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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第参章 蝦夷共和国編
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第39話 【祟りの凶杖】

 アッシュ少年、ソーン少年との二連戦を制した弓削青年に、模擬戦の審判であり、サンケベツ村の村長でもある、ヨッホから提案がある、という。


「君はまだ若いのに、随分と戦闘経験が豊富なようだ。その技量を見込んで、この周辺の生態系に異常が見られる件についての調査を頼みたい。依頼書には表向き、別件の依頼が書かれているが、それも出来る限り、同時に達成してくれると有り難い。」


――――――――――――――――――――――――――――――


[蒐集依頼] スㇽクなどの薬草の蒐集

・場所:サンケベツ村周辺

・条件:出来高制。スㇽクを中心に、

それ以外の薬草も極力蒐集すること。

但し、乱獲はしないこと。

・報酬:鑑定の結果による


――――――――――――――――――――――――――――――


[討伐依頼] パㇱクㇽの討伐

・場所:サンケベツ村周辺

・条件:乱獲はしないこと

・報酬:1羽につき銀貨3枚


――――――――――――――――――――――――――――――


 単純に、「周辺の生態系の異常に関しての調査」とすると、内容が漠然とし過ぎているし、「原因の特定」、()しくは、「原因の解消」とすると、手に負えない。


 (ちな)みに、surku(スルク)は、アイヌ語で「トリカブト」、paskur(パシクル)は、アイヌ語で「カラス」であることを鑑みると、郡山青年と同時期に同様の依頼を受諾していることになる。


 蝦夷(えぞ)共和国にも、【都市探索協会】はあるが、【都市探索協会】自体は、超国家的な組織ではなく、あくまで、それぞれの国家に属する組織である。


 それは、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の【都市探索協会】に関しても同様だが、報酬に関しては両者である程度の統一性を持たせることで、一方の国で受諾した依頼を他方の国で達成扱いにすることも出来る。


 但し、一方の国では合法でも、他方の国では違法となっている、薬草や薬品があることには、注意が必要である。例えば、この世界では、チーズやニンニクなど、臭いの強い食品は違法となっている。


 もし、他の異世界から次元の歪みでこの世界に転移した場合、異世界小説では定番の食品群でも、持ち込みは不可能となる。


――――――――――――――――――――――――――――――


「俺は今、所属している別の組織の任務でこの地に赴いている。掛け持ちが不可能だとまでは言わないけれど、あくまでそちらの任務を優先するという条件で構わないのなら。」


「未達成による不利益(ペナルティ)はないが、調査の途中経過の報告は欲しいですな。」


「正直、報酬は割に合わないけれど、依頼内容自体は、俺の現在の任務内容とも重複している部分があるので、引き受けますよ。」


「報酬がは割に合わないという点に関しては、報酬になるかは分からないが、我々のとある儀式を行って頂くことは可能かな?もし成功すれば、戦力の大幅増強になるだろう。未だかつて誰も成功してはいないのだが、魔力の高い君なら、成功する可能性もかなり高そうだ。」


「まあ、興味もありますし、時間が掛からないなら。」


「おっ、儀式って、あれをやるのか。なら、俺も挑戦するぜ。今日こそ成功するかも知れない気がするからな。」


「アッシュよ。君は何度も挑戦しているが、全く成功する気配すらないではないか。だが、まあ良かろう。」


――――――――――――――――――――――――――――――


 地下室にやってくる。松明に照らされた部屋の中心にある台座の上に、禍々(まがまが)しい杖が置かれている。


 アッシュ少年が先に挑戦したい、というので様子を見る。アッシュ少年が杖を持ち上げようとするのだが、杖は微動だにしない。暫くすると、アッシュ少年の手がかぶれてくる。


 ソーン少年も試してみたい様子だったので、順番を譲ってみる。全開の魔力を纏った状態で持ち上げようと試みるが、同様の結果に終わる。


 ヨッホ村長の話によると、この杖の名称は、【祟りの凶杖】といい、彼の知人がこの杖の制作者らしいのだが、この場所は元々、彼の工房だった。

 彼は気まぐれにこの杖を制作し、【刻印術】によって、何らかの術式をこの杖に付与した後、所有権を放棄したままその姿を消したという。


 最初にこの杖を盗み出そうとした盗賊がいたのだが、全く持ち上がらず、その手がかぶれてしまったという。

 それ以来、この杖を所有しようと、多くの者が挑戦したが、適合者は現れなかったらしい。というか、未だに適合者は現れず、杖は放置されたままだという。


 弓削青年はその様子を見て合点したかのように、ニヤリと(わら)う。まず、青白い魔力を纏い、それを全開にして蒼炎を纏う。魔力を全開にしているため、青白い稲妻が周囲に(ほとばし)る。

 そして、台座からは、ある程度離れた位置に立ち、禍々(まがまが)しい杖の方に向けて、その手をかざす。


 すると、禍々(まがまが)しい杖が、杖の方から自ら弓削青年の掌に飛んできた。しかもその手は全くかぶれていない。


「魔漆に八咫烏の風切羽、そして、ヒヒイロカネの刻印か。この杖の制作者に関しては、心当たりがある。その者はこのように考えただろう。『杖の主となるに相応しい者は、この杖を欲して自ら手に取ったりはしない。真にこの杖の所有者として相応しい者であれば、杖の方から自ら馳せ参ずる筈であろう。』とな。」


 そう、弓削青年が所属している組織の名は、政治結社【草茅危言】。そして、この杖の制作者は、(マイスター)・ブルクドルフ氏。彼もまたこの組織の一員であり、彼こそ、弓削青年に今回の任務を与えた張本人でもあったりする。


 彼は勿論予想していたであろう。ここで弓削青年が【祟りの凶杖】を入手することを。或いは、単純に以前この杖を制作したことを忘れていた可能性もあるのだが。


 そして、【祟りの凶杖】を入手した弓削青年は、サンケベツ村周辺の生態系の異常に関しての調査へと赴くのであった。

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