表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第伍章 玖球(クーゲル)帝国の過去編
51/120

第51話 噂の兄弟、【死神兄弟】―デス叔父さんとヘル叔父さん―

玖球クーゲル帝国の過去編。本章は、3人目の主人公格である、

【マンティコアノイド】という魔族の魔人、

「ネメシス・ダムド」の視点で進行します。

前章とは逆に、黒冗句ブラックジョークが多い展開の予定。

 ここは、【玖球(クーゲル)帝国】。時は、郡山青年が荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)に転移する約10年前。


 玖球(クーゲル)帝国は、表の世界における九州・琉球と台湾に相当する。そこは、理外の民とも呼ばれる、複数の【魔族】からなる連合国家である。

 だからこそ、歴代の統治者には、様々な【魔族】の種族や部族の中から、それらをまとめるだけの実力を有する者を【評議会(クリルタイ)】で選ぶ。過去に何人もの統治者を輩出した名門の家系は存在するが、世襲制ではないのだ。


 玖球(クーゲル)帝国の頂点は、『皇帝』であり、【魔族】の王、即ち、『魔王』でもある。その座に就いた者は、自らの称号を自由に決めることが出来る。『皇帝』と名乗ってもよいし、『魔王』と名乗っても構わない。


 ここ最近は、「大」、「魔」、「皇」、「帝」、「王」の中から2~4文字を組み合わせて、名乗ることが多い。

 例えば、『大帝』。或いは、『魔族皇帝』。とはいえ、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)と紛らわしいので、重複を避けるため、【大皇(おおきみ)】とは名乗らない。


 先代の『帝王』、先帝が病に(たお)れ、失脚したこの年、【評議会(クリルタイ)】では、武闘会が開かれることになった。

 武闘会は、トーナメント方式で行われる。その優勝者が、百万年の歴史を踏みしめた大地から聖剣を引き抜くことが出来れば、新たな玖球(クーゲル)帝国の頂点となる。


 あくまで儀式ではあるが、統治者として不適合者であれば、聖剣を引き抜くことは出来ないらしい。

 その場合は、準優勝者が、同様の儀式を行い、資格を満たせばその座に就くことになる。


――――――――――――――――――――――――――――――


 以下は、常井学長の講義からの引用である。



 東洋の『(りゅう)』と、西洋の『(ドラゴン)』。洋の東西をこの世界では、二通りの漢字で区別している。

 前者は、蛇を基盤として、水を司り、自然との共生を象徴する。後者は、蜥蜴を基盤として、蝙蝠の翼が生えており、火を吐く炎の化身で、征服するべき対象という自然観である。


 しかし、この世界には厳密な意味での西洋的な(ドラゴン)も東洋的な(りゅう)も確認されてはいない。

 【八岐大蛇(やまたのおろち)】は、蛇を基盤としている点では、『(りゅう)』に近いが、火を吐くという点では、『(ドラゴン)』に近い。


 (ドラゴン)(りゅう)がいないこの世界で生態系の頂点に立つのは、マンティコアや、マンティコアから進化した魔族の獣人、【マンティコアノイド】であり、別名【(りゅう)無き世界を統べる者】とも呼ばれている。


 ここで、魔素生命体の分類について、復習しておこう。人語を理解できる【魔族】、人語を理解できない【魔物】。後ろ足二本で直立歩行が可能な【魔人】、不可能な【魔獣】。


 マンティコアは、四足歩行なので【魔獣】に分類される。獅子(ライオン)の体に、蝙蝠の翼と蠍の尾。ギリシャ語で「人喰い」を意味する「Μαντιχωρας(マンティコラス)」に由来する。

 マンティコア自体の知能は一般的には低いのだが、稀に知能の高い個体には人語を解するものがいた。上記の分類だと、通常種は【魔物】、希少種は【魔族】となる。


 やがて、四足歩行だったマンティコアは、世代を経て後ろ足二本で直立歩行が可能な【魔人】、【マンティコアノイド】へと進化する。

 それは(あたか)も、四足歩行だった猿が、後ろ足二本で直立歩行して、人族へと進化するが如く。


 【マンティコアノイド】の外見について、想像することが難しい?まずは、四足歩行の獅子(ライオン)が、後ろ足二本で直立歩行した、獅子(ライオン)の獣人を想像しよう。剛毅な獣王といったところか?

 そこに蠍の尾が生えていて、蝙蝠の翼は、外套(マント)の様に纏う。高貴な吸血鬼(ヴァンパイア)を想像しよう。剛毅にして高貴。それが【マンティコアノイド】という魔族の頂点なのだ。


――――――――――――――――――――――――――――――


 【玖球(クーゲル)帝国】は、複数の【魔族】からなる連合国家であるが、その頂点である、【魔族】の『皇帝』、『魔王』、『帝王』といった存在を何人も輩出してきた名門の家系がある。


 造物主がこの裏世界を創造した際、西洋では【悪魔】と呼ばれる堕天使が3柱ほど、亡命してきて、裏世界の創造に関与した、といわれており、その末裔であるといわれている、ディアヴォロス公爵家もそういった名門の家系の一つである。(ちな)みに、「διαβολος(ディアヴォロス)」はギリシャ語で「悪魔」という意味である。


 この年、先帝と同様、ディアヴォロス公爵家当主も病に(たお)れた。その次期当主となるべき嫡男の名は、ネメシス・ダムド・ディアヴォロス。

 しかし、その者は、異端児、型破り、破天荒といった存在であった。(ちな)みに、「Νεμεσις(ネメシス)」というギリシャ語は、元来は「義憤」の意であるが、よく「復讐」と間違えられる。


 ネメシス・ダムドは、好戦的な性格の武闘家であり、小隊(パーティ)を組んで、自警団の如く、街の治安を乱す輩を自ら先頭に立って、狩って回り、食堂で食い逃げをした浮浪者を全力で叩きのめした、といった噂から、強盗団を壊滅させた等の実績まで、武勇伝は枚挙に暇がない。そういう意味では民衆の支持を得ていた。上品さよりも力による正義を優先させる傾向は、決して貴族らしい者ではなかったが。


 また、視察という目的で、思念体のみではあるが、表世界の日本へ転移を行い、現地で、いじめに悩んでいた十歳にも満たない少年が、自殺しようとしていた、その自殺未遂の現場で、彼と契約を行い、その少年に憑依し、いじめっ子狩りを愉しんでいたら、陰陽術士の家系の少年と交戦する羽目になったりしたこともあった。

 激しい死闘の果てに、共通の敵の前に彼等が友誼を結ぶと、


「儂は強敵と闘う為に武者修行の旅に出る。いずれまた会おう。」


と言い残し、本体のある玖球(クーゲル)帝国に帰還した。上昇志向の強いあの少年は、今頃どこまで強くなっているのだろうか。


――――――――――――――――――――――――――――――


 彼が帰還した理由とは、先帝が病に(たお)れ、失脚したこの年に、次代の統治者を決める武闘会が開かれるので、それに参加する為である。


 だが、その前に公爵家の次期当主としての地位を盤石にするために、降りかかる火の粉は払わねばならない。


 傍系からの干渉を叩き潰す必要があった。噂の兄弟、【死神兄弟】―デス叔父さんとヘル叔父さん―。


 先代公爵の弟で、ネメシス・ダムドとは同年齢の双子の叔父である。タナトス・ハデス・ディアヴォロス。通称、デス叔父さん。タルタロス・アビス・ディアヴォロス。通称、ヘル叔父さん。


 (ちな)みに、「Θανατος(タナトス)」は、ギリシャ語で「死の神」、「Ταρταρος(タルタロス)」は、ギリシャ語で「奈落の神」、という意味である。


 あの双子の叔父は、ネメシス・ダムドが貴族らしい上品さに欠けるとか、そういう嫌味や皮肉を頻繁に言ってくる。だが、逆に彼から見れば、己の信念を持たず、同調圧力に迎合するだけのヘラヘラした連中に過ぎない。


 現在、玖球(クーゲル)帝国では、そういう者が跋扈するようになり、社会問題となっていた。彼等のような者は、【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】と呼ばれている。


 【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】は、「自分たちに出来ないことは、お前にも出来ない。」と言って、個人の活力(エネルギー)を奪う略奪者である。


 例えば、「数学や物理は何の役に立つのですか?」とか「学校での勉強など社会に出たら何の役にも立たない」と言って、自分が理解できないものは、社会の役にも立たないだろうと決めつける奴がいたら、それは【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】である。


 この手の輩は、反知性主義者とも呼ばれる。元々は、「反・知性主義」で、知識層への反発が原義だったのだが、最近は、「反知性・主義」で、知性そのものへの反発になっている。人は、知性を得て、猿から進化したというのに、その知性を自ら否定するのは、猿への退行に他ならない。



 このような問いに対しては、例えば、電磁気学の草創期に


「電磁気学が何の役に立つのですか?」


と聞かれたファラデーなら、


「生まれたばかりの赤ん坊が何の役に立つのかなど、

誰が分かるというのですか?」


と言うだろうし、


「幾何学を学ぶとどのような得がありますか?」


と質問されたユークリッドなら、


「この者に小銭を数枚あげなさい。この人は学問をしたら、

何か得をしなければならない、と思っているようだから。」


と返すだろう。



 或いは、反知性主義者以外にも、「お前はゆとり世代だからそんなことも知らないのか?」とか、「背伸びして専門書を読むとか中二病かよ。」と言って、見下す連中も【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】に該当する。


 そのような者が社会に溢れたらどうなるだろうか?社会全体の生産性が低下してしまうだろう。


――――――――――――――――――――――――――――――


 ネメシス・ダムドは、【死神兄弟】―デス叔父さんとヘル叔父さん―と対峙していた。


「は?武闘会に出る?お前が皇帝になる?無理無理。」


「そうそう。公爵家の次期当主の地位だって、貴族らしくないお前には相応しくないんだよ。」


「今からでも公爵家の次期当主の地位を我々に譲り渡しな。」


「武闘会で惨敗してディアヴォロス公爵家の恥をさらす前にな。」


「・・・・・・。言いたいことはそれだけか?貴様等【活力吸鬼エネルギーヴァンパイア】こそ、ディアヴォロス公爵家の恥さらし。ここで消えてもらおう。」


 さァ、粛清の時間だ。

以前、翻訳サイトで「nemesis damned」を和訳したら、

「有名人」と訳されたのですが、

現在は、「宿敵のせい」と訳されるようです。


※【マンティコアノイド】は、

本作の世界観における、独自の種族です。


発想の経緯:最強の生物であるはずのドラゴンだが、

殆どの異世界小説では、かませ犬扱いになることが多い。


→本作の世界観では、この世界に明示的な、

ドラゴンりゅうは存在しない。


→では、ドラゴンりゅうが存在しない

この世界で生態系の頂点に立つのは?


→「マンティコア」。

しかし、これも登場する作品こそ少ないが、

殆どの異世界小説で登場する場合は、

やはり、かませ犬扱いになることが多い。

それは、何故だろう?


→マンティコア自体の知能は一般的には低いらしい。

しかし、稀に知能の高い個体は人語を解するとか。


→四足歩行だった猿が、後ろ足二本で直立歩行して、

人族へと進化して、知性を得たように、

マンティコアを進化させよう。


→【マンティコアノイド】。

蝙蝠の翼と蠍の尾が生えた獅子ライオンの獣人。


→蝙蝠の翼は、魔族や吸血鬼ヴァンパイアを、

獅子ライオンの獣人は、獣王を彷彿とさせる。

両者を兼ね備えると、「魔王」の風格。


→【病みエルフ】と【幽合】した【幽者】は、

「勇者」になぞらえているので、

丁度いい具合に、対となる存在でもある、

という連想から。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ