ほんの小さな憎しみ
「ワラジ、どのような憎しみを感じるのですか。」
ワラジはここでは今1番幼い子だ。
もうじきにリンゲツの子、テンショウが産まれると、2番目に幼い子になる。
この年頃の子は自分より大きな周りの勢に憎しみを感じやすい。
「ワラジ」
ワラジはほんの少し泣いていて、不安そうであり、不満そうである。
「みんな…僕よりテンショウが好きだと思うのです。テンショウが憎いのです。」
私はワラジの頭にそっと自分の手を重ねた。
「貴方は間違っています。皆、貴方にも平等に愛を感じていますよ。境では誰もが"あり"ます。善くあろうとせず悪くあろうとせず貴方らしくあれば"ある"、というのは、勢は皆、違うからこそ同じであり平等であるという意味なのです。貴方もまた皆と同じ勢なのですよ。」
ワラジは私のどちらの瞳を見つめるか迷った様子で、黒目をチラチラ左右に動かしながら、よくわからないと言いたげな顔をしていた。
「簡単に言いましょう。私も、皆も、ちゃんとワラジが好きですよ。オミのことを信じてください。」
ワラジの目にはまた涙がたまりはじめて、そこから流れ出た涙を私は手で拭った。
「ワラジは物分りが良いですね。私はワラジが大好きですよ。」
ワラジはぎゅっと私に抱きついて、
「ワラジもオミが大好きです。」
と言った。