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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第肆章 過去の記憶編
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第48話 鉄の絆、血の契約

この作品はフィクションであり、

実在の人物・団体には一切関係ありません。念の為。


但し、今回も鬱展開シリアス要素の傾向が強いので、

鬱展開シリアスが苦手な方は、飛ばすことをオススメします。

 背後から忍び寄り、襲い掛かろうとする少年達。


「お見通しだ。」


 しかし、夕陽に背を向けた郡山少年は、影の動きを読んでいた。この技は、弓削少年から教わって、早速習得したものである。


 背後に放たれた蹴りが炸裂し、背後から襲い掛かろうとした少年は、想定外の反撃を受け、腹を押さえて苦悶する。


 一方、弓削少年の方は、自転車に乗り、自転車に乗って逃げる持ち物を奪った少年を追い掛ける。


「ヒャッハー!」


 左手で自転車を運転し、右手に持った傘で相手を突く。それはまるで、馬に乗った騎士が槍で相手を突くかの如し・・・・・・何処の騎馬民族だろうか?


「寄越しな。」


 そして、傘を反転させて、取っ手の部分を引っ掛け、奪われていた鞄を鮮やかに取り戻すのであった・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――


 郡山少年は、弓削少年から復讐の愉しさを教わった。そして、二人はいじめっ子狩りを愉しんでいた。


 悪口を言われたり、暴力を振るわれたりした相手を記憶しておき、点数を加算して記録しておく。そして、点数が一定以上溜まったら、その相手に


「今日はお前の番だからな、覚悟しておけよ?」


と事前に警告し、塾帰りに制裁を加えるのだ。


――――――――――――――――――――――――――――――


 そして、本日の制裁が終了すると、本屋に寄って立ち読みをするのだ。時刻は、夜21時過ぎである。当時の時代背景を鑑みれば、不良小学生と言っても過言ではないだろう。


 弓削少年が本屋の入り口に貼ってあった脳筋塾の広告に気付く。



「オイ、見ろよ。こんな所にも脳筋塾の広告が貼ってあるぜ。そのうち、台形の面積公式を教わらなくなるらしいぜ。」


「ああ。『上底足す下底掛ける高さ割る2』、だろ。分配法則で二つの三角形に分割できるからな。それより、『円周率が3になる』の方が問題だろ。直径が8cmなら、円周が25.12cmと24cmで1cm以上の差が出るぜ。」



 算数が得意な郡山少年は、算数選抜の講座を受講する資格を得る程である。



「お前算数得意だからな。算数選抜の講座出られるんだろう?そういえば、今回、模試で全国100位以内で特待生になった奴、何故か公表されてないけど、君だろう?」


「確かに俺が特待生になったけれど、そうしたら、何故か教室長が箝口令を出したんだ。」


「あいつは、今年から転任してきたけど、君のことが目障りみたいだからな。何かと都合が悪いんだろうよ。」


「ああ。俺に塾を辞めろと脅してきた。存在そのものが他の生徒の迷惑になるらしい。毎回呼び出して、暴力を振るってくるんだ。」


 今日も教室長は、郡山少年を呼び出し、暴行を加えていた。


――――――――――――――――――――――――――――――


 教室長は、パンチパーマで、ゴリラか熊のような体格をしている。加虐趣味(サディスティック)なオラオラ系の俺様系。小児性愛者(ペドフィリア)で、生徒の前で演説をする際の内容が下世話である他、「有意義な時間」と称して、ストレスを解消するための捌け口として、生徒を呼び出し暴力を振るう。

 手始めに、髪の毛や胸倉を掴み、何度も壁に叩き付けるなど、彼が、小学生に暴行を加え、虐待するという、その凶暴な素行は、鬼畜外道そのものである。


 また、明治維新の頃の先祖が貴族院の議員と遠い親戚関係だったらしく、その権力を背景に塾の卒業生を娼館に斡旋している、という噂もある。しかも、彼の背後には、指定暴力団かどうかは定かではないが、ヤクザの関係者がいる、という噂もある。


 但し、平安時代の頃にまで遡ると、当時の先祖は国司だったらしく、弓削氏とは仇敵同士の関係にあるためか、弓削少年に直接手を出すのは避けている傾向があるようだ。


 郡山少年が最初に虐待を受けた日の記憶である。


 ドグシャ!ボコボコボコ!バキッ!


「俺がこうやって暴れるのは初めてかァ?」


 ドグシャ!ボコボコボコ!バキッ!


「オラァ!けじめをつけろ!けじめを!」


 ドグシャ!ボコボコボコ!バキッ!


「俺達ゃ、教育者じゃねぇから、何やったっていいんだよ!」


 ドグシャ!ボコボコボコ!バキッ!


「俺はなァ、お前みたいな奴は、もう既に三人ぐらい塾を辞めさせてんだよ!」


 ドグシャ!ボコボコボコ!バキッ!


――――――――――――――――――――――――――――――


 その日、塾の帰りに郡山少年は、踏切に来ていた。


 自殺しようとした瞬間、偶然通りかかった弓削少年が、彼を背後から羽交い締めにした。


 無言で呆然とした様子の郡山少年を連れて、弓削少年が行ったのは、当時開店したばかりの百円均一であった。


 二人は、十徳ナイフを買った。夜に小学生がそんな物騒なものを買っているというのに、店員は確認さえせずに会計が完了する。


 その帰り、裏路地にて、弓削少年は、郡山少年の首筋にナイフを突き付ける。


「いいか?どんな奴でもナイフを急所に刺せば死ぬ。分かるだろ?」


 実は、弓削少年は偶然通りかかったのではなかった。郡山少年が教室長に虐待されたのを見ていた弓削少年は、郡山少年の様子がおかしいのを見かけて尾行していたのだ。

 精神的に追い詰められていた郡山少年がその尾行に気付くことはなかったが、後に、郡山少年は、弓削少年から、影の動きを読んで背後の敵を索敵する、というこの技を教わることになる。


「奴が憎い・・・。」


 これまで、郡山少年は周囲の大人にはある一定程度の信頼は置いていた。それが、今日この瞬間に完全に崩れ去って、殺意が溢れ出す。


「奴は暴力団かもしれない。」


 弓削少年がその憎むべき宿敵の正体について示唆する。


「俺達はまだ小学生だ。あのゴリラに腕力では敵わない。武器は絶対に必要だから持っていた方がいい。」


「武器があっても、一対一では敵わないだろう。」


「だから、これからは極力二人でツルんでいた方がいい。俺達のどちらかが危険に陥ったら、もう一人が必ず助ける。互いの血を交換して、それを約束することにしよう。」


「【アンダの誓い】か。」


 中世のモンゴルには、「アンダの誓い」という、互いの血で入れ墨をする習慣があったらしい。後にチンギス・ハンとなる、テムジンが、彼の好敵手(ライバル)であるジャムカと「アンダの誓い」を結んだように。


「これが俺達の絆を結ぶ、【血の契約】だ。」


「かつて、プロイセンの宰相ビスマルクは、富国強兵に必要なのは、鉄と血、即ち、武器と兵士だと言った。俺達の場合は、『鉄の絆、血の契約』といったところか。」


 こうして、二人の一匹狼は、共通の敵を前にして、好敵手(ライバル)同士が共闘することになるのであった。

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