表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第陸章 サンケベツ村編
63/120

第63話 【夜の音】の傾向と対策

【夜の音】に関して。

発想の経緯:現時点で、黒幕の名称が不明


→黒幕が、最終ラスボスになる予定。


最終ラスボスに相応ふさわしい名称を考えよう。


→造物主デミウルゴスの名をグノーシス主義では、

「ヤルダバオト」と呼ぶらしい。


→「ヤルダバオト」の発音による表記揺れに、

「ヨルダバオト」という名称がある。


→「ヨル」が「夜」、「オト」が「音」を連想させる。


→【夜の音】は、正体不明の黒幕の仮称としても、

相応ふさわしい気がする。

 再び立ち上がる郡山青年。彼には、もう迷いはない。


「ククク。俺に勝ちたい、勝ちたい、という強い闘志を感じるぞォ!そうだ。やはり俺達の闘いはこうでなくてはなァ。」


 郡山青年が立ち上がったことで、弓削青年も心から(よろこ)んでいる。


 こいつは既に一度倒している奴だ、という認識は棄てたほうが良さそうだ。


――――――――――――――――――――――――――――――


 自分より強い相手に創意工夫もなしに挑むのは無謀だ。


 上には上がいる。


 大学でも、自分よりも数学やプログラミングが得意な者というのはいた。しかし、どんな奴にも弱点はある。前者は数学は得意だけど、プログラミングは苦手だったし、後者はプログラミングは得意だけど、数学は苦手だった。


 では、数学とプログラミングを組み合わせたら?結果は火を見るよりも明らかだった。郡山青年は、(くだん)の両者よりも成績が上位となった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 そこで、どのように創意工夫をすれば良いのだろうか?


 この世界での【決闘術】は、表の世界の日本での路上格闘と殆ど同じ。しかし、それは両者ともに経験がある。大差はない、或いは、少し不利かも。


 この世界独特の技術。【陰陽術】と【魔導科学】。好敵手(ライバル)は、その両方を既に十年使っている。熟練度では大差がある。全く敵わないだろう。この世界にいる限り、外地(アウェイ)での戦闘を強いられる。


 でも、どんな奴でも弱点の無い敵はいない。


 最強の敵であっても、無敵というわけではない。「最強」は最も勝率が高い者、「無敵」は勝率100%の者。両者は、似て非なる存在なのだ。


 だったら、相手の隙を窺えばいい。


 物理や数学の講義で板書の間違いや、専門書の誤植―負符号や二乗の冪が抜けていたりする―を見つけたように。


 或いは、プログラミングの実習で、コンパイルエラーのバグ―綴り間違いや全角半角の混在―を見つけたように。


 そして、相手の隙を狙って、意外性の高い技を仕込む。武術の達人であればあるほど、素人の動きは読み難い。


――――――――――――――――――――――――――――――


 それに、自分以上の実力者に一人で挑む理由はない。


 あの時だって、自分の影に潜んでいた魔族と共闘していた。


 方針は決まった。


 【陰陽術】を使い、式神を召喚する。


「来い、【八咫烏天狗】!」


「ほう。それが君の式神か。だが、意外だよ。以前の君なら、この決闘は、意地でも一対一の勝負に拘っていた(はず)だ。」


 確かに、二対一では「卑怯」と思われるかも知れない。


「君こそ、熱くなり過ぎて、この模擬戦の意味を見失っていないか?」


「何?この模擬戦は、互いの実力を確認することが目的の(はず)だ。」


 【幽者】ユゲタイは、興奮して、昂ぶる闘志を抑え切れていないようだ。【幽体融合】が解除されかかっており、【幽体分離】、略して、【幽離】によって、幽と体が分離し、黒に限りなく近い灰色である、灰黒色の髪であった青年は今、【病みエルフ】の特徴である、白銀の髪に真紅の眼へと変貌を遂げ始めていた。


 そういえば、十年前、弓削少年の髪型が癖毛が強く、ブロッコリーの形に似ていたので、


「ブロッコリー、年をとったらカリフラワー」


と揶揄われていたな、と思い出す。


「それだけでは不足だな。この模擬戦は、これから対峙するであろう、【夜の音】の傾向と対策も兼ねているはずだ。」


「面白い。互いを仮想【夜の音】と考えて闘おう、というのか。」


「それなら、【陰陽術】を使って、式神を召喚するのも必然だろう?」


 これで、多対一で闘う大義名分が出来た。


「良いだろう。だが、【陰陽術】を使えるのは君だけではないぞ。」


 そして、二人の決闘は、第二段階へと進んでいく。


――――――――――――――――――――――――――――――


 召喚された【八咫烏天狗】は、郡山青年に助言をする。


「小さな光は大きな光の側では輝けないが、闇はどんな小さな光でも輝かせることが出来る。そして、どんな大きな光でも闇の全てを照らし出すことは出来ないのだ。」


 要するに、真昼の太陽の下では、豆電球の光は霞んでしまう。しかし、太陽が沈んだ夜であれば、豆電球の光は輝くだろう。そして、太陽がどれだけ輝いても、全宇宙という闇の全てを照らし出すことは出来ないのである。


 この場合、郡山青年が豆電球、弓削青年が太陽、【八咫烏天狗】が闇、ということになるだろう。


 確かに、【八咫烏天狗】の戦闘経験なら、眼前の相手をも上回るだろう。以前、八咫烏天狗との戦闘に勝ったときは、相手が油断した一瞬の隙を利用しなければ勝てなかったのだから。


 そういえば、八咫烏天狗との戦闘に勝った際に入手した、八咫烏の風切羽をまだ使っていなかったな。ゲームでも、入手したアイテムを温存しておく方だったが、八咫烏の風切羽の効果は、未だ使途不明。折角だからここで試してみるか。


「顕現せよ、黒キ楯(シュヴァルツシルト)!」


 そして、最初にブルクドルフ氏に貰った、今では使い慣れたアダマンタイト製の楯を自身の【コンテナ】から取り出す。


 郡山青年がブルクドルフ氏から、黒キ楯(シュヴァルツシルト)を貰ったのと同様に、弓削青年が入手した、【祟りの凶杖】もブルクドルフ氏の制作である。

 即ち、両者は同格であり、黒キ楯(シュヴァルツシルト)なら、【祟りの凶杖】の攻撃を防ぐことが出来るであろう。


 郡山青年は、黒キ楯(シュヴァルツシルト)のもう一つの能力を思い出す。【重力の(くびき)】を発動した際、楯の表面に(だいだい)の眼の様なブラックホールが描かれ、吸い込んだ素材や魔物の能力を得る、という能力を。


 ミスリル鉱石を吸い込んだ際は、鏡ノ楯(シュピーゲルシルト)という、反射能力を有する楯が顕現し、【メデューサ・ゴルゴン】を吸い込んだ際は、「アイギス」という、石化光線を放てる楯が顕現した。


 では、八咫烏の風切羽を吸い込んだら、どのような楯が顕現するだろう?


「【重力の(くびき)】を発動!」


 八咫烏の風切羽を吸い込んだ黒キ楯(シュヴァルツシルト)は、黒翼が生え、翼ノ楯(フリューゲルシルト)となった。この楯は、リュックサックの様に背負うことが可能になっており、装備時に飛行能力が付与されるようだ。


 ところで、【祟りの凶杖】の素材にも、八咫烏の風切羽が使われている。奇しくも、ブルクドルフ氏の制作した、八咫烏の風切羽を素材とする、武器と防具が、対峙することになったことなど、郡山青年も弓削青年も知る由もなかった・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――


 【祟りの凶杖】と翼ノ楯(フリューゲルシルト)が対峙した瞬間、両者の纏う魔力の波が重なり合い、共鳴を起こした。


 凄まじい暴風が吹き荒れ、エテル、ウィン、エズの三人が生成した、三重詠唱による障壁結界が崩壊する。


「なっ?!何だよ、コレ?!」


 術者の三人だけでなく、アッシュ少年とソーン少年も戦慄し、ヨッホ村長でさえ、恐懼する。


 エテル、ウィン、エズの三人が障壁結界を修復するため、再び三重詠唱を開始し、模擬戦は一度中断することになった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 (しばら)くして、模擬戦が再開される。


 だが、郡山青年の実験は、続いていた。


 八咫烏の風切羽と同じく、八咫烏天狗との戦闘に勝った際に入手した、【烏天狗の仮面】も装備時に飛行能力が付与される防具だった。では、重複する効果を持つ二つの防具を同時に装備したらどうなるか?


 【烏天狗の仮面】と翼ノ楯(フリューゲルシルト)を装備して、飛翔した郡山青年は、2対4枚の黒翼が生え、堕天使の様な姿に変貌していた。


 空中に屹立し、睥睨する郡山青年に対し、弓削青年は、自身の【コンテナ】に収納されていた、漆黒の(クロスボウ)、【痛矢串】を取り出す。


 郡山青年は、翼ノ楯(フリューゲルシルト)黒キ楯(シュヴァルツシルト)に変更する。飛行能力の付与が【烏天狗の仮面】のみとなって、郡山青年の機動力も半減するが、弓削青年が発射した矢を防御できる(はず)だ。


 しかし、矢に火属性が付与されていたため、弓削青年の魔力色である、青白い炎が黒キ楯(シュヴァルツシルト)に燃え移り、郡山青年は、黒キ楯(シュヴァルツシルト)を手放さざるを得ない。


「ククク。この【痛矢串】は、矢に火属性や毒属性を付与することが出来るのさ。機動隊の盾に火炎瓶を炸裂させて、盾ごと燃やすようにな。」


「くっ・・・一酸化二水素ジヒドロゲンモノオキシド!」


 落下しながら燃え続ける楯に鉄砲水をぶつけて、弓削青年の方に弾き飛ばすと、水蒸気爆発によって、霧が発生し、その視界を塞ぐ。


――――――――――――――――――――――――――――――


 だが、即席の水蒸気爆発は、弓削青年には届かなかったようだ。落下しながらも燃え続けた楯は、冷却され、奪われてしまった。


「ククク。いい楯じゃねぇかよ。使い方はこうか?【重力の(くびき)】を発動!」


 奪われた黒キ楯(シュヴァルツシルト)の【重力の(くびき)】が、飛翔する郡山青年に襲い掛かり、地面に引きずり下ろした。

 【烏天狗の仮面】が付与する飛行能力は、重力軽減によるものであり、【重力の(くびき)】による重力増幅の効果と相殺されたためだ。


「くっ・・・仕切り直しか。」


「いや、そうでもねぇぜ。出でよ、【餓者髑髏】!」


・【餓者髑髏】:

最近、常井氏の影響を受け、「ガチャ」を回す趣味に目覚めたことから、「ガチャ髑髏」とも呼ばれているとかいないとか。

[弱点]:妖刀【骨無双】、妖刀【骨無双】―真打―


 郡山青年の背後の影の中から、弓削青年の式神である【餓者髑髏】が顕現し、郡山青年の足を掴んでいた。そのまま影の中に引きずり込もうとする。


「言った(はず)だ。【陰陽術】を使えるのは、君だけではないのだよ!」


――――――――――――――――――――――――――――――


「だったら、こっちも式神を召喚するまでだ。出でよ!【九尾の火狐】!」


「なっ?!二体の式神を同時に使役するとはな。かなりの高等技術(テク)(はず)だぞ?!」


 弓削青年は驚愕した。陰陽術士の末裔に産まれ、この裏世界で十年の修行を経た自分は、確かに複数の式神を同時に使役することは出来る。

 しかし、郡山青年はそれと同等の技術(テク)をこの短期間に習得したのだ。これが、彼の天賦の才が成せる業なのか。


「妾を呼ぶ程の手練れか。良かろう。この不浄なる生き物め。聖なる炎をその身に受けよ。」


 【九尾の火狐】の火炎放射は、郡山青年の魔力色である、紫色に染まっていた。【九尾の火狐】(クラス)の眷属と共鳴させるのに要する魔力量は膨大となる。


「何だ、この魔力量は?!人族の魔力量を遙かに超えている・・・。」


 【餓者髑髏】は一瞬で焼き尽くされて無に帰った・・・正確には、魔素の粒子の塵となって、弓削青年の型紙へと戻った。これで、【餓者髑髏】を式神として再使用するには、ある程度の冷却時間(クールタイム)を要することになる。


――――――――――――――――――――――――――――――


 その頃、玖球(クーゲル)帝国の帝都ニライカナイの城の執務室。玖球(クーゲル)帝、ネメシス・ダムドは、自分の内側からごっそりと魔力を持って行かれる感じがした。


「だるい・・・。」


 郡山少年との在りし日の契約は、まだ有効なのかも知れない・・・。

両者の実力が拮抗する模擬戦の決着は次回以降に持ち越し。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ