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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第参章 蝦夷共和国編
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第36話 サンケベツ村

 (ヒグマ)が襲われていた、三人の【蝦夷(えぞ)エルフ】の少女を助けた弓削青年は、任意同行を求められる形で、サンケベツ村に連行される流れとなった。


 道中、三人の【蝦夷(えぞ)エルフ】の少女が名乗る。赤い服を着た、一番背が高い少女の名前は、エテル。緑の服を着た、中ぐらいの背の少女の名前は、ウィン。青い服を着た、一番背が低い少女の名前は、エズ。


「俺は、弓削泰斗。」


「ユゲタイさん?」


 待て、「ト」は何処に行った?


「短命種は、【祟りの子】。名前などあるわけがないでしょう。」


「確かに、この名前はこの身体(からだ)の持ち主である、【病みエルフ】自身の名前ではなく、【幽体融合】した精神の方である、異世界人の名前だ。」


「【幽体融合】?」


「略して【幽合】ともいう。【幽合】した者は【幽者】とも呼ばれる。」


「【幽者】?『勇者』ではなくて?」


「この短命種は、自身の魔力に酔って、精神まで狂ってしまったのでしょう。」


 随分辛辣な評価だな。次回この連中が魔獣に襲われたとしても、見殺しにして助けない、という選択肢も有り得るかも知れないな。


――――――――――――――――――――――――――――――


 サンケベツ村に到着すると、青い服を着た村長が出迎えにやって来た。


 三人の【蝦夷(えぞ)エルフ】の少女が、部外者を連れてきた経緯を説明する。


「はじめまして。サンケベツ村へようこそ、客人の【幽者】殿。儂は村長のヨッホ。この度は、村の者が(ヒグマ)に襲われていたところを助けて頂いたとか。世話になったようで、感謝する。その上、肉と毛皮まで下さるとは……。」


 サンケベツ村は、閉鎖的な村のようだが、村長は、まだ常識的な方の人物のようだ。


 左右に太刀持ちと露払いの如く侍る二人の少年の一人は、


「爺さん。折角の肉だ。今晩は宴にしようぜ。」


とか言っている。赤い服を着た、この少年の名前は、アッシュ。緑の服を着た、もう一人の少年の名前は、ソーン。


 三人の少女は、華奢な外見とは裏腹に、かなりの剛力で、エッホエッホと(ヒグマ)を解体場へと運んでいき、解体を始めた。


「新し~い餌が来た♪」

「所望の餌~が♪」

「悦~びてその身開き♪」


 ここで、猟奇的な解体の歌?の通りに、(ヒグマ)の毛皮がアジの開きの如く包丁で真っ二つに裂かれる。


  ・

  ・

  ・

 中略

  ・

  ・

  ・


「「「その薫~る肉~を開けよ♪それ(シネプ)(トゥプ)(レプ)!」」」


 やがて、(ヒグマ)は解体され、肉と毛皮に変わった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 宴の時間。村長のヨッホが、サンケベツ村の現状を弓削青年に説明している。


 普段山菜採りをしている場所に、本来、この辺りでは出現しない筈の(ヒグマ)が出現したこと、生態系に何らかの異常がある可能性。


 そして、このサンケベツ村の沿革。村長のヨッホが、孤児を引き取り、この村で自給自足の生活をしていること。


 村長のヨッホ自身は、短命種を差別するつもりはないが、短命になる呪い、或いは、呪いよりも強力な祟りによって、突然変異である短命種が生まれたのではないかと考えられ、【祟りの子】と呼ばれる傾向が、昔からあること。


 通常の蝦夷(えぞ)エルフにとって、自分達長命種よりも強力な魔力を有している短命種は、白銀の髪に真紅の眼という、「アルビノ」の外見も合わさって、恐怖の対象であること。

 特に経験の乏しい、若い蝦夷(えぞ)エルフにその傾向が、見受けられること。


 こうして、宴の時間は過ぎていった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 宴の時間が終わると、アッシュ少年が、模擬戦を申し込んできた。


「オイ、短命種(ウェンペ)。アンタ凄ぇな。山の神(キムンカムイ)を瞬殺したって聞いたぜ。オレと勝負しようぜ!」


 (ちな)みに、「wenpe(ウェンペ)」は、アイヌ語で「悪人」とかいう意味の蔑称であるが、このアッシュ少年的には、そこまで悪意はないらしい。


「いいだろう。受けて立つ。」


 この直情径行型の性格をした少年は、どこか過去の郡山少年を彷彿とさせる。弓削青年は、一見すると、寡黙なため、冷静(クール)に見えるが、実際は、かなり好戦的で、当時はよく郡山少年を挑発したものだ。


 闘争本能が疼き、昂ぶる精神(こころ)が、青白い魔力の奔流となって迸り、久しぶりに、血湧き肉躍る闘争ができそうだ、と(わら)うのであった。

サンケベツ村は、三毛別羆事件の三毛別に由来。

村人のモブ6人の名前は、古英語や中英語のアルファベット

œ(エテル)、ƿ(ウィン)、ð(エズ)、ȝ(ヨッホ)、æ(アッシュ)、þ(ソーン)に由来。

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