお客さん方の注文を伺おうか。」


「では、店主さんのオススメで。」


「俺も。」


 どうやら、今日の店主のオススメは、親子丼と狐狸(こり)うどんのセットらしい。狐狸(こり)うどんとは、きつねの油揚げと、たぬきの揚げ玉が両方入っていることをいう。


 だが、山葵(わさび)や生姜、あらゆる具材の全部乗せも可能らしい。大盤振る舞いで豪勢だな。


 値段は、銅貨11枚。


 現在の残高は、金貨82枚、銀貨29枚、銅貨10枚。


――――――――――――――――――――――――――――――


 ところで、この小説も、「物理学」を中心に、「危険物」、「言語学」、「古生物」、「架空鉄道」、「路上格闘」等、あらゆるテーマの全盛りだ。一方、動画サイトにて、小説のテーマは絞った方が良い、という話を聞いたことがある。


 では、逆に聞くが、入試だって一科目ではないだろう?例えば、物理学科に入学するのに、古文・漢文が必要か?これは、そういった問いにも似ている。


 以下、郡山青年と常井学長との対談から抜粋する。


 文系だから数学や物理や化学を履修しない、そういう奴が政治家になって、「自分が理解できないものは必要ない」と言い出す。「試験に出ない」ものは覚えない。こうして、思考停止した輩は、青春を試験のためだけに捧げるのだ。


 英語?どうして外国語選択の選択肢が英語しかないんだ?独逸(ドイツ)語、仏蘭西(フランス)語は、大学に入ってからだと?

 アニメの主題歌の半分が英語、これは本当に日本語版といえるのか?詠唱の呪文が中二病だとか言う前に、ドヤ顔でカタカナ英語全開の技名を叫ぶ方が、日本人として如何なものだろうか?恥を知れ。


 この小説でも、勿論、カタカナ英語を皆無には出来なかったが、それでも極力使わないようにしている。


 もし、英語由来の技名だらけの異界だったら、まずは【英語封じの結界】を使い、自分だけは独逸(ドイツ)語やアイヌ語由来の技名を使っていけば、簡単に無双出来るのではないだろうか?


 もっと酷いのは、大学受験に英語の民間試験を導入するという。よく考えてほしい。日本人は、外国の会社に金を払わなければ、最高学府である大学教育を受けられなくなるぞ。それは、独立国家として如何なものか?


 明治維新の時、和語や漢語に訳した先哲のおかげで、我々は、母国語で最高学府にて教育を受けられる。

 その恩恵を自ら無に帰し、先哲の顔に泥を塗ろうというのか?技術革新の速度に翻訳が追いつかないという言い訳は、学者の怠慢でしかないのではないか?


 かつては、ラテン語が主流だったヨーロッパでさえ、英語や独逸(ドイツ)語、仏蘭西(フランス)語といった、現地語に翻訳(ローカライズ)したというのに、今度は、英語がかつてのラテン語の代わりになろうとしている。


 英語圏の人間の十八番(おはこ)は、掌返し。今の連中は、コンピュータの時代だからといって、筆記体も書けない。自分達の古典である、古英語やラテン語も殆ど学ばない。このような鬼畜米英に偏った、歪んだ世界は果たして健全なのか?


――――――――――――――――――――――――――――――


 玖球(クーゲル)帝国都市探索協会付属の食堂。


 そこに、新たに一人の客が入ってきた。


「壁丼アスベスト味。ハウスダスト・ドラゴン盛りで。」


 注文を言いながら入ってきた鼠の獣人は、最大級の齧歯類であるカピバラや、ビーバーを二足歩行にした様な姿をしていた。


 彼は、「鼠のチュー兵衛」と呼ばれる、齧歯族の剣豪である。齧歯族は、エピガウルスという古生物から進化した鼠の獣人らしい。


 お品書きには、何処にもそのようなメニューは載っていない。困惑するご新規の客二名に、ドンザ・ウルスは説明する。


「当店の裏メニューだ。」


 丼には、幾つかのコンクリートの塊。ノワール般若は、少し離れた隅の席で、そのコンクリートの塊をガリガリと(かじ)っているチュー兵衛を揶揄いに向かう。


 残りの二人は勿論、アスベストやハウスダストを吸いたくはないので、席を立つことはない。


「久しぶりだニャ、チュー兵衛?」


「ゲッ、ノワール般若で御座るか?!」


 チュー兵衛は、ノワール般若を見て、露骨に嫌そうな顔をする。その表情を隠しもしない。鼠だから猫が苦手なのかな?


 チュー兵衛を揶揄ってやろうとしたノワール般若だったが、チュー兵衛に咬まれて、「窮鼠猫を噛む」が成立する。鼠咬症になるのでは?と思ったが、二人とも無関係の他人のように振る舞っている。


「冷たいニャ。」


 傍観者二人は呆れて言葉も出ない。いや、自業自得だろう、と。


――――――――――――――――――――――――――――――


 二人の関心は専ら、店主が机に運んできた料理にある。一見すると、普通の料理のように見えるが、先程の「壁丼アスベスト味―ハウスダスト・ドラゴン盛り―」というゲテモノ料理?を見てしまった後では、猜疑心の塊にもなるであろう。


「店主さん。ここの卵は何の動物の卵を使っているのでしょうか?」


 【幽者】ユゲタイは、今まさに「勇者」となって、質問をする。


「お、オイ、急に何を言い出すんだよ?」


 郡山青年は、相棒の無謀な質問にギョッとする。何故なら、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)にいた頃、この食堂【丼次郎】系列の支店で、似たような料理を注文した記憶が蘇ったからだ。


「ウチは普通に鶏卵を使っているぞ。」


「ほらぁ。別に普通じゃないか。」


 店主の返答に、郡山青年は、安心する。だが、弓削青年はきちんと忠告をする。


「いいかい。生卵を安全に食べることが出来るのは、日本ぐらいで、他の国では細菌感染症に注意する必要があるんだ。レジオネラとか、サルモネラとか。」


「レジオネラ?はっはっはっは。サルモネラ?はっはっはっは。猜疑心が強いのは、嫌いじゃないぜ?ウチは滅菌処理をしているから、レジオネラもサルモネラも存在すらできねぇよ。」


 そんな弓削青年の指摘にも、全く動じることのない、ドンザ・ウルス店長であった。

報道関係マスコミは、直ぐに意味不明な造語を作りますねぇ。

「壁ドン」とかいう造語を初めて聞いたとき、

「親子丼」等の丼ものかと思いました。

でも、壁なんて誰が食べるんだよ?鼠か?

というのが、今回の話の元ネタです。

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