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穏やかな地
境は穏やかである。
土色の家と果実のなる樹、野は緑で時に黄金、川は透き通り海まで流れ、海の底に見える赤や青や黄色は掌よりも小さな魚の群れだ。
勢は好きな場所に住み、好きな仕事をする。他の誰とでも交流し、どんな時でも愛を誓う。
皆、大抵は誰かしらと共に寝起きしたり仕事をしたりする。
今独りで住んでいるのは私と、共に生きていた勢を亡くしてしまった者だけだ。
神詞によると、悪事の根源は3つ。
金、政治、憎しみである。
金と政治は境にはない。
憎しみはあるがすぐに絶える。
「オミ」
振り返ると、私の名を呼んだのはナンジであった。
「オミ、助けてくれませんか。」
「はい、何をですか?」
「いつもありがとう。ワラジが憎しみを感じると言うのです。」
「わかりました。聴きましょう。」
言うなれば、それが私の仕事だからである。