第15話 【第漆號地下鉄(メトロズィーベン)】と【第捌號地下鉄(アハトライナー)】
段落先頭の字下げに伴い、本文改訂時、廃駅、
未成線等の説明を大幅に加筆(2022/06/09)。
異世界三日目。常井氏とは、午前9時に待ち合わせ。今日は本を読みながらの登場ではないけど、まさか、昨日徹夜で読み終えたとかいうことはないだろうね……。
【荏原三角商店街】を出て、【壱番道路】をさらに南下すると、この世界版の「環状七号線」、通称【漆番道路】に交差する。その地下には、【第漆號地下鉄】が走っている。
同様に、この世界版の「環状八号線」、通称【捌番道路】の地下には、【第捌號地下鉄】が走っている。
表世界では、「メトロセブン」と「エイトライナー」という架空鉄道があるのだが、この【第漆號地下鉄】と【第捌號地下鉄】は、その数字を英語読みから独逸語読みに変えただけである。
【第漆號地下鉄】が「メトロセブン」と異なるのは、【漆番道路】沿いの設置駅が、「環状七号線」沿いの東側部分ではなく、寧ろ、かつての「東京山手急行電鉄」の西側部分に近い点が挙げられるだろう。
銅貨5枚を支払い、【第漆號地下鉄】に乗車する。乗車した駅の場所は、現実世界における馬込の辺りだが、この世界での駅名は、現実世界には既に存在しない、【蛇窪】という旧地名―同名の旧信号場だった廃駅もあるが―を冠する駅であった。この世界では、【蛇窪遺跡】の最寄駅という扱いの駅だそうだ。
「命名者は、我が師・ブルクドルフ氏だ。」
「師弟だったんですねぇ……。そういえば雰囲気が似ている気がする。」
「無意識に模範にしているからだろうな。そういえば、君には物凄く才能があるように感じる。どうだ?私の弟子にならないか?」
「申し出は有り難いのですが、学費というか、授業料の問題が発生しますよね?」
実際、いつ表の世界に戻れるのか分からない。金策の手段を考える必要がある。
「【都市探索協会】という、公共職業安定所のような、或いは、ゲームにおける冒険者協会のようなものがある。金策なら依頼を受注すれば良い。私も頻繁に依頼を出しているのだが、直接依頼した方が、仲介料が浮くか……よし、私の弟子兼部下になれ。因みに、この世界では、弟子兼部下のことを【使徒】とも呼ぶ。『使』の部分が、『お使い』の意味で、『部下』のことを指し、『徒』の部分が、『生徒』の意味で、『弟子』のことを指す。弟子であれば、確かに授業料の問題が発生するが、部下には賃金を支払わなければならないから、相殺される。寧ろ、賃金の方が学費を上回るだろう。これならどうだ?」
「業務内容にもよりますけどね。」
「私は君の世界でいえば、文部卿、兼、【登戸研究所】所長、兼、付属学校【暗黒学問塾】の学長等をしているが、教壇に立つこともあるから、君はその補助をしてくれればいい。」
大学には、ティーチングアシスタント―「TA」と略す―とか、フェローと呼ばれる大学院生がいるが、その類だろうか?
こうして、郡山青年は、半強制的に常井学長の【使徒】とかいう名称の、弟子兼部下という扱いになってしまった。
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【第漆號地下鉄】下り方面:
【大森】→【蛇窪】→【長原】→【上馬】→【若林】→【代田】→【方南町】→【高円寺】→【野方】
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暫く【第漆號地下鉄】に乗っていたのだが、突然、地面が揺れ出し、電車が止まってしまう。
電車が止まってしまった場所は、元々、降車予定だった、表世界における『方南町』辺りではなく、その手前の『代田』付近である。
地名は珍しいことに、この世界でも表世界と同じく、【代田】というそうだ。当然、停車駅も【代田】駅である。因みに、こちらの駅名は、東京山手急行電鉄ではなく、相武電気鉄道のかつての計画の方に書かれていた駅名と同じだ。
しかし、この突然の停車の原因は、その地名の由来となる存在に起因していた。まもなく車内放送でそのことが知れ渡る。
「【代田ラボッチ】が出たぞ~」
ダイダラボッチではないのか?!
実際、『代田』という地名は、ダイダラボッチの足跡に由来すると言われているらしい……。




