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別次元の領域(2021年版)  作者: 草茅危言
第壱章 都市探索編
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第11話 荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)第参皇児(だいさんおうじ)

異世界二日目。ここから第弐章。新しい登場人物も登場。

 異世界二日目。郡山青年は、大皇(おおきみ)から渡された地図に従い、【二本橋】に到着した。

 時刻は、午前9時30分頃。【神代古書店街】の宿屋を出たのが、午前9時前後。

 道に迷う可能性を鑑み、少し早めに宿屋を出発したが、表の世界と道は殆ど変わらなかったので、道に迷うことはなかった。


 【二本橋】は、運河に二本の橋が架かっている場所だが、これもおそらく、表世界の『日本橋』と対になっているのであろう。


 しかし、待ち合わせ場所には、既に先客がいた。黒髪長髪、痩身にして長身、年齢は三十歳(みそじ)過ぎぐらいだが、眼光の鋭い巨漢であり、ロシア帝国末期の怪僧ラスプーチンを思わせるような容貌である。

 彼は、橋の欄干にもたれ掛かって本を読んでいるのだが、それはどう見ても昨日納品した「量子力學・壱」の古書に他ならない。


 大皇(おおきみ)は、「明日、国内を案内する者」が、昨日納品した「量子力學・壱」の古書に、「強い興味を持つだろう」と言っていたから、おそらく彼が当人に間違いないであろう。


 ただ、大皇(おおきみ)からは、最初に話し掛ける時は、念の為、符丁を使ってほしいと事前に言われている。この符丁は、合い言葉の類であるのだが、まるで暗号の如く、どう見ても単体では意味を成さない言葉である。


「欄干、カラカラ、カンカン?」


「ランタン、タラタラ、タンタン。ということは君が?」


「郡山俊英。本日は宜しく御願い致します。」


「私は、常井参狼(つねいさぶろう)。その名の通り、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)第参皇児(だいさんおうじ)だ。」


第参皇児(だいさんおうじ)?」


「昨日は、行政府を訪れたのだろう?兄者達とは会わなかったのか?」


「昨日屋敷で会ったのは、大皇(おおきみ)大臣(おおおみ)大連(おおむらじ)の3人だけですが。」


「それだ。大臣(おおおみ)神月太陽(かみつきたいよう)は、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)第壱皇児(だいいちおうじ)大連(おおむらじ)霧崎大洋(きりさきたいよう)は、荒脛巾(アラハバキ)皇国(おうこく)第弐皇児(だいにおうじ)だ。(ちな)みに、『おうじ』は、皇帝の皇に、児童の児だ。『王子』とか『皇子』と書くと、表大和(おもてやまと)と紛らわしいからな。まあ、大皇(おおきみ)の子供と言うよりは、複製(クローン)の方が近いが。皇籍にあるといっても、大皇(おおきみ)が不老不死に近いから、実質、皇籍離脱してるようなものだ。」


「でも、一応は世襲制であると?」


「基本的には、三頭政治だから、私の出番は殆どない。一応政治士の資格は有しているが、研究している方が性に合っているしな。」


 三頭政治というのは、古代ローマみたいだな。


「政治士?」


「この国では、行政に携わる者は資格が必要なのだ。取得には、難関の資格試験を突破する必要がある。皇族とて例外ではない。世襲制で腐敗した王朝など、枚挙に暇がない。芸人や運動選手が人気だけで行政に携わることも、この国では有り得ない。」


 科挙みたいな実力主義というわけか。


「ところで、親父に貰ったこの『量子力學・壱』だが、これは君が表大和(おもてやまと)から持ってきたのだろう?大変興味深い。『量子力學・弐』はないのかね?」


「今は手元にありません。元の世界に戻れれば……。」


「その時は是非持ってきてくれ。」


 それだけ言うと、読書に戻ってしまった。専門書なのに、まるで、漫画を読んでいるかのよう。あれ?これから出発するんじゃないのか?というと、この案内人は、


「昨日からここでこうして読んでいるのだが、今いいところなのだ。

待ち合わせの時間は10時だろう?あと30分もあるぞ。早く来過ぎじゃないか?」


 遅刻ではなく、早く来過ぎて怒られるとは理不尽な。というか、昨日から橋の欄干にもたれ掛かって本を読んでいるのか?この案内人は、とんでもない本の虫だ、と呆れていると、


「しかし、まぁ……客人を待たせるのも失礼か。

それでは早速、【罅谷】に行くとしようか。」


 【罅谷】。おそらく、その場所は、表世界の『日比谷』と対になっているのであろうか。そこには、何が待ち受けているのであろうか……。

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