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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第伍章 玖球(クーゲル)帝国の過去編
55/120

第55話 警備員のケヴィン

 玖球(クーゲル)帝国の首都、【ニライカナイ】にて、武闘会の予選が、幕を開けようとしていた。


 そして今、第何試合なのかは定かではないが、その1回戦の一試合が始まろうとしていた。


 武闘会の頂点に立った者が帝位に就く。ネメシス・ダムド自身もそれを目的としていた。


 だが、対戦相手の「鼠のチュー兵衛」は、ネメシス・ダムドの過激な思想を危惧して、『力愛不二』の精神に則り、彼が帝位に就くことを断固阻止する構えである。


――――――――――――――――――――――――――――――


 両者は相手の出方を探りつつ、睨み合いを続ける。


「『力愛不二』の精神に則るのなら、力なき正義こそ無力。凡庸なる者は、『質より量』という人海戦術を駆使するだろう。だが、政策は『量より質』。それこそ過激な思想でもなければ、両者の力は釣り合わない。乱れた世の救世主になること能わず、ただ衆愚の中に埋没してしまうだけだ。」


「問答無用。拙者は独裁者の誕生を阻止するのみ。拙者の妖刀【骨無双】は、文字通り相手の骨を木っ端微塵にする故、骨折程度は覚悟するで御座るよ。」


 そして、試合の展開は急に動く。チュー兵衛は、【縮地】を使って、ネメシス・ダムドの懐に潜り込み、妖刀【骨無双】を一閃。並大抵の相手であれば、これで終わりだっただろう。


 だが、妖刀【骨無双】は、骨に届く前にネメシス・ダムドの筋肉の鎧で受け止められてしまう。そして、妖刀は、峰の部分を素手で掴まれて曲げられ、そのまま砕かれる。

 これは、もう「柔よく剛を制する」とか、或いは、「肉を切らせて骨を断つ」とか、そういう次元の話ではない。


 チュー兵衛の顔に焦りが浮かぶ。


 こんな奴、一体どうやって倒せばいいというのか。


「覚悟は出来ているか?いや、愚問だったか。既に、覚悟は出来ているようだな。」


 ドグシャ!ボコボコボコ!バキッ!


 薄れゆく意識の中、チュー兵衛は、差し違えをして、せめて一矢報いてやろうと、その筋肉に齧歯族特有の前歯という毒牙を突き立てる。


 マンティコアノイドは、マンティコアから進化した。そのマンティコアは、蝙蝠の翼と蠍の尾を持つ獅子(ライオン)である。

 そして、獅子(ライオン)は、猫の仲間。即ち、マンティコアノイドは、広義には猫の仲間といえるだろう。


 まさに「窮鼠猫を噛む」が成立した瞬間であった・・・のだが。


「儂が普通の猫だったら、鼠咬症にでも罹っていたかも知れないが、蠍の尾を持つマンティコアノイドの解毒能力の前では、毒属性は無効だ。」


 既にチュー兵衛は気絶しており、起き上がる気配はない。


「勝者、ネメシス・ダムド!」


 一瞬の静寂の後、審判が高らかに宣言する。勝者であるその者の名を。


――――――――――――――――――――――――――――――


 2回戦。ネメシス・ダムドの相手は、警備員のケヴィンである。ケヴィンは、牛頭(ごず)或いは、ミノタウロスと呼ばれる種族であり、【六王】、或いは、【陸王】とも呼ばれる、先帝の傍系であり、その側近でもあるという、いわば近衛兵の様な役割を果たしていた。


 その為、公爵家の嫡男であった、ネメシス・ダムドとは、幼少の頃から交流があった。先帝の失脚後は、自警団として、彼と小隊(パーティ)を組んでいた構成員(メンバー)の一人でもあった。


 だから、互いの手の内は分かっている。そして、警備員のケヴィンにとっては、ネメシス・ダムドと言う存在は、絶対に敵わない相手であることも。


 もし闘えば、病院送りになるのは確実。だから、闘う前に投了し、棄権しようか、と考えていた。そうすれば、結果はネメシス・ダムドの不戦勝となる。


 だが、本当にそれでいいのか?


「久しぶりだな。ケヴィン。」


「まさか、2回戦の対戦相手が大将とはね。1回戦の様子を見てる限り、正直勝てそうにねぇな。」


「だが、先帝の遺志を継ぐつもりなら、勝ち残るしかあるまい。」


「俺は大将と違って、記念参加だからよ。最後まで勝ち残る自信はねぇよ。」


「儂がここに立っているのは、己自身の意志に他ならない。先帝の信念の一つが、『己こそ己の寄る辺』だろうに。忘れたか?なら、戦いの中で思い出せ。」


 解説しよう。「力愛不二」も「己こそ己の寄る辺」も、少林寺拳法の精神である。


 試合開始。


――――――――――――――――――――――――――――――


 警備員のケヴィンは、赤い襟巻き(マフラー)を巻いて闘争心を増幅させ、【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】の武器である、通称「斧鎌」等と呼ばれる武器を上段に振りかぶって、唐竹気味に振り下ろす。


 牛頭(ごず)の剛力によって繰り出される、その一撃の破壊力は、【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】の場合を遙かに凌駕する。文字通り「桁違い」の威力。だが、速さが足りない。


「まさか、斧鎌を使うとはな。お前まで【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】の思想にでも染まったか?」


 唐竹の一撃を優雅に華麗に(かわ)しつつ、挑発する。


「『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』ってか?武器は武器。有用だから使っているに過ぎないさ。そういえば、先代公爵は【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】に殺られたと聞いたのだが?」


「確かに、マンティコアノイドには毒殺への耐性がある。だからこそ、一族の傍系が、【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】の思想に染まったのだろう。勿論その恥さらし共は粛清済みだ。」


「相変わらず大将は容赦が無いな。勝てる気がしねぇよ。今日は非番だが、病院送りになったら、警備員の仕事にも支障を来すだろうしな。」


 警備員のケヴィンが、投了して試合終了。


「勝者、ネメシス・ダムド!」


――――――――――――――――――――――――――――――


 試合終了後、選手控え室にて。


「そうだ。餞別としてこれを送っておこう。大将が帝位に就いたときに役立つだろうからな。」


 餞別の品は、【牛骨の冠】。よく美術室に飾ってある、デッサン用の牛骨をオリハルコン、ミスリル、ヒヒイロカネ、アダマンタイト等を鍍金(メッキ)塗装して、補強したものを想像すれば分かり易いかも知れない。


「有り難く頂戴するが、少し気が早いのではないか?」


「まぁ、大将ならきっと優勝できるだろうと信じてるぜ。」


┌──────────────────────┐

│警備員のケヴィンとの戦闘に勝った。     │

│ネメシス・ダムドは、【牛骨の冠】を入手した。│

└──────────────────────┘

対戦相手を、干支の順に、「子丑寅卯辰巳馬未申酉戌亥」として、

トーナメントを組もうとすると、トーナメントの参加者数は、

2の12乗=4096人となってしまい、これは流石に多過ぎでしょう。

そういうわけで、次回は、いきなり決勝戦に進出決定。

更新は、7月頃を予定。

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