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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第陸章 サンケベツ村編
68/120

第68話 悪しき神(ウェンカムイ)の最期

各話のタイトルは、各話の作中に出てくる単語を抜粋しています。

題名だけでは、内容のネタバレにならないように選んでいますが、

「第66話 暴力は連鎖する」と「第67話 断ち切る勇気」は、

敵側の信念と主人公側の信念で、対になっていたりします。


今回は、少し短めなので、冒頭に【ここまでのあらすじ】を追加。

【ここまでのあらすじ】


 【転移の鳥居】から、【蝦夷(えぞ)共和国】へ転移した郡山青年は、【冥界入口(アフンルパラ)】駅にて、【病みエルフ】の青年と出会う。


 その正体は、かつて、十年前に(うしな)った親友、弓削少年が、【病みエルフ】の少年と【幽体融合】し、この世界で十年の時を経た姿だった。彼は、「生態系の異常に関しての調査」をしているという。


 二人は、サンケベツ村へと向かい、黒幕【夜の音】を仮想敵として、互いの実力を確認するため、【蝙蝠山卿】と【幽者】ユゲタイとして、決闘紛いの模擬戦を行う。


 模擬戦の翌日、【アンダの誓い】を結んだ二人。更に次の日。決闘紛いの模擬戦の翌々日。二手に分かれた弓削青年の前に、【袈裟懸け】と並んで、黒幕として、「元教室長一派」が姿を現す。


 「元教室長一派」の正体は、豚人間(オーク)族で、交戦中に巨大な隕石【死兆星】をサンケベツ村に投下させ、冷静さを失った【幽者】ユゲタイを、毒瓦斯(ガス)で始末しようとしたとき、【蝙蝠山卿】が介入し、十年前の因縁の関係者が全て揃う。


 その後、暴走した【袈裟懸け】に「元教室長一派」が喰われ、【幽者】ユゲタイは、【袈裟懸け】を型紙に封じるため、一対一の対決を挑むのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 【袈裟懸け】は、【幽者】ユゲタイの方を振り向いたのだが。


「オマエ、病ンデテ、シカモ、痩セテルシ、不味ソウ・・・。」


「そういう基準だったのかよ。」


 眼中に無い、と宣言された、【幽者】ユゲタイだったが。


「勘違いするな。俺が捕食者で、貴様が被捕食者だ。覚悟はいいか?悪しき神(ウェンカムイ)!」


 【袈裟懸け】の影の中から、【陰陽術】で生成したヒヒイロカネの鎖が出現し、【袈裟懸け】の四肢に絡みつき、巻き付いて、縛り上げた後、【錬金術】で有刺鉄線へと変わり、

更に締め上げる。


 【幽者】ユゲタイは、黒キ楯(シュヴァルツシルト)の補助なしで、【重力の(くびき)】の「金」属性版に相当する、【影縫い】を行使できるのだ。


「グルルルルル!」


 【袈裟懸け】にとっては、有刺鉄線如き、棘のある植物と大差ないのだろうが、そこに(いかずち)属性の奥義が放たれれば、話は別だろう。


「【ガルバノ】!」


「グォオオオオオ!」


 青白い稲妻が、【袈裟懸け】の生命力を徐々に削っていく。そして、【袈裟懸け】が暴れる度に、彼に有刺鉄線が深く突き刺さっていく。


「さらばだ、悪しき神(ウェンカムイ)。」


 やがて、【袈裟懸け】は、【瀕死】状態となって、【幽者】ユゲタイの掌中にある白紙の護符へと吸い込まれていった。これが、【袈裟懸け】と呼ばれた、悪しき神(ウェンカムイ)の最期であった。


 これからは、【幽者】ユゲタイの眷属となり、単なる【袈裟懸け】という名の式神として、型紙から呼ばれることになるだろう。


 この世界では、人語を理解できる/できないによって、魔族と魔物に、四足歩行か二足歩行かによって、魔獣と魔人に分類される。

 【袈裟懸け】は、二足歩行も少しは可能だが、基本的には四足歩行なので、【魔獣】に分類されるだろう。


 だが、人語を理解できるか否かは、かなり微妙なところで、荒脛巾(アラハバキ)語≒日本語や、玖球(クーゲル)語≒琉球語に関しては、片言なので、【魔物】級。蝦夷(えぞ)語≒アイヌ語に関しては、母語話者であると(かんが)みて、【魔族】級だろうか。


――――――――――――――――――――――――――――――


 しかし、【袈裟懸け】が型紙に封印されたことで、新たなる問題が発生する。


 よく考えてみてほしい。【袈裟懸け】が丸呑みにした元教室長一派をその腹の中で消化するために充分な時間があったのかどうかを。


 型紙に封印される直前に【袈裟懸け】が存在していた座標に、空間の歪みが発生し、その中から、粘性の強い黄土色の液体が、世界中の下水を集めたかのような臭いとともに、吐き出された。


 ボトボト。ボトボト。ボトボト。


 やがて、三つの塊となった黄土色の粘液から、それぞれ、二つの眼球が生え、また、一部が裂けて口となった。


 三つの塊のうち、最も大きな塊が、元教室長の声で喋る。


「畜生ッ!【袈裟懸け】の野郎!覚えてろよ・・・。そして、弓削と郡山。久々に、この俺様が直々にお呼び出ししてやろう。『有意義な時間』を過ごそうぜぇ?!」


「喰われてもまだ生きていたのか?何だ、その姿は?」


 そう言いながら、上空から戦闘を俯瞰していた【蝙蝠山卿】が【幽者】ユゲタイの隣に並び、そのまま二人は背中合わせに立つ。互いに、その背中を守る者が自分であることを誇るかのように。


「うるせぇ!けじめをつけろ!けじめを!これこそが俺達の最終形態、その名も【汚泥(ヘドロ)スライム】だ~♪今回は生命の危機(ピンチ)だったから、この姿で脱出したってわけだ。」


「【汚泥(ヘドロ)スライム】だぁ?フッ、その無様な姿で何が出来る?【油汚れ】に?あ”ッ?あ”ッ?あ”ッ?」


 そして、【幽者】ユゲタイの煽りによって、彼らに新たな渾名(あだな)と黒歴史が追加された瞬間であった。ここに写真機が無いのが残念だ・・・。


「ふざけんな、テメェ。調子に乗るのもいい加減にしやがれ!お前らは俺らにさっさと殺されれば、それでいいんだよ!」


 【油汚れ】共の下らない自尊心によって、彼らは再び立ち上がる。ボコボコと音を立てて、豚野郎(オーク)共の肉体が形成されてゆく。


「さァ、リベンジマッチの開始と行こうぜぇ?!」


 全くしぶといことだ。憎まれっ子世に憚る、とはこのことか。


――――――――――――――――――――――――――――――


「ヘッ!」


 ブゥン!ブゥン!ブゥン!


「ウッホッホ!ウッホッホ!」


 かつて、講師Aと講師Bだった、豚野郎(オーク)共は、突進しながら、野球のバットみたいな杖で、殴りかかってきた。


「ビー玉転がし~♪」


 【幽者】ユゲタイは、ポケットに入っていた数個のビー玉を連中の足下に転がすと、連中は簡単に躓いた。


「すっ転ばしてやったぜ!ざまぁみろ!」


 この場合、ビー玉を転がすのもかなり危険な行為だが、野球のバットで殴りかかってくるのはもっと危険だ。そのような相手に対しては、流石に正当防衛の範疇だろう。


――――――――――――――――――――――――――――――


 だが、手下共の陽動は全て時間稼ぎのための囮でしか無かった。豚野郎(オーク)共の首魁は、野球のバットみたいな杖を振り回し、


「俺様の真の名『XRTVWG(クサルタ・ヴィウェギ)』の下に、豚人間(オーク)族に伝わる、古代魔法を見せてやろう。今から生成する魔方陣は~♪」


 愉快そうに、勿体振って紡がれた呪文と共に、桃色光線が地面を走り、二人を囲むように地上絵を描いていく。程無くして、出来上がったのは・・・「時計の地上絵」?


「時計よ時計、俺様の邪魔をする者は誰だ?その身の程知らずな者の時を止めよ。【クロック・ザ・クロック】!!」


 描かれた「時計の地上絵」の魔方陣に魔力が流され、桃色に輝いたとき、二人の周囲の空間がまるで水飴のように重くなる。


「「…………………………」」


 二人の周囲の時間は、完全に停止したわけではないが、時間の進みを遅らせているようだ。

そろそろ読者の方も気が付いてるかも知れませんが、

お洒落なポイントとして、話数と更新日は、下一桁を合わせています。

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