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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第壱章 都市探索編
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第17話 【鵺(ぬえ)】の討伐

 神奈川県川崎市に到着するや否や、「【(ぬえ)】が出た」という警報が発令される。


 【川崎氏】当主が、【陰陽術士】である常井氏に討伐依頼をする形となった。どちらかというと、【川崎氏】当主は、常井氏は客人なので、戦う必要は無いと言ったのだが、常井氏が、自分に討伐依頼を寄越すようにと強く要求した。


 討伐依頼を受理すると、二人は、【(ぬえ)】が出た場所、『新川崎』周辺に移動するため、『川崎市営地下鉄』に乗る。勿論、討伐依頼のため、交通費は経費として、依頼者側が払う。


――――――――――――――――――――――――――――――


[討伐依頼]【(ぬえ)】の討伐

・場所:『新川崎』周辺

・条件:対象の生死は問わない

・報酬:金貨4枚


――――――――――――――――――――――――――――――


 『(ぬえ)』は、頭は猿、胴は狸、足は虎、尾は蛇という説と、頭は猿、背は虎、尾は狐、足は狸という説があり、鳴き声はトラツグミという、日本版のキマイラのような妖怪である。


「【魔物】といっても、分類は多様だ。【代田(だいた)ラボッチ】は、【魔人】に分類されるし、【(ぬえ)】は、【魔獣】に分類される。【魔獣】の駆除は、害獣の駆除に近い。表大和(おもてやまと)では、害獣の駆除は保健所が担うのだろう?」


 害獣の駆除業務は、例えば、ハクビシンを駆除するようなものだろうか。


「業者に依頼する場合が多いみたいですが、公園で犬猫等の死体処理をすることもあるようですね。」


「この国では、【陰陽術士】は国家公務員みたいなもので、害獣の駆除も国家公務員である【陰陽術士】がその一端を担っている。」


 歴史上でも陰陽師は侍や忍者と同様、既に絶滅した職種であり、海外では、侍や忍者は人気があるようだが、実際は、侍や陰陽師は、当時の国家公務員みたいなものであった。


 現在でいえば、宇宙物理学を専攻した者が、国立天文台に勤めるようなものだろうか。


 害獣の駆除業務は、管轄する部署が異なる気もするが、この世界の【陰陽術士】は、何でも屋の様な性質上、請け負うことがあるようだ。


「依頼内容には、『対象の生死は問わない』、とありますが?」


「つまり、【陰陽術】で護符を型紙にして、【魔獣】を封印して眷属化し、自分の式神にしても良い、ということだ。【魔獣】は、【魔素】の塊で、【魔素】の濃淡によって、性質が変わる。生物というよりは、妖怪に近い。【魔素】が薄ければ、幽霊のように壁抜け出来たりするし、【魔素】が濃ければ、存在感が強まり、実体化できる。更に【魔素】が濃い場合、瘴気を放つようになり、耐性の無い者は失神する。」


 そういえば、八岐大蛇(やまたのおろち)の加護によって、瘴気への耐性が付与されたのだった。


「どうやら気付いたようだな。どうだ、今回は君が戦ってみないか?」


 常井氏は、今回は自分は基本的に手を出さずに、弟子に経験を積ませるつもりのようだ。


「君の力、見せて貰おう。」


――――――――――――――――――――――――――――――


 『川崎市営地下鉄』を降りて、現地に着いた二人の眼前に姿を現したのは……レッサーパンダであった。


 確かに最近、古生物学の新たな説として、大型のレッサーパンダではないか、という説があるそうだけれども。但し、現存種とは別の絶滅した種らしいが……。


 猿顔かどうかはともかく、外見は、狸やアライグマに近い部分がある。尻尾の縞模様は虎のようで、その動きは蛇のようでもあり、その体毛のフサフサした感じは狐を想起させる。


「ギィーッ!ギィーッ!ギィーッ!」


 【(ぬえ)】は、後ろ足二本で直立し、こちらを威嚇している。その姿は、大型のレッサーパンダのようだ。但し、その全身に纏う黒紫色の瘴気が無ければ、の話だが。


「顕現せよ、黒キ楯(シュヴァルツシルト)!」


 (ぬえ)が飛び掛かってきたので、影属性の魔術である収納術を使い、己の影から、黒キ楯(シュヴァルツシルト)を顕現させ、(ぬえ)の攻撃を防ぐ。


 (ぬえ)は、黒キ楯(シュヴァルツシルト)に弾かれ、着地寸前で受け身を取ったが、どうやら怯んでいるようだ。


極低温の瘴気(クライオ)!」


 氷属性の奥義である、極低温の瘴気(クライオ)を放つ。物理の実験で使う液体窒素のような冷気が、(ぬえ)の全身に纏う黒紫色の瘴気を霧散させる。


「【重力の(くびき)】の前に(ひざまず)け」


 言靈術(げんれいじゅつ)の効果で威力が増幅された、影属性の魔術【重力の(くびき)】により、(ぬえ)は、己の影に縫い止められる。


 これは、墓地で巨大蜘蛛と交戦した際、大皇(おおきみ)が使用した技を模倣したもので、ある意味、大皇(おおきみ)直伝の技ともいえる。


 常井氏曰く、別名【影縫い】とも呼ばれ、重力を操作する性質から、土属性にも分類されることがあるという。熟達すれば、増幅された重力加速度を可視化して、「木」属性の(いばら)や、「金」属性の鎖や有刺鉄線の他、「土」属性の場合、死者や亡者の手によって、己の影に引きずり込まれる様な絵面にも出来るという。


 (ぬえ)は、既に【瀕死】のようだ。残り体力、即ちHPが1というこの状態以外では、【魔物】を封印することは出来ない。


 【陰陽術】を発動する。「護符」は、カードゲームのカードぐらいの大きさで、裏面に太極図とも呼ばれる、陰陽紋が描かれた、白紙のカードである。

 【魔物】を封印する前の状態を「護符」と呼び、【魔物】を封印した後の状態を「型紙」と呼ぶ。


 (ぬえ)は、纏っていた瘴気とともに、黒紫色の魔素へと変わり、白紙の護符へと吸い込まれていく。


 (ぬえ)級の低級魔獣なら、無詠唱でも封印可能だが、封印対象の場合によっては、呪文を詠唱し、言靈術(げんれいじゅつ)の効果で封印能力を高める場合もある。


「見事だ。鮮やかな手際だったな。」


 こうして、郡山青年は、【(ぬえ)】の討伐という初戦を制し、【(ぬえ)】を眷属化し、自分の式神を初めて手に入れることに成功したのであった。

レッサーパンダの鳴き声は、動画サイトで一応見たけど、擬音語で表現するのは難しいですね。

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