第52話 「エネルギーヴァンパイア」と「努力教」
この作品はフィクションであり、
実在の人物・団体には一切関係ありませんが、
今更ながら、本作品は社会風刺が強めの作風です。
特に、今回はかなり皮肉的な側面が強いので、苦手な方は、ご注意を。
ネメシス・ダムドは、双子の叔父である【死神兄弟】と対峙していた。この二人も獅子の体に、蝙蝠の翼と蠍の尾という、【マンティコアノイド】であり、マンティコアから進化した【魔人】なのだが、同時に【活力吸鬼】としての特性を有するため、獅子の体よりも蝙蝠の翼の方が発達していた。
しかし、彼等は【活力吸鬼】の武器である、斧と鎌を足して2で割ったような武器―以降、「斧鎌」と呼ぶ―を持つ。即ち、「斧鎌」を振り回せる程度の筋力は有している。
双子の一方である、デス叔父さん―タナトス・ハデス―が、「死神」の名に相応しいその武器を上段に振りかぶって、唐竹気味に振り下ろす。
「チェスト~ッ!死になァ・・・ニャ?!」
示現流の叫び声とともに「斧鎌」が振り下ろされた場所には、ネメシス・ダムドの姿はない。既に、【縮地】で相手の懐に潜り込んでいた。
刹那、ネメシス・ダムドの拳が、デス叔父さんの顔面にめり込んで、陥没させると、タナトス・ハデス・ディアヴォロスは、その最期に絶叫を残して息絶えるのであった。
「愚劣・・・」
「卿!」
「覇!」
「オォォォン・・・」
ネメシス・ダムドは、相手の戦闘経験の乏しさを嗤う。自ら前線に立つことのない者に大将の資格はない。
双子の他方である、ヘル叔父さん―タルタロス・アビス―が、相棒を呼ぶが間に合わない。既に、ネメシス・ダムドは、再び【縮地】を使い、相手の懐に潜り込んでいる。
そして、同様にヘル叔父さんの顔面にめり込んだネメシス・ダムドの拳は、タルタロス・アビスの顔面を陥没させ、絶命させるのであった。
「ぼ~け~が~。」
そして、吐き捨てた言葉には、「呆け」と「傍系」が掛けられていた。
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噂の兄弟、【死神兄弟】を瞬殺したネメシス・ダムドは、双子の叔父の遺骸に金属の鎧を着せて、湖の水底に沈めて埋葬しておいた。
何故なら、【活力吸鬼】は、不死化して、再び襲ってくる可能性があるからだ。もし、そうなった場合は返り討ちにして、次は地底湖に沈め、それでも復活してくるのであれば、最終的には溶岩湖に沈める他あるまい。
「次の相手は誰だ・・・何者だ?」
「俺の後ろに立つなってか?相変わらずだな。」
現れたのは、「蜥蜴人間」や「龍人」とでも形容すべき者。その種族は、「トロオドン」という肉食恐竜から進化した、【恐竜人間】。かつては「トロエドン」と表記する書籍もあったが、ウムラウトではないので、「トロオドン」が正しい。
「気配を殺したつもりだろうが・・・お見通しだ。」
「何故気付いた?」
「影の動きだ。」
「影の動きか・・・。」
そういえば、つい最近まで憑依していた少年と決闘した、陰陽術士の家系の少年も、この技を使っていたな、と思い出す。
「よう来た、よう来た友よ。それで、何の用だ?ドンザ・ウルス。」
【恐竜人間】の青年の名は、ドンザ・ウルス。恐竜の命名には、よくラテン語やギリシャ語由来の単語から付けられるが、「ドン」は「歯」、「サウルス」或いは、「ザウルス」は「蜥蜴」である。
例えば、「イグアノドン」は「イグアナの歯」、「プテラノドン」は「翼が有って歯が無い」、「ティラノサウルス」は「暴君蜥蜴」、という意味になる。
「【死神兄弟】を斃したのか。」
「【活力吸鬼】だから蘇生してくる可能性は否めないがな。」
「【活力吸鬼】が跋扈しているのも確かに問題だが、【努力教】の連中の活動も、最近活発になってきていやがる。」
「エネルギーヴァンパイア」と「努力教」。前者が「自分たちに出来ないことは、お前にも出来ない。」と言って、決めつけてくる様な輩だとすれば、後者はその逆で、「自分に出来たのだから、お前にも出来るだろう。」と言って、自分達の基準を強要してくる連中なのだ。
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では、この連中の活動が何故問題となるのであろうか。連中にとって、自分達の基準を満たすことは当たり前であり、基準を満たさない輩は、人として認めない、という差別をする。
例えば、「社会人」という単語は、本来、「社会の一員」を意味する。でも、【努力教】の連中が「社会人」という単語を「会社員」という狭義の意味で用いたと仮定しよう。
「社会人」=「社会の一員」
「社会人」≒「会社員」
努力教の教徒は、この「≒」を「=」で解釈する。すると、三段論法により、「会社員」=「社会の一員」となる。
ここで、どのようなものでも構わないが、例えば、農家などの個人事業主を想像しよう。この人物を仮に「Aさん」とする。
「Aさん」≠「会社員」
「会社員」=「社会の一員」
三段論法により、「Aさん」≠「社会の一員」という結論を得る。従って、「Aさん」は社会から排除されてしまったのである。
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更に、努力教の教徒は、極端な輩になると、「役に立たない学問は必要ない」等と発言するようになる。
その学問に従事している人間は少なからず存在しているのだから、極論すれば、「役に立たない人間は必要ない」という危険な思想に繋がるのである。
すると、「役に立たない人間」と思われたくないから、本当は分かっていないことを分かっているふりをしたり、出来ないことを「出来る」と言ったりする者が出てくる。
大学で企業の採用活動に応募する際、「面接で盛るのは当たり前ですよね。」とか言っている輩がいた。
大学は、自分を実力以上に見せるような嘘を言って、「人を騙す能力」を育てる場所なのであろうか。
自分を実力以上に見せるような輩は、自分の体を実際以上の大きさに見せる、と言う意味において、「エリマキトカゲ」の様なものだ。
そして、この世界では、そのような輩は本当に「エリマキトカゲ」になってしまうのである。つまり、努力教の教徒は、その殆どが「エリマキトカゲ」である。
こういう「エリマキトカゲ」が、実際に現場で仕事が出来なかったとき、それは「努力が足りないから」だという根性論で片付けられ、真の理由が省みられることはない。
こうして、悪循環に陥って、生産性は下がっていき、所謂、「ブラック企業」なる組織が誕生する、という仕組みである。
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「ウルス。努力教徒の連中は何を企んでいやがる?」
「ドンザ・ウルス」の名は、「ドンザ」が名字というか、称号みたいなもので、「ウルス」が名前に相当するという。【恐竜人間】の中でも汎用性の高い名前なので、「ウルス」と名乗る者は多いが、「ドンザ」を冠する者は、階級が高いので殆ど存在しない。
階級的には、【マンティコアノイド】におけるディアヴォロス公爵家に相当し、ネメシス・ダムドとドンザ・ウルスには、種族の垣根を越えた交流があった。
「努力教の総本山であるイグアナス教会のある領地では、領民に『布施』という重税を課しているそうだ。領民からは、『大量の布施をしているにもかかわらず報われない』という声が上がっているのだが、努力教側は『それはお前の信仰心や努力が足りないからだ』と言って、逆に布施を要求する始末。そして、その使途としては、努力教の上層部が『布教』と称して外遊した際、バラ撒いているそうだ。」
情勢が分かりにくければ、日本に置き換えて考えてみよう。もし、日本人に重税を課しながら、海外で金をバラ撒いている政府があったとしたら、それは一体何処の国のための政府だろうか?
外国人は陰では密かに「日本は世界のATM」だと囁いている。親日感情が強いのは、単に「金払いがいいから」ではないのか?いつまで、そうやって搾取され続けなけらばならないのか?
外貨準備高だから問題ない?ある国は円借款を返せずに債務帳消しにした。そういう前例があるんだけど?或いは、軍事力にものをいわせて踏み倒されたら?
ゑ?国難だから海外との連携が重要だって?でも、本当に国難だったとしたら、まず「外政より内政」ではないのか?今こそ「日本人の日本人による日本人のための政治を!」と声を大にして言いたい。
「努力教の上層部の本質は、『人を騙す能力』。搾取されている領民は全く疑問に思わないのか?それに、外遊して国内資本をバラ撒いているのだとしたら、玖球帝国の民としては、そのような売国奴には制裁を加えねばなるまい。」
さァ、制裁の時間だ。
日本語には役割語というものがあって、
例えば、登場人物が多いとき、口調を変えることで、
どの登場人物が喋っているのか明確にするという手法がありますが、
やり過ぎると、変な語尾の登場人物が出て来ますね。
実際に検索すると、おかしな具体例には枚挙に暇がありません。
それが、今回の登場人物名の由来ですが、勿論、変な語尾にはしません。
揶揄する意図はなくても、台詞を発する度に、「歯」とか「蜥蜴」とか
言っていたら、違和感の塊になってしまうので。
次回更新は6月頃を予定。




