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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第陸章 サンケベツ村編
69/120

第69話 【クロック・ザ・クロック】

本章の段階では、まだ終わりません。

ゲームでも、最終ラスボスが、初お披露目で倒されないのと同じ。


題名の【クロック・ザ・クロック】の命名の由来は、

時計を意味する英語「clock(クロック)」と、

ハイパーヨーヨーの「ループ・ザ・ループ」から。

 豚野郎(オーク)共の首魁が、その真の名の下に、「時計の地上絵」の魔方陣を描いた。


「時計よ時計、俺様の邪魔をする者は誰だ?その身の程知らずな者の時を止めよ。【クロック・ザ・クロック】!!」


 「時計の地上絵」の魔方陣の効力が発動すると、背中合わせに立った【蝙蝠山卿】と【幽者】ユゲタイの二人の周囲の時間は、完全に停止したわけではないが、時間の進みが遅くなり、空間は、まるで水飴のように重たくなった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 二人とも、背中合わせのまま、両手・両足を動かすことが出来ない!


 会話も難しいし、会話出来たとしても、敵に盗聴されては意味が無い。


 二人は、前腕にある【アンダの誓い】、二人の絆を象徴する刻印に魔力を流し、【思念共有】を行う。


 以下、二重括弧による会話は、【思念共有】によるものである。


『【クロック・ザ・クロック】の詳細は不明だが、どうやら、時属性の技能(スキル)のようだ。』


『属性は、火、氷、(いかずち)、鏡、影、核、毒だけじゃないのか?』


『誰だそんな教え方をしたのは!嗚呼、(マイスター)・ブルクドルフか……。さもありなん。無属性の分類は学者や学派によって、結構定義に差があって、他にも音属性や、幻の時属性があるな。』


『音属性?に、時属性が幻って……?』


『音属性は火を消したり出来るらしい……。絵画や彫刻が空間の芸術だとすれば、音楽は時間の芸術だということで、時属性に分類する場合もあるが……。時属性が幻だと言われるのは、失伝して、喪われた古代魔法の(たぐい)だからさ。』


『この技能(スキル)を打ち破る方法は……?』


『描かれた、時計の地上絵を打ち消すことが出来れば、それが最善だろうが、魔方陣が発動して、両手・両足を動かすことが出来ない現状では為す術が無いな。』


『もはやこれまでか……。』


『悪いな。俺と連中の因縁に君を巻き込む形になってしまってよ……。』


――――――――――――――――――――――――――――――


「ワッハハハッハッハ~♪嬲り殺しにしてやるぜ~」


 だが、そのとき、(わら)っていた豚野郎(オーク)共の首魁の背後に赤と緑の稲妻が落ち、魔方陣に(ひび)が入る。

 【クロック・ザ・クロック】は、結界の内部の動きは制御できるが、結界の外側からの攻撃までは防げないようだ。


「赤と」


「緑の」


「「キョウエン!!」」


 落雷は、地上で赤と緑の炎へと変わり、時計の地上絵を燃やしていく。そして赤と緑の炎の中から、ブルクドルフ氏と常井氏が姿を現す。

 赤はブルクドルフ氏の魔力色(オーラ)、緑は常井氏の魔力色(オーラ)であり、「キョウエン」は、「共演」と「饗宴」を掛けている。


 そう、この【赤と緑のキョウエン】という技能(スキル)は、玖球(クーゲル)帝国の【朱雀鳳凰】種の鳥人、スサノオ・ニーチェの十八番(おはこ)である。

 ブルクドルフ氏と常井氏の師弟コンビという、歴戦の猛者でさえ、二人がかりで発動する大技を一人で発動できてしまうスサノオ・ニーチェの魔力量が如何に規格外かが容易に分かるであろう。


 二人とも、登戸研究所の【決闘術】の実習に使う闘技場で、鏡の魔道具を使い、郡山青年と弓削青年の二人の様子を見ていたのだが、「元教室長一派」の正体が、豚人間(オーク)族であると判明したとき、その危険性を(かんが)みて、こうして馳せ参じたというわけである。


――――――――――――――――――――――――――――――


「スミマセン、助かりました。救援感謝します。」


「申し訳ない師匠。手を煩わせてしまって。」


 悔しそうな【幽者】ユゲタイ。


「いや、君達は連中を相手によく戦った。本当によく頑張ったな。後は我々に任せて、少し休みたまえ。」


 常井氏は健闘を称える。


「君が危惧していた、サンケベツ村の住民達だが、既に避難を完了しており、全員無事だ。」


 【幽者】ユゲタイが、事前に連絡を入れていたらしく、ブルクドルフ氏が、サンケベツ村の住民達を避難させていたようだ。


 助太刀に来た二人は、豚野郎(オーク)共の頭目と対峙する。ブルクドルフ氏は、顔の皺の一つ一つに怒りが刻まれていた。


「この世界の住人の一人として、君達の暴挙に厳重に抗議する。外道、邪法、実にけしからんよ!」


 続いて、常井氏が警告を発する。


荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)第参皇児(だいさんおうじ)として、貴様等に警告する。私はこの二人のことを弟の様に思っている。我々、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の皇族と事を構えたくなければ、直ちに投降したまえ。」


 これには、流石の豚野郎(オーク)共も、警戒せざるを得なかったようだ。


――――――――――――――――――――――――――――――


 両陣営が睨み合うこと数分。


 豚野郎(オーク)の手下二人が、何らかの工作を終えたようだ。


「お頭ァ、準備ができやした!」


「よ~し、撤・退・だ~。【テッタイン】飲むぞ~!」


「「応!!」」


 巨漢である豚野郎(オーク)が、【テッタイン】と呼ばれた謎の薬品が入った、発酵乳飲料サイズの小さな瓶を飲み干す、という滑稽(シュール)な光景が披露され、飲み終えると、連中は、【汚泥(ヘドロ)スライム】に変化し、下水に逃げ込む。


 直後、赤、緑、青、紫の稲妻が、連中のいた空間を切り裂くが、既に、そこには何も存在してはいなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 サンケベツ村が、隕石を投下されて、廃墟になってしまったので、四人は、政治結社【草茅危言】の蝦夷(えぞ)共和国における拠点に戻った。


「さて、豚人間(オーク)族の連中だが、恐らくこの世界の住人ではない。そして、君達二人が元いた世界の住人でもないだろう。第三の異界からやって来た、第三世界の連中である可能性が高い。」


 転移に関して詳しい、ブルクドルフ氏がそう語るのだから間違いあるまい。


「連中に関しては、指名手配という扱いとなる。一応、獣人である可能性も考え、玖球(クーゲル)帝国側にも住民票との照会を頼むことになるだろうが、その可能性は低いだろうな。」


 ジャガイモの芽みたいな寄生植物との共生とか、【汚泥(ヘドロ)スライム】に変化したりといった点から、普通の獣人ではないだろう、と常井氏も考えているようだ。


「ところで、素材の蒐集の方は済んでいるかね?」


 蝦夷(えぞ)共和国で入手すべき素材一覧にあった、素材の蒐集に関しては、完了している旨を伝えると、


「今回は君達も、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)大皇(おおきみ)に謁見して、報告しよう。蝦夷(えぞ)共和国のサンケベツ村の住民達を救った、英雄(ヒーロー)として。」


「今回は、俺達は連中を仕留め損ないました……実力不足でした。」


「今回の任務は、あくまで『生態系の異常に関しての調査』だからな。その任務に関しては、既に完了(パーフェクト)している。でも、君達は成長の余地がある。まだまだ伸びしろがある、ということさ。次は、玖球(クーゲル)帝国で素材の蒐集だな。」


――――――――――――――――――――――――――――――


 その後、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)大皇(おおきみ)から、蝦夷(えぞ)共和国での任務完遂の報酬として、二人とも、金貨50枚と臨時の爵位を伯爵相当にまで昇格することとなった。


 更に、【幽者】ユゲタイも、【登戸研究所】の【研究生】となった。また、彼も、【象牙の塔】地下8階【光庭】に行き、【八岐大蛇(やまたのおろち)】の加護を習得したらしい……。

既に、伏線になっているのですが、実は、主人公は、

【クロック・ザ・クロック】を破る手段を既に持っています。

今はまだ、その真価に気付いていないことと、

今回は、初見だったので防げなかっただけ。


次回は、第漆章のまとめ。

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