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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第壱章 都市探索編
19/120

第19話 師(マイスター)・ブルクドルフの過去

回想として、ブルクドルフ氏の過去話。

ブルクドルフ氏側視点の郡山青年との邂逅時の話を追加(2022/07/11)。

 郡山青年が常井氏とともに、政治結社【草茅危言】の基地(アジト)へ帰還した日。


 その同日深夜、ブルクドルフは、今から約120年以上前のことを思い出す。(マイスター)・ブルクドルフの過去。彼が、まだ郡山青年ぐらいの年齢だった頃のことを。


 現在、(マイスター)・ブルクドルフは、多言語話者(マルチリンガル)であり、10種類以上の言語に通じている。独逸(ドイツ)語、英語、仏蘭西(フランス)語、伊太利亜(イタリア)語、西班牙(スペイン)語、ラテン語、ギリシャ語、露西亜(ロシア)語、日本語、アイヌ語、等々。勿論、各言語の習熟度にはバラツキはあるけれども。


 ブルクドルフ青年の故郷は、当時のプロイセンの統治下にあった。田舎から上京し、都会の大学で物理学を学び、論文を執筆するまでに至った。しかし、その論文に書かれた内容は、当時の科学技術を揺るがす危険性を(はら)んでいた。


 その論文を読んだ学者の中には、その危険性に気付き、彼を排除しようとする者がいた。

その学者は、当時の政府の暗部、秘密結社に内通していた。論文は闇に葬られ、ブルクドルフ青年は、何者かに襲われた。


 ブルクドルフ青年も、最初は単なる暴漢と考え、これを返り討ちにした。しかし、追っ手が迫る。ロシア帝国経由で、極東へ脱出した。アイヌ民族の集落(コタン)の中に紛れ込み日本へ。彼は、この時に、アイヌ語も習得している。


 当時の日本政府は、科学技術を教える、お雇い外国人を募集していたから、今度はそれに紛れ込んだ。


 当時の首都・東京の秋葉原付近で、秘密結社が差し向けた追っ手と遭遇し、これと対峙する羽目になる。「もはやこれまで」と思ったそのとき、白装束の着物を着た者が、聞いたことのない呪文のような言葉を唱えると、いつの間にか、追っ手は気絶して倒れていた。


 白装束は鳥居をくぐってその姿を消した。助けてくれた礼を述べるため、そして、気絶した追っ手から一刻も早く離れたかったため、ブルクドルフ青年は白装束の後を追った。そして、鳥居をくぐるとそこは……異世界であった。


 蜘蛛神社にて、巨大な蜘蛛に襲われ、死を覚悟したとき、再び助けてくれた白装束にこれまでの経緯を話すと、この世界の科学技術の発展に寄与することを条件に、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の住人となったのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 そして、現代へ。時は2000年代後半の12月下旬、場所は秋葉原(アキハバラ)


 老朽化が少し進んだビルのエレベーターに、【蝙蝠山卿】という渾名(あだな)の、郡山俊英(としひで)青年が一人で入ったことを確認すると、(マイスター)・ブルクドルフは、彼の影に潜んで、同じエレベーターに入り、その扉が閉まり、動き始めた直後、液体金属状の異物を挿入し、回路を短絡(ショート)させて、エレベーターを停止させる。


「臭化水素酸スコポラミン」


 魔導科学には、魔素を用いて、原子を転移させ、分子を生成する呪文がある。「臭化水素酸スコポラミン」は、かつては目薬、今は酔い止め薬に入っている成分で、抽出し濃縮することで、睡眠薬として使えるが、普段から酔い止め薬を服用している場合には、耐性があったりもする。


 片手で郡山青年を持ち上げ、絞め上げているが、彼には、どうやらこの成分に対する、睡眠耐性があったみたいで、脇腹に蹴りを放ち、抵抗してきたので、鎮圧に時間が掛かってしまったが、何とか気絶させて転移させ、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)のある、こちらの世界に連れ出すことに成功した。


 万世橋駅は、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)の首都、荒脛巾(アラハバキ)の最寄駅であって、かつては、現実世界側にも存在したが、現在は廃駅となってゐる。

 この万世橋駅から、気絶させた郡山青年を、橘樹群稲毛領稲田町宿河原不動にある、【垂直尾翼】の政治結社【草茅危言】の基地(アジト)まで運ばなければならない。


 そこで、この異界の最重要路線を使う。荒脛巾(アラハバキ)の最寄駅の【万世橋】駅の次が、荒脛巾(アラハバキ)に隣接する、荏原郡の行政の中心である荏原区、その最寄駅である、【蛇窪】駅である。【漆番道路】に沿った、環状地下鉄【第漆號地下鉄(メトロズィーベン)】はお乗り換えである。まぁ、今回は乗り換えないが。

 【蛇窪】駅の次は、【新奥沢】駅である。【捌番道路】に沿った、環状地下鉄【第捌號地下鉄(アハトライナー)】はお乗り換えである。今回は、これに乗り換えることにしよう。(ちな)みに、【新奥沢】駅の次は、【野川】駅で、橘樹(たちばな)郡稲毛領の行政の中心である、橘の最寄駅であり、ここでは、川崎市営地下鉄と乗り換えられる。


 さて、【新奥沢】駅で、【第捌號地下鉄(アハトライナー)】に乗り換えたが、下り方面に乗車し、【上野毛】駅の次の【瀬田】駅で、今度はモノレールに乗り換える。

 モノレールに乗り換えて、【宿河原不動】駅で下車し、【垂直尾翼】の政治結社【草茅危言】の基地(アジト)に到着。翌朝、郡山青年が目覚め、物語は始まるのであった。

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